たのですし、今後も変わっていくでしよう。 私はこんな性格なのだと固定的に考えたり、自分自身に原因を持ってくるような考え方をと らないのです。性格はその関係のなかでつくられたし、今後もっくられていくのだと考えます。 そして、それはまた変えることができるわけです。仮に、祖父がいて母がいて自分がいるとい うとき、その三つの点の問題ではなく、三つの点のつながりが問題なのです。 ここまで育ったのは親のおかげだし、その親のせいにしてはいけないのではないか、と常識 では言うわけですが、私は「もういいですよ、親のせいにしてもいいんですよ」と言います。 つまり、そう思う人はさんざん自分が原因ではないかと苦しんできました。もう十分苦しんだ の 。全部親のせいにしていいのです。 のですから、そんな荷物はこのへんで捨ててしまえばいい る さ私たちの世代になっても親の問題というのは深く私たちを捕らえています。たとえば、して 目 駐みたいことがあるのに、いまの人生を送っているのはひょっとして親に言われた言葉がいまだ いに残っていて、それに自分が縛られているのではないかとか、お前はこうでなくてはいけない よと言われた言葉に、ずっと縛られていたり、といった具合にです。 今 ぜ いくつになっても親の拘束はあるわけですが、そういうものから早く解き放たれていただき 章ナし ものでもないし、安全でもないし、もともと家族とは人為 第家族というものは、そんなにいい
アルコール問題で、非常に傷ついた人です。一九八〇年代に入ってから『私は親のようになら ない』という本を書きました。この本は日本でも翻訳されています。 『私は親のようにならない』というタイトルは、実にびったりとしたネ ーミングです。飲んで いるお父さんを見て、その側で悲嘆にくれながらも決して別れようとしないお母さんを見て、 私はあんな人生を送りたくない、と思います。誰でも、不幸な親を見れば、私は親のようには なりたくないと思います。不幸な家庭に育った人ほどそうです。それがそのまま題名になって います。 もう少し言うと、私は親のようになりたくない、でもなってしまった、という人が多いので す。そのことも、この本には書いてあります。専門用語で「世代連鎖」と言います。『私は親 のようにならない』という本を読むと、アルコール依存症の家族で育って大人になった人の約 半数は、同じようにアルコール依存症になると記されています。残りの半数は、自分はならな くても、アルコール依存症の人と結婚してしまいます。つまり、本人か配偶者がアルコール依 存症であるのが、八割がたを占めてしまうというのです。非常に希望のない話ですが、それが 『私は親のようにならない』という本の骨子です。 さらにを三つのタイプに分けています。前著では①責任を負う子ども、②なだめる子ど も ( 調整役 ) 、③順応する子どもと説明しました ( 詳しいことは一一八頁でも述べますが、私
て代理の満足を得ていたかもしれません。とにかくそのようにして女性たちは、戦後五〇年、 「共依存」という生き延び方で、家族を維持してきたのです。戦後の家族は、女性たちの共依 存パワーによって維持されてきたのです。その女たちが「私の満足」「私の欲求」に忠実に生 きたとき、家族は大きく変動するでしよう。離婚する夫婦が激増するかもしれません。現に今、 中高年の離婚が増えつつあります。そうなったとき、その変化は必ず男性に及ぶでしよう。 中年世代の女性は十年前に比べると格段に美しくなりました。いささかの中年太りには目を そんしよく つむるとして、服装やメイク・アップのセンスは若い女性に遜色がないくらいです。母娘の二 人づれで買物をしているのを見かけると、まるで友人か姉妹のようです。 それに比べて通勤電車の中で見かける中年男性の姿は、若い子に言わせると「キタナイ」。 他人に、女性に、自分の姿がどう映っているのかを、もっと意識してもらいたいものです。 男性が身だしなみを気をつけることや、おしゃれをすることは恥ずかしいことではなく楽し 族 家 いことです。雄のくじゃくが羽根を広げて雌を惹きつけるように、中年男性もその人生の経験 倉を渋さで包みこむ重厚な魅力を、もっとア。ヒールしてもらいたいものです。欧米の映画を観た し 裂女性たちに、「だって日本のおじさんで、素敵な人なんていないんだもん : : : 」などと言わせ ないように。 章 七 第 215
S A N G O K A N 「概念」の第一人者が現代の最新重要 「アダルト・チルドレン」完全理解信田さよ子語をやさしく解若者と中年世代に深 く関わる「親の影響」が明快に解けていく。 これは、生きることに疲れたり自信をなす アダルト・チルドレン 西山明くしたとき、今までの自分を振り返り、人 球 生を肯定するための処方とキーワード。 地 アダルト・チルドレン 「 <0 」と気づくことで、怒りは解放へ、恐 西山明れは自由へ、同情は成長へ、不安は再生 O からの手紙 へと進みだす。実例で証明する第二作。 五 更年期は三、四十代のときの夫婦関係で ある夫婦のかたち 大・岡曲 ( 子決まる。女も男も共感して自分を生きる、 新しい復活の方法と更年期治療の報告。 大 の 「朝日新聞」の連載で反響を呼んだ「痴呆 っ 夫婦の親 博雄の父と暮らす」を書下し刊行。「介護」と 五 男の理屈は夫婦の本音をあぶり出した。 羊 精神科の臨床にたずさわる著者が、ひ大 とはいくつになろうとも自分で自分を の 人は変われる 高橋和巳 っ 変えていけると、実証的に読ませ説く 私には「会いたいもう一人の自分」がいる。 楽しく生きる 一局橋和巳絶望と孤独だけが、新しい「私」を創れる。 偉大な真理はいつも普通の中にこそ宿る。
第二章なぜ今、「 AC 」が注目されるのか ? 全裸でいて、りんごを食べてから羞恥心が芽生えたでしよう。禁断の木の実を食べてしまった。 もしくは奴隷だけの部屋にいた奴隷が、これが全世界だと思っていたのが、壁にぼっと穴が 開いて、そこからその壁の向こうに青空と大平原が広がっているのを知ってしまったようなも のです。牢獄で生まれ育った人は、牢獄が世界だと思っているわけです。 <0 は親が作った牢 獄の中にいるようなものです。それカ , : 。、ツと開けると、「牢獄にいた二〇年はなんだったの ? 」 と思います。それは二〇年間の喪失の自覚です。でもそう思ったときには、もう牢獄を出てし まっているのです。
一般的に、家族像として多くの人が持っているものは、第一に「安全基地」という認識では ないでしようか。そこに帰れば安心でき、外での世界で受けた心の傷が癒され、明日の勇気が 湧いてくるところ、という像です。男と女であればセックスもでき、子どもであれば親の愛情 をもらえるという、 人間関係の基本になる「安全基地」。これが一般的な家族イメージだと思 います。ホッと安らげる場所で、外の世界で満たされないものをそこでは満たしてもらえると いうようなもの。一般的な家族像はこのように非常にいいイメージ、プラスイメージです。理 想としての家族とはそういうものだと思います。 そういう意味では、家族は「治外法権」という言い方もできるかもしれません。いや、正確 に言えば、家族は治外法権だったはずなのです。それが今は、現代社会は「同心円社会」に なってしまい、家庭も同心円の一つに組み込まれてしまったのです。 どういうことかというと、企業、地域社会、学校、さらには家庭まで、目指すべき方向、目 「家族」が空回りするとき
自分の生きているという実感を得るために、酒を飲む。酒で自分が生きるというのがアル コール依存症。 ギャンブルしている時が生きている時だというのはギャンブル依存症。 人のために役立っているとか、人を世話しているとか、人の面倒を見ているとか、子どもの 人生に尽くしているということでしか自分が生きている実感が持てない人のことを「共依存」 といいます。「共依存ーというのは、わかりやすく言うと「愛情という名を借りて相手を支配 するーということです。母親が過剰なくらい世話をすることで子どもを支配したり、妻が同じ ように夫を支配するという、一見美しい人間関係と思われてきたものを指しています。 ここで展開する「共依存ー的なものというのは昔からありました。偉人・賢人といわれる人 たちのお母さんは、夫婦関係が芳しくない場合が多く、そのぶん息子に賭ける傾向が顕著だっ たようです。昔はそれがエネルギーになり得て、ある種、家族の屋台骨になるという利点があ 他者を利用するのが共依存
第七章炸裂していく家族 親は子を危機のときに守ります。 親が子どもを守れなくて、誰が守ってくれるのでしようか。 そのような親の「厳しさ、が「愛情」だと誤解されています。ただ親が自分たちを世間から 守りたいだけなのに、です。 私はほとんどカウンセリングで「愛情」という言葉を使いません。実感できない言葉は使え ないのです。そして「愛情」という一『〔葉を使ったとたん、コントロール・ドラマが始まってし まう危機感に襲われるからなのです。 197
実は、それが <0 という言葉の広まった背景なのでしよう。、 しわゆる仕事に嗜癖して家庭を 顧みない夫、こういう夫に賭けるのはむなしいばかりなので、せめて子どもに賭けましようと いうお母さんがいて、子どもへの過剰な期待となります。その末端で、息せき切って母親の期 待に応えるべく自分にむち打って、走りつづけている子どもがいる、というのがおそらく現代 の <0 です。そのようにして世間的にレベルが高いといわれる大学を卒業した人が、いまや二 十代、三十代にかなりいるでしよう。コントロール ・ドラマを生き延びた人たちに O という 言葉が、「これだ ! 」と迎えられたのです。
< O か否かは自分で決める アメリカで起こった < O だれにもある愛着関係 コントロール・ドラマ <0 は時代の先駆け 第三章それは、家族の誰かを利用する病い 他者を利用するのが共依存 アルコール依存の女性は、いとおしい 「怒」と「哀」のない世界 好きでやっているのに、「我慢」と言う人 第四章「心の外傷」では気味悪い <O 概念の中の「トラウマ」考ーー俗説「トラウマ」は要注意ー トラウマ解釈 トラウマの対極にある「インナーベアレンツ」 カウンセリングの時代