限界と境界を設定するカ 自分のニ 1 ズを満たすためには、限界と境界を設定することが必要になります。 問題を抱えた家族で育ったということは、子ども時代に境界を尊重されす、物事の限界を教 えられなかった、ということを意味します。こうした中で生きてきた結果、私たちは境界を設 定する方法を身につけていなかったり、限界を超えて何かにのめりこんだりします。また、他 人の境界を尊重できすに侵入してしまいがちなのです。 境界とは、あなたを他の人から独立した存在として区別するためのラインです。私たちは一 る 育人一人、皮膚によって区切られていますが、それだけではなく、どこまでが心理的・身体的に 安全な領域かというラインがあります。 ダ 情緒的な境界は、まさに私たち自身を形づくり、私たちの考え方や感情や自分の価値を決め ア ナ るものです。感情の境界を設けるとは、他の人が自分をどんなふうに扱うことを許すのか、選 ン イ 択することです。 章 スピリチュアルな境界は、私たちの魂の奥深くにある真実にまつわるものです。私たちの魂 157
罪悪感 過去を探ることへの不安が、間違った罪悪感からきている場合もあります。今もあなたは、 自分がもっと何かしていれば事態を変えることができたはずだと信じているのでしよう。 幼かったあなたは、今ならわかっているようなことを知りようがなかったのです。当時起こ ったことを変えられたはずもありません。子ども時代のことについて自分に責任を負わせよう とするのを、あなたはやめるべきです。あなたは子どもだったし、あなたが体験したことは他 人によって左右されお膳立てされていたのです。子ども時代というのは、そういうものです。 他の人の態度や行動に対して後悔を感じるのは「間違った」罪悪感です。自分が左右できな いことに関して責めを負うのは間違っているのです。生きていく上で責任を果たすべきことは たくさんあるし、だからこそ「本物の」罪悪感を感じることもあるでしよう。けれど親のアデ イクションや強迫行動に責任を感じたり、小さな子どもや十代のときにおとなのような判断力 や手立てを持っているべきだったと考えるのは、正しくありません。 感情への怖れを乗り越える 覚えておいてください、回復には時間がかかります。すべてを今日のうちに片づける必要は ないのです。あなたがいったん、自分の不安や怖れを他の人に語り始めれば、もうそのような
う。人の意見に反対する必要もあるでしよう。相手の存在意義や、価値や、本質を攻撃するこ となく、相手の行動に対して怒りを表現する方法を学べばいいのです。かってあなたがされた ことを他の人にしなくてもいいのです。 あなたの中には積み重なった怒りがあるかもしれません。だからといって、あなたが今感じ る怒りが、これまでのすべての怒りの総決算である必要はありません。膨れあがった怒りはど こか別の場所でまず表現して、それから現在の腹立ちのもととなった人に対して直接怒りを表 わす必要があるかどうか、判断するといいでしよう。 覚えておいてほしいのは、いつどのように感情を表現するかについて一人で答えを出す必要 はないということ。あなたと回復のプロセスをともにする人が、方向を指し示せることは多い はずです。 なお、もしもあなたが身体的な暴力の存在する家庭で育っていたり、あるいはおとなになっ スてから自分自身や他の人を身体的に虐待したことがあるなら、あなたが感じる怒りへの怖れは っ 大きくて当然だし、他の場合よりも現実的な根拠があります。怒りを表現するプロセスを安全 の へ なものにし、意味あるものにするためには、怒りの作業を手助けできるプロのカウンセラーの 由 ・目 力を借りることを強くすすめます。 章
安全で適切な境界をつくることが難しいかもしれません。自己評価が低く、好きになった相手 を理想化してしまう傾向は、彼女の判断を鈍らせるでしよう。相手の望みを察知してそれに合 わせ、自動的かっ無意識のうちに相手に従ってしまうため、自分は弱い立場となって相手に権 力を与え、優位に立たせてしまいがちです。自分を防衛するはずの方法が、危険を正確に感じ とるのを難しくしているのです。 こうした理由によって、男性でも女性でも、自己否定感の強い人というのは、繰り返し犠牲 者となる危険が大きいのです。 痛みへの反応としての「激怒」 づ 怖れや、怒りや、屈辱感や自己否定感がたまりにたまって満杯になったタンク、それが激怒 です。激しい怒りは多くの人にとって、これ以上痛みに耐えたくないという限界の反応なので ク イす。すっかり絶望して他に方法がないとき、人は自分の言、つことを聞いてもらうため、こっち の を見てもらうため、価値を認めてもらうために、怒りを爆発させるという手段に出ます。 み 痛 の 激怒が生活の中で欠かせなくなっている人もいます。このような人は子ども時代に、自分の 在 現感情の中で怒りだけが唯一安全に表現できるものだと気づいて、他のもろい部分はすべて、怒 章 りの仮面の下に隠したのです。すぐにカッとなる人の多くは、他のどんな感情の動きも見せま
うかという不安、変化への怖れ、解決しなければならない問題を前にして怖じけづく気持ちを 隠そうとし、自分の「力不足」をさらす事態にならないよう、周囲の状況をこそこそと調整す ることに莫大な時間とエネルギーを費やしてしまうのです。 今まで学んでこなかった基本的なスキルを、あなたは今から学ぶことができます。大切なの は、自分が何を学ぶ必要があるかに気づくことです。 新しいスキルを学ぶことにともな - っ感情 新しいスキルを学ぶことは、情緒というより行動の問題ですが、それでも他のステップと同 様、そこで生じてくる感情もあります。新しいスキルを試したり、新たに知ったやり方で他の 人とっきあおうとすれば、自信のなさでまごまごしたり、 いかにも不慣れで落ち着かないなど の感情をおばえるでしよう。 おとなの今になって基本的なスキルから学び直さなければならないことは、さまざまな痛み の感情を引き起こします。こうした感情がやってくるたび、できる限り、立ち止まってそれに 注意を払わなければいけませんーーー痛みを尊重してください。必要なのは次のことです。 ①感情を感じる。 108
3 章自由への 4 つのステップ 作業を飛ばしたり手を抜いたりするからです。これは一見、たいした意味のない、取るに足ら ないことのように思えるかもしれません。それほど強烈な感情を呼び起こすわけでもなく、あ る種の人たちが回復というものに求めるような刺激が少ないのですから。もちろんあなたが取 り組む課題によっては「激しく気持ちが揺さぶられる」ことにもなるでしようが、それがこの ステップの主な目的ではありません。かんじんなのは、自分の課題に取り組み、自分が今をど う生きるかに責任を負うことなのです。 あなたが本当の意味で新しい行動パターンを学ぶ準備ができるのは、ここまでの三つのステ ップに取り組んでこそなのです。 ステップ 4 " 新しいスキルを学ふ 「今私はどんなことについて、別のやり方をしたいのだろうフ」 最終的に私たちの生き方が変わるのは、子ども時代に学ばなかったスキルや行動のしかた 自分を大切にすること、他の人と健康な関係をつくることなどーーを学んだときです。「も っと人の話が聞けるようになりたい」「問題を上手に解決する方法を身につけたい」「他の選択 103
1 章過去の痛みの正体を知る かったいていの場合は巧妙な形で隠されているため、それがどんなものかを理解するには次の 「一ⅱ明か役立つでしよう。見捨てられ体験とは要するに次の二つのことなのです。 ①親 ( あるいは主たる養育者 ) が子どもの感情やニーズ ( 必要とするもの、要求 ) に無関心 だったり、情緒的に不在の状態が続く。だから子どもは適切に感情を感じたり表現するこ とかできない。、 しつも他の誰かのニーズが優先で、子どもが唯一関心を持ってもらえるの は、他の誰かのニーズを満たしてあげるときだけ。 ②子どもが受け入れてもらうために ( あるいは拒絶されないために ) 、本当の自分を一部隠さ なければならない。たとえば次のような状況でそれが起こる。 ・この家では、間違、つことは許されない ・感情を表わすことを認められなかったり、あなたの感じ方はよくないと言われる。「泣 くよ、つなことじゃないでしよ、つ。そ、つやっていつまでも泣きやまないと、本当に泣くし かないよ、つな罰をあげることになるよ」「ちっとも悲しくなるよ、つなことじゃないだろ う」「そんなことぐらいで怒ることないのに」といった具合に。親がたまたまイライラ していたなら別だが、家族の状況が常に子どもの感情を軽視しているとしたら、それは 情緒的な見捨てられ体験となる。 つ」
毎日が危機の連続であるかのような混沌とした家庭には「ほどほどの秩序」が存在しません。 逆に厳格すぎる家庭では、「ほどほどのいい加減さ」が失われ、〇〇すべきという硬直的なルー ルが支配しているのです。 けれど硬直性は、厳格な家庭だけにあるのではありません。何らかの問題を抱えたあらゆる 家庭に共通のものです。たとえば家族の誰かが飲酒やギャンプルなどの問題を抱えていると、 他の誰かがその問題を何とかしようとして、硬直的なルールをつくり出します。「問題を外に というルールかもしれないし、「常に努力して正しくあるべきで、問題 漏らしてはいけない を起こす人は間違っている」という考え方かもしれません。あるいは、家族全員が父親を怒ら せないように神経を研ぎ澄ますという暗黙のルールができあがる場合もあります。混沌とした 家庭でも、子どもの心の中には、「どうせ誰もわかってくれない」「がまんするしかない」とい った硬直的なルールがつくられます。 硬直したルールのもとでは、自分からすすんで考えたり行動したりすることが許されず、自 分なりの価値観を育てることも難しくなります。そこには「話すな」に加えて「質問するな 「考えるな」のルールがあるのです。 そして、おとなになっても融通のきかない考え方をすることが多くなります。他の選択肢が 思いっかす、これしかないと信じこんでしまうのです。
1 章過去の痛みの正体を知る 家庭内での情緒的孤立は、家の外でも孤立をもたらすことが多いものです。私たちは自分の 痛みや家族の痛みを他人に知られまいとします。もし他の人が知ったらどんな反応をするかが 不安なのです。そしておとなになってもばつんと一人でいたり、あるいは本当の感情や考えを 隠したまま熱心に人づきあいをしたりします。「話すな」「感じるな」「信頼するな」のルール が私たちを孤立させるため、一見社交的にふるまっていたとしても、それは表面的なものに過 ぎないのです。 あなたか他の家族に対して感じていた親しさや、あるいは距離感を、絵に描いて表わし てみましよう。 硬直性 厳しすぎる家庭では、親たちはしばしば独善的で硬直的な考え方をします。「物事は常にこ、つ あるべきで、例外などない」というわけです。権威に歯向かうことは決して許されす、子ども は親の意見や考えに黙って従わされているだけなのです。家庭での決まりごとも、子どもに課 される役目も正当性を欠いていて、親は子どもにあまりに非現実的な期待をします。 子どもが健康に育っためには、「ほどほどの秩序」と「ほどほどのいい加減さ」が必要です。
6 章新しい関係をつくる アルコール依存症の家族で育ったことになるの ? きようだいの私がそうじゃないのに」。 大切な相手が、あなたにとっての真実をあからさまに無視したり、大げさだと言ったり、否 定したりしたら、ショックでしよう。自分ときようだいとで体験してきたことがこんなに違う のかと、驚くかもしれません。知っておく必要があるのは、私たちが癒しのプロセスにいると しても、他の家族が同じ道のりを選んでいるとは限らないということです。 関係性と相手への期待 健康な関係を作りたいと思っている人にとって、カギになるのは期待のレベルということで す。家族が回復を始めていないとしたら、あなたほど正直でも率直でもないでしようし、あな たに思いやりを示してはくれないでしよう。人間関係には、限界というものがあります。この 限界に気づくことで、私たちは期待を現実的なレベルに下げることができるし、他の人の態度 や行動にがっかりすることも少なくなります。 あなたの期待に応えることができす、そうしたいとも思っていない相手に向かって一生けん めいになっても、がっかりする結果になるのは当然です。相手には無理なことやその気がない ことを期待するのをやめれば、あなたの人間関係はもっと健康なものになります。話す必要の しのです。 あることは、わかってくれる別の人に話せばい、 195