る節があった。その期待を裏切られた戸惑い。彳 図表 6 者協議に参加する六カ国の相関関係ー・ー外報部 年表最近の北朝鮮をめぐる動き・ー・ー外報部 デスクはこうした内容を電話やメモで各担当者に送り、記者たちはすぐに取材に走って「部 品」を投げます。デスクは、あらかじめ描いた設計図に沿ってメモを組み立て、完成原稿を出 稿します。こうした作業が数時間に完了するのも、しつかりとした設計図があってのことです。 さまざまなタイプの職人たち こうした文章の設計図は、企画やルポ記事でも大きな威力を発揮します。私の場合、企画記 事を書く前に、あらかじめ取材メモから、基本となるデータやインタビューの引用を取り出し、 プロック ( 文章のかたまり ) ごとに並べて文章の構成を決めます。「最初のプロックでは < さん の談話、真ん中のプロックにはの場面と統計数字、最後のプロックには再び < さんの別の談 話と、これに反対する 0 さんの言葉。そして最後は結論を書こう」というふうに、実際に紙に プロック別に略図を描いてみるのです。ここには写真、あそこにはこんなグラフやメモを入れ る、というように、あらかじめレイアウトを考えて編集者と打ち合わせをしておくと、その後 220
これに加え、「側面図」では角度を変えて、沿 - を・ : でを・鷲二 ~ 。第あ龕 0 一を、・第ま元を イラク「殺し合い」激化 岸部自治体の反応をまとめることにしました。政 皿新政府、手を打てす朝 をイ 7 ド : 一を日の亠 府や防衛庁内の緊張ぶりを描くのは容易ですが、 それだけでは「緊張した」「大変だ」と煽るだけ で、新たな情報を加えることにはなりません。沿 岸部で漁に出掛ける船もあるでしようし、飛行経 を 0 を 一丁政府・専門家ら分析 どど・ルも・ 路に旅客機が差し掛かれば、もっと危険でしよう。 こうした地元の反応をまとめることにしました。 こうした大きな設計図を受け取ると、今度は とー・は 個々の担当者が、それぞれの面の詳細な設計図を 日米、包囲網作りに期待 描いていきます。これはデスクやキャップの仕事 北ーが - イル発物・・行しをまき、ーの第 - ー市・い ! に第とに声い・を第 ですから、当日の実際例は知りませんが、たとえ 中国は批判控える ば「意図」のページでは、こんな設計図を描いた てい・い - 」るに一 サ・物す - 一【こ・イの物ー・藤ⅸ「第る・をしてい ゞ、象できます。 ことカ想イ ・まイル・を一にーーを・有け・ - ・・】・当 ~ ~ いをわない一 - 編」 田〇意図北はなぜこの時期にミサイル発射実 瀬戸際外交の果て軍との妥協米の独立記念日 218
誰に何を伝えるか 第一報はなせ大切か / 会社の広報も同じ役割 / 「事実」を見きわめる三 つの基準 / 「事」「理」「情」のバランス / 要約を冒頭に、結論はわかり やすく / 月並みな表現を避け、記述は具体的に / わかりやすさ、正確さ、 美しさ / メディアごとに「文体」が違う 2 書くためのヒント まず文章の設計図を / 設計図の作り方 / さまざまなタイプの職人たち / ノンフィクションとフィクションの境目 / 「三角測量」が可能にする克 明描写 / 「一一一点保持」によるスクリーニング 3 社会と情報 急速に進むデジタル化 / 物理的な制約を突破 / 「デジタル原住民」は社 会を変えるか / 構想力と分析力が問われる おわりに 241
前に、私は走り書きで、ごく簡単な「設計図」を描いてみました。 〇平面図 ( 一面本記 ) 北が六発ミサイル発射。その着水位置。その後七発目。日米韓の反応。 北朝鮮の声明 〇立面図 三面 ) 北朝鮮の意図 ( 三面 ) 北の能力と、日米の察知能力 〇側面図 ( 社会面 ) 日本海の沿岸自治体の反応 当座の設計図としては、この程度で十分です。ます本記では、その日「いつ、どこで、何が 起きたのか」を書きます。防衛庁や官房長官の記者会見をもとに、日本側の発表内容を詳しく 書き、米国や韓国、北朝鮮の声明といった「間取り」も確保しておきます。できれば時系列に 沿って、「弾頭」部分の着水位置を図に表示すれば、文章でこまごまと説明せずにすむでしょ 立面図は、二つに分けることにしました。安全保障の分野では、「軍事的脅威」について、 「意図」と「能力」を区別して考えるのが一般的です。ある国の「意図」は外部にはわからず、 216
ます文章の設計図を これからしばらく、「情報を伝える」文章のヒントを綴っていきたいと思います。 ある記事や報告を書こうとするとき、冒頭から一気呵成に結語まで、一筆書きのように文章 を完成できる人はまれでしよう。多くはこちらを削ってはあちらをふくらませるという具合に、 行きっ戻りつ文章を磨き上げるのではないでしようか。しかし絵画における下絵と同じで、文 章においても、構図とバランスの土台がしつかりしていることがすべての基本です。文章の綾 や枝葉はいくらでも手直しできますが、基本となる幹の線がずれてしまうと、あとでいくら修 正を図っても、全体のおさまりがっかなくなってしまいがちです。 最もよく使われる方法は、書き始める前に文章の簡単な設計図を書いてみることです。多く の人は、学生時代の記述試験の前に、文章の要点と構成を、答案の余白に書いた経験があるで しよう。要領は、それと全く同じです。ただ、「情報を伝える」文章では、論理構成や考えの 2 書くためのヒント 214
筋道、起承転結や序破急といった作文の定法とは別に、「事実」や「情報」をどこに配置し、 どう並べるのかが重要な役割を果たします。この種の文章で伝えるべきは「情報」であり、文 章を鑑賞してもらうのが本来の目的ではありません。わかりやすく「事実」を並べ、すっと情 報の全体像が頭に入る文章が理想的といえるでしよう。 設計図の作り方 たとえば、ある大きな事件が起きた時に、その事件を家に見立てて設計図を描いてみること にしましよ、つ 必要なのは平面図、立面図、側面図です。利用者がます知りたいのは、各階の間取りや広さ でしよう。しかし平面図だけでは、実際の家のイメージはつかめません。立面図や側面図で平る え 一ム 面図を補い、頭の中でようやく具体的な家の像が焦点を結びます。新聞記事でいえば、事件の を 本筋を書く「一面本記」が、平面図です。一「三面で展開する「解説雑報」は、事件の奥行き報 を示す立面図といえるでしよう。社会面の「雑感記事」は、そのいずれでも見えない側面図と 章 いうこともできるでしよう。具体例をあげます。 第 〇六年七月五日未明、北朝鮮が六発のミサイルを日本海ロシア沿岸部に向けて発射実験する という事件がありました。その夕方には、七発目を発射しています。その日の朝刊デスク会を
著名なジャーナリスト >< さんの仕事ぶりを、担当の同僚編集者から聞いたこともあります。 最先端の科学を取材している >•< さんは、科学者や研究者からじっくりと話を聞いて回ったあと で原稿を書きあげ、編集者に渡します。地の文章で研究の背景や基礎的な考え、全体の状況は 丁寧に説明していますが、科学者や研究者の引用部分は、わざと空白にしてあります。そこで 編集者が、取材した科学者らにゲラをお送りし、本人にカギ括弧の中を埋める文章を書いてい ただくというのです。なるほど、これ以上に正確な引用はありませんし、科学的な間違いや誤 解は防げるでしよう。誰にでも使えるという技ではありませんが、こんな手法もある、という 一例としてご紹介しておきたいと思います。 そういえば、朝日新聞の一面コラム「天声人語」を担当したことのある疋田桂一郎さんから、 あるコラムニストの逸話を聞いたこともありました。疋田さんが直話として聞いた話では、そ の人は長年「天声人語」を担当しているうちに、あるニュースや出来事を見聞きすると、自然 に天声人語びったりの行数で、頭に文章が見えるようになった、というのです。にわかには信 じがたい話ですが、こちらが紙に「設計図」を描いて悪戦苦闘しているのを尻目に、頭からす らすらと原稿を書きあげる同僚や後輩を長年眺めてきた経験から推すと、そんな天賦の「名 人」がいても、不思議ではないという気になってきます。 もっとも、自分の「天賦の才」に確信が持てない方には、地道に「設計図」を描く方法をお 222
まず大切な心得は、「人は、聞き手が知っている程度に応じて話をする」、あるいは、「人は 相手が知らなければ、話をしない」という原則です。耐震の専門家なら、聞き手がある程度、 「耐震構造設計」の仕組みや耐震設計の歴史について基礎知識を持っていれば、その知識量に 応じて話をするでしよう。こちらがまったく基礎知識を持っていなければ、「こんなことも知 らないのか」と内心あきれるか、「これでは、正確に書いてくれないかもしれない」と不信感 を持ちかねません。 インタビューを受ける人が作家であれば、聞き手が自分の作品を読んだうえで質問している かどうかは、ただちに見抜くでしよう。映画監督であれば、自分の作品を見たことがあるかど うかは、質問の内容や仕方ですぐにわかります。最低限、その人の代表的な作品や最新作に目 を通しておくのは礼儀です。 む っ 今はインターネットの検索エンジンという便利な道具があります。相手の名前を入れて、ど を のような情報が流れているかをチェックすることも容易になりました。相手の履歴や家族構成、報 交遊関係、趣味などは、事前に頭に入れておくことができます。 章 インタビュ 1 の場合、多くは事前に質問項目を提出することが求められます。普通のインタ 第 ビュ 1 ならともかく、相手が答えにくい質問や嫌がる問題については、できるだけ表現を抽象 的にしておくのがコツです。
注意すべき点を述べましよう。 一つは、多くの場合、オプションには「現状維持」という項目が含まれる、ということです。 政策決定といえば、何らかの政策変更を連想しがちですが、「現状を選び直す」という「現状 維持」の道も、つねに念頭に置かねばならない選択肢の一つです。 第二は、こうした選択肢の手法は、「想定される限りの可能性を網羅した一覧表」であると いうことです。政策は、思いっきや、行き当たりばったりの状況対応的な弥縫策ではなく、あ らゆる可能性を考え尽くした末の最良の選択でなければならない、という米国流の考え方が、 その基本にあるといえるでしよう。 第三は、政策決定は一連のオプションの連鎖であるということです。先の例でいえば、日米 安保条約の扱いがまず第一のオプションとして提示され、そのうえで在日米軍全体をどうする のか、沖縄返還のタイミングをいつにするかという決定を迫ります。この順序は、政策決定に おける優先順位を示しており、ある決定の先に、次々に道が枝分かれをするという構造になっ ています。ある政策を逆にたどっていけば、政策決定権者が、なぜ、どのようにこうした政策 を決めたのか、論理のプロセスが一目でわかる仕組みです。その政策が結果として間違ってい れば、どの枝分かれで誤ったかが点検できるという意味では、政策の設計図、あるいは配電盤 のような役割を果たすといってよいでしよう。 128
情報の「幹」と「枝葉」 前の章では、どのように情報を収集するかについて書いてきました。この章では、入手した 情報をどのように分析し、管理していくかについて、私なりの経験をもとにいくつかのヒント を述べさせていただこうと思います。情報分析といえば堅苦しく響きますが、実は私たちが 日々、日常で行っている作業にすぎません。たとえば学生であれば、講義の前後に書くレポー ト、勤め人であれば、日々の業務について書く報告書や情勢分析がその例です。文書の形でま とめない方でも、毎日記録しているメモや家計簿などを前に、自分の日常を振り返り、これか らどうしたらよいかを思案するというのは、ごくありふれたことでしよう。ここでいう情報の 分析と管理は、無意識のうちに日々行っているそうした作業を少しだけ抽象化し、距離を置い て眺めてみる方法論のヒントだとお考えください。 さて新聞記者の場合、情報分析には二つの段階があります。一つは、さまざまな形で収集し 分析に役立っ基本技 112