うまろら る馬面がさっと紅潮した。エスポジートが何を言おうとしているか、エスポジートと同時にみん なが何を考えているかがイヴァールにはわかった。誰もすねているわけではない、ただ口を封せ られてしまったのだ、のるかそるかた。怒りと空しさとは時に声も出なくなるはど深い傷を与え あいぎよう るのだ、と。彼らは人間だった、それだけだ。無理に微笑や、愛嬌をつくろうとしなかったの だ。しかしエスポジートは、こうしたすべてをひと言も言わなかった。その表情もようやく和ら たた 、だ。彼はやさしくパレステルの肩を叩いた。他の連中はめいめいの仕事に戻った。また金鎚が 鳴った。広い上屋は、親しみ深い騒音、鉋屑の匂い、汗に濡れた古ほけた作業服の匂いに満た 国 された。大鋸は、エスポジートがしすかにその上に押しだす樽用の新しい材木にくらいついて、 おがくず 切り口のところから濡れた鋸屑が噴きこはれて、パン屑か何かのように、唸 と唸りをたてていた。 放りをたてる鋸の歯の両側からしつかりと木片を押えている、毛深い大きな手を蔽った。樽板が 追切られてしまうと、もうモーターの音しか聞えなかった。イヴァールは大鉋の上に背をかがめて こんばい つも、疲労がやってくるのはもっと遅かった。動かすにい いて、今疲労困憊したのを感じた。い た数週間、鍛錬を欠いたせいだった。それは明らかだ。しかし彼は、この仕事が単なる精密さだ けではないからには、年をとって手仕事がだんだんつらくなることも考えざるを得なかった。こ のう の疲労は同時に老いの衰えを彼に告けていた。筋肉がガタガタになってくると、労働はついに呪 わしいものとなる。それは死の前触れだ。大いに奮闘した夜々に、眠りはまさに死のように深 息子は教師になりたがっていた。彼は正しかった。手仕事についていろいろ論じるような連
すみ しゅろぶ で光り、その上に、またそのまわりに、四隅を太竹でささえた、棕櫚葺きの四角な屋根みたいな ものを照らしだしていた。一、の荒作りの小屋は、はっきりせぬ物影がそのまわりに揺れ動いてい るが、ゆっくりと岸に向って進んでくる。それが河のほば中央に来たときには、黄いろい光のな かに浮きでた、三人の小男がはっきり見分けられた。男たちは上半身裸で、どうも黒人らしく、 円錐形の帽子をかぶっていた。彼らは、脚をわすかにひらき身体を少しかがめて、じっと踏ん張 いかだわぎばら って、最後に闇と水とから抜けでてぎた大きな粗末な筏の側腹に、目に見えぬ波を吹きつけてく る河の、強烈なうねりに対し、釣合いをとっていた。渡し舟がさらに近づくと、男は、差掛けの 国 むぎわらぼう かっしよく と後ろ、川下のほうに、これまた大きな麦藁帽をかぶり、褐色の麻ズボンしか着けていない、大柄 さお 追な黒人を二人見つけた。二人ならんで、筏の後方の河にしすかにもぐってゆく竿の上に、彼らは 落全体重をかけていた。 黒人たちは、同じ鈍い動きで、まさに平衡を失おうとするまで、波の上に あいのこ 身をかがめた。前には、黒白の混血児が、動かす、黙りこくって、自分たちを待ち受ける男のほ うに目もあけす、岸の近づくのを眺めていた。 筏は急に、水に突き出た桟橋の端にぶつかった。ランタンは衝撃で揺れ動 いた。ランタンはや っと今桟橋を照らしだしたばかりなのだ。大男の黒人はじっと動かない。両手を頭上にあげて、 ほとんど沈んでいない竿の先にしがみついていた。が、筋肉は、緊張して、水そのものと自分の ふる わたもり 重量とからくるかに見える絶え間ない慄えが走 0 ていた。そのほかの渡し守は、桟橋の杭に鎖を へさぎ 投けて巻きつけ、板の上に飛ひ降りた。筏の舳に斜め板をかける、粗末な躔ねみたいなものを 260
落 127 りありと読みとれる。そしてわたしは、赦すことなく憐れんでやり、容赦することなく理解して やる。そして、ああ、ついにわたしは崇拝されていると感じるのだ。 ええ、もがきますとも。おとなしく寝てなんそいられるものですか。あなたより高いところに いる必要があるんだ、そう思うといても立ってもいられない。そういう夜な夜な、というよりむ しろそういう朝な朝な、なせって転落は夜明けに起るのだから、わたしは外にでて、興奮した足 あや あお どりで運河沿いにゆく。蒼さめた空に鳥の羽の綾なす雲は薄れ、鳩たちはやや高くあがり、家々 ばらいろ の屋根すれすれに薔薇色の薄明が、わたしの天地創造の新しい一日を告げる。始発の市電が、ダ ッパの果てに、生活の目ざめ ムラークの大通りの、しめつばい空気にベルを響かせ、このヨーロ よろこ の鐘を鳴らす。そのときヨーロッパの何億という人間、わたしの臣下たちは、歓ひのない労働に おもむ 赴くために、ロ中の苦しみを味わいながら、しぶしぶと床を離れるのだ。そしてわたしの思い 転は、知らぬまにわたしに隷属している大陸の空を翔け廻り、わたしは朝日をアプサントのように のろ 飲み干しながら、呪いの言葉に酔い痴れる。わたしは幸福だ、仕合せだ。このわたしが仕合せて ないなどと、あなたが信じることを禁じますよ。わたしは死ぬほど仕合せなんだ ! おお、太陽 思い出すのも胸苦しい青春よー よ ! 浜辺よ ! 貿易風にそよぐ島々よー また横になりますよ、勘弁してください。興奮しすぎたかな。でも、泣きはしませんよ。誰し もときには取乱すものです。楽しい生き方の秘法を発見したときだって、夢ではないかと疑う。 わたしの解決の仕方は、むろん理想ではない。でも、自分の生活がいやになったら、それを変え はまべ
が言った。 「送っていこう」とダリュ あいさっ 「いや」とバルデュッシが言った。「ご丁寧な挨拶には及ばない。わしは恥をかかされたよ」 ふきげん 同じ場所にじっと動かぬアラビア人を彼は眺め、不機嫌そうに洟をすすり、顔をそむけて戸口 ・ハルデュッ に向ったまま、「あばよ」と言った。出て行ったあとに、扉がばたんばたん鳴った。 シの姿は窓の向うに現われ、やがて消えた。足音は雪に吸いこまれた。仕切り壁の後ろで馬がふ めんどり るい立ち、牝鶏どもがおびえた。しばらくして、バルデュッシは、手綱をとって馬を引きながら、 ふたたび窓のところを通った。振返りもせすに、急坂のほうへ進み、ます人の姿が消え、つづい タリュは囚人のほうへ戻った。囚人は動 て馬が消えた。大きな石がごろごろ転がる音が聞えた。 と ダリュから目をはなさなかった。「待ってろ」と教師はアラビア語で言い 自いていなかったが、 落寝室のはうへ向った。しきいを越そうとして、彼は思い直して、机のところへ行き、ビストルを とって、ポケットにつつこんだ。それから、振返りもせすに、寝室に入った。 長いあいだ、彼は自分のソファーに寝そべって、空がだんだん閉さされるのを眺め、沈黙に聞 き入っていた。戦後、ここに到着した最初のころ、彼につらく思われたのは、この静けさだっ ふもと た。高原を砂漠から隔てる山の支脈の麓の小さな村に、彼は職を求めていた。そこでは、岩壁 そび が、北側では緑と黒、南側では薔薇と薄紫に、永遠の夏との国境のしるしとして聳えていたの だ。ところが、彼は、もっと北の、高原そのものの上にある職場に任命された。最初は、石しか すき うねみ《 みの 住まぬこの稔りなき土地で、孤独と沈黙とが彼には何ともつらかった。時には、鋤でつけた畝溝 208 ころ
と恐怖の邦に捕えられて、恐るべぎ試煉を受ける。僧は舌を切られ、物神に仕えさせられ、つい には、この悪意の神をこの世の真の救い主として信じ、悪の支配に協力することを誓い、進んで 新しく来る宣教師を射ち殺そうとする。夢魔に憑かれたような残忍怪異な描写は、ボッシュやゴ ヤのあるものを想い出させる。 『唖者』は小企業に働く労働者を扱う。ストライキは失敗し、要求ははねつけられる。労働者た ちは再び仕事に就くが、面白くない。使用者側に対しては一切口を利かない。しかし、主人の子 かす 説供が急病になると、労働者たちの心は動く。目に立たぬほど徴かだが、動く。この人間の不幸に 対する憐みの心、この率直な善意が、彼らのこわばった気持を優しくときほぐず。 うし ひっち かいぎやく 『ョナ』はむしろ軽い諧謔的な筆致で書かれてはいるが、その主題は重く、諷刺は苦い。ョナは 才能ある画家で、友人があり弟子があり、取巻きに囲まれている。彼は妻を愛し子供たちを愛し 解ている。しかし、彼の成功が逆に彼を苦しめる。彼の成功、彼の友達、彼の家族は、皆一致協力し て彼の仕事を妨げる。仕事ができなくなって彼が倒れる。見いだされたカンヴァスには、画は何も なくて、小さな文字が残されている。それは solitaire ( 孤独 ) と読むのか、 solidaire ( 連帯 ) と読むのかわからない。 『生い出ずる石』だけはプラジル森林地帯に背景をとる。ヨーロツ。ハ人の一技師は、原住民の男 にな たす の信仰を扶け、 ( 自分は信仰を持たない ) その男に代って大ぎな石を荷って搬ぶが、教会には行か ず、逆に河岸の原住民部落へ搬んでやる。原住民は自分たちの身うちとして技師を迎える。技師 しれん ものがみ
292 わたった。 「ああ、忘れてた」とソグラトが言った。「町長が会いたがっている。グラブで食事してる」そ いびき あいさっ れから挨拶もせすに病院のほうへ出かけた。「どこへ行く ? 」とダラストが叫んだ。彼は鼾をか くまねをして、「眠るさ。もうすぐ行列だ」半分駆けだしながら、彼はまた鼾を繰返した。 ぎせぎ 彼よ、中風患者を奇蹟 町長は、ダラストに、行列を見るのに特別席を与えたいとだけ言った。 , 。 的に直すための、肉と米との一皿をいっしょにすすめながら、そのことをダラストに説明した。 国ます、判事の家で、教会の前のバルコンに陣取って、行列の出発を見る。その次には、教会の広 こっかいしゃ と場に通する大通りを通って町役場へ行く。告解者たちは帰りにこの道をとる。町長は儀式に加わ 追らねばならぬから、判事と警察署長がダラストを案内する一、とになる。署長は実際クラブの広場 くちびる 落にいて、絶えすダラストのまわりにつきまとい、唇には疲れを知らぬ微笑を浮べて、何かわけが わからぬが、明らかに好意を示す長話をしきりに述べたてた。ダラストが下に降りるとき、署長 は走っていって、彼のために道をあけ、前方の扉という扉はあけつばなしになっていた。 さか 旺んな陽さしを浴びて、相変らすがらんとした街のなかを、二人の男は判事の家へ向った。ニ いた。ところが、突然、近くの通りで爆竹が鳴って、家 人の足音だけが静けさのなかに鳴り響 くび という家から重たい入り乱れた群れをなして、頸の禿けた禿鷹どもを空へ飛びたたせた。すぐ に、何十もの爆竹があらゆる方角で破裂した。扉が開いた。家々から入が出はじめ、狭い通りを いつばいにした。判事はこのつまらぬ家にあなたを迎えるのは自分にとって光栄であるとダラス
力、 し笑地悲 ら 早の 数 っ平 く岩 時カ る大 間 き私奴れ 、す 日微 山 なな 犬 、笑 いが ど 。け 目到 足をた散来 も こを あ 、塩 り 潰は きカ な い鉄 て走 し 。る い奴 の 風 がう 、ち 、す 国成餓が金 私何 0 ) 鬼ぎを 匂 き群射来 探も し、 をし し何 な仕 の人 。る じも 鳥度 め過 るぎ だた 、ろ ぬ奴 、だ 容あ た床 四思 、砂 八れ のけ 漠打 方る 支し、 径早 すわ はを っ噴 あれ 、な 。カ にあ で何 走し、 / 、快けを が威 177 い と ー 7 よ う く 日 に い た つ て 嗅かっ善 る の か 。あ私 の み を はや押お枷 し し て や る の だ 起 を 見 る を ら 能 の 主 は た 笑 い い つ は れ唾だそ は が け て あ逃遅 け る 放 従 さ せ め射支頭かれ 配 る と ろ に つ に は 王 の た る よ 追 慈 を て 悪 の ら せ す べ て を て と王国 永をの 劫護 にら でらる 街 の 唯 る ら か と と う よ る あ さ あ 銃 す 起 打 で い は れ と を で 夢 み よ う と う と る し、 っ で り ど 足 う ク ダ カ ; く る る ま い の 脚 は 。飢め だ ろ う 。来間 が た棄ぎこ よ う に こ罪私 の 増 す よ う に ど も の 側アえに 対 : い走歩ル憎奴 で っ て い る 短 い ル が と 悪 と 0 こ う て が し、 ら の た ら に っ そ う よ く ん ぐ や が て 走 り だ す ノじ、 耐 強 く 小 走 り ら さ 力、 成 就 れ の し、 た る と い面た に 私 0 よ つ い あ せ な を の る と の ロ る け ノつ ち を 。尾 の さ銃私 に 上 の のく 衣 の な よ ち は い あ る わ う た の で か に の 黒 し、 私 オこ が き に う よ 泉 へ 空 ら 変 が 射ー て ら の て 倒 る フ ダ の 、そ制悪 の は今人赦そ ど う し て は 世 界 、を物 。専憎神 が な く 配 る よ う 悪 を人権 お よ に る が ネ申 よ 、汝 の っ て き た の あ る た め 二あ 重えそ そ憐が っ憫躄情 をけ 、射う容 て 無 と そ の 赦 く ひ と 屈 見 る い つ も の あ の に 径 の 果 て に 頭 活弯のわ た め に 、私 が 出 け 、た と に は か お お う か方わ の 、飛 奴ぶ早 よ う る ば し、 じ ら を は 日 日 も で ん 。み や し く く う よ みと か頭
福になれるだろうに」まもなく、名づけようのない不安が彼女をひたした。彼女はマルセルから 身をはなした。だめ、自分は何ものにも打克てなかった。幸福でなかった。真実、解放されるこ となしに、死んでゆくだろう。心臓が締めつけられた。二十年も前から引きすって歩いていたこ とに突如として気づいた、無量の重みの下で、息がつまった。そして今や、その重みに対して、全 力をあげてもがいていたのだ。彼女は自由になりたかった。マルセルも、また他の人たちも決し て自由ではなかったにしても。目をさました彼女は、寝台の上に身を起し、ごく間ちかに聞える 呼び声に耳を立てた。しかし、夜のはずれから、オアシスの犬どもの弱々しいが疲れを知らぬ遠 国 王吠えが響いてくるだけだった。かすかな風が立って、棕櫚の林のなかを軽いそよぎが渡るのが聞 えた。風は南から来た。そこでは、砂漠と夜とが、また改めて不動の空の下に、今や一つに溶け 合っていた。そこでは生が停止し、もう誰も老いることもなく、死ぬこともなかった。やがて、 落 風の流れは涸れ落ちた。そして彼女は何かの音を聞いたかどうかももう定かではなくなった。と こた にかく自分の意のままに黙らせたり、呼びだしたりし得るが、もし今すぐにそれに応えないな 今すぐに、そ ら、もう決してその意味を知り得ない、一つの声なき呼ひかけを除いては う、少なくともそのことは確かなことだった・ 彼女はしすかに起きた。寝台のそばにじっと動かず、夫の息づかいに注意を集めた。マルセル よろいど 一瞬の後に、寝床の温みが去って、寒さが彼女を包んだ。正面の鎧戸を通して、 は眠っていた。 外燈からしのひこむかすかな光のなかで、手さぐりで着物をさがし、しすかに身にまとった。靴 154
落 言葉は丁重だが、少しは腹が立つ。相手はすかさす ^ とっとと失せろ》とどなる・背後では、警 笛が二、三鳴りだしている。〈失礼な言葉は慎みたまえ、君こそ交通妨害をしているじゃないか》 ときつばり言ってやると、短気な相手は、エンジンの故障がはっきりしたためにかっとなっちま ったんですね、 ^ なぐりあいならいつでもこい、一発お見舞いしてやるぞ〉とどなりだした。あま ずうずう くちぎたな りの図々しさにさすがのわたしもかあっとして車を降りた、ロ汚いやつの横っ面をひつばたいて やろうとしてね。わたしは自分が臆病だと思っていないし ( 人がどう思おうと勝手ですがね ! ) そのときの相手は頭の分だけ背が低いし、それにわたしの腕力はいつも相当なものだった。事実 なぐりあいになってたら、なぐられたのは相手のほうで、こちらではなかったと今でも思ってま すよ。ところが車道に降りたとたん、群がりはじめた群衆のあいだからひとりの男がとびだし またが ート・ハイに跨ってるのはそれだけ て、こっちに駆け寄ってきた。〈お前は、最下等のけすだ、オ 怯で不利だ、だのにお前はなぐる気か、やれるものならやってみろ〉というわけ。この銃士君のほ うを振向いたことは振向いたけど、じっさいは見えなかった。なせって振向いたとたん、オー バイのエンジンがうなりはじめ、わたしは横っ面に一発ガーンと食らったから。なんのことやら ぼうぜん 見当もっかないうちに、オ ート・ハイは走り去る。呆然として機械的にダルタニャン君めがけて一 歩踏みだしたとたん、たくさん行列した車のあいだから警笛のけたたましい響きが起る。また信 号が青になったのだ。こっちはまだ少しはんやりしていたけど、わたしを詰った馬鹿者をぶちの あぎら めすのは諦めて、おとなしく車に戻り、走りだした。通りすぎるまで、馬鹿者は〈間抜けめ〉と
落 こうは思わないでくださいよ、友人ってやつは、毎晩都合のいいときに電話をかけてくるもの だ、今夜、君は自殺しようとしてるんじゃないのかい》とか、単に《話し相手がほしくないか い〉とか、 ^ 外出する気はないかい〉とかね。そうじゃなくて、まあまあ、こっちがあいにくひ とりばっちじゃなくて、美しきかな人生なんて言ってる晩にかぎって、やつらは電話をくれるも んですよ。自殺といえば、こいつはむしろ友人のほうから仕向けてくる。《君は責任感が強いから かぶ ね、心配だよ〉とかなんとか言ってね。神様、友人連中の買い被りからわれらをまもりたまえで しんせき すな ! 愛するのが役目である連中、つまり親戚とか係累 ( たいした表現ですよ ! ) について は、別ですよ。彼らは言うべき言葉を知っている、ところがこの言葉ときたらむしろ人殺しの弾 たいした裏切り者 丸ですね。彼らの電話は騎銃をぶっ放すようなものて、しかも狙いが正確だ ですよ ! 転え ? 夜って、どの夜です ? ああ、じきその話になります。急がないでください。それに、 この友人と係累の話は、ある意味で物語の眼目なんですから。さて、以前、ある男の話を聞かさ れたんですが、そいつの友人が投獄されたので、親友の味わえないような安楽は自分も享受すま いとして、毎晩部屋の床の上に寝ていたというんです。ねえ、いったい誰がわれわれのために、 、ですか、わた 床の上に寝てくれるでしようか ? はたしてわたし自身にもできますかね ? いし しはそうなりたいと思っている、だからやがてはでぎますよ。そう、われわれはすべていっかは できるようになる、こいつが救いです。でも難かしいかな、なせなら友情ってやつはほんくらだ わら