懸賞論文の苦い経験 そのころ二〇代の半ばだった私は、一方で「何かをやってみたい、勉強したいと心の底 から思うようになっていました。そんな折、ちょうど会社で懸賞論文の募集がありました。 テーマは、会社の創立二五周年を記念しての、会社の将来に対する展望。いい機会だからと、 数か月間さまざまな本を読み、会社のとるべき方向を自分なりに模索し、大上段に振りかぶ った論文を書き上げて応募してみたのですが・ 「受かるかもしれない」という期待を持って入賞者発表の日を迎えたものの、私の論文は影 も形もありません。 その際、社内報に掲載されていた、社外の著名人による評の中に「地に足のついていない 論文があった。もっと身近なところを見つめなければならない」という言葉がありました。 それは私自身に向けての言葉のような気がしました。これはちょっと衝撃でしたね。私はこ の失敗から、いきなり会社全体や社会、日本、世界などを論じてもリアリティに乏しく、何 の意味もないということを身を以て知ったのです。 「物を言おうとしたら、自分の今いるところを研究する以外にない」ーーそれは眼前の仕事 に全力を投入しなければならない、 ということを意味していました。仕事の現場こそ、物事
員に向けて一〇〇問のアンケートを実施したのです。結果、七五パーセント以上の回収率を 達成、データの分析には、手作業ではカバーしきれなくなった分を、官庁に勤める友人に頼 んでコンピュータを利用してみました。これは当時としては、かなり珍しい分析方法だった といえます。 また、千歳市の市民には、私たちが直接インタビューを行い、二〇〇人以上の人たちの意 見を集めました。 この経験から、集団で行う知的生産に関して、一通りノウハウを体得できたような気がし ます。また、計画から始まり、一年かけて報告書をきちんと出す、というところまでやり遂 げることが、いかに大変かがよくわかりました。途中で投げ出そうとする人もいましたが、 その都度議論を重ね、何とか形にすることができました。 インタビューの過程で、〃自衛隊と航空の町″と言われている千歳市の市民の意識は、私 たち航空会社に勤務する社員とは、思いもかけないギャップがあること、自分で思っている よりも私たちは良い印象を持ってもらっていること、そして両者が接触する機会は意外に少 ないことなどを実感できました。「地域社会と企業」というテーマを職場に投げかけるきっ かけにもなったんですね。
まず、仕事で使ってきた手帳や、集めた名刺、年賀状、写真やアルバムなどを用意します。 次に、それを使って記憶を呼び覚ましながら、これまで自分が生きてきたキャリアを年表の 形にします。システム手帳などを利用すると便利でしよう。 単なる履歴書ではダメ。私は「キャリア年表」と呼んでいますが、「年号・年齢」「時代 / 節目」「社会や会社の動き」「仕事歴」「学習歴」「経験歴」「その他」といった項目を立て、 各年の主な出来事を記入していくのです ( ページ ) 。 「年号・年齢」は、年号と、その時点での自分の年齢。「時代 / 節目、は、自分がその時に 所属していた会社、部署、地位、勤務地など。「社会や会社の動き」は、その年のエボック となるような事件を何か一つ、そして企業に勤めていたなら、「〇〇社 x x 課長時代」とい った形で年代を区分します。 「仕事歴」には、職業や職歴ではなく、その時々に行った具体的な仕事の内容を記します。 「学習歴」は、主に勤務時間外に学んだ経験です。英会話学校に通ったとか、社内外の研究 会や勉強会、各種セミナーから料理学校まで、自分の学習体験を記します。 「経験歴」は、海外旅行、組合活動、社外の勉強会やクラブ、ボランティア活動など。「そ の他ーには、結婚や出産、子供の進学、父親の退職や親族の死去など、個人的に大きな影響 174
第 3 章時間仕事人になる キャリアレコード 社会や会社の動き 年号 177 その他 経験歴 学習歴 仕事歴 年時代 時代年齢 歳 出来事、出会い、きっかけ 成
もの ようになります。それはさまざまな予定同士の関係が立体的に把握できるということです。 会議のセットや打ち合わせ、上司への情報のインブット、部下への指示なども効率的・効 果的に行うことができます。自分がこうありたい、と思うような方向へ自然に流れていくの が実感できるでしよう。 そして、考え方のスケールが次第に大きくなってくることに自分で気がつくようになりま す。会社や社会全体の中で、自分や自分の部署の課題を捉えることができるようになる。す ると毎日の発言のレベルが次第に高くなってきて、結果的に仕事のレベルが上がってきます。 それは現時点での関係の把握にとどまらず、時間軸をも視野に置いた関係把握力向上の賜 物です。このスケジュール表を常にながめることによって、仕事の仕込みをいっ頃からはじ めたらよいかなど、早め早めの手当てができるようになります。それが精神的な余裕になっ て現れてくるでしよう。 スケジュールを立てることで、優先順位の切り分けを意識して行っていけば、複数の予定 同士の葛藤はずいぶんと減ることになるでしよう。 たま 166
保証されなくてはならない。教科書の採択は密室にこもるのではなく、公開の場で広く国民 の討議に委ねられるべきである。採択権者がその声を静かに耳にし、判断を下すことは、採 択の現場を混乱させるどころか、民主社会の要件である公開の精神に立脚した、独占排除の 公正の感覚をより一層助長するものであるとわれわれは信じている。 教科書の市販については、著者側に次のような主張があることが、近刊の著書で明らかに なっています。 教科書の採択は、教育委員に委ねられていますが、建て前に終わっていることを著者側が 次のように唱えています。 道 の へ 人見本本一万部と定めた現行の方式では、各採択区に五部しか回らない。展示場に二部、残 仕りは各調査員の手元に時間を限って委ねられるだけで、肝心の教育委員は展示場に行かない 図 限り見本本を手にとって見ることはできない。彼らが自宅でゆっくり研究し、調査するとい 2 うようなケースは、よほどの例外にほかならない。 第 既成七社の教科書会社は、こういう不自由な現実を利用している。教育委員に権限がない 121
また、「図解・私の仕事、は、職場を変わるごとに、仕事が変化するごとに、蓄積してい きましよう。個人の仕事史とは、その図解の集合体とも一一一一口えます。 経営者や管理職なら、自分の会社やセクション全員に「私の仕事」というテーマで図解を 描かせてみるのも面白い。仕事に関する理解のあまりの違いに、卒倒する人が出てくる恐れ まであります。「そうか、だから毎日トラブルの連続なのだなあ」と合点がいくはずです。 これこそ組織運営の出発点ですね。 仕事における図解の技術 では、仕事における図解の技術についてこれから述べてみたいと思います。 まず、第一に、「私」を図の真ん中に置く。 人次に、私と所属する部署との関係、他の部署との関係、他社との関係、社会との関係 : 仕という具合に、自分を軸に関係性の輪を広げながらたどっていきます。 図 最後に最終消費者を忘れずに入れます。メーカーだったら消費者、流通だったらお客様、 章 これを入れないと、どんなによく出来た図解 出版社だったら読者、役所だったら市民 : 第 がりようてんせい でも、画竜点睛を欠いてしまいます。最終消費者の要素なくしては、自分が誰のために仕 103
ような不当な批判が大部分だった。これに反論するのに細部の議論をもってすれば、全体を 知らない一般読者には水かけ論に見える危険がある。やはり叙述の全体をもって反論にかえ させていただくのが健全であり、この教科書にはそれに耐える内容が備わっているという自 信をわれわれは有している。 民主社会の言論においてはすべての反論権が認められてなくてはならない。われわれは日 本の市民社会に本書を静かに提供する。これがわれわれの反論であり、愚かな批判をむなし くする有効なカウンターパンチである。 各都道府県における教科書採択の進行中の教科書の出版は採択の現場に予断を与える、と いう奇妙な議論があるが、それなら採択の開始前からの一教科書へのマスコミの誹謗・中傷 は、採択の現場に予断を与えないというのであろうか。情報公開が広く求められている現代 社会で、公権力による閉ざされた採択は、既成の教科書出版社を保護し、不公正を新たに招 く可能性がある。教科書の市販は、開かれた自由競争に基づく公正な採択を促す公共の精神 に一致する。 われわれ以外の七社の教科書も、ぜひ市販本を出していただきたい。国民はそれらをも 「知る権利」がある。各社の教科書を簡単に書店で手にし、比較し、議論する自由は誰にも 120
3 ・テーマの意義を確認する この見取り図を眺めてみると、自分が形づくろうとしている企画が、社会の中でどういう 位置を占めるか、どういう意義があるかが、ひと目で分かります。 つまり、「学習」「スポーツ」「イベント」「旅行」といった要素を盛り上げ、個人の余暇の 増進を図ることは、「豊かな日本」を実現していくための大きな課題であること。特に余暇 の主役である旅行について新しい企画を考えることは、時代の要請と一致した意義のある仕 事であることが確認できます。 この意義づけを行うことで、自分の企画が、単なる机上の発想から、社会的な意義を持っ た企画へと昇華していきます。これが、やがて構想力へとつながっていくわけですね。 4 ・具体的な企画内容 ここからいよいよ具体的な企画づくりに入っていきます。 世の中にあまたある、新しい旅の企画と、自分の「新しい旅の企画」はどこがどう違うの か。それを明確にするためにも、「日常↓非日常」という概念をもってきます。いままで考 130
「選択講義でこれほど興味をそそられたのははじめて」「先生を信じてみます」「とても楽し い授業でした」「社会で活躍している人に実際に教わることができるのはうれしい」「目から うろこが落ちた」「こんなに分かりやすく印象に残るプリントは初めてです」「自分の本を出 せるようになりたい」「堅苦しい感じではなく、いい感じでした」「少し驚きました」「ワク ワクした気持ちになりました」「宮城大学はその存在も学長も普通でないから楽しみ。この 講義も普通でない楽しみな講義です」「先生の体験も織り交ざっていて興味深かった」「安心 した」「とてもいい話でした」「図解メモに感銘を受けた」「特技の一つとして持つべき技術」 「とてもとても役に立っ内容」 一つとして、後ろ向きの反応がなかったのはうれしい。社会人相手だと、何割かは疑問や 反論をもらうものだが、学生は素直に受け止めてくれている。参加した学生はほぼ全員選択 してくれそうだ。自信を持ってやっていけそうだ。 アンケートの中での要望も、今後の授業におおいに役立てていけそうだ。同僚の半田先生 からも「素晴らしかったです」とお誉めをいただいた。一 = 講義自体は予想以上にうまくいった と田 5 一つ。 ひとっ感じたのは大学入学直後という一八 5 一九歳の若者ということもあって、これから