宗教 - みる会図書館


検索対象: 宗教世界地図
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1. 宗教世界地図

よ 〇万人のうち二〇〇万人を占めるチベット族にとって、チベット仏教は永遠に魂の拠り所で ゅ・つきゅう ばさっ ふたらく あり、観世音菩薩の浄土、普陀落山を意味するボタラ宮殿は、滅することのない悠久の聖殿 である。 ラマ教 ( チベットではこの呼称は蔑称であるとして用いられない ) と俗称されるチベット仏教は、 七世紀にインドから伝えられた仏教を、その源としている。 くらやみ 険しい山岳地帯で遊牧生活を送っていたチベット族の社会では、元来、暗闇の中で牛や馬 ささ じゅじゅっ を捧げ、その腸をえぐって神々に祈るシャーマニズム、呪術か盛んだった。そして、ポン教 カ と呼ばれるこの土着宗教を布教上の道具として巧みに取り入れ、独自の発展を遂げたのがチ のべット仏教である。「世界の真相は、直視され得るものではなく、推論によってしか把握さ マれない」という「空の教理」が、チベット仏教の神髄とされる。八世紀後半、ラサを中心と する当時の王朝の支配者、チソン・デッイエン王により、仏教が国教とされ、チベット仏教 いしずえ はその礎を確固たるものとする。 当然のことなから、チベット仏教はチベットだけにとどまったわけではない。イン そうりよ ドから多くの僧侶が招かれ教理の純化、体系化が行われた結果、チベット仏教は十三世紀、 名実ともにラサを中心とする宗教国家の基軸となり、この時期、同じく遊牧生活を送り、シ ャーマニズムが盛んだったモンゴルに伝えられた。モンゴル人の大帝国、元の世祖フビライ べっしよう

2. 宗教世界地図

宗教名 分布する主な国 教ローマ・カトリック南欧、東欧、ワロアチア、リトア一ラ、アイルフンド、フィリピン、中南米 スフロテスタントドイツ北部、イギリス、北欧、北米、オーストラリア三ュージーランド キギリシャ正教旧ソ連諸国、プルガリア、ルーマ二ア、新ユーゴ連邦、ギリシャ、エチオピア ニ派中東諸国、旧ソ連中央アジア諸国、アフ々一スタン、パキスタンバン 2 フデシュ、インドネシア、マレーシアスニア 乙スン 序スン ア派イラン、イフワ南部、アゼルハイジャン、イエメン 図 大乗仏教日本、韓国、その他東アジア地域 地 南伝仏教スリランカ、ミャンマー、タイ、カンホジア、ラオス、その他東南アジア地域 教仏 ラ 教中国のチベット地モンゴル ユダヤ教イスラエル ヒンズ 教インド、ネハール 儒教・道教等中国系中国、台湾 その他の創唱宗教インド ( シーワ教、ジャイナ教等 ) 、イラン ( バハイ教 ) 、アメリカ ( モルモン教 ) 等 その他の民族固有の宗教アフリカ、オセア一一ア、南米、ロシア北部等 マ 人口 ( 億 ) 1 2 2 7 0.2 0.3 1.3 1.7 1 8 1.6 4 9

3. 宗教世界地図

教法人」と認証されることの利点は、固定資産税など税制面で様々な減免措置が受けられる ことだ。これは改正宗教法人法でも変わりはない。それもあって、戦後、宗教法人法ができ るや、新宗教が林立し " 神々のラッシュアワー ~ が現出、オウム真理教もこれを思う存分利 用して肥大した。 実は、このように、宗教法人になれば無条件に課税が減免される「非課税制」をとってい る国は先進国でも珍しい。戦後の日本の宗教政策は米国流の考え方に基づいているが、その 図米国ですら、法人となることか即座に免税特典と結び付くわけではなしイ : 固々の事業が宗教 地 界活動と関連しているかどうかつぶさに検証され、審査の上で免税される。世界の主流はこの 世「免税制」なのだ。改正宗教法人法成立を受け、「非課税の宗教施設を選挙活動に用いない、 教 ことなどを規定した政教分離法などが論議されているが、実現するとしても、当分先のよう 宗 だ。要するに、日本は実に宗教に″寛容な ~ 国だといえる。 冒頭の宣教師は、布教の困難さに業を煮やしてか、「神道も仏教も滅びゆくとこきおろ した。だが、 それから百年後も、神道と仏教は残り、キリスト教を含むあらゆる宗教、新宗 教が小さな島国にあふれかえる。いまや日本は、世界史上もまれな「宗教の楽園」と化した のだ。そして、オウム真理教は、その楽園に咲いた文字通りのあだ花だったのである。 192

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本的にはそうした宗教事情に変わりはない。よく言われることだが、日本の宗教団体の信徒 数を合計すると、全人口の二倍になってしまう。統計が全く当てにならないわけだが、逆に こうした統計に現われる不可解な数字から、日本での宗教の在り方を読み取ることができる。 だが、こういった日本人の宗教観を根本から揺るがせたのが、松本サリン事件、地下鉄サ リン事件を引き起したとされるオウム真理教の存在だった。同教団を宗教法人として認承せ 揺ざるを得なかった宗教法人法に対する世論が高まり、九五年十一一月八日、①複数県にまたが しよかっ ムって活動する宗教法人の所轄を都道府県から文部省に移す②宗教法人に対する財産目録など ウ はあく オ財務書類の提出を義務付け、所轄庁が宗教法人を把握することを容易にするーを骨子とする わ改正宗教法人法が成立した。既成宗教などによるオウム真理教事件の総括も進んでおらず、 ニ官民ともに「ポスト・オウム」の道を模索しているのが現況だ。 文化庁がまとめた『宗教年鑑 ( 平成七年版 ) 』によると、全宗教の信徒数の合計は二億一九 宗八四万人。このうち神道系が一億一七三八万人、仏教系が八九八三万人、キリスト教系が一 五二万人、その他諸教が一一一一万人である。 いうまでもなく、日本では古来からの「八百 こんぜん 万のカミ」を信仰する神道と、 , ハ世紀に渡来した仏教とが渾然一体と併存する。全国で神社 は八万一四二三カ所、寺は七万七四〇四カ所を数え、各地域には神社と寺が並び建つ。一万 人当たりそれぞれ六・五カ所、 ・二カ所という計算になる。 189 よろず

5. 宗教世界地図

宗教天国・ニッホン オウムで揺らぐ ! ちょうど百年前に日本を訪ねたプロ テスタントのある宣教師は、日本の宗 教事情についてこう記している。 「日本には神道と仏教という二つの宗 教がある。 ・ : 神道と仏教は歴史の長 し間お互いに多様に内的に影響しあっ てきた。民衆の意識のなかでは両者と も大変近しいので、彼らは仏教の偶像 『ホトケ』にも神道の『カミ』にも祈 るし、仏教の『オテラ』にも神道の 『オミャ』にも行くのである」 ( ・ム ンチンガー「ドイツ宣教師の見た明治社 会』 ) この種の指摘は、日本人の宗教観を 亠咄じる際に、これまでも、つ幾度となく 繰り返されてきた。もちろんいまも基

6. 宗教世界地図

よい。仏教の場合は、そもそも無神的な色彩が濃く、よく言えば哲学的、悪く言えば単なる 生きる知恵といった色合いが濃厚だ。だから、キリスト教やイスラム教など〃分かりやすく 日確 ~ な宗教ほどには広まらなかったのではないか。明確さでは抜きんでているユダヤ教が 世界宗教とならなかったのは、前述した通り、もつばらユダヤ民族のための宗教だからであ る。 ある宗教が世界宗教であるかどうかの判断は、非常に難しい。というのは、それは、「民 序族」の捉え方や国家観と密接に関わってくるからだ。例えば、ヒンズー教のケースを考えて 図みればいい。 ヒンズー教は七億人の教徒を抱えながら、通常は世界宗教とは呼ばれない。イ 界 ンドやその周辺に固有の民族宗教だとされている。ヒンズー教は、インド亜大陸に定着した 世 宗様々な種族の信仰が融合して紀元前に成立した独自の宗教である。しかし、一時は、インド シナ半島や今のインドネシアにまで広がり、ヒンズー文化圏を形成したこともあった。その バリ島に残るだ 後のイスラム教の浸透で、今ではこれら地域のヒンズー教はインドネシア・ けとなったが、それでも信徒の数からいえば、世界宗教の資格は十分にある。 だが、仮にヒンズー教の分布が今のインドだけに限られたとしても、それでも世界宗教と 呼ぶべき実体がないではない。それは、インドが、いわゆる西欧型の民族国家ではなく、 1 種の小世界を成しているからだ。インドの国土はスカンジナビアと旧ソ連を除いた全欧州の カカ

7. 宗教世界地図

全世界的に見れば、そこでは、寛容、博愛、平等、人類愛といった近代合理主義が宗教に かぶせた仮面はものの見事にひきはがされ、排他主義、独善、非妥協性といった宗教の持っ 一局面が、異様なまでに膨れ上がる例か非常に多くなってきている。加えて、政治そのもの と重なる場面も多々ある。その意味で、本書は、九〇年以降の激動のクロニクルとしてもお 読みいただけると思、つ。 宗教を分類すると 図 地 おおざっぱ 本編に入る前に、世界の宗教のあらましを整理しておけば便利かと思われるので、大雑把 界 世ではあるか別掲のように表にまとめてみた。分布などについては、個々のデータごとに付け 教 てある地図をご覧いただきたい。一口に宗教といっても、その数は限りなくあるが、この表 では、主なものを記した。系統も世界史の教科書でお馴染みの一般的な分け方に従っている。 本書に登場する「主役」でもあり、世界でも広く信仰されているのが、キリスト教、イス ラム教、仏教の、いわゆる「三大宗教ーである。この三大宗教には、共通する二つの特徴が ある。一つは、様々な民族によって受け入れられた「世界宗教」である点だ。もう一つが、 自然に発生し成立した「自然宗教」でなく、「教祖、開祖によって始められた宗教」、すなわ でんば ち「創唱宗教」であることだ。その普遍的性質と民族を越えて伝播してきた事実が、民族宗

8. 宗教世界地図

る。実際、ローマ帝国は「キリスト教国家」へと変質し、やがて教会そのものが政治的なカ せんべい を持ち、国家を動かすようになる。近代においても、植民地経営の尖兵となったのは宣教師 たちだった。もちろん彼らは、「世界の人々を救済する」と考えたのであろうが、キリスト 教社会を広げようというのは、極めて政治的な動きである。 イスラム教は、部族対立が激しく、統一のない当時のアラブ社会で、「唯一神の前の平等」 を実現すべく生まれた。それが、商業的利権や政治権力と結び付いて幾多の王朝が交代した 序のは歴史が示す通りである。あれほど急速に広がったのは、イスラム教が「社会変革の力。 図を持っと思われていたからだ。インドでは、ムガール帝国の時代に、下層カーストの人々を 界 中心に、イスラム教への改宗が進んだという。「唯一神の前の平等」を説くイスラム教は、 世 現実の世界でも新鮮なものに映ったのだ。 仏教も、インドのカースト制への批判から生まれた。万人か等しく吾りを開き、その意味 で平等な社会の実現を指向していた。やがて、中国や日本に伝わる過程では、仏教は明らか に「新しい思想」としてとらえられた。聖徳太子は、この新思想に精通した人物として敬わ れたし、日本でも仏教が国教として国を動かす力となった時代があったのである。 この三つの宗教は歴史が古いため、その後、様々に分化し、しかも自らが実現した社会を 守るために、今度は「保守勢力ーとなる局面も多々あった。しかし、そもそもの本質は、社

9. 宗教世界地図

た。が、チトー亡き後、宗教と民族の軋轢は想像を超える激しさで拡大、彼のユーゴ連邦は 音を立てて崩れ去るとともに、陰惨な民族浄化に突き進むことになる。 宗教の本質は変革にあり 宗教について、日本では一般的に「魂を救済するもの」というとらえ方をされてきた。確 ) 。宗教か国際政冶 それは、しかし、宗教の一側面でしかなし かにそれは間違いないのだが、 図の舞台に登場してくるのは、実際には、宗教が「極めて政治的な存在」だからである。キリ 地 創唱された三つの世界宗教がどのように誕生し、広がってい スト教、イスラム教、仏教 界 しずれも、当時の貧困や矛盾に満ちた社会を変革すべく始められ、 世ったかを想起してほしい。、 教 人々はだからこそ、それを、「変革のカー「新しい思想」「新しい生き方」として理解し、惹 かれ、入信していったのだ。これらの新しい宗教勢力は、人々の心を救うと同時に、自らの 理念によって理想の世界を実現すべく動いていく。当時の社会では、紛れもない「革命勢 力」であり、これを政治的存在といわずして何といおう。 キリスト教は、ローマ帝国の圧制やユダヤ教会の抑圧からの脱却と救済を目指した。それ がまず、当時のローマ帝国の「辺境」であったシリア州で支持者を得、やがてローマ帝国中 に広がっていった。キリスト教の崇高な理念で、社会が変えられると人々が信じたからであ

10. 宗教世界地図

凵教や部族宗教と異なり、さらに、明確な創唱者が存在することが、自然発生的な原始諸宗教 と区別せしめている。古い順からいけば、仏教は紀元前五世紀にブッダによって、キリスト 教は一世紀にキリストによって、イスラム教は七世紀にモハメット ( ムハンマド ) によって それぞれ唱えられたものである。 宗教は、幾つかの基準によって分類できるが、そうした基準で分けてみると、それぞれの 世界宗教に対して、ある特定の民族に固有のもの 特徴が浮かび上がってきて実に興味深い。 図は、民族宗教と呼ばれている。代表的なものがユダヤ教だ。ャハウ工を唯一神とし、神はユ 地 ダヤ民族を選民として選び、特別に恩恵を与えるとする契約の宗教でもある。また、創唱宗 界 世教であるかどうかを考えた時、ほとんどの改革宗教、新宗教が創唱宗教に当たる。ヒンズー 教 教を元に生まれたシーク教、イスラム教を元に生まれたバハイ教なども創唱宗教である。 これとは別に、「唯一神教」か「多神教 . かの分け方もある。ユダヤ教やその影響を受け ているキリスト教、イスラム教など唯一神教で、一方、多神教で知られているのがヒンズー 教だ。同じ唯一神教でも、ユダヤ教とイスラム教が非常に明確な唯一神を打ち出しているの に対し、キリスト教は、天地の創造主である唯一無限の神が、聖父と聖子と聖霊とにおいて あいまい 存在するという「三位一体。を前面に出し、一種の曖昧さが漂うものとなっている、ユダヤ 教徒とイスラム教徒の対立の激しさや両者の先鋭さは、この辺りに起因しているのかもしれ