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検索対象: 限りなく透明に近いブルー
153件見つかりました。

1. 限りなく透明に近いブルー

「あなたあの時枕から羽が出てるのを見てたわ、終わってからそれを引っ張り出して、羽って柔 かいんだなって、あたしの耳の後ろや胸を撫でて床に捨てたのよ、意えてる ? ーはメスカリンを持って来た。何してたの一人で ? と抱き寄せ、べランダで雨を見てい たよ、と答えるとそういう話を始めた。 僕の耳を軽く噛んでバッグからアルミ箔に包まれた青いカプセルを出しテープルに置く。 雷が鳴り雨が降り込んでくるのでべランダの戸を閉めるように僕に言う。 ちょっと外を見ていたいんだ。 ( 」さい頃雨見なかった ? 外で遊べなくてさ、窓からよく雨を 見たよ、 しいもんだよ。 「リュウ、あなた変な人よ、可哀想な人だわ、目を閉じても浮かんでくるいろんな事を見ようつ プ てしてるんじゃないの ? うまく言えないけど本当に心からさ楽しんでたら、その最中に何かを 叟したり考えたりしないはすよ、 ( う ? あなた何かを見よう見ようってしてるのよ、まるで記録しておいて後でその研究する学者みた いにさあ。小さな子供みたいに。実際子供なんだわ、子供の時は何でも見ようってするでしょ ? 限 赤ちゃんは知らない人の目を」しっと見て泣き出したり笑ったりするけど、今他人の目なんかしつ と見たりしてごらんなさいよ、あっという間に気が狂うわ。やって見なよ、通り歩いてる人の目

2. 限りなく透明に近いブルー

える。レイ子は本当に寝てしまった。ロで息をしている。カーテンで仕切られた奧の物置きから 毛布を出して体にかけてやった。 ヨシャマは腹を押しながら戻ってきた。ロの回りを袖ロで拭っている。ゴム草履の先にも黄色 い汚物がついていて、体中から酸つばい匂いが漂う。レイ子のかすかな寝息が聞こえる。 ーティーだぞ」 「ヨシャマ、あした来いよ、 オし言うて、俺は別になあ。 「ああ、ケイは楽しみにしてるよ、またクロンボとやりこ、 きようレイ子どうしたんや ? 荒れてたなあ」 ヨシャマの向かいに座る。ジンを一口飲む。 「きのう俺のとこでオキナワと喧嘩したのさ、レイ子のやつまた注射うまくいかなくてさ。 太ってるから血管出ないだろう、それでまたオキナワがイライラして全部打ったんだ、レイ子 プ の分までみんな打ってしまったのさ」 近 「全くアホゃなあこいつらも、それでリュウもそれ見てたんか ? アホみたいに見てたの ? 」 透 「違うよ、俺はお先に打ってグッタリさ、のびてたよべッドで、死ぬかと思ったんだぞ。恐かっ りた、ちょっと量多すぎてさ、恐かったよ」 限 ヨシャマはジンに溶かしてまたニプロールを二錠飲む。 空腹を感しるが何も食べる気になれない。味噌汁だけでも吸おうかとガス台にあった鍋を見る

3. 限りなく透明に近いブルー

間じっと見てごらんなさいよ、すぐ気が変になるわよ、リュウ、ねえ、赤ちゃんみたいに物を見 ちゃだめよ」 ーは髪を濡らしている。冷たいミルクと一緒にメスカリンを一カプセルすっ飲む。 「俺は別にそんなに考えたことないよ、結構楽しんでるんだけどな、外を見るのは楽しいよ」 タオルでからだを拭いてやり、濡れた上衣をハンがーに吊るす。レコードかける ? と聞くと ーは静かな方かいいと首をった。 車でドライプしたことあるだろう。何時間かかけて海とか火山に行くんだ、朝まだ目 が痛い時に出発して途中景色のいい所で水筒からお茶飲んだり、昼には草っ原で握り飯食べた してそういうありふれたドライプだけど。 その走ってる車の中でね、い ろいろ考えるだろう ? きよう出発の時カメラのフィルターが見 つからなかったけど、どこにしまったのかなとか、きのうのお昼テレビに出てたあの女優の名前 なんていうんだったかなとかさ。靴の紐が切れそうだとか事故でもやったら恐いなとか、もう俺 の身長も止まったなとかね、い ろいろ考えるだろう ? するとその考えが車から見る動いてい 景色と重なっていくわけ。 家とか畑がどんどん近くなって、また後ろに遠去かるだろう ? それで風景と頭の中が混しり 合うんだよ。道路の停留所でバス待ってる人達やヨロヨロ歩いてくるモーニング着た酔っ払いと

4. 限りなく透明に近いブルー

/ 1 三ロ ト見を本にするという話があった時、装幀をやらせて欲しいと頼んでみた。だって俺はこれを 聿日きながら、もし・个にできるならリリ ーの顔で表紙を飾ろうとずっと思っていたんだから。 この写真を億えているかい ? 〃ナイアがラ″で最初に会った時、撮ったやつだよ。あの時俺達 はアプサンを何杯飲めるか競争しただろう ? 俺が 3 杯目の途中で店にいたオランダ人のヒッ プピーのライカを借りて写したんだ。リリ ーはこの写真の後、 9 杯目で倒れてしまったから憶えて いないかも知れないなあ。 今どこにいるんだ ? 4 年則だったか、一度ハウスに行って見たけどいなかった。こ の本をもし買ったんなら連絡してくれ。 ルイジアナに帰ったオウガスタから一度だけ手紙がきた。タクシーの運転手をやってるそう 限 ーにもよろしくって書いてあった。ひょっとしたらリリーはあの / ーフの絵描きさんと 結婚でもしたのかも知れないなあ。結婚してても、 しいからできたらもう一度だけ会いたいと俺は への手紙ーーーあとがき

5. 限りなく透明に近いブルー

「ジャクソンとはあまり親しくするなって何度も言ってるしゃないの、あの人から睨まれて るのよ、いっか捕まるわ」 若い男かうたっていたテレビを消してー ) ) ーが一言った。 もう終わりにしようぜ、そう言ったオスカーがべランダを開けて傷口に染みるように入ってき た分たい風、僕はあの心臓が凍りつくような新鮮な風を田 5 い出している。 ポプの恋人でタミという女が、みんなまだ裸でぐったりしてる時に入ってきて、ポプに殴りか かり止めようとしたケイと大喧嘩になってしまった。タミのおにいさんは有名なやくざで、タミ はその事務所へ駆け込もうとしたので、仕方なく友達だと聞いたリリー に見得してもら、っためこ こに連れて来た。ついさっきまでタミがそこのソフアに座って殺してやる、とわめいていた。ケ イの爪で脇腹を引っ掻かれて。 モコを後ろから突き上げる。尻を浮かせて蟹を持ったまま顔を歪め、ワインを飲もうとして体を 揺すられ鼻に入れてしまった涙を出してむせ。それを見たケイが大笑いする。ジェイムズ・プ ラウンが歌いだした。レイ子が這ってテープルにたどり着き、ペ。 ハミントワインを一息に飲み干 して、おいしい、と大声をあげた。

6. 限りなく透明に近いブルー

限リなく透明に近いプルー か、リャカーにみかんをいつばい積んだおばさんとかさあ、花畑や港や火力発電所がね、目に 入ってすぐにまた見えなくなるから頭の中で則に隸い浮かべていたこととしっちゃうんだよ、 わかるか ? カメラのフィルターのことと花畑や発電所が一緒になるんだ。それで俺は自分の好 きなようにその見る物と考えていたことをゆっくり 頭の中で混ぜ合わせて、夢とか読んだ本とか 記慮を捜して長いことかかって、何て言うか一つの写真、記念写真みたいな情景を作り上げるん 新しく目にとび込んでくる景色をどんどんその写真の中に加えていって、最後にはその写真の 中の人間達がしゃべったり歌ったり動くようにするわけさ、動くようにね。すると心すね、必す ものすごくでつかい宮殿みたいなものになるんだ、いろんな人間が集まっていろんな事をやって る宮殿みたいなものが頭の中ででき上がるんだよ。 そしてその宮殿を完成させて中を見ると面白いんだぞ、まるでこの地球を雲の上から見てるよ うなものさ、何でもあるんだから世界中の全てのものがあるんだ。どんな人でもいるし話す言葉 も違うし、宮殿の柱はいろんな様式で建てられていて、全ゆる国の料理が並んでる。 映画のセットなんかよりはるかに巨大でもっと精密なものなんだ。いろんな人がいるよ、本当 にいろんな人が。盲人や乞食や不具者や道化や小人、金モールで飾りたてた将軍や血れの兵士 や女装した黒人やらプリマドンナや闘牛士とかボディビルの選手とか、砂漠で祈る遊牧民とか

7. 限りなく透明に近いブルー

「いや、やってるよ、やってるけどなあ、リュウはどうなんだ ? 「錆びてきたよ」 メイルは立ち上がって売店からコーラを二本買ってきた。半分残っていたポップコーンを差し ぬる 出す。時々生暖い風が吹いてくる。 ニプロールで感覚の鈍くなった喉を炭酸が刺激する。黒いフェルトに置かれた飾り縁のある小 さな鏡に、黄色く濁った僕の目が映っている。 「ドアーズの〃水品の船 , 昔演っただろ ? あれ今聞くと涙出るな、あのピアノ聞くとまるで自分が弾いてるような気分になってさ、たま らなくなるよ。も、つすぐ何聞いてもたまらなくなるよ、つになるかも知れないな、みんななっかし いだけになってさ。も、つ俺はいやだよ、リュウはど、つするんだ ? も、つすぐお互いにはたちにな るんだからなあ。メグみたいになるのはいやだよ、メグみたいな奴を見るのももうごめんだな」 「またシューマン弾くのか ? 「そんなことはないさ、でもこんな汚ならしい生活とはもうおさらばしたいよ、何をしていいの かなんてわからないけどな」 小学生が黒の制服を着て三列に並び下の道を通って行く。旗を持った先生らしい女が大声で何 か注意している。金網に寄りかかった長い髪と疲れた格好の僕とメイルを、立ち停まってしっと

8. 限りなく透明に近いブルー

以来からだおかしくて店にも出てないのよ。車の修理もしなきやだし、あれひどく引っ掻いたも のねえ、衝突のところはヘっこんでなかったけど、今塗装高いから本当に困るわ。でももう一度 やってみたいね、リュウ」 ) ) ーが一一一一口う。その声が曇っている。古い映画を見ているような、遠 ソフアから立ち上がってー ーが長い筒でも使って声を送ってきているような感じだ。今ここにいるのは、ロだ の人形で、すっと以前に録音されたテープが回っているようなそんな感 けを動かす精巧なリリー し・ 0 僕の部屋でからだを被った寒気は、どうやっても消えなかった。セーターを出して着ても、べ ランダの戸を閉めカーテンを引いても、汗は出てきたが寒気はすっと残ったままだった。 閉めきった部屋では風の音が小さくなり、耳鳴りだけが聞こえるようになった。外が見えなく なると閉じ込められている感しになった。 外など気にかけていなかったけれど、まるですっと見ていたかのように道路を横切る酔っ払い や、走っていく髪の赤い女や、走る車から投げられる空罐や、黒々とのびるポプラや、夜の病院 の影と星が不思議にありありと目に浮かんできた。同時に外界と遮断され自分が切り捨てられた ような気になった。部屋にいつもとは違う気体が充ちて、息苦しさを感じた。煙草の煙が上がり どこからかハターの隹 ~ げる . 匂いかした。

9. 限りなく透明に近いブルー

116 「何でインド行かなきゃいけないんだ、そうじゃないよ、ここで十分さ。ここで見るんだ、イン ドなんか行く必要ないよ」 「じゃあで ? いろいろ実験したりするのか ? どうするんだか全然わからんな」 「うん奄にもよくわかってないんだ、自分でもどうしたらいいのかよくわからないからなあ。た だインドなんかには行かないよ、行きたいところなんてないなあ。最近さあ、窓から一人で景色 を見るんだよ。よく見るなあ、雨とか鳥とかね、ただ道路を歩く人間とかね。すうっと見てても 面白いんだ、物事を見ておくって言ったのはこういう意味だよ、最近どういうわけか景色がすご く新鮮に見えるんだ」 「そんな年寄り臭いこと言うなよ、リュウ、景色が新鮮に見えるなんてそれ老化現象だぞ」 「バカ違うよ、俺の言ってるのは違うよ」 「違わないよ、お前は俺よりすっと若いから知らないだけさ、お前な、フルートやれよ、お前フ ルートやるべきだよ、ヨシャマみたいなアホとっき合わないでちゃんとやって見ろよ、はらいっ か俺の誕生日に吹いてくれただろ。 レイ子の店でさあ、あの時うれしかったよ。あの時何かこう胸がムズムズしてきてさ、何とも 言えない気分になったんだ、すごく優しい気分にな。うまく言えないけど喧嘩した奴とまた仲直 りしたみたいなそんな気分さ。あの時俺思ったんだ何てお前は幸せな奴なんだって思ったよ、お

10. 限りなく透明に近いブルー

「ヨシャマ呼んでたわよ、あっちで。カズオががードマンにやられて屋我したって」 メイルはまた黒いフェルトの前に座り込んだ。おいメイル、田舎帰る時は知らせてくれよ。 クールを一籀投げてやる。 「ああ、お前も元気でな」 透明な目 ( で作られたプローチを投げて寄こした。 「やるよリュウ、それ水品の舟だぞ」 「何だモコ、そんなに汗掻いてこんなバンドで踊っておもしろいか ? 「何言ってるのよ、楽しまなきゃ損じゃないの」 吸い口がビショビショに濡れたジョイントを音をたてて吸いながら、ヨシャマが手招きしてい る。 「カズオあはや、がードマンの見ているすぐ前でやりやがって。可哀そうに逃げようとしたとた 。ヾットでやで」 ん足やられたよ。くそ、まったくインケンなガードマンやなあ 「病院連れて行ったか ? 」 「ああケイとレイ子がな、レイ子はちょっと店に一民ってみる言ってたよ。ケイがカズオのアパ トまで送って行ったはすや、しかし腹立つなあ、頭にくるよなあ」