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検索対象: うわさのズッコケ株式会社
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1. うわさのズッコケ株式会社

イワシ釣りのひとがたくさんいた日と、まったくかわらない利益がはいってくる ことは、ますまちがいありません。」 かお じしん ( カセは、自信まんまんといった顔つきで、株主たちをながめまわした。 株主たちは、しばらく声もなく、たがいに顔を見あわせていた。 「ええと、それで、ちょっときいてみるんだけど、ぼくが持っている株券。もし、 いまお金にかえてくたさいって、たのんだら、かえてくれるんですか。」 にいむらたいご 新村大吾という、名前のとおり、大がらな少年が、かしこまってたすねた。この 少年は、いわゆる一株株主である。 ハカセは、大きくうなすいた。 ばあい 「もちろんです。ただ、会社がひきとる場合は、額面どおりの値だんですから、だ はいとう、ひ れかに売られたほうが得ですよ。来月の配当日には、一株五円くらいの配当金が つくのは、まちがいないんですからね。毎月五円すっ、お金がはいる株券なんだ から、だれだって、高く買ってくれるんじゃないかなあ。」 ひとかぶ おお かぶぬし がくめん かぶけん はいと - つきん 126

2. うわさのズッコケ株式会社

のぶひこ がた 信彦は、もう一まいのたんざく形の紙をとりだすと、かんばんのはしに、ななめ にはりつけた。こっちには、〃 特価一ばい二 o o 円 ~ と、書いてある。 「さあて、これを、こうやって、のれんみたいにかけりゃあ、ほんものらしいだろ う。 ( チベ = 、そっちのはしを、テントのひさしにむすびつけてくれよ。」 じようたん 紙の上端には、長い棒が一本はりつけてあって、おまけに、紙には、二本切れ こみがはいっている 。いってみれば、紙でできたのれんだ。 「すてき、ほいほい亭っていう、ネー 、、ングは、いまいちたけどねえ。」 もんく 圭子が、ちょっぴり文句をつけた。 じゅんび のれんをさげて、水をはったふたつのなべをコンロにかければ、ほ・ほ凖備はとと のった。 しんすけ 晋助は、白いまえかけをして、頭にも、白いぼうしをかぶっている。三人の女子 店員も、犬のもようのはいった、おそろいのエプロンと、おそろいのナプキンを頭 にかむった。 とっか 178

3. うわさのズッコケ株式会社

しんたろう 慎太郎が、頭をさげる。 あんどうけいこ 「安藤圭子さん。五十株ーー」 一 o 、 o o o 円です。ありがとうございました。」 「こちらこそ。でも、楽しかったわね。また、いっかやりましようよ。」 かんしゃ はい A : つきん かぶぬし 株主たちは、ひとりひとり配当金をうけとり、社員たちに感謝のことばをかけて、 教室を出ていった。 なかもりしんすけ さいごに中森晋助が、配当金をうけとった。 「中森くんは、給料があるからちょっと待ってね。」 ( カセが、帰りかけた晋助を、あわててとめた。 「いいよ、・ほくは。」 「えんりよするなって。おまえの父さんにも、すごく世話になったもんな。おい くらすつになるんだ ? おれたちの給料、い けいさん 「うん、ちょっと待って。いま、計算するから。ます、三人の配当金と出資金を返 きゅうりよう かぶ しゃいん せわ しゆっしきん 212

4. うわさのズッコケ株式会社

かいしやそんぞく 「ええ、それでは、ます会社の存続について、決をとります。解散に反対のひと ( カセが、教室を見まわす。ひとり、ふたり、まよったあげく手をあげたものが いたが、すぐにおろしてしまった。 ホイホイしようじかぶしきがいしゃ 「それでは、商事株式会社は、ざんねんではありますが、本日をもち たしろ ていあんさんせい まして、解散いたします。つぎに、田代くんの提案に賛成のかた、手をあげてくだ こちらは、ます半分くらいが手をあげた。それから、しだいにふえて、三分の二 冫子 / / かぶわ かぶぬしそうかい 「株主総会のルールにしたがいまして、持ち株の割りあいで決定いたしますが、大 かけっ かぶぬし 株主のみなさんがみな賛成されていますので、この提案も可決いたしました。それ しつもん では、これで総会をおわりますが、なにか質問はありませんか。」 かぶけん 「あのね、株券は、返さなくちゃあならないの ? 」 けっ 力いさん おお 210

5. うわさのズッコケ株式会社

「お、おれ、まだ社長になっちゃいないぜ。」 ひてい ハチベ工が、あわてて否定した。 はちゃ 「あら、八谷くん、自分が社長だって、昼休みにいいふらしてたじゃない。」 えのもとゆみこ 陽子のとなりにすわっていた、これまた美人の榎本由美子がいう。 ほっきにん かぶぬしそうかい 「社長をだれにするかは、いちおう・ほくたち発起人が話しあって、いすれ株主総会 にかけるつもりです。きようのところは、ぜひ、みなさんに株主になっていただき たいということ、できたら、あしたお金を持ってきてほしいということだけ、話し ておきます。」 ( カセが発言するのを待っていたように、ひとりの男の子が手をあげた。 かぶけん 「あのさあ、株券一まいいくらするの。」 なかもりしんすけ 中森晋助という子だった。 がくめん はっこうす・つ 「株の額面は一 o o 円にします。発行数は三百株、つまり資本金三 o 、 o o 円です はいと - つきん ね。配当金は、月に一回ということにします。」 しゃちょう しほんきん

6. うわさのズッコケ株式会社

「ごめん、ごめん。 ( カセちゃんが、 トイレからなかなか出なくてね。」 モーちゃんは、ハチベ工に声をかけてから、 「あ、おしさん。ありがとうございました。」 ハチベ工の父親をみつけて、ペこりとあいさつをした。 「うん、じゃあ、父ちゃんは、これで帰るからな、あとかたづけのとき、またきて やるよ。」 あらいようこあんどうけいこ えの ( チベ工の父さんが、もどっていくのといれちがいに、荒井陽子、安藤圭子、榎 もとゆみこ かぶぬしれんちゅう たしろ 本由美子の株主連中もあらわれ、そのすぐあとから、紙のつつをたすさえた田代 のぶひこ 信彦もやってきた。 「ゆうべ、十二時までかかったんだぜ。」 とく あかじ りゆ、つ 信彦が、得意げに紙をひろげてみせる。赤地に黒い竜がのたくっている絵のまん なかに、黄色い文字で、 " ラーメンほいほい亭〃と書かれていた。 「ラーメン一ばい、二 0 0 円だったよな。」 177

7. うわさのズッコケ株式会社

あんどうけいこ 安藤圭子が立ちあがった。 「みなさんは、こづかいをちょっぴりだして、そいで、配当金をうけとるだけでい しゃいん いけど、社員のみなさんは、この一か月、ほんとに休むひまもなくはたらいてたん なかもり です。もし、このままつづけたら、 ( チベ工くんや中森くんたち、勉強もなにもで きなくなるんしゃないでしようか。」 「 ( チベ工は会社なんかなくたって、勉強しやしないぜ。」 男の子がやじをいれたけど、圭子にひとにらみされて、だまってしまった。 かいさんさんせい かぶぬしそうかい 「ようし、わかった。おれも解散に賛成。 ( カセよ、株主総会って、株の数で多数 よ - っこ けっ 決、決めるんだろ。陽子と圭子、それにおまえたちが解散に賛成なら、これで可決 じゃないの。」 たしろのぶひこ 田代信彦の発言は、 かなり効果があったようだ。会社解散もしかたがないという ふんいきが、教室にひろがっていくのが、よくわかった。 ていあん 「ええと、そいでもうひとっ提案なんだけどさ。さっき ( カセが発表した配当金、 はいと - つきん たすう かけっ 208

8. うわさのズッコケ株式会社

声におうじて、ハチベ工が教だんにすすんだ。こないだとうってかわって、われ いうまでもない るような拍手が起こったのは、 ハチベ工は、ふかぶかとおしぎをすると、教室をながめまわした。 ホイホイしようじかぶしきがいしゃ 「みなさんのおかげで、わが商事株式会社も、すごい大もうけをする もくざいこう しようば、 ことができました。さいしょは、木材港で、商売をしてましたが、イワシがいな おおかわ くなって、こんどは大川高校ではたらきました。そして、ラーメンをいつばい売っ カセがしゃべったように、もうけたお て、たくさんのお金がはいってきました。 ( 金は、株主のひとに、はらいます。 ところで、・ほくも社長として、これからもがんばっていきたいと思ったのですが、 この一か月間、すこしくたびれました。それで、 O O 商事は、きようを かいしゃ かいさん かぶけん もって、解散したいのです。もちろん、株券は、会社でひきとります。ですから、 そん みなさんは損はしません。みなさん、ありがとうございました。」 きょ - っ ハチベ工は、もういちど、ペこんとおじぎをして、教だんをおりてしまった。 かぶぬし は′、しゅ きよう 205

9. うわさのズッコケ株式会社

はいと・つび かいしやせつりつ れた。会社設立より、ちょうど一か月、きようは株主たち、待望の配当日でもある。 おおかわ 大川高校のバザーで、劇的な成功をおさめたというニースは、もう株主のあい 十いしっ かなり高額の配当がもらえるであろうと、 だに知れわたっていたから、きようは、 みんな、わくわくして集まっているのだ。 たんじよう このあいだとおなしように、ますノートをかかえた ( カセが、壇上に立った。 ホイホイしようじかぶしきがいしゃ 「ええ、お待たせいたしました。これより O O 商事株式会社の第二回、株 けい . んいは硺 - っこ / 、 ぬしそうかい 主総会をひらきます。ます、一回め以後の経営報告をいたしますと、さきにしいれ ・つ きん ましたかんビールは、九月二十五日すべて売りつくしました。また、売りかけ金も しゅうにゆう しゅうし ど・つじっかいしゅ・つ 同日、回収することができました。この日の収支は、収入三、 0 円、ビー げんか ル原価と売りかけ金の一二、 o 六五円を引いた一七、九三五円の収入がありました。 つづいて、十月九日と十日の両日、大川高校の。 ( ザーで、ラーメン、二百八十四 ざいりようひ しゃいん はいを売りました。ラーメンは、焼きブタやモヤシなどの材料費、ならびに社員 ちゅうしよくだい の昼食代などの経費をいれて、原価八六円になりますので、計二四、四二四円、 けいひ ・けきてき や おおかわ かぶぬし たい要う かふ 202

10. うわさのズッコケ株式会社

とうちゃく その朝、 ( チベ工はいつもより十分ほどおくれて教室に到着した。 「おはよ ! 」 いつものとおり、教室のなかに声をかけて、自分のつくえにカバンをほうりだす と、そのまま運動場にかけだそうとした。 「 ( チベ工、ちょっと : : : 」 うしろから、男の子の声がした。 「きのう、ぜんぜん売れなかったってな。」 おおかぶぬしたしろのぶひこ 大株主の田代信彦が、のそりと ( チベ工のそばに立つ。 「イワシが、つれなくなって、お客がこなくなったって ? 」 「だれが、いったんだ ? 」 「だれだっていいだろ。そんなことより、配当金のほうは、だいしようぶだろう 「そうよ。お金のかわりに、ラーメンもらったって、しようがないものね。」 はいと - つきん 6 117