107 頁行 九 4 プレストーリトウスク Brest-Litowsk. 一九一八年三月、ソ連とドイツの間に、単独講和条約が締結 されたところ。当時ソ連の外務人民委員であったトロッキー (Leon D. T 「 otzki, 1877 ー 1940 ) がソ連側代 表としてこれに調印。 デフリュンデ 一四川Ⅱ封邑 Lehen. 俸禄 Pfründe. 簡単にいって俸禄とは、封建的ないし身分的家産制の下で現実の または擬制上の「勤務」に対して与えられる非相続的な給与形態を指す。これに対して封邑では、それを 授ける者 ( 主君 ) と受ける者 ( 封臣 ) との間に高度に人格的な関係・ーー・授封契約に基づく相互誠実の盟約とそ れに伴う独特の身分的 ( すなわち騎士的 ) な生活態度と名誉観念ーーのあることがまず前提され、この授封 関係が存続するかぎり、封邑は私権として封臣に帰属した。 ヴェ ー・ハーは「俸禄」の主要形態として、④主君自身の手許からの賜物 ( De て u 〔 a ( ーー多くは現物 ) とし て給与される場合、⑤勤務地 (Dienstland) が「勤務」に対して与えられる場合、◎臣下が地代・手数料 (Spo 「 tel) ・租税などの収入のチャンスを専有する場合を挙けているが、この⑤④は実質的に封邑に似て いても、そこに人格的な授封契約が欠如していること、また、それらが官職に付帯して与えられたもので ・フフリュンデ
囲ってこの地上に絶対的正義を打ち立てようとする者は、部下という人間「装置。を必要とする。 そのためにはこの人間装置に、必要な内的・外的な。フレミアムーーあの世またはこの世での報奨 を約東しなければならない。そうでないと装置が機能しない。内的な。フレミアムとは、現代 の階級闘争という条件下では、憎悪と復讐欲、とりわけ怨恨と似而非倫理的な独善欲の満足、つ まり敵を誹謗し異端者扱いしたいという彼らの欲求を満足させることである。一方、外的なプレ 、、アムとは冒険・勝利・戦利品・権力・俸禄である。指導者が成功するかどうかは、ひとえにこ の彼の装置が機能するかどうかにかかっている。従って指導者自身の動機ではなく、この装置の いいかえれば赤衛軍・ス。 ( イ・アジテーターなど、その指導者が必要とする部下に、上 動機に、 に述べたようなプレミアムを永続的に賦与することができるかどうかにかかっている。指導者が このような活動の条件下で実際に何を達成できるかは、彼の一存でいかず、その部下の倫理的に まったく卑俗な行為動機によって最初から決まってしまっている。部下の動機は、指導者の人柄 と仕事に対する誠実な信頼が、少なくとも仲間の一部をーーー大部分を、ということもこの地上で はまずありえないーー・ー鼓舞するかぎりにおいて、セーブできるに過ぎない。しかもこの信頼は、 それが主観的に誠実であっても、たいていは復讐・権力・戦利品・俸禄などに対する欲望の倫理
いちず 全体の方向を決める主眼点となっている。政治における一途で無条件的な理想主義は、無資産の ゆえにその社会の経済秩序の維持〔に利害関心をもっサークル〕の外に立った階層にだけ、とはい えないまでも、少なくとも主としてこの階層にみられる。異常な時期、したがって革命期にはと くにそうである。要するに私の言いたいのは、政治関係者、つまり指導者とその部下が、金権制 的でない方法で補充されるためには、政治の仕事に携わることによってその人に定期的かっ確実 な収入が得られるという、自明の前提が必要だということである。政治が「名誉職」としておこ なわれるということは、政治がいわゆる「自主独立の」〔誰の厄介にもならぬ〕人によって、つまり レンテ 資産家、ことに利子生活者によっておこなわれるということだが、他方、政治が無産者にもでき るためには、そこから報酬の得られることが必要である。政治によって生活する職業政治家は純 プフリュンデ 然たる「俸禄保有者」のこともあり、有給の「官吏ーのこともある。前者は、一定の仕事に対す わいろ る謝礼と手数料の形で収人を得ている場合であり ( チップや賄賂はこの種の収入の不規則で形式 的に非合法な変型に過ぎない ) 、後者は固定した現物給与か俸給、またはその両方を得ている場合 である。政治によって生活する職業政治家はまた「企業家」の性格をおびていることがある。昔 の傭兵隊長や官職の賃借人や買受人、あるいはアメリカのポスなどがそうで、このポスは自分の シュポルテルン
108 私権として所有されたものでないという二点で、封邑と原理的に異なった範疇と考えている。 なお、翻訳では「プフリンデ」を前後の文脈から考えて「俸給 , と訳した箇所もある。 ー・ハーは次の二つの特徴をもった人間団体を「アンシュタルトと呼 一八 9 アンシタルト Anstalt. ヴ = んでいる。 ④目的意思によって結成される「目的結社」と違って、所属者の意思表示と無関係に、純粋に客観的 な事実 ( 生まれ、家柄、時には特定の領域内に住んでいるという事実、あるいは特定の領域内でおこなわれ る特定の行動等 ) に基づいて、それへの参加ないし所属が義務づけられていること。 他方、そこでの人間関係と人々の行為は合理的に制定された法秩序によって律せられ、かっその法 秩序の遵守が強制装置 ( 機関 ) によって ( 実効的に ) 担保されていること。政治団体としての「国家 , はこの アンシュタルトの典型である。 一一 0 肥宮廷外顧問官 Räte von Haus aus•常時宮廷に出仕する顧問官でなく、宮廷外の自分の領地に住み、 その都度とくに召集されて会議に参加する顧問官。 一一六 4 役得。フフリンデ s を「 ( 。一言「 iind 。 . 一四ページの注 ( 封邑 Lehen. 俸禄 P ( 「 ( 一 nd 。 ) を参照。 一穴 7 公務員制度改正 Civil se 「 viceRef0 「 m. 合衆国では一八八三年のいわゆる「ペンドルトン法」以後数 次の改革を経て、従来の鑞官制 spoils system を改め、実績主義 Merit Sy em ーー・公開竸争試験による 選抜方式 - 。・、ーが採られるようになった。
出費を一種の投資と考え、自分の勢力を利用して収益をあげるわけである。職業政治家はさらに、 編集者や政党書記、近代の閣僚や政治的官吏のように、固定給をうけていることもある。過去に レーエン おいて、君主、征服者、成功した党首がその部下に与えた報酬といえば、封邑・土地の贈与・各 シュポルテル 種の俸禄であり、貨幣経済の発達につれてとくに役得プフリ = ンデが典型的なものとなって いったが、今日、政党指導者が忠実な奉仕に対して与える報酬は、政党・新聞社・協同組合・健 ザッハリッヒ 康保険組合・地方団体・国家における各種の役職である。政党間のすべての争いは本質的な目標 をめぐる争いだけでなく、とりわけまた、官職任命権をめぐる争いでもある。ドイツにみられる 地方分権運動と中央集権運動の間の争いも、その中身は多分に、どの勢力がーーベルリン人かミ 、ンヘン人、カールスルーエ人、ドレスデン人の中のどれがーーー官職任命権を握るか、をめぐっ おく ておこなわれている。官職への割り込みで後れをとることは、政党にとって、本質的な目標にそ むいた行動をとることよりも、もっと手痛い打撃と考えられている。フランスの政党政治による 知事の史迭は、いつでも、政府の政策綱領ーーこんなものにはほとんど純作文的な意味しかない の変更よりももっと重大な変革としてうけとられ、大きな騒ぎを巻き起こした。多くの政党、 とくにアメリカの政党は、憲法解釈をめぐる古くからの対立が解消して以後は、純然たる猟官政 プフリュンデ
授封された所領内における行政や司法を自分の財布で賄い、戦争のための装備も自分の手でとと のえていたし、その部下である下級封臣〔毯の場合もそうであ「た。このことは当然、君主の権力 的地位にも影響があった。もともとその地位は、主従間の個人的な誠実の盟約をまず前提し、封 レ 1 エン 臣のもっ封邑や社会的名誉の正当性も遡れば君主に由来するという、もう一つの条件が加わって、 はしめて成立しうるものだからである。 ところで、もう一つの君主の直轄支配の方も、最古の政治形態にまで遡って、いたるところに けにん みられる。この場合の君主は、自分に隷属する人間 ( たとえば奴隷、家役人、家人、「寵臣」、ある いは自分の備品倉庫からの現物給与や貨幣給与で雇っている俸禄保有者など ) を使って行政の 掌握を図り、その行政費用は自分の財布や家産領地からの収益で賄い、また軍隊の装備や糧食も 自分の穀倉・火薬庫・兵器庫から調達して、完全に自分の意のままになる軍隊を創ろうとした。 「身分制」団体の君主が自立性の強い「貴族。の助けを借りて支配し、したがって貴族と支配権 を分け合っているのに対し、ここでの君主は、家僕や平民、ーー財産も固有の社会的名誉もなく、 物質的にも完全に君主に縛りつけられていて、自力でこれに対抗する力をもたない階層ーーをみ すからの支えとしている。家父長支配や家産制支配、スルターン制的専制政治、官僚制的国家秩 プフリュンデ
凵な形態の政治的支配ーー伝統的支配、合法的支配、カリスマ的支配ーーについても当てはまる。 どんな支配機構も、継続的な行政をおこなおうとすれば、次の二つの条件が必要である。一つ はそこでの人々の行為が、おのれの権力の正当性を主張する支配者に対して、あらかじめ服従す るよう方向づけられていること。第二に、支配者はいざという時には物理的暴力を行使しなけれ ばならないが、これを実行するために必要な物財が、上に述べた服従を通して、支配者の手に掌 握されていること。ようするに人的な行政スタッフと物的な行政手段の二つが必要である。 行政スタッフは、政治的支配機構が存在しているという事実をーー政治以外のどの機構 ( 経営 ) でもそうだがーーー外に向かって表示するものである。もちろん彼らも、いま述べた正当性の観念 だけで権力者への服従に釘づけされているのではない。そうではなく物質的な報酬と社会的名誉 レーエン * という、個人的関心をそそる二つの手段が服従の動機となっている。封臣における封邑、家産官 プフリュンデ * 僚の俸禄、近代の国家公務員における俸給・ー、、・それに騎士の名誉、身分的特権、官吏たること の名誉を含めた広い意味での報酬と、それらを失うことへの不安。これが行政スタッフと権力者 との連帯関係を支える究極的・決定的な基礎である。カリスマ的指導者の支配の場合でもそうで、 戦士には従軍の名誉と戦利品があり、デマゴ 1 グの追随者には「スポイルズ」、つまり官職の独占
「治安判事 , 、できれば「下院議員、になることで、家柄のよい「紳士」たちにこれが与えられた。 またとくに大口後援者にとってはーー・党財政の大体五〇パーセントは名を秘した贈り主の寄付に まかな よって賄われた・ーー、貴族の称号が最高の娃力であった。 ところで、このシステム全体はどのような効果を生んだか。今日イギリスの国会議員は、二、三 の閣僚 ( と若干の奇人 ) を除いて、一般に訓練の行き届いたイエス・マンに過ぎなくなっている。 ドイツの国会では、自分の議席の机でせめて私用の手紙でも書いて、お国のために働いているよ うなふりだけはしたものである。こんなジェスチアはイギリスでは無用である。議員は投票だ リ 1 ダー けして党を裏切らなければよい。事情に応じて内閣や野党の党首から出される指令をおこなうよ う、「院内幹事」から呼び出しがかかれば、何はさておき登院しなければならない。強力な指導者 リーダー がいる時の全国各地のコーカス・マシーンはほとんど無原則で、完全に党首のいいなりになる。 こうして議会の上には、マシーンの力を借りて大衆の支持を得た独裁者ー、ー・事実上人民投票的な が君臨し、議員はこれに追従する政治的な受禄者に過ぎなくなる。 ところでこういう↓す 旨導者はどのようにして選ばれるのか。まず第一に、どんな能力が選択の基 たくま 準になるのか。それにはーー世界中どこでも逞しい意志が決定的な資質であるが、これに次いで ホイップ
一永井荷風訳 ポードレールやヴェルレーヌなどフランス近代の詩人の作品から、 隹木荷風が自らの琴線に触れた詩を選んで流麗な日本語に移した訳詩集。一 〔緑四一ー六〕定価四六〇円 ー。ー仏蘭西近代抒情詩選ーーー <t ・ベルトラン作 / 及川茂訳 深い闇の彼方から現れては消えてゆく幻想の数々 : 埋もれた詩 . レ人ベルトランによる、幽玄な美しさを湛えた散文詩集。 ②夜のガスパ 〔赤五八九ー一〕定価五ニ〇円一 レンプラント、カロー風の幻想曲 挙 呉茂一訳 ヨーロッパ抒情詩の流れをふまえて選ばれた名作を鏤骨の名訳で贈一 るギリシア・ローマ抒情詩集の決定版。《解説久保正彰》 点ギリシア・ローマ抒情詩選 〔赤一一四ー一〕定価六七〇円一 新 ・ : 今月の重版再開 : 庫 定価六ニ 0 円カウッキー編 / 川口・松井訳 定価六二〇円一 文土屋文明自選 波 ローザ・ルクセンプルクの手紙〔白一四 9 一〕 土屋文明歌集〔緑一〇五・一〕 岩 定価七七〇円 定価一一六〇円岡崎次郎・時永淑訳 / サン作 / 河盛好蔵訳 。ーザ【 ~ , 経斉学入門〔白一四 9 二〕 メゾンテリエ他三篇〔赤五五 9 六〕 定価三一〇円一 ベルンハイム著 / 坂口・小野訳定価五七〇円秋元寿恵夫訳 セ、一プク獄中からの手紙〔白一四 9 三〕 歴史とは何ぞや〔青四一四 , 一〕
啄木詩集 谷川俊太郎編 ① 中勘助詩集 行 挙原子朗編 点大手拓次詩集 新清岡卓行編 金子光晴詩集 波 岩 入沢康夫編 草野心平詩集 一那珂太郎編 西脇順三郎詩集 大 岡 信 贅肉をことごとくそぎ落した感のある晩年のロ語体詩にこそ詩人啄 木の真価はある。編者に人を得て成った清新なアンソロジー 〔緑五四・・二〕定価三六 0 円一 静かな濃密な時の流れの中で、大好きな子どもたちのことなど日常 の細部を大切に書きつづけた孤高の詩人のエレガントな詩歌集。 〔緑五一ー八〕定価四一 0 円一 次々と繰り出される奇怪な耽美・幻想の世界。詩人はそれを口語自一 由詩で表現すべく必死に詩作をつづけた。日本象徴詩の開拓者。 〔緑一一一一三・一〕定価七ニ〇円 日本の伝統や権力支配の構造を象徴的手法で批判した「鮫」をはし - め代表的詩集から秀作を選び、「異邦人」金子光晴の全体像に迫る。・ 〔緑一三一下一〕定価七七〇円 独特の宇宙的感覚と多彩な技巧によって、存在の愛しさをうたう草一 野心平。「定本虹」「絶景」をはしめ全詩集より傑作を精選。 ー一〕定価七ニ〇円一 伝統や因習にとらわれない詩的言語の新しさによって、日本の近代一 詩のスタイルに大きな影響を与えた西脇順三郎の代表作を収める。 〔緑一三〇ー一〕定価七七〇円一