高濃度 - みる会図書館


検索対象: 原発の闇を暴く
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1. 原発の闇を暴く

明石こんな非常事態になっているのに、 一 5 四号機までは廃炉を決めたけれど、五号機、 六号機にはまだ未練があるようなことを東電の勝俣直久会長が言っていましたね。 広瀬役員報酬を半額にして責任をとるという企業だから、国民も呆れている。報酬があ ること自体信じられない。四月二五日の「読売新聞」は、東電の取締役の平均報酬は、約 三七〇〇万円と報じている。 しかし、海に高濃度汚染水が流出していることが判明してから、彼らが何をやった ? おむつの吸水ポリマーとおがくずに新聞紙だ。まるで子供だ。そんな恥を世界にさらして、 東電の技術的な能力は完璧に信用を失ってる。水ガラスでようやく流出は止まったけれど、 今度は出た水を持って行く場所がない。 もう一つ私が懸念しているのは、地震と大津波のせいで、地下に水路や亀裂ができてい るということです。しかも東電は、その地下の水路を知ることさえできない。だから地下 水にも放射能が出てきた。そうなれば、排水口を固めても、見えない水路から海に流れ出 る。そして、その事実を東電がっかんでいながら、隠している。

2. 原発の闇を暴く

しオした。 その一方で東電は、「漏れ続けている高濃度のものに比べれば、大変、低濃度の汚染水 だ」と言いながら、さらに何万トンも海に放出している。こちらは事故で漏れ出したので はありません。「高濃度の汚染水置き場をつくるため」と言い訳しながら意図的に流した わけです。こんなことをしていたら、海外から「海洋汚染テロ国家」と非難を浴びてもし ようがない。私が確認した敦賀原発周辺での " 異変。とは比較にならないほどの非常事態 が、近い将来、福島周辺で発生するのは避けられないと思います。 それに加え、今もなおダダ漏れ状態の汚染水をどうするのかといえば、完全にお手上げ 状態です。注水を停止すれば、核燃料の溶融がさらに進んでしまう。冷やせば汚染水がダ ダ漏れのジレンマ。広瀬さんは、事故発生後の対応をどう見ているのですか。 * 4 ルポルタージュ研究所のホームページ (http://www ・ rupoken.jp/) で電子書籍をダウンロード 可能。

3. 原発の闇を暴く

な数値を、今日まで無能の限りをつくしてきた東電や保安院が、正しく掌握してきたとは しやくねっ 考えられない。核分裂を制御する制御棒がまともな形で残っているはずがない。灼熱の とのような形で落下しているかという最も重要なことさえ、中をのそ 燃料棒が、どこに、。 けないから誰にも分っていない。 だから私は現在でも、日本のすべての気休め報道を疑って、いっ何が起こっても不思議 ではないと思っています。問題なのは、原子炉というのは、とにかく膨大な配管や配線の ダクト、弁が密集している複雑な設計であるということです。その配管のうち、原子炉に 直結している箇所が破損していることを、田中三彦さんは早い時期から推測していた。で も、どこが破損しているか、誰にも分らないわけです。しかも現場は高濃度の放射線が放る あ 出されているから、作業員が近づけない。被曝による死を覚悟で近づけたとしても、入り 組んだダクトのどこが破損して、放射能が流出しているかを見つけることは不可能です。 今 章 破損箇所が見つからなければ、注水した水がダダ漏れ状態になって、高濃度の汚染水が永 遠に出続ける。穴の開いたバケツにジャプジャプ水をつぎ込んで汚染水を膨大につくり出第 している状態です。

4. 原発の闇を暴く

確認されたことを知ると「高濃度の汚染水は、ウェットべントで大気中に出た放射性物質 が水し、 こ溶け込んだ可能性がある」と、デタラメばかりしゃべっていた。その直後ですよ。 燃料棒の溶融と、それによる高濃度汚染水が判明したのは。 岡本孝司 ( 東京大学大学院教授。東大工学部原子力工学科卒業 ) も頻繁に Z に出ていま したが、「今回、原発は十分に働いた。というのは自動停止したからだ。それ以後の不具 合は想定外の津波のせいだから仕方がない」と、よくまあ、あれだけ無責任なことを言っ とうなったか。二ヶ月後の五月一二日になって たものだ。岡本たちの楽観論は、結果、、、 「一号機の原子炉の水位計が正しい値を示していなかった」、つまり水がほとんどないと東 電が発表して、日本中が大騒ぎしている。当たり前だ。私は前の章でも述べたように「計 つでも次の末期的な大爆発は起こり得る」と言っ 器類の数字はほとんど信用できない。い てきたし、たった今もそう確信している。ところが、こういう岡本のような素人の大学教 授が原子力工学の専門家だと称して、エンジニアであればすぐに気づく常識さえ持たずに、 偉そうに解説している。自分の説明がことごとく間違っていたのに、よくテレビに出て恥 ずかしくないものだ。

5. 原発の闇を暴く

まいました。この回収は不可能です。 一九九四年のことですが、僕は日本原子力発電・敦賀原発の半径一〇キロ圏内に暮らす しゅ 住民たちの健康調査をおこない、その結果、原発の対岸地域で悪性リンバ腫というガンが うわさ 集中発生していた事実を突き止めたことがあります。地元で噂として流れていた「他地域 よりガンが多い」という話を、実際に検証してみたのです。ただ、敦賀原発では今回の福 島事故のような、多量の放射能を環境中に撒き散らす大事故が起こっていたわけではない。 「通常運転」であったにもかかわらず、周辺住民の健康に″異変〃が生じたわけです。こ の話は「週刊プレイボーイ」で連載し、『敦賀湾原発銀座「悪性リンパ腫冖多発地帯の恐 怖』 ( 技術と人間 ) という本にまとめています。 福島第一原発から環境中に漏れ出した放射能のうち、海に漏れ出したもので最悪なのは、 放射性ョウ素の濃度限度 ( 排出基準 ) の何と一億倍にも達する超高レベル放射能汚染水な のだと言います。いきなり「一億倍だ」などと言われても、私たち一般人にはとてもピン とくるものではありません。つまり想像を絶する、甚だしい法律違反が進行中なのです。 おかげで取水口付近の海は、濃度限度の七五〇万倍という放射性ョウ素で汚染されてしま 45 第一章今ここにある危機

6. 原発の闇を暴く

が止まらなかった。 こうした真剣な科学者たちに対抗して、悪質な自称専門家が、現在は「クリアランス分 科会」という組織をつくって、今度の福島原発事故の汚染水処理にも関係して、放射能汚 染水を濃縮してドラム缶詰めする処理などを考えている。クリアランスというのは、とん でもなく危険な放射能を「これ以下は安全」とスソ切りをして流してしまうことです。原 子力安全専門部会と連絡を取り合い、次々つながっていって、そのすべての元締めが原子 力安全委員会。そういう構造になっています。 明石早い話、この「クリアランス制度」を導入することによって、放射能ゴミの一部を 一般ゴミとして捨ててしまうか、資源として再利用する形で「放射能ゴミ」でないことに してしまおうと彼らは画策しているわけですね。それこそ、このままだとリサイクルに回 されて見た目が変った「元・放射能ゴミ」が、気がっかないうちにドシドシ一般家庭の中 にまで入り込んでくる恐れがあります。「クリアランス制度」など導入されなければ、こ んなことはそもそもありえない話だったのです。なので僕もこの「クリアランス制度」は、 はら かなり危険を孕んでいると捉えています。ともかく「原子力シンジケート」の繁栄のため 178

7. 原発の闇を暴く

あとがきにかえて 明石昇二郎 情報は今も小出しにしかされず、さんざん被曝させられた後に聞いても手遅れという情 報も多い。住民避難のために開発された緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム 「」のデータが今頃になって出てくることなどは、その典型だろう。それで も、私たち日本国民は「フクシマ原発震災」の現実を今や肌感覚で理解している。 この本のもとになっている広瀬さんと私の対談は、原発震災発生から二〇日後の二〇一 一年四月一日より始まった。このときすでに二人が予測していたとおり、状況は悪化の一 途をたどり、福島の大地と海は高濃度の放射能で汚染され、このあとがきを書いている時 点でもなお、収束のメドすら立っていない。 これだけ長期にわたって事故が続いているの だから、— < はこの際、フクシマのために、チェルノブイリ事故を上回る「レベル しと田 5 , つ。 8 」を新設すればい、 三月、テレビでは政治家が「直ちに健康に影響が出るものではない」と語り、原子力の 250

8. 原発の闇を暴く

「ひるおび ! し 「 ( 関口宏が高濃度の放射能が漏れていることを心配すると ) それは問題ありません。なぜな ら原発周辺に人はいないし、三〇キロ圏内は屋内退避になっているから、人への害はあ りません」 ( 四月三日、「サンデーモーニング」 ) ■松本義久 ( 東京工業大学准教授 ) 「 ( 乳児にも三〇〇べクレル以上の水を飲ませてもいいのですか ? と聞かれて ) 全然大丈夫で す ! 」 ( 三月二一日、テレビ朝日「やじうまテレビ ! 」。同日、厚生労働省は「一〇〇ペクレルを 超えるものは乳児に飲ませないで」と警告 ) 「 ( 現場に向かう東京消防庁隊員へ向かって ) 二五〇ミリシーベルトならば全く問題ありま せん」「被曝でダメになっても精子はまた新しく再生されます」「遺伝子の神様があなた 達の精子を守ってくれてます」 ( 三月三〇日、テレビ朝日「ワイド ! スクランプル」 ) ならばやしただし ■奈良林直 ( 北海道大学大学院工学研究科教授。原子炉工学 ) 「食塩の致死量は二〇〇グラム、プルトニウムは三二グラムなんですよ。それくらいの 毒性なんです」 ( 四月三日、テレビ朝日「サンデースクランプル」 ) 162

9. 原発の闇を暴く

ら一〇〇年かかる可能性がある」という専門家の分析が載っています。原子炉が安定して おらず、さらに放射性物質が大量に放出される可能性が残っているので、そういう見方に なるそうです。またこの記事では「旧ソ連・チェルノブイリ原発では事故から約八〇年後 に当たる二〇六五年まで除染がおこなわれる予定」と書かれている。そんな長い時間を想 像できますか。福島で被曝した子供たちが大人になり、老人になってもなお放射能災害は 続くのですよ。現に、今年はチェルノブイリ原発事故から二五年だというのに、深刻な被 害が続いている。 東電は「六 5 九ヶ月で収束の見通しを立てる」という工程表を発表しましたが、今まで の泥縄式のやり方を見ていると、とてもスケジュール通りに収束できるとは思えない。能 まだらめ 天気な発言を繰り返していた班目春樹・原子力安全委員長は、高濃度の汚染水流出につい て記者から質問されて「どんな形で処理できるか知識を持ち合わせていない。保安院で指 導してまし、 。し」と言ってサジを投げたのですよ。今の日本に「無能」であることを罰する 法律がないのが悔しいです。

10. 原発の闇を暴く

安全デマを振りまいた御用学者たち 明石福島の原発が津波で全電源喪失してから、次々に起こる悪夢のような映像を人々は かたず テレビにかじりついて固唾を呑んで見てきたわけです。そこに、ふだん見慣れない原子力 関係の人間が続々と登場し始めました。「原子力安全・保安院」、「原子力安全委員会」、 「原子力委員会」、さらには連日のようにテレビに出て現状を解説する原子力工学の専門家 と称する者たち。一般の人たちも、最初はいったいどうなるのだろうと、彼らの会見や解 説に一生懸命耳を傾けていたと思います。 しかし、事態が深刻になるにつれて、「建屋に溜まった水素が爆発しただけで、原子炉 はすでに停止しているから大丈夫です。冷静な対応を」、「燃料は冷やされているから大丈 夫」といった、安全をことさら強調した解説は、 , 彼らにとって都合のいい″希望的観測〃 にすぎなかったことが一般市民にも露呈してしまった。炉心の燃料が溶け出し、あんな高 濃度の汚染水が海にジャプジャプ流れ出したら、誰だって「大丈夫であるわけがない。今 までの説明はいったい何だったのか ? 」と不審に思いますよ。