子ども時代の痛みとともに生きてきた私たちは、痛みに対するさまざまな防衛法を身につけ ています。たとえば次のような方法です。 ・自己否定感を埋め合わせるため、自分に価値があることを行動で証明しようとする。 決して間違いをおかさず、何事も完ぺきにやろうと努力する。 ・責められる前に相手のことを責める。 ・物事をゆがめて見る。事実を認めなかったり、大したことではないように扱ったり、 理屈をつけたりする。 ・痛みから目をそらす行動をとる。過剰に食べたり、飲酒したり、薬物を使うなど。 こうした方法はもともと自分を守るためのものだったのに、今や私たちにさらなる痛みをも たらしています。つまり私たちが今感じている痛みは、未解決の過去の痛みと、過去に支配さ れた現在の痛みとが合わさったものです。 そのしくみを見ていきましよう。
こうやって得ていく新しい気づきというのは、自分について前向きな考え方を育てていく決 め手となります。私たちはこれ以上、恥辱と自己否定感がともなう秘密におびやかされている わけにはいきません。過去の真実を認める作業は、私たちが痛みを感じ、悲しみを表現するこ とを可能にしてくれます。 拒絶されたり罰を受けたりする怖れなしに語ることによって、今まで内に秘めることで私た ちを傷つけてきた深い感情を解き放っことができます。他の人たちと共にこのプロセスを通る ことによって、子ども時代の自分への確認を得られます。「 validate ( 確認する・正当だと証明 する・価値あるものと認める ) 」という英語は、「強くする」という意味のラテン語 va 一 ere から きているのです。自分を確認してもらうことは、私たちを強くします。 過去に戻り過去を語ることの主な目的は、否認を破って真実を話せるようにすることです。 否認という手段を助けとして子ども時代を生きのびてきたなら、おとなになってからの体験に も同じ否認が立ちはだかっているでしよう。語るというプロセスに取り組むことで、あなたは 現在の出来事、まさに目の前で起こっていることに対しても、誠実になるすべを身につけるこ とができます。 おとなになっても物事を過小評価したり、切り捨てたり、理屈をつけるやり方を続けるのは 章 簡単ですが、それは感情を正直に受けとめて表現するのを妨げます。そして自分にも他人にも
過去を終わらせ、歩き始める 前に進むためには、過去を終わらせなければなりません。痛みを手放すためには、現在の生 活で痛みをコントロールするためにどんな方法をとっているかに気づくことが必要です。 痛ましい現実に向き合うことを避け、今の人生にとどまり続けるという道もあります。この 選択をするということは、言うまでもなく、本当に過去を終わらせようとはしていないという ことです。そして、自己否定と痛みの中を生きのびていくという重荷を、将来の自分に負わせ づ るとい、つことです。 私たちが手にしているもうひとつの選択肢は、自分で自分の生き方を選び、外の基準によっ イて命令されるのではなく自由に選んだ信念に従って行動するということです。そうすれば私た の ちはもはや過去にコントロールされなくなり、過去を終わらせることができます。 み 痛 の 過去を終わらせるというのは、それが私たちの記憶から消え去ることではありません。過去 在 現 は個人史の重要な一面として、あるべき場所に位置するようになるのです。 章 痛みを手放すということは、これまでのつらい体験を忘れてしまうとか、忘れなければいけ
しむ人もいます。過去を思い出すことが「いやな話を蒸し返す」ように感じられるとしたら、 その体験にはます間違いなく未解決の痛みがともなっていて、今もあなたに影響を及ばしてい るのです。はっきりさせておきますが、過去について語る目的は、それをきちんと過去のもの にするためです。 それは親を責めるという意味ではありません。実際、過去に立ち戻って調べてみてわかった ことを親とは共有しないという選択もできるのです。どちらにするかは、あなた自身や家族の 犬况にもよるでしよ、つ 人が過去を探るのは、それを誰かのせいにするためではなく、真実を発見し、認めるためで す。非常に多くの人がおとなになってもまだ、子ども時代に形作られた信念によって動いてい ます。過去に起きた特定の出来事を振り返ることは、物事の見方を大きく転換させるきっかけ になります。たとえば、もし親が怒って私たちを叩いたとしたら、子どもの見方からすれば自 分が何か悪いことをやったか、あるいはどこか至らなかったために、親を怒らせたんだと思う でしよう。おとなの目で見直してみれば、親は自分自身に腹を立てていたのかもしれないし、 生活上の何か、たとえば失業したことで頭にきていたのかもしれないと考えることができます。 子どもはか弱くて矛先を向けやすいからぶたれてしまっただけで、ぶたれた理山は私たちが思 いこんでいたものとはまったく違うかもしれないのです。
3 章自由への 4 つのステップ 1 リング体験がきっかけとなる人もいれば、専門家による プから始める人もいるし、信仰やヒ セラピーから始める人もいます。感情を解き明かし、こびりついた信念を変え、行動を学びな おすには、回復プロセスを支える骨格である四つのステップを取り入れることが必要です。 ステップ 1 Ⅱ過去の喪失を探る ステップ 2 Ⅱ過去と現在をつなげる ステップ 3 Ⅱ取りこんだ信念に挑む ステップ 4 Ⅱ新しいスキルを学ぶ ステップ 1 ⅱ過去の喪失を探る 「どんな出来事に傷ついたのか ? 」 「必要だったのに手に入らなかったものは ? 」 回復を始めるにあたっては、過去について語ることが重要です。多くの人は、話すことにわ くわくすると同時に布さも感じますが、中にはなぜ過去を語ることが必要なのだろうといぶか
3 章自由への 4 つのステップ して感情を注ぎこむ努力からついに手を引くようになり、喪失を受け入れて、回復のプロセス を先へと進み始めるでしよう。 過去を探り、喪失にともなう痛みを癒すことは回復に欠かせませんが、第一のステップを終 えて次に進むことも同じぐらい重要です。そうでないと、あなたはここから動けなくなり、や がてそれは癒しのプロセスではなく誰かを責めるプロセスになってしまいます。 子ども時代について語ることは、生き方のコースを変えるための答えのすべてではありませ ん。これは自分自身と他者について多くの洞察と気づきを得て、理解していく時期にあたりま す。希望のときであり、私たちにはたくさんの選択肢があることを知るときなのです。ここで 得た新しい気づきをもとに、次の三つのステップに取り組まなければなりません。 ステップ 2 過去と現在をつなげる 「過去の喪失は、今の私にどう影響しているだろう ? 」 過去と現在をつなげることは、情緒的なプロセスというよりも、論理と洞察に導かれたプロ セスです。過去と現在の生活との間に原因↓結果のつながりを見つけることで、進むべき方向
をやめることで、心の中に平和がやってきます。 許すとは、過去に起こったことで自分という人間を決めるのをやめること 自分には過去だけでなくもっと他のものがあることに気づきます。過去は、今の私たちを形 づくるものの一部として、本来の場所におかれます。 許すことは、自然に訪れる結果 それは過去のつらい体験に向き合い、傷を癒すことで自然に訪れるものです。相手に対して 「許した」と宣一言するかどうかに関わりなく、自分の心の中で起こることです。それは自然 に生まれてくるプロセスであって、義務ではありません。 許すことは、忘れないけれと手放すこと ほとんどの人にとって、許しは長い年月の間に少しずつ形になるものです。涙を流すたび、 怒りの叫びを解き放ったびに、心の中に許しが訪れるための場所が生まれるのです。 あなたか許したいと思う人はいますか ? その人がどんなふうにあなたを傷つけ、それ 220
家族というのは、たくさんの部屋がある家のようなものです。この家の数々の部屋は、過去 の世代の家族や、新しく作られた家族を表わしており、すべてが直接あるいは間接的につなが っています。ドアを通じて部屋から部屋へと伝わっていくのは、家族の秘密であり、家族の物 語であり、何が正しくて何は誤りかという考え方や、人がすべきこととすべきでないことにつ いての信念です。 この章では過去を再び検証し、現在の自分へ、そして未来へとつなげていきます。インナー アダルトの力を手にすることで、過去をさらに深いレベルで探っていくことが可能になったの です。 家族の秘密 深いレベルで過去を探る作業のひとつ、それは家族の秘密を覆っているべールを取りのけて いくことです。 秘密は、ひとつの世代から次の世代へと受け渡されます。秘密とは、他人には知らせないで おく一片の情報であり、それは、恥辱感がともなうためでもあるし、自分自身や他の誰かを守 168
2 章現在の痛みのサイクルに気づく 〈なぜか繰り返してしまう苦しい生き方。そこから抜けるには ? 〉 過去に支配された現在の痛み 痛みをコントロールする努力 痛みに対する感情の反応卵 痛みに対する行動上の反応 痛みに対する思考上の反応 過去を終わらせ、歩き始める乃 3 章自由への 4 つのステップ 〈前に進みたいのに感情がじゃまする。だから順を追って一歩ずつ〉 ステップ 1 Ⅱ過去の喪失を探る四 47 44
クラウディア・プラックからあなたへの贈り物 自分を認めるための言葉 ・私は痛みを感じている。だから、癒されるに値する ・私は過去の怒りや罪悪感を抱えている。だから、癒されるに値する。 ・過去の痛みから自分を守るための方法で、私は今の自分をさらに痛めつけてしまっている。 だから、癒されるに値する。 ・過去の私には何の力もなかった、けれど今の私は無力ではない。 ・痛みをどうするかは、私の選択に任されている。 ・私は基本的なスキルを学んでこなかった。だから今から学ぶ必要がある。 ・回復とは私という人間を変えることではない。本来の私でないものに縛られなくなること。 ・回復とは、一か十かではなく二から九までの段階があると学ぶこと。 ・私には、新しい方向へと人生を建てなおすだけの価値がある。 236