机の上に貼っておくとか、日常目につくところに置いて、意識し、心掛けることなのです。 日頃から目標を立てていると、自然とそれが達成される、という経験をします。日常のさ まざまなシチュエーションにおいて、無意識のうちに、立てた目標に沿った選択をとってい るからなのでしよう。それが長い目で見ると、目標の達成という結果となって表れてくるの です。生きるということは無数の選択の連続、志を立てることの意味は非常に大きいと知る べきでしよう。 184
切ることになったのですね。 翌日、私は野田先生に手紙を書きました。その内容は残念ながら残っていないのですが、 「士は己を知るもののために死す」という言葉を使って、感謝の念をお伝えしたことを思い 出します。 また、「運命の女神に後ろ髪はない」という諺も浮かびました。この諺は、通り過ぎた後 で運命の女神の髪を掴もうとしても、女神に後ろ髪はないので掴めない、運命の女神はその 場で掴まえなければならないという意味です。 この日から宮城大学開学までの三年間は、今までどおり仕事をこなしつつも、人生、仕事、 家族、幸福などについて、強く意識する日々となりました。毎日仕事で会う人たちの生き方、 る 考え方などに関心を寄せながら、自分の行く末をどこかで常に意識していましたね。 事そして私は久しぶりに日記を付け始めました。というのも、この三年間はもっともライフ コンシャス ( 人生に対する意識 ) の強い時間になったからです。また仕事や家族など、解決 凡 すべき大きな問題も着実に収束していかねばならないということで、緊張感のある時間を過 1 ごすことになりました。 第
また、仕込みのタイミングの決定や、それに伴う関係者との接触もごく自然に行われるよ うになり、結果として戦略的な行動がとれるようになるでしよう。 どのような組織であれ、スケジュール表をつくる人は、ごく自然に、その組織のリーダー シップをとるようになります。 孔子の言葉を一・六倍する 私はかねてから「ライフコンシャス」という概念を提唱しています。健康に関心を持っこ とをボディコンシャスと言いますが、「生命」「人生」「生活」という三つの意味を持つ「ラ イフ」を意識の中心に置くことで、より充実した人生を歩めると考えるのです。 この点では、一般に男性よりも女性のほうがライフコンシャスな生き方をし、ライフデザ インについて意識が高いように思います。それは女性の場合、結婚や出産など、人生のスケ ジュールを自分で立て直さなくてはならない必然性が、男性よりも高いからでしよう。 ライフデザインを行う上では、人生をいくつかのステージに分け、今自分がどのステージ にいるかを意識することが大切です。孔子は『論語』の中で、「三〇にして立つ。四〇にし て惑わず、五〇にして天命を知る : : : 」と一〇歳刻みで人生について語っています。この有 168
はどちらが近いのか、予算権限を持っている人はどちらなのか・ つまり、全体の構造と個々の部分をつなぐ関係を理解することです。こちらは動的なダイ ナミックな理解とでも言えるでしようか。 実際の仕事の場面では、この二つの理解のうち、特に後者「関係」を意識した理解がポイ ントになります。 理解の深さにはキリがありません。すべての知識を得て、深い理解に到らなければいけな いという考え方もありますが、あるレベルの理解に達すればそれはそれでいいのです。 さらに時間をかけて、新しい関係を発見したり、関係の濃淡やニュアンスを把握する中か ら、深い理解の段階へと達することができるのです。 ずどく 図読のすすめ 本を読むとき、鉛筆やマーカーを片手に読む人が多いと思います。でもそこから先は人そ れぞれでしよう。 気になったところ、大事なポイントに印をつけたり線を引いたりしますが、読み終わると それつきり、というのはよくあるパターンです。 108
自分の仕事を図解する目的は、仕事における自己の「棚卸し」です。つまり、自分は何の ために仕事をしているのか、その意義や目的といったものを一度総点検することと認識して ください。 取引先を理解する 図解は自分の仕事のみならず、いろいろな方面に応用が利きます。 たとえば、新規につき合いを始めた取引先の会社のことをどうやって理解したらいいでし よ一つ、か 理解するということは、対象の構造と関係を理解することだと考えてみましよう。このよ のうに理解には二通りあります。 へ 人 一つは、社長が誰で、どういう部署に分かれているかなど、会社の中での意思決定の構造 事 仕を理解することです。これは、組織図を眺めればわかる類の理解です。静的な理解とでもい いましようか 章 もう一つは、ある事業部とある事業部との関係がどうなっているか、業績はどちらがいい 第 のか、部長どうしどちらが年次が上で、どちらが社内で力を持っているのか、社長との関係
及び、かっ深い影響を私自身に与えています。 また、自分のホームページをつくって感じたことがあります。毎日何回も自分の〃姿″を 見ることによって、自分を強く意識したり、変化させようという意識が湧いてくることに気 がついたのです。この感覚は、鏡に映る自分の姿をひんばんに眺めていることに通じます。 また、自分の頭の中や毎日の活動を客観的に捉えることができるため、どのように表現す れば他の人に伝わるか、分かってもらえるかを強く意識するようになりました。他人の目が だんだん自分にも備わってくるということでしようか。 また不思議なことに、閲覧する時の心理状態などで、気が付くボイントが変わってくるこ とが分かりました。そのためにも、何回もチェックすることは大切です。 世の中に自分をいかに表現するかを毎日意識するのですから、結果として表現がこなれて 人くることになるのです。 仕しかし、ネット上のさまざまなホームページを見るにつけ、情報のスタイルはあまり変化 図 していないという印象を持っています。従来どおりのメディアと同じ感覚で、文章中心のス 2 タイルが多用されていたり、逆に新しいメディアを意識し過ぎて、写真や動画などをふんだ 第 んに使っているスタイルをよく見かけます。 151
第 1 章凡才、仕事師になる けれども私の考えでは、これではまだ足らないと思います。二ランク上の意識を持っ くらいがちょうどよい。係長の時点で部長の意識を持ち、課長の時点で役員の意識を持 っということです。 高い視点から物事を考える習慣がつくと、会議などでの発言も、全体に目を配った意 見になり、説得力が生まれてきます。また、実際にそのポジションになったとき、余計 なプレッシャーを感じなくても済みます。
恩師に送った三通の手紙 野田先生の会食から一一年以上経って会社に退職の意向を伝え、大学教員としての審査が終 わった時、私は三人の先生に手紙を書きました。前述の梅棹忠天先生、河村幹夫先生、そし て野田一夫先生です。この手紙には当時の感慨や意識が鮮明に表れています。みなさんにビ ジネスマンが転身を図る時の気持ちを汲み取ってもらいたいと思い、次にご紹介します。 梅棹忠夫先生 拝啓秋の気配を感じる季節になってきました。先生にはますますご健勝のこととお慶び かずま 申し上げます。先日来、横浜での日本ローマ字会でのご講演や山根一眞さんとの対談講演な どでの、日本文明の弱点となってきつつある日本語の将来に関するご提案を噛みしめており ます。またその折わずかな時間ですが、お目にかかることができ、素晴らしい時間を過ごさ せていただきました。 さて一一年ほど前に「知的生産の技術」研究会の八木哲郎会長と一緒に民博に先生をお訪ね
員に向けて一〇〇問のアンケートを実施したのです。結果、七五パーセント以上の回収率を 達成、データの分析には、手作業ではカバーしきれなくなった分を、官庁に勤める友人に頼 んでコンピュータを利用してみました。これは当時としては、かなり珍しい分析方法だった といえます。 また、千歳市の市民には、私たちが直接インタビューを行い、二〇〇人以上の人たちの意 見を集めました。 この経験から、集団で行う知的生産に関して、一通りノウハウを体得できたような気がし ます。また、計画から始まり、一年かけて報告書をきちんと出す、というところまでやり遂 げることが、いかに大変かがよくわかりました。途中で投げ出そうとする人もいましたが、 その都度議論を重ね、何とか形にすることができました。 インタビューの過程で、〃自衛隊と航空の町″と言われている千歳市の市民の意識は、私 たち航空会社に勤務する社員とは、思いもかけないギャップがあること、自分で思っている よりも私たちは良い印象を持ってもらっていること、そして両者が接触する機会は意外に少 ないことなどを実感できました。「地域社会と企業」というテーマを職場に投げかけるきっ かけにもなったんですね。
ビジネスマンの場合、三つのバランスが崩れているケースが多いのが問題です。理解カ 8 、 企画カ 0 、伝達カ 2 というタイプの無ロな「情報収集特化型ビジネスマン」、理解カ 2 、企 しようせつ 画カ 0 、伝達カ 8 というタイプの「饒舌ビジネスマン」など、身の回りの上司や同僚の顔 を思い浮かべるのは難しいことではないはずです。昇進というものは、本来この三つのカの 大きさと、そのバランスのよさで決まるものであるべきだと思うのですがいかがでしようか。 ところで、初等中等教育の目的は、「読み、考え、書く、力をつけることです。考えてみ れば、これは仕事やビジネスの場合と同じ、つまり、「読む、は「理解力、だし、「考える」 は「企画力」だし、「書く」は「伝達力」と同じ意味です。 また学問の世界では、同じことを難しく言う " 業界常識があるようで、「認識、創造、 表現」という呼び方をしていますが、これも理解、企画、伝達と同じことだと思います。 要するに私たちは、小学校入学以来、人生を終えるまで一貫して、理解カ・企画カ・伝達 力というコミュニケーション能力を磨いているということになるのです。 「てにをは」殺人事件 では、私たちはどのような方法で、コミュニケーションを行っているでしようか。もちろ