マルの使い方 ( 関係・位置・構造を表す ) 〇 〇の応用 〇も使い方一つでさまざまなことを表現で きます。たとえば大きな〇が小さな〇を含む ( 包含 ) 、二つ以上の〇が一部分重なり合って いる ( 交差 ) 、二つ以上の〇が立体的に重な り合っている ( 階層 ) などなど ( 上の図 ) 。 もちろん〇の種類もさまざまあるわけで、 楕円があったり、ロや△を使ってみたり、ま た、円周の線の太さひとっとっても、重要度 や注目度に無限にメリハリをつけることがで きます。 これ以外にも〇のバリエーションは無限に あると思います。あなたも〇の使い方に習熟 して、難解な概念や自分の心の中のモヤモャ を、うまく表現できるようにしてください。
企画や構想は、言葉で必要十分な説明をするには困難が伴います。けれども図解であれば、 大きな部分しか目に入りませんから本質的な議論になるのです。企画・構想とは、実は図解 そのもののことと理解した方がよさそうです。 「新しい旅企画」を図解する では、まず図解で企画力を高める練習をしてみましよう。基本的には「理解力を高める図 解」と同じなのですが、若干異なる手順を踏みます。それでは、私が日本航空勤務時代に企 画した「新しい旅企画、を例にとってみたいと思います。 キーワードを集める まず、企画の元になるようなキーワード集めから始めます。「旅」の場合だと、「リゾー ト」「レジャー産業」「余暇」「自由時間」「人生八〇年時代」「家族」・ : : ・などといった言葉 や概念が浮かんでくるはずです。自分の頭に浮かんだものから、新聞やテレビ、雑誌から抜 き出したものまでランダムに書き出し、今度はこれらを〇で囲む。これが、図解を作る上で の基本となる素材になります。 ( 暫ページ図 ) 126
もう少しマメな人は、重要な部分を抜きだしてカードに書き込んだり、パソコンに打ち込 みます。 また、本を読んだ後、友人などにその内容を話して聞かせる事によって、本の内容を自分 の頭の中に定着させるという方法をとる人もいます。しかし、読書の成果を仕事の場面に応 用するなど、意識的に活用している人は稀ではないでしようか。 本を深く読み、頭の中への定着度を高めるためにも、「図読」という本の読み方を提案し たいと思います。 本の中では、全体を通して、著者が自説なり主張なりを、それを裏付ける材料を並べなが ら展開しています。「図読」では、それをまるまる一冊、全部一枚の図解にしてしまおうと のい一つことです。 へ 人 事 仕 キーワードに線引き & 印つけ 解 図 まず、本を通読してみましよう。全体としてどのようなことが書かれているのかをまずつ 2 かむ。マーカーを片手に、ポイントと思われる部分、自分にとって面白かった部分、気にな 9 第 った部分、わからない部分、キーワードなどに印をつけていきます。
批判を受けそうな点などをあらかじめチェックできる、というメリットがあります。 ただ、図解ですべてを表現しようとすると、思わぬ落とし穴があることも忘れてはなりま せん。この章の冒頭でも述べましたが、日本はいまだに文章信仰が強く、トップの中には 「図解企画書なんて企画書じゃない」とつつばねる向きもあるかもしれないからです。 そのためにも、形式的には文章企画書をメーンに、図解企画書をサプにするのが現実的な 対処の仕方といえるでしよう。もちろん、出席者の顔ぶれ次第では、この逆も十分考えられ ます。 また、プレゼン以外の場面、たとえば、会議や上司への説明、講演などの資料として図解 を使う場合に、とっておきの方法があります。 それは図解の中に、一〇ある情報の全部を入れ込むのではなく、七くらいに抑え、余白を あえて多めにとっておく、ということです。 なせ、そうするかというと、読み手に、余白の部分にこちらの話、つまり残り三を書き込 んでもらうのです。講演などの際に、この方法をとると、聴衆の参加意識はイヤでも高まり、 理解もグッと深まること請け合いです。 最後に図解企画書の悪い例をひとつ。箇条書きしたものを、単に〇やロで囲んだだけのも 148
このような事情があります。プレゼンする側から一一一口うと、相手に全体像を示した上で、個々 の部分の説明が可能となるからです。 またプレゼンを受ける側は、口頭説明を受けながら、自分が特に関心を寄せる部分につい て思考を集中できるため、納得感が高まります。 文章の場合は、どうしても細かい言い回しに目がいきがちになりますが、図解の場合は細 かいところはもともと省いていますから、大枠の議論、本質に迫る議論になる確率が高くな ります。 ・説得を匂わせない の文章によるコミュニケーションは、こちらが考えた道筋にしたがって、相手を説得しよう へ 人というところがあります。そのため、自分の考えを押しつけようとしているととられがちで 仕あり、相手から反発をかうことがあります。 図 一方、図解コミュニケーションは、納得のコミュニケーションです。相手は図解を見て、 章 興味のある部分は自分から探しているはずです ( ページ図 ) 。 第
・参加意識を高める 図解によるコミュニケーションは、自分が関心のある部分や問題意識から見始めることが 可能であり、参加意識が高くなるという利点があります。 会議などの場で、自分が参加したものは拒否しないが、参加していないものは「聞いてな い」といって拒否するケースがずいぶんありますね。参加性、それから自発性、こういった 部分への配慮がコミュニケーションを成功させるカギでしよう。 ・情報量が多い 文章は前後の文脈で情報を伝えるのに対し、図解は情報を上下左右使って表現できるため、 情報量が圧倒的に多いという特徴があります。 〇と↓ですべてを表現できる では、これから図解の基本的な技術について述べてみましよう。 図解の技術の基本は、マル ( 〇 ) と矢印 ( ↓ ) の使い方に習熟することです。どんなに複 雑でよくできた図解でも、よく見ると、そのほとんどは〇と↓の組み合わせでできています。
業から始まります。そこから、会議などのテーマと直接関係のないものを省き、重要なもの だけを取り出します。 これを関係のあるものどうしで、いくつかにプロック分けし、〇で囲みます。このとき、 細かい部分を気にしすぎると、なかなか先へは進めなくなるので、あくまでおおまかに全体 像を掴むに留めます ( ページ図 << と ) 。 2 ・個々の関係を明らかにする 次に個々のプロックの中の要素について、〇の大きさや位置関係によって、重要度をはっ きりさせます。たとえば、重要度の高いものは大きめの〇を、低いものには小さめの〇を、 といった具合ですね ( ページ図 0 ) 。 3 ・基本形の完成 ここではじめて↓の登場です。〇をつけたもの同士が一体どういう関係にあるのか、↓を 使い分けることによって完成させます ( ページ図 ) 。
はどちらが近いのか、予算権限を持っている人はどちらなのか・ つまり、全体の構造と個々の部分をつなぐ関係を理解することです。こちらは動的なダイ ナミックな理解とでも言えるでしようか。 実際の仕事の場面では、この二つの理解のうち、特に後者「関係」を意識した理解がポイ ントになります。 理解の深さにはキリがありません。すべての知識を得て、深い理解に到らなければいけな いという考え方もありますが、あるレベルの理解に達すればそれはそれでいいのです。 さらに時間をかけて、新しい関係を発見したり、関係の濃淡やニュアンスを把握する中か ら、深い理解の段階へと達することができるのです。 ずどく 図読のすすめ 本を読むとき、鉛筆やマーカーを片手に読む人が多いと思います。でもそこから先は人そ れぞれでしよう。 気になったところ、大事なポイントに印をつけたり線を引いたりしますが、読み終わると それつきり、というのはよくあるパターンです。 108
ていると、気持ちの上では大統領にでも総理大臣にでも、大企業の社長にもなることができ ます。 地図を思い浮かべる 図解に強くなりたいなら、常に地図を思い浮かべる訓練をしましよう。 地図と一口に言っても、日本地図、世界地図、言語地図、歴史地図、統計地図などさまざ まの地図があります。 たとえば歴史地図は、過去の時代の地理の状況、街道や交通ルート、征服者の侵攻ルート、 合戦の様子などを表しています。また統計地図は、統計データを地図で表現したもので、 国や県ごとの人口や経済力を示したものなどがあります。 情報を整理するということは、それぞれの部分をその価値にふさわしい場所に配置するこ とですから、個々の情報を地図の上に適切に配置できれば、理解ができたということになり ます。 地図は「地、つまり背景の中に「図」、つまり意味を浮き上がらせたものです。さまざま な地図をみることによって、地図感覚を磨いていきたいものです。
企画力は図解で養われる バブル崩壊後一〇年にわたって低迷を続ける日本経済。新聞紙上ではこの一〇年を「失わ れた一〇年」と呼ぶのが通例となっています。この原因については、さまざまな識者が経済 的失政、政治の貧困などの見解を述べています。 私自身この原因は、経済的な理由よりも精神的な理由であると考えています。今の日本人 に欠けているのは、企画力、そして構想力でしよう。政治家も、行政マンも、企業経営者も、 学界も、マスコミも、元気の出る新しいプロジェクトを構想したり、夢のある事業を興す企 画力が不足していると思います。企画カ・構想力が、日本のあらゆる場所で閉塞している感 じがするのです。 さらに突きつめて言うと、全体を組み立てる力、個々の部分同士の新しい関係を構築する ( 4 ) 企画力を高める図解 124