「親教」のマインドコントロールを解く 第 4 章 【図】ジェノグラムの例 ( L 男さんの家族の場合 ) ロ 男 0 女 十 十 十 十 十 十 、、、宗教 28 , 自殺 25 , 自殺 ? 45 , 自殺 アルコール依存 婚約者 ー密着した関係 悪い関係 密着しながらも ケンカを繰り返す関係 I. P. ( 患者 ) 家族境界 161
第二に父は、是非善悪を区切ります。世に掟をしき、ルール ( 規範 ) を守ることを家族メンバ ーに指示するのは父の仕事です。「父生原理」という言葉がありますが、これは父親のこうした 機能を指して用いられるものです。 ゅちゃく 乂の仕事の三番目は、母子の癒着を断っこと、親たちと子どもたちの間を明確に区切ることで す一父 0 名乗男」、妻』呼ば女 0 、何り 0 、誰 = 。 0 大切」す』〔う形、 = 0 仕事 を果たします。子どもは父のこの仕事によって、母親という子宮に回帰する誘惑を断念すること ができるのです。スイスの精神分析医カール・ユングが強調したのもこのことで、彼は父の役割 を母子の関係を断っナイフにたとえています。 こうした父の仕事は、いずれをとってみても抽象的なものです。そしてヒトという動物は、周 囲の事物を抽象する能力によって人間になったのです。この抽象の能力を具体的に示すものが言 語です。言葉によって父性を宣言し、規範を定め、親と子の身分差を明確にする存在を得て、ヒ トは人間になった、といえると思います。 母と子の二者関係を平面的なものとすると、これに父が入った三者関係は立体的です。三次元 の世界には、光も影もある。私たちが存在する世界により近い知覚が、これによって私たちにも たられさます。つまり「父」の存在を認識し、それを父と呼ぶことによって、私たちは人間とし ての生活に入っていくともいえるわけで、このことを指してフランスの精神分析医ジャック・ラ おきて
斎藤学 精神科医・家族機能研究所代表 第 5 章子どもの領域、親の領域 第 4 章「親教」のマインドコントロヨレを解く 第 3 章「親教」の信者たち 第 2 章私の中の「私」、私の中の「母」 第 1 章あなたのお母さんは「聖母」ではない プロローグ苛酷な批判者インナーマサ曰 ナるこころの二 あカ ' を責め ィー -- マサ - ー 新講社 中の母さん ⅧⅢⅢⅧⅧ刪 II 1 9 2 0 0 9 5 01 5 0 0 2 I S B N 4 ー 8 6 0 8 1 ー 0 2 9 ー 5 C 0 0 9 5 \ 1 5 0 0 E 新講社定価 : 本体 1500 円 + 税 斎藤学 さいとう・さとる 1941 年、東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。 アライアント国際大学・臨床心理学大学院教授。 家族機能研究所代表。アルコール・薬物依存、児童虐待、 過食・拒食症など嗜癖研究の第一人者。 日本嗜癖行動学会理事長、『アディクションと家族』編集主幹、 」 UST ( 特定非営利活動法人日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン ) 理事長。 著書に『家族依存症』『子供の愛し方がわからない親たぢ 『「家族」という名の孤独』『アダルト・チルドレンと家族』 『「自分のために生きていける」ということ』「「家族」はこわい』 訳書に『嗜癖する社会』『買い物しすぎる女たぢ 内なる子どもを癒す』など多数。
プロローグ苛酷な批判者「インナーマザー」 非合理な罪悪感 < 子さんからの手紙巧 第 1 章あなたのお母さんは「聖母」ではない サバイハーとスライハ 生き残った人、サバイバーの特徴 成長した人、スライバーの特徴 抱きしめ、受け止めてくれる母親と「安全な場所」 「父親」の仕事、「母親」の役割め 封印された感情、家族の秘密 感情を鈍麻させていく子どもたち 親に虐待された子どもは、自分をいじめる相手に近づく 母親の虐待のカゲにある、父親のワーカホリズム
ンドコントロールを受けているかもしれません。 世間様にひれふす「親教」の信者たち 「親教の唱える教義には、たとえば、 「人様に迷惑をかけてはいけません」 「世間並みから落ちこばれないようにしなさい 「悪いことをしてはいけません 「働かざる者、食うべからず」 などがあります。「世間並み」ということが大切なので、年齢が重視されます。「その年で」と いうような考え方です。 主義主張には「イズムーがっきます。キリスト教はクリスチャニズム、共産主義はコミュニズ ムとゝ しいますが、世界中の子どもは、まず親にひきこまれてペアレンティズム ( 親教 ) の信者と なります。 子どもにとって親は神様です。親教の信者にならなければ、その家庭では生きていけません。 けれども、成長すれば親の考えとは違うところも出てきます。別の考えも取り入れて、自然に 自分の考えを形づくり、親の世界からぬけ出してひとりの大人となっていきます。ところが、い
斎藤学 Satoru Saitoh 1941 年、東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。アライアント国際大学・臨 床心理学大学院教授。家族機能研究所代表。アルコール・薬物依存、児童虐 待、過食・拒食症など嗜癖研究の第一人者。日本嗜癖行動学会理事長、「ア ディクションと家族」編集主幹、 JUST ( 特定非営利活動法人日本トラウマ・ サバイバーズ・ユニオン ) 理事長。著書に「家族依存症」「子供の愛し方がわ からない親たち」「「家族」という名の孤独」「アダルト・チルドレンと家族」 「「自分のために生きていける」ということ」「「家族」はこわい」、訳書に「嗜 癖する社会」「買い物しすぎる女たち」「内なる子どもを癒す」など多数。 連絡先 : 家族機能研究所 〒 106 ー 0045 東京都港区麻布十番 2 ー 14 ー 6 イイダビル 2 F 電話 ( 03 ) 5476 ー 6041 インナーマザー ーあなたを責めつづけるこころの中の「お母さん」一 著者・・・ 2004 年 2 月 10 日第 1 刷発行 2004 年 5 月 9 日第 7 刷発行 ・・斎藤学⑥ Satoru Saitoh, 2004 企画・編集・・ ・・・株式会社波乗社 ( 0 NaminoriSha, 2004 発行者・・ 発行所・・・ ・・・大谷松雄 ・・・株式会社新講社 東京都千代田区飯田橋 4 ー 4 ー 9 ー 410 〒 102 ー 0072 電話 ( 0 め 52 ろ 4 ー 2 ろ 9 ろ・ FAX ( 0 めう 2 ろ 4 ー 2 ろ 92 振替・ 00170 ー 6 ー 615246 印刷所・・・ 製本所・・・ ・・・萩原印刷株式会社 ・・・ナショナル製本協同組合 乱丁・落丁本はお取替えいたします。 定価はカバーに表示してあります。 ISBN4 ー 86081 ー 029 ー 5 Printed ⅲ Japan.
非合理な罪悪感 << 子さんは三〇歳です。一四歳のときに父親に先立たれ、それからしばらくして不登校が始ま りました。高校にも行ったり行かなかったりで、なんとか短大を卒業して就職したものの、「人 といっしょにいると緊張する」とか「生きている実感がない」といって、浮遊するように暮らし ていました。そうした < 子さんを好きになった男性がいて、行き場を失った感しに悩んでいた 子さんは「とりあえす」結婚したのですが、やはりこの男性との生活にも身が入りません。そう かといって、離婚して実家に戻る気にもなれません。 こんな状態で治療を求めてきた子さんと話してみると、やたらに「お母さん、の悪口をいし ます。母は「気が利かない気「鈍感だ , 、「冷たい」、こんな状態になったのも、お母さんのせい だといいます。「どうして ? 」と聞いても、はっきりとは答えられないのですが、現在の不本意 な状態が母親との関係からきているということは確信しているようです。聞いてみると、この母 フロローグーーー苛酷な批判者「インナーマザ 1 」
第 1 章あなたのお母さんは「聖母」ではない 「父親」の仕事、「母親」の役割 この本では母親というものに焦点を当てることにしますが、「母」と対になる「父」の役割に ついても触れておきましよう。「父なるもの」については私の最近の著書『「家族」はこわい 母性化時代の父の役割』 ( 日本経済新聞社 ) でかなり詳しく述べましたので、ここでは簡単にす ませます。 父の仕事の本質は、「区切ること」です。これと対になるという点で母の役割は「つなぐこと」 ともいえるでしよう。 父はまず、「この者たちに私は責任を負う」という家族宣言をすることによって、自分の家族 を他の家族から区分します。このことを指して「社会的父性」の宣言とゝ しいます。この宣言によ って、ひとつの家族が成立するのですから、父の役割を家の塀や壁という区切りにたとえること ができるでしよう。ついでにいえば、妻や子が雨露に濡れることから防ぐ屋根の役割といっても ゝ 0 ゝ しすれにしても家族を外界と区切るひとつの容器を提供することは父の機能です。 はま 阻みます。その子どもたちが大人になり、自らの家庭を持ったときどうなるでしようか。与えら れなかった体験はなかなか伝えることができません。次世代でも同様のことが起こりうるわけで す。
第 5 章子どもの領域、親の領域 ておだてる。 「おまえは愛されて当たり前なんだ、大事にされて当然なんだ。そうじゃないという人がいたら、 と子どもに思い込ませる。 その人のほうがおかしい」とかわいがり、「自分は幸福で運がよい 親の仕事はこれにつきるのです。 こうした母親的な無条件の愛は、必ずしも現実の母親だけしか与えられないわけではありませ ん。父親も与えられますし、社会が与える場合もあります。 母親が妊娠中に犯罪を犯して刑務所に入り、子どもは乳児院で育ったという場合、看護婦を初 めとする多くの人がみな「母親」になります。その子たちが、本当の母親に育てられた人より寂 しい思いをするかというと、必すしもそうとは限らない。そういう環境の中でたつぶり愛されて、 豊かな心が育つ人も数多くいます。 高橋是清も、実母とは縁が薄かったのですが、幸福な大人に成長したのです。 違う者どうしが共感し合い、個性が調和するということ うぬぼ 「自惚れ。とゝ しいますが、自分にれることができないと、健全な誇りが持てません。ただ、自 分だけが偉くて、自分だけが愛されるのが当然で、「おまえらは愛されなくていいのだ」という のはおかしい。また、無力な人が、「私はなんでもできるすごいやつだ」というのも自惚れとは 229
そんなことをされていたら、怒る人のほうが正常です。親に暴力を向けたのは正当な怒りで、 むしろいいことです。「親を殺したい」と思いながら、実際にはもんもんとしている。親に何も 反抗できないときには、その怒りが弱い者に向かいます。カツアゲをして威張って、自分が強く なったような気になるのは間違いです。そんなことをしているうちは、相変わらす自分が親にと って弱者である屈辱感から逃れていないのですから。 子どもが「非行」を起こした時点で、すでに親に対する怒りのメッセージが発せられていたの です。男くんの親の場合は、そこでさらに『子どもを一番にする法』をやってしまったので、 問題が大きくなった。親が反省せずに、悪いのはすべて子どもだと決めつけている限り、子ども の怒りもどんどんふくれあがって、本当の親殺しが起こることもあります。 母親の願望を満たす娘たち 一見、さっそうと自立したキャリアウ 1 マンを演じながら、やはり母娘カプセルの中で生きて いる娘たちもいます。 現代の二〇代前後の女性たちの母親は、ちょうど女性の生き方が変わり始めた頃に青春を生き てきました。それまでの女性は、家のため、子どものために生きることが当たり前で、たいした 疑問は出てこなかったのです。ところが、ここ三〇年ほどの間に、多くの女性が大学に進学する 100