屁理屈が絡みあうポルノを書く三十七歳の小 島田雅彦著彼 ~ 序先生説家を、十九歳のばくは人生の師と見立てた 泉鏡花文学賞受賞ーー奇妙な師弟関係を描く平成版「こころ」。 とまどうばかりの二十代初めの宙ぶらりんな 優しいサヨクの 日々を漂っていく若者たち 。臆病で孤独 ための嬉遊曲 な魂の戯れを、きらめく言葉で軽妙に描く。 祖母が暮らした古い家。糸を染め、機を織る、 梨木香歩著カらど、、り・カらど、さ静かで、けれどもたしかな実感に満ちた日々。 生命を支える新しい絆を心に探く伝える物語。 果歩と静枝は幼なじみ。二人はいつも一緒だ った。歳を目前にしたいまでも : : 。対照的 な女性一一人が織りなす、心洗われる長編小説。 夜の散歩が習慣の歳の私と、タイプの違う 一一人の姉、小さな弟、家族想いの両親。少し奇 江國香織著流しのしたの骨 妙な家族の半年を描く、静かで心地よい物語。 ハニラアイスの木べらの味、おはじきの音、 江國香織著亠 9 ・い、カの匂いすいかの匂い。無防備に心に織りこまれてし まった事ども。Ⅱ人の少女の、夏の記憶の物語。 江國香織著ホリ 島田雅彦著 ・ガーデン
柳美里著ゴールドラッシュ 池澤夏樹著 なぜ人を殺してはいけないのか ? どうした ら人を信じられるのか ? 心に闇をもっ歳 の少年をリアルに描く、現代文学の最高峰 / 一人の若き兵士が夜の港からひっそりと東京 にやって来た。名もなく、武器もなく、パス ハビロンに行きて歌え ポートもなく : 。新境地を拓いた長編。 のどかな南洋の島国の独裁者を、島人たちの 池澤夏樹著マシアス・キリの失脚噂でも巫女の霊力でもない不思議な力が包み 谷崎潤一郎賞受賞込む。物語に浸る楽しみに満ちた傑作長編。 ナイル川上流の湿地帯、ドミニカ沖のクジラ、 イスタンプールの喧騒など、読む者を見知ら 池澤夏樹著明るい旅情 ぬ場所へと誘う、紀行ェッセイの逸品。 。昭和四十年 夢みる少女は冒険がお好き 氷室冴子著い も、つ A 」物五代の北海道で、小学校四年生のチヅルが友だ ちや先生、家族と送る、恋と涙の輝ける日々。 死への興味から、生ける屍のような老人を 湯本香樹実著・夏の」庭「観察」し始めた少年たち。いっしか双方の間 ー The Friends に、深く不思議な交流が生まれるのだが :
息子は二歳。育児が軌道にのってくると、 よしもとばなな著一夫女」」囲れ - 説をし 0 かり書こう、人生の価値観をは 0 き りさせよう、と新たな気持ちが湧いてくる。 yoshlmotobanana. com8 一九九九年、沖縄に恋をしてーーー以来、波照 なんくるなく、ない 間、石、奄美まで。決して色あせない思い出 ー沖縄 ( ちょっとだけ奄美 ) を綴った旅の日記。垂見健吾氏の写真多数 / 旅の日記ほ、 *--æ東日本電車の中吊りに連載されて話題と なった《中吊り小説》が遂に一冊に / 吉本 吉本ばなな他著中吊り・小祝 ばななから伊集院静まで、楽しさ溢れる四編。 個性的な二人のホンネはとてつもなく面白く、 吉本ばなな著なるほい」の対》請ふかい ,. 対話の達人と言葉の名手が、自分 のこと、若者のこと、仕事のことを語り尽す。 目覚めた時、歳の一ノ瀬真理子は、年を飛 村薫著スキッフんで、肥歳の桜木真理子になっていた。人生 の時間の謎に果敢に挑む、強く輝く心を描く。 僕は、ホントは誰なんだろうね ? 熱くせつ 鷺沢萠著 ~ 果女の日ない問いを胸に留めながら、しなやかに塘在 を生きる若者たちを描く気鋭の青春小説集。 よしもとばなな著
よしもとばなな著 よしもとばなな著 突然知らされた私自身の出来事。自分の人生 ミルクチャンのような日々、 の時間を守るには ? 友達の大切さを痛感し、 そして妊娠 からだの声も聞いた。公式本第一一弾ー ¯yoshimotobanana. com2¯ 胎児に感動したり、日本に絶望したり。涙と怒 よしもとばなな著子供かで一ましたりと希望が目まぐるしく入れ替わる日々。心 とからだの声でいつばいの公式本第三弾。 ー・ yoshlmotobanana. com3— いよいよ予定日が近づいた。つつばる腹、息 よしもとばなな著こんにちわ ! 赤ちゃん切れ、ぎつくり腰。終わってみれば、しゃれ にならない立派な難産。涙と感動の第四弾。 ¯yoshimotobanana. C0m4・ー 子育ては重労働。おつばいは痛むし、寝不足も よしもとばなな著赤ちゃんのいる日々続く。仕事には今までの何倍も時間がかかる。 でも、これこそが人生だと深く感じる日々。 —yoshimotobanana. com5¯ わが子は一歳。育児生活にもひと息という頃、 よしもとばなな著さよ、つなら、ラブ子身近な人が次々と倒れた。そして、長年連れ 添った名大ラブ子の、最後の日が近づいた。 —yoshimotobanana. com6¯ 難問が押し寄せ忙殺されるなかで、子供は商 っこしはつらいよ店街のある街で育てたいと引っ越し計画を実 行。四十歳を迎えた著者の真情溢るる日記。 ¯yoshimotobanana. com7 ・ー
私のプロポーズに対して、長い沈黙の後とか ノげは言った。「秘密があるの」。ゆるやかな癒し 吉本ばなな著 AJ の時間が流れる 6 編のショート・ストーリー 淋しさと優しさの交錯の中で、世界が不思議 吉本ばなな著亠ィッチ , ンな調和にみちているーー人世界の吉本ばなな〉 海燕新人文学賞受賞のすべてはここから始まった。定本決定版 / 会いたい、すべての美しい瞬間に。感謝した リタ い、今ここに存在していることに。清冽でせ 吉本ばなな著アム ( 上・下 ) つない、吉本ばななの記念碑的長編。 人を好きになることはほんと、つにかなしい 、つ学に、カ子 / 運命的な出会いと恋、その希望と光を サンクチュアリ 瑞々しく静謐に描いた珠玉の中編二作品。 夜の底でしか愛し合えない私とあなたーーー生 きてゆくことの苦しさを「夜」に投影し、愛 吉本ばなな著 , 日河 ~ 侠 することのせつなさを描いた″眠り三部作 % 小説家の日常を 喜怒哀楽から衣食住まで・ : よしもとばなな 惜しみなく大公開 ! 公式ホームページから よしもとばなな著ドットコム見参ー 生まれた、とっておきのプライヴェートな本。 ーー yoshlmotobanana.com 吉本ばなな著 八ロ
196 飲みに行った先でおかまのママに「あんた、またそろそろあのくらいのヒットを飛ば さないとね ! 」なんて言われても「違うんだけどなあ」なんていつも笑っている。そん なふうに笑える日がきて、ほんとうによかったと田 5 う。 この小説はいろいろな人にいろいろな読まれ方をされて、すばらしい評論もたくさん していただいた。どれもがとても光栄だった。 そして今でも忘れられないのは友達の井沢君が言った「吉本のあの小説で、この世の 女の子のマイナー性が一気に花開いて、表に出て来ちゃったんだよな」という一一 = 〔葉だ。 もしも読者の隠されていた感受性が解放されたなら、それで充分、私は自分の仕事を 果たすことができたと思う。 そんなふうに世の中に旅に出て、みんなに愛されて帰ってきた子供のような、新しい うれ 表紙の「キッチン」をお届けできることがとても嬉しいです。 快く文庫化に賛成してくださった松家仁之さん、いつでも私の作品を私以上に愛して くださる根本昌夫さん、すばらしいセンスを惜しみなく発揮してすばらしい挿画と装丁 を作りながらこっこっとおっきあいしてくださる、真に心の美しい増子由美さん、本当 にありがと、つございました。 いつも助けてくれる事務所のスタッフにも心から感謝しています。
189 朝一番のドーナッショップで、熱いコーヒーを飲みながら、少し眠い瞳でうららは一言 「あたしも、変な形で死に別れた恋人と、最後の別れができるかもしれないのでこの街 「会えた ? 」 私はたずねた。 「うん。」うららはちょっと笑い、言った。「本当に百年に一回くらいの割合で、偶然が 重なり合ってああいうことが起きることがある。場所も時間も決まってないの。知って いる人は、七夕現象と呼ぶ。大きな川の所でしか起こらないからよ。人によっては全く ←見えない。死んだ人の残留した思念と、残された者の悲しみがうまく反応した時にああ : あなたは、きっと、つ いうかげろうになって見えるのよ。あたしも、初めて見た。 いてるんだと思うわ。」 「 : : : 百年ね。」 その見当もっかない確率の低さに私は思いをはせた。 「ここに着いた時、下見に行ったらあなたがあそこに立っていた。あなたはきっと、誰 かを亡くしたんだと、けもののカンでわかった。だから、お誘いした。」 つ、 ) 0
188 キッチン 、と田 5 い しかし、夜明けの最初の光が射した時にす。へてはゆっくりと薄れはじ . し . し めた。見ている目の前で、等は遠ざかってゆく。私があせると、等は笑って手を振った。 やみ 何度も、何度も手を振った。青い闇の中へ消えてゆく。私も手を振った。なっかしい等、 そのなっかしい肩や腕の線のす。へてを目に焼きつけたかった。この淡い景色も、ほほを ったう涙の熱さも、すべてを記憶したいと私は切望した。彼の腕が描くラインが残像に なって空に映る。それでも彼はゆっくりと薄れ、消えていった。涙の中で私はそれを見 つめた。 完全に見えなくなった時、すべてはもといた朝の川原に戻っていた。横に、うららが 立っていた。うららは、身を切られそうな悲しい瞳をして横顔のままで、 「見た ? 」 二 = ロった。 「見た。」 と涙をぬぐいながら私は言った。 「感激した ? 」 うららは今度はこちらを向いて笑った。私の心にも安心が広がり、 「感激した。」 とほほえみ返した。光が射し、朝が来るその場所に、二人でしばらく立っていた。
187 鈴。間違いなく、それは等の鈴の音だった。ちりちり、とかすかな音を立てて誰もい ないその空間に鈴は鳴った。私は目を閉じて風の中でその音を確かめた。そして、目を 開けて川向こうを見た時、この二カ月のいつよりも自分は気が狂ったのだと感じた。叫 び出すのをやっとのことでこらえた。 守一かい」 川向こう、夢や狂気でないのなら、こっちを向いて立っている人影は等だった。川を はさんでーーーなっかしさが胸にこみ上げ、その姿形のす。へてが心の中にある思い出の像 、【と焦点を合わせる。 彼は青い夜明けのかすみの中で、こちらを見ていた。私が無茶をした時にいつもする、 心配そうな瞳をしていた。ポケットに手を人れて、まっすぐ見ていた。私はその腕の中 おも 」で過ごした年月を近く遠く、想。た。私たちはただ見つめ合。た。二人をへだてるあま りにも激しい流れを、あまりにも遠い距離を、薄れゆく月だけが見ていた。私の髪と、 なっかしい等のシャツのえりが川風で夢のようにばんやりとなびいた。 等、私と話したい ? 私は等と話がしたい。そばに行って、抱き合って再会を喜び合 たい。でも、でもーー涙があふれたーー運命はもう、私とあなたを、こんなにはっき りと川の向こうとこっちに分けてしまって、私にはなすす。へがない。涙をこばしながら、 私には見ていることしかできない。等もまた、悲しそうに私を見つめる。時間が止まれ
180 い ? と口を動かした。私はうなずいた。彼女は庭を抜けて窓の下まで来 は人っても、 た。私は窓を開けた。どきどきしていた。 「あー寒い。」 と彼女は言った。外からのびんやりした風が人ってきて、熱つぼいほほを冷やした。 透きとおった空気がおいしかった。 「どうしたのー ? 」 うれ 私はたずねた。きっと私は小さい子のように嬉しそうに笑ったと思う。 「朝帰りの散歩。あなたは風邪が悪そうね。ビタミン 0 のあめをあげる。」 ポケットからキャンディを出して私に渡しながら、とても透明に彼女はほほえんだ。 「いつもすいません。」 私はかすれた声で言った。 「熱がたくさんありそう。つらいね。」 彼女は言った。 「うん。今朝は走ることもできやしない。」 私は言った。なんだか私は泣きたかった。 「風邪はね。」うららは少しまっげをふせて淡々と言った。「今がいちばんつらいんだよ。 死ぬよりつらいかもね。でも、これ以上のつらさは多分ないんだよ。その人の限界は変