また、彼らは数年、一〇年、一生という長いスパンで時間をとらえる人が多いようです。 長期の時間の中で、眼前の短い時間を有効に使っているということになるのでしようか。 そういえば、何度か目撃しましたが、宮城大学の初代学長の野田先生はこれはと思う人物 「君のライフプランはどうなっているか」 という問いかけを発しています。一緒に仕事をしようと思う人物に、この質問は欠かせな いのでしよう。私も初対面の際、そんな質問をされました。 これまでは、ビジネスコミュニケーションを高めるためのスキルとして、図解の技術につ いて述べてきましたが、ここからはビジネスのみならず、人生という広大な時間の使い方と なしてのタイムマネジメントについて、私のビジネスマン時代の経験を踏まえて論じてみたい 人と考えています。 仕 時 朝が早い人は情報力に優れている 章 仕事ができる人の行動を観察すると、朝早くから出勤している人が多いことに気がっきま 9 第 す。第 1 章で述べましたが、私が目標にした課長もそうでした。
また、仕込みのタイミングの決定や、それに伴う関係者との接触もごく自然に行われるよ うになり、結果として戦略的な行動がとれるようになるでしよう。 どのような組織であれ、スケジュール表をつくる人は、ごく自然に、その組織のリーダー シップをとるようになります。 孔子の言葉を一・六倍する 私はかねてから「ライフコンシャス」という概念を提唱しています。健康に関心を持っこ とをボディコンシャスと言いますが、「生命」「人生」「生活」という三つの意味を持つ「ラ イフ」を意識の中心に置くことで、より充実した人生を歩めると考えるのです。 この点では、一般に男性よりも女性のほうがライフコンシャスな生き方をし、ライフデザ インについて意識が高いように思います。それは女性の場合、結婚や出産など、人生のスケ ジュールを自分で立て直さなくてはならない必然性が、男性よりも高いからでしよう。 ライフデザインを行う上では、人生をいくつかのステージに分け、今自分がどのステージ にいるかを意識することが大切です。孔子は『論語』の中で、「三〇にして立つ。四〇にし て惑わず、五〇にして天命を知る : : : 」と一〇歳刻みで人生について語っています。この有 168
る 今読み返すと我ながら少々気恥ずかしく思いますが、学生にそこそこ評判を得てうれしか 驕った時の感情が改めて甦ってきますね。まあ、それだけ初講義の前は不安だったということ です。 才 凡 それでは、私の大学での主要テーマであり、私のビジネスマン人生の集大成であり、今も 章 生涯のテーマでもある図解コミュニケーションについて、いよいよ次の章で述べてみたいと 第 思います。 立ち向かう人生に不安が多いということだった。自分の発見、確認という大きなテーマがの しかかっている。この授業はそういうものにも答えを発見する後押しをしてあげるものにし たいと思う。自分の大学時代を思い出しながら、けなげに生きようとする学生たちを人生の 伴走者として見守っていきたい。 教育という仕事は、素晴らしい仕事だと感動した。これからの私の人生も大きく変化する 予感がする。
れるようになり、人生は有限で、残りの時間を有効に使わなくてはならないことが意識され てきます。 八〇年に延びた人生を「定年から一一〇年もある」と形容する人もいますが、私は寿命が延 びたなら、その分仕事のステージも増えるのだと理解しています。定年後の人生は、人生の 新たなステージ、と考えればいいのではないでしようか。 会社の評価といっても、所詮は他人が勝手にあなたに付けた点数です。大切なのは、他人 がどう見るかより、自分がどう見るかではないでしようか。禾 ムはよく「顧客満足より、自己 満足のほうが大切」と言っています。日頃からステージごとに自分を評価する習慣を付けて いれば、会社や世間の評価が変わった場合にも、簡単に自信を失わずに済むはずです。 ビジネス自分史 そのためにも、まず「自分史」を作成し、「自分像」をつかむことをお勧めします。 三〇歳の時、私は初めて「ビジネス自分史」というべきものを作成しました。これまでの ビジネスマンとしてのキャリアを紙の上に視覚的にまとめてみるーー自分でやってみて大変 有益だったという確信があるので、ぜひみなさんにも参考にしていただきたいと思います。 172
名なフレーズを、自分の成長や成熟の目安にして考える人は実に多いと思います。 しかし、われわれ現代を生きる一般人から見ると、ちょっと早すぎるかな、という気がし ます。日本のビジネスマンの場合、三〇歳ではまだ仕事も十分に身についてはおらず、四〇 歳では惑いの最中、というのが一般的な姿でしよう。だから、これは人生五〇年時代の話と ・六倍にしてちょうどよいのではないかと思います 考え、人生八〇年時代となった今は、一 つまり、四八で立ち、六四で惑わず、八〇にして天命を知る。その間、だいたい三二くら いから四八までは「青年期」、四八から六四までが「壮年期」、以降が「高年期」ということ になります。私の場合、青年期に会社勤めをし、壮年期に変わるところで大学教授に転身し たことになりますね。 「顧客満足」より、「自己満足」 もう一つ、ライフデザインの考え方として、人生八〇年、これを一周四〇年の「人生時 計」に置き換えることもできます ( 齠ページ図 ) 。つまり、一一一時に生まれ、針がひと回り して一一一時に戻るのが四〇歳の時。不思議なもので、ひと回りすると時の流れが速く感じら ( Ⅲページ図 ) 。 170
第 3 章時間仕事人になる 0 1 0 20 30 40 50 60 70 80 歳歳歳歳歳歳歳歳歳 人生団年時代 耳順 知命 不惑 而立 過去 25.6 人生年時代 高年期 壮年期 青年期 現在 少年期 171
かっ 「ロンドン空港労務事情」が、その後の人生の大きな転機になりました。くわしい内容は割 愛しますが、「なぜ今までロンドン空港支店では現地従業員の組合が結成されなかったか」 という動機から入って、日英の労働組合の比較、日本的労務管理の普遍性について自分なり に考えてみた、という内容です。 このときにも、日本での失敗経験がつねに頭にありました。つまり「データの裏づけのな い空理空論を吐いてはいけない」ということ。そこで、データ調べには十分に時間をかけま した。夜中に英国人の社員の人事記録を引っ張り出し、読みにくい英語を我慢しながら読む、 なんてことも。彼らの職歴や学歴、学校時代の成績から、入社の目的、退職の理由まで、役 に立ちそうなものからそうでないものまで、とにかく調べられるだけ調べてみたのです。 る また、疑問点があれば、英国人のマネジャーに直接インタビューを行いました。取材の過 程で見えてきたのは、日本の企業は海外での経験が単なる個人的な体験、教訓にとどまって いる場合が多く、組織としてその教訓を蓄積する、という仕組みになっていないのではない 才 凡 かということ。ただ、これが本当に正しいかどうかは、もちろんデータで押さえる必要があ 1 ります。 第 データ内容と、自分の抱いている実感と照らし合わせる、この交互の繰り返しで次第にレ
尊敬する上司の言動をすべて真似する 社内でキャリアを積んでいくなかで、いっ誰と出会うか これがビジネスマン人生に決 定的な影響を与えます。私の場合についていうと、三〇歳のときに出会った一〇歳年上の上 司課長、彼の影響で仕事に対する取り組み方が一変してしまいました。 日々下す判断の素晴らしさ、人から敬愛される人格、困難に立ち向かう勇気、仕事のレベ ルの高さ、ユーモアのセンス・ 。同じ仕事でも、高いレベルの人が取り組むと、まったく 次元の違う世界が広がることを知り、驚くとともに仕事というものの奥の深さを実感したも のです。 当時の私は、スチュワーデスの人事・労務・予算などを担当する「客室本部」という部署 で、労務の仕事に当たっていました。この部署は、上は常務クラスの本部長から順に、部長、 課長と続き、私は一介の担当者に過ぎませんでしたが、大小さまざまな難しい問題に、会 社としての判断を日々下すという経験をさせられました。 八〇年代前半の日本航空は、労組が一一つに分かれ、ストライキが頻発する問題の多い会社 でした。考え方の違う二つの労組を相手にしながら、合理化やサービス向上を実現していく のが労務担当組織の役割です。会社の施策の実現、二つの組合の異なった要求や主張、定期
人生計画表 「ビジネス自分史」は、過去と現在についてのことですが、これからお話しする「人生計画 表」は自分の未来についてのことになります。 「ビジネス自分史」を書き始めた三〇歳ごろから、私は自分のライフデザインというものを 強く意識するようになりました。 私はまず、八〇歳までの人生計画表を作りました ( 5 ページ ) 。一〇年後に 0 の成績が何点になっているとか、三〇代後半で社長になるとか、四〇歳までに本を五冊書 くとか、公私にわたる、さまざまな目標をそこに記しました。 将来の目標が決まると、そのため自分が何をなすべきかも見えてきます。私は三〇歳の時 なからおよそ一一〇年間、年の初めに一年間の目標を立て、年の半ばにそれを見直し、年末にど 人の程度その年の目標を達成できたかを検証することを続けてきました。 目標はすべて達成する必要はありません。むしろ計画通りにいかないのが普通でしよう。 時 「何が何でも計画を達成しなくては」と思いこむと挫折します。達成できなくても自分を責 章 めずに、適宜修正して新たな目標を立てる。計画は修正するためにある、と言ってもいいく 第 らいです。大切なのは「目標Ⅱ志」を立てること、そして立てた目標を、手帳に書くとか、 1 8 1
第 2 章図解仕事人への道 旅に関するキーワード 旅行 リゾート 余暇の 変化 人生 80 年 時代 豊かさ とは何か レジャー 産業 自由時間 余暇市場仕事 家族スポーツ学習 の増大 今度はこれらのキーワードを、互いに関連 のあるものどうしまとめて、プロック分けし ていきます。もちろん、同類のものばかりで なく、相反する要素を持つものどうしであっ ても、同じプロックに括ります。 次に例を挙げてみましよう。 ・現代人のライフスタイル関連↓「人生八 〇年時代」「自由時間の増大」「余暇の変 ・旅行産業関連↓「レジャー産業」「リゾ ート」 ・個人の余暇関連↓「旅行」「スポーツ」 「学習」 ・統括的な概念↓「仕事」「余暇」「豊かさ 127