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検索対象: 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集
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1. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

強がり わたしは時に強がって生きてしまう 本当はものすごく辛くて苦しいのに : 本当は周りの人たちに甘えたいのに : だけど何より一番怖いのは周りの人たちに流されて 自分自身を追い込んでしまうこと そして悲しいのは後戻りできなくなるということ だからそうなる前に 自分自身の弱さを認めて生きて行きたい つら

2. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

室に来た当初は、土の塊のように見えたのか ? 彼らはそれまで、そのような「場」を、ほとんど持たすに育ってきたのかもしれ ない。家族、学校、友だち。上手にその輪に入れず、または弾きだされてきたのか もしれない。お手本になる大人もいなかったのかもしれない。社会から排除された 彼らに手を差しのべてくれたのは犯罪傾向のある人々で、彼らを助けるためではな く、利用するために近づいてきただけなのかもしれない。そんなことすら、思わずで にはいられない。なぜなら、一人一人話してみれば「この人がなぜ犯罪を ? 」と思だ うような人ばかりだからだ。 芸術のカ詩のカ もうひとつ、心底感じたのが「芸術の力」だ。とくに「詩」に関しては、わたし 自身、詩に対する考え方が変わるほどの大きな衝撃を受けた。 「物語の教室、で、童話を読み、詩人の書いたすぐれた詩を読む。それだけでも、 もちろん彼らの様子は違ってくるのだが、目に見えて何かが大きく動くのは、彼ら 自身に「詩」を書いてもらい、それを合評する段階に人ってからだ。 176

3. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

握することができる。これにより、授業の進め方も変わってくる。たとえば、授業 中に妙に投げやりな発言があったとしても、実は工場での作業が遅れていて気に病 んでいるから、というようなことがわかれば、こちらの言葉のかけかたも違ってく る。 「表情カード」は、彼ら自身にとっても役に立つ。彼らの多くは、感情を表現する のがとても苦手だ。それどころか、心を固く閉ざすあまり、自分自身の感情すらよ くわからない、 という場合もある。 そんなとき、この単純なカードが、心を開く助けになる。カードにより、小さなと 手がかりが得られれば、彼らもぐっと語りやすくなるし、自分で自分のコンディショ版 文 ンに気づくきっかけにもなる。なぜ「しんどい」のか、なにがあって「いらいら」 しているのか、心のうちにある原因を、自分で見つけられる。それを思いきって言 葉にして吐きだしてみれば、教官たちが「そうか、そうか。それは大変だね。よく がんばってるねーとしつかりと受けとめてくれる。それだけで、彼らの心が少しほ ぐれる。自分の心に気づくこと、吐きだすこと。それは凝り固まっていた心を解放 する第一歩にもなるのだ。 初回の授業のときは、ほとんど全員が「『緊張』していますーという。「でも、ど

4. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

きようの空は一面のあでやかな青 この空を見てみんなは 何を思い 何をするのだろう ぼく自身は今日の空のように バッジの色は青 いつまでも青バッジでいられたら 亠冂バッジ

5. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

むじやきに笑う。すなおに喜ぶ。ほんきで怒る。苦しいと訴える。 悲しみに涙する。いやだよと拒否する。助けてと声に出す。 日常のなかにある、ごくあたりまえのこと。 そんなあたりまえの感情を、あたりまえに出せない子どもたちがいます。 うつくっ 感情は鬱屈し、溜めこまれ、抑えきれないほどの圧力となり、 爆発して、時に不幸な犯罪を引きおこしてしまいます。 その原因は、さまざま。その子自身の性質だけではなく、 はじめに はしめに

6. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

母のような気持ちが持てる親になりたいと 心の底から強く思いました 期待されてうれしいこともあれば、重荷になることも。 まして、亡くなった兄や姉を投影されたら、 どれだけ苦しいことでしようか。 と感じても仕方ありません。 愛されているのは、自分ではない、 親も、悪気があって、そうしているわけではないのが悲劇 「ぼくはぼく。兄さんでも姉さんでもない」って 大声で叫べればよかったのに、まだ言えないくんに、胸が痛みます。 そこにいる、その人自身を見つめること。 それが「ほんとうの愛」の第一歩ではないでしようか。 126

7. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

れんがづく 奈良少年刑務所の建物は、明治四十一年に完成した煉瓦造りの建物。 「明治五大監獄」の一つで、政府の威信をかけた壮麗な建築物です。 ゆいいっ 五大監獄のなかで唯一現役で残った貴重なものでもあります。 煉瓦は、すべて当時の受刑者たちの手作り。 ふぜい その味のある煉瓦の風情は、それはそれは美しいものですが、 夏は熱を持って夜も赤外線を放射し、オ】ブンさながら。 冬は冬で底冷えします。 寮舎には冷暖房もなく、刑務所暮らしは楽ではありません。 そんななか、くんの思いは地球温暖化にまで広がっていきました。 世間から隔絶されていても、世界情勢に関心を持ち、 とら 自分自身の問題として捉えている—くんです。

8. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

人は変われる 平成二十二年版「犯罪白書」によると、日本の刑務所に収容されている人の 五十五パーセント弱が、再犯者であるという。刑務所が、矯正施設として機能し、 すべての人がきちんと更生して社会に戻るならば、世の中の犯罪の半分以上はなく なる勘定になる。受刑者が史生することこそが、わたしたち自身の安全を守ることカ の につながるのだ。 カ 奈良少年刑務所には、現在、七百名あまりが収容されている。彼らはみな、犯罪 の 詩 傾向の進んでいない若い世代で、入所時の年齢は十七歳以上二十六歳未満。ここで 彼らが再教育され、一人も刑務所に戻ってこなければ、日本の刑務所はガラガラに なるはずなのだ。 犯罪そのものは、憎むべき行為である。被害者の無念やそのご家族の心の傷は、 計りしれない。償おうとしても償いきれるものではない。加害者には、生涯、それ を重く受けとめてもらわなければならない。犯罪を犯すのは、個人だ。その個人に 責任は帰せられて然るべきである。 179

9. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

子どものころから、教師からも見放され、授業で当てられることもなく、ただ教 室の片隅にいた子どもたち。それがここではじめて「主人公」として人前に立ち、 かたく 演じる。 小さなことだが、その達成感が、頑なな彼らの心をほぐすきっかけとなっ てくれるのだ。 二回目も絵本を読み、三回目は詩を読むことに挑戦する。金子みすゞと、まど・ みちおの詩を教材にさせていただいた。「教える」のではなくて、声に出して読み、 一人一人の感想を聞いていく。回を重ねるほどに、表現がのびのびとしてくる。 そして、いよいよ彼ら自身に詩を書いてもらうことになる。それまでの授業で言場 葉に親しみ、「詩」というもののイメージをなんとなくつかんでもらっているので、 さほどむずかしいことではない。「書きたいことが見つからなかったら『好きな色』 について書いてきてください」と言って宿題にする。そうすると、たいがいの者が 提出してくれる。そして、その詩を本人が朗読し、みんなで感想を述べあう。 驚くべき伸びしろ それだけのことである。たったそれだけのことで、目の前の彼らが、魔法のよう

10. 空が青いから白をえらんだのです : 奈良少年刑務所詩集

であると同時に、この社会の被害者なのかもしれない、 しはその仕事をお受けすることにした。 「社会性涵養プログラム」とは 「社会性涵養。フログラム」と名づけられたプロジェクトの対象は、」 用務所のなかでで も、みんなと歩調を合わせるのがむすかしく、ともすればいじめの対象にもなりかた ねない人々。極端に内気で自己表現が苦手だったり、動作がゆっくりだったり、 え ぎやくたい を 虐待された記憶があって、心を閉ざしがちな人々だ。 ら 「家庭では育児放棄され、まわりにお手本になる大人もなく、 学校では落ちこぼれ の問題児で先生からもまともに相手にしてもらえす、かといって福祉の網の目には靖 空 かからなかった。そんな、いちばん光の当たりにくいところにいた子が多いんです。 ですから、情緒が耕されていない。荒れ地のままです。自分自身でも、自分の感情 がわからなかったりする。でも、感情がないわけではない。感情は抑圧され、溜ま りに溜まり、ある日何かのきっかけで爆発する。そんなことで、結果的に不幸な犯 罪となってしまったというケースもいくつもあります。先生には、童話や詩を通じ と感じだした。結局、わた