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検索対象: 家族関係を考える
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1. 家族関係を考える

加してきているように思われる。男性にも生じるが、女性に多いのが特徴的である。ともかく 食物を一切受けつけず、がりがりに痩せていても、本人はその姿がいいと確信している。その 上、無茶苦茶に運動をしたりすることさえある。一般に頑張り屋が多い。料理に関心を示し、 とい、つよ、つ 家族のために料理をつくるが、家族の食べるのを見ていて、自分は一切食べない、 な例も多い。そのままほうっておくと餓死することもあるので、医学的、心理学的の両面から 治療をすることが望ましい。 ここでは思春期拒食症のことを述べるのが目的ではないので、一般論はこの位にして、事例 の方に話を戻すことにしよう。母親の話によると、父親も母親も社会的地位の高い人で、子ど もの教育にはいろいろと配慮がなされてきたらしい。母親も職業をもって活躍している人であ るが、子どもとの接触をもつようにつとめて努力を重ねてきた、ということである。両親共に成 リとやり抜く方で、父親は次善につくような 功しているが、どちらかと言えば、母親が・ハー タイプの人であるという。これらの話を聞いていて、私も別にこれと言って指摘できるような 欠点を見出すことはできなかった。娘さんの方も、あまり多弁ではなかったが、家庭において 娘 何か不満を感じるようなことはないと言う。 このような話合いを続けていて、私は既に 3 章 ( 親子であること ) に述べたのと同様に、こ母 く。このことは、母親が職業をもっからいけ の母親に「土のにおい」の無さすぎることに気づ

2. 家族関係を考える

家族のしがらみ 高校生の息子が家出をした、というので両親そろって相談に来られたことがあった。両親と というよりは、学校からも近所 もに教育には熱心であり、親子の間にもそれほど問題がない、 からも、いい親子関係であると羨ましがられるほどであった。息子も大変によい子で、先生か らも好かれていた。このように「よいことずくめ」で安心しきっていたときに、息子が突然に 家出したのだから、親としては意外でたまらなかったであろう。 ところで、この息子さんの家出の目的は、自分は一人子であまりにも甘やかされていて不甲斐 とい、つけ・ . なげ」な ないので、この辺で自立し、将来成功した後に両親を迎えて共に暮らしたい、 ものであった。ただ、家出をしたときに高校の制服のままだったので、都会に出て、まず百貨 店で服を買おうとしたところ、イージー・オーダーなので、明日お届けしますがと言われ、そ れでは都会の親戚に暫く留まり、そこで服を受けとってから、ということにしたところ、親戚 の方には心配した親から既に通報がいっていたため、そこで雄図空しく挫折することになった のである。 これはまったく、ほほえましい家出であるが、このような家出あるいは家出に類することを 経験された人は多いであろう。あるいは、家出を実行したことはないが、家出したいと思った

3. 家族関係を考える

うるさい親戚 「親戚の泣き寄り」などという言葉があるように、平素は疎遠にしているような親戚でも、不 幸なときには寄ってきて共に悲しみ慰めてくれる。こんなときは親戚の有難さ、血のつながり のもっ暖かさをしみじみと感じるものである。それは「血」という不可解なものによってつな がっているだけに「理屈抜き」の心の支えとなってくれる。 ところで、これとは逆に「厄介者」の親類縁者によって常に不愉快な気持を抱かせられてい といっていいだろう。長らく会 る人も、極めて多い。そのような体験のない人の方が少ない、 っていない従兄が立派な見なりでやってくる。話を聞いてみるとなかなか景気よくやってい て、今度事業を拡大すると言う。それについて少し資金を援助して欲しいとのことだが、親類 のことではあるし、それに相当な利益もあげそうだし、とのことで話に乗ってしまう。ところ が、その後何の音沙汰も無いので連絡してみると、相手は詐欺の常習犯だったなどということ もある。誰でもある程度の地位や財産ができると、人を援助したくなったり、財産を一挙に増 やしたいような心境になるものである。「あなたは親類の中の出世頭である」とか、「他人のた めにつくす親切な気持を小さいときからお持ちだった」とか言われ、しかも、他人の援助をす ることによって大きい利益を得るとなったら、つい金も出したくなるものである。ともかく、 156

4. 家族関係を考える

それを克服してゆくことのできない人は、ともかく「やさしい」異性を求めることにな る。それは父親や母親代理のやさしさと、異性の魅力をあわせもった像として心に描かれる 現実にそのような人を獲得することは実に難しい。やさしい兄のような夫は「近親相姦」 を恐れるあまり、性的不能に陥ることもあるし、やさしい姉さん女房と思っていたのに、暫ら くすると太母の本性をあらわし、夫を一口に呑みこんだりしそうになることもある。 少し極端なことを書いたが、「安寿と厨子王」をはじめ、わが国には、姉が弟のために犠牲 となるお話が多くある。わが国では、血のつながりをもたない真の内なる異性像を心の中に結 実させることが難しいので、このような美しくあわれな姉の姿の中に、内なる異性の像を重ね 合わせてみる人は多いであろう。姉と弟というパターンも、日本人の心性を考える上でのひと つの鍵となりそうに思われる。 異性のきようだいを持たぬ人は、異性に対して非現実的な期待や願望をもちやすい。もとも と、誰しも異性に対しては自分の内的なものを投影しやすいのであるが、きようだいとしてあ る程度生活を共にすると、異性の現実像が大分解ってくるので、現実に沿うた修正がなされる わけである。 最近では子どもの数が減少したので、異性のきようだいを持たない人が多くなった。そのよ うな人が結婚して子どもができたとき、母親は男の子を、父親は女の子をどのように扱ってい 123 きようだし、

5. 家族関係を考える

るく育てばよいという考え方なので、むしろ、小学一年生の弟の方が、成績はまずまず普通な がら、人好きのする子で、こちらの方を可愛がっていた。ここに、父と娘、母と息子という対 ができあがり、何かにつけて、ものの考え方も対照的であり、家族が両極分解しそうな感じが あった。昔と違って最近は子どもの数が二人というのが多く、ともすると家族が分解する傾向 があるが、この家では特にそれが強かった。 話がすすむにつれて家族関係の深いダイナミズムが明らかになってきた。実は、この母親自 身がお父さん子だったのである。母親は自分の夫と比較して、自分の父がどれほど素晴らしく ハリと行動する人であった。彼女は父のお気 男らしいかを力説した。母親の父は事業家でパ に人りとして、あちこちと連れて行って貰い、高価なものもよく買って貰った。縁談はたびた びあったが、その話のたびに父親は気難しくなり、縁談が壊れると機嫌がよくなった。そのう ち彼女は婚期を逸しそうになるし、父親に対する非難も聞こえてくるようになった。父親は彼 女に対して、結局は結婚というのは一種の妥協なのだから、と言い、そんなに取柄がなくとも 無難な方がいいから、と現在の夫との結婚をすすめた。彼女の年齢が高くなっていたこともあ しことはなく、彼の家は経済的にも彼女の家よりは下であった。結婚すると決娘 り、条件は、、 と 父 まったとき、彼女の父は、「お前もお父さんのそばでさんざん好きなことをして暮らしたので、 これからはいろいろ苦労するのもいいことだろう」と言った。しかし、「あまり辛かったら、

6. 家族関係を考える

と言ってよいほどの苦痛を味わっている人たちがいるのである。そのような点をまず考えてみ る」とにしよ、フ。 家庭内暴力 最近はジャーナリズムでも取りあげられるようになったので、一般にもよく知られていると 思うが、家庭内暴力の事件が多くなってきている。われわれ心理療法家も、そのような相談を 受けることが多い。このことは、現在のわが国の家族の在り方を考える上において、示唆する ところが大と思われるので、ここに一例をあげてみることにしよう ( と言っても、われわれは実 例をそのまま公開することは許されないので、ある程度の変更や、抽象化を行うことを了承されたい ) 。 最初に相談に来られたのは母親であった。表情の暗さと沈みこんだ様子が印象的であった。 母親の話によると、高校二年生の息子が母親に乱暴して困るという。最初はそれはどでもなか ったが、今はなぐられて体中にあざができて、時には「生命の危険を感じるときがある」との ことである。父親にはさすがに暴力をふるうことはなかったが、とうとう父親が見るに見かね て母親をかばおうとした。自 5 子は一瞬ひるんだように見えたが、父親に向ってゆき、父親はた ちまちはねとばされ、自分の書斎に退散してしまった。それ以来、息子の乱暴はとどまるとこ ろがなくなって、とうとう学校の先生に相談した。すると、先生は「あんなよい子が ? 」とい 9 いま家族とは何か

7. 家族関係を考える

親に似ているために、母親の考える「よい子」のイメージと異なることになって、どうしても 拒否されることが多くなる。次に生まれてきた妹は、これに反して、母親のもっ理想像にびつ たりであると、この子は「よい子」の典型になってしまう。 ここで重要なことは「よい子」のイメージが極めて単層的であるという事実である。父母の 考えが錯綜するのではなく、母親がむしろ父親の考えを排除した形でイメージをつくり「その 上、昔に比して母親のコントローレま ノカ子どもに及ぶ程度が強くなっているので、単純なよい子 とわるい子の対ができあがってしまうのである。しかも、母からみてわるい子と思える子も、 父からみるとむしろよい子とみえるとなってくると、ここに今まで何度も例にあげたような、 家族の中の分極作用が生じてくるのである。 このような場合は、きようだいの背後にある両親の関係が問題となってくるので、その改変 もなかなか困難である。ここで治療を受けた兄の方がよい子になってくると、妹の方がわるい 子になるという例もよくある。家族は全体として・ハランスをとっているので、それほど簡単 に、わるい子がよい子に変るだけというような変化は生じ難いのである。このようなときは、 次は妹の方を引き受けながら、両親の関係ともども、家族全体の在り様を変える努力を続けね ばならない 一人子の場合、親としては親類とのつき合いや、近所の親しい人との交流によって、きよう

8. 家族関係を考える

対決を通しての安定 現在における家族関係の難しさの方を強調しすぎた感があるが、このことはいくら強調して もしすぎでないかも知れない。実際、われわれのところに子どものことで相談に来られる両親 で、社会的には立派に活躍しておられる人は多い。 学校の先生で、自分の級の子どもたちの指 導はうまくできるのに、どうして自分の子はうまく育てられないのか、と嘆かれた方もあっ これらは、単に父親が悪いとか、母親が悪いとか言うのではなく、既に述べてきたような、 現在における家族関係の困難さに対する認識が足りないから生じてくることである。父親は自 分の仕事に全力をつくしながら、子どもを育てるのは片手間でできる「よい方法」を知ろうと する。しかし、これは無理な話である。何らかの規準が確立していて、それにどのように適合 させるかというときにのみ、ハウ・ツーが述べられ、よい方法も存在する。しかし、家族関係何 と に単純な規準が存在せず、個性と個性のぶつかりあいが要請されるようになると、そこにはハ ウ・ツーは存在しなくなる。ひところ流行したハウ・ツー式の子育ての本が人気を失いつつあ るのもこのためである。 しかし、考えてみると、家族関係が困難になっただけ、面白くもなったのではないだろう

9. 家族関係を考える

害になって相談に来られる例は多い。親は三人を平等に扱っているようでも、長男 ( 女 ) や末 子に対するような配慮が、無意識のうちに、二番目の子にははたらいて居ないことが多いから である。あるいは、これは人間の気持としては、むしろ自然のことと言うべきかも知れない。 ちなみに、もし三人の子どもを持っておられる親は、子どもたちの写真の枚数を数えてみられ るとよい。何か他の要素がはたらかない限り、長男 ( 女 ) が一番多く、次は末子で、二番目が 一番少ないはずである。これは別に偏愛というのではなく、人間の心は自然にはたらくとむし ろこのようになることが多いのである。親にとっては自然でも、子どもにとってはそうではな 従って中にはさまれた子は余計な苦労をすることになる。もっとも、このような例は、両 親がその点に気づいて少し態度をあらためると、すぐ問題は解決する。しかし、次のような例 になると、その力学関係は少し難しくなってくる。 一人子は難しいと誰も考えるので、子どもが二人の家は多い。ところが、この頃よくある相 談に、一人の子は極端に悪い子だが、もう一人は極めてよい子である、という例がある。兄さ んの方は学校で乱暴をはたらき、皆から嫌われているのに、妹の方はまったくの優等生の模範 生というのである。これは、夫婦のことを述べた際に、夫婦の相補性という点を指摘したが、 相補的にはたらくべき夫婦の性質がうまく作用していないことに端を発している。つまり、夫き 婦のうちの一方ーー・多くの場合、母親ーーが家の中で支配性を強くすると、長男がたまたま父

10. 家族関係を考える

子どもたちが、きようだい間の不平等を訴えるとき、親としては「そんな馬鹿なことはな い」と否定したくなるが、少し辛抱して話を聞いてやると面白いことが案外出てくるものであ る。それは、子どもたちが自らの個性の存在に気づきはじめたときや、自立的になろうとする とき、このような訴えをすることが多いからである。自立にしろ、個性の発見にしろ題目とし ては素晴らしいが、実際にやり抜くのは骨の折れる仕事である。困難な課題に出会うと、誰し も以前の状態にかえりたくなる。つまり、個性などという難しいことのない、絶対平等に包ま れた世界へと逃げこみたいのである。しかも、一方では個性ということを考えるので、きよう だい間の差も意識される。こんなわけで、きようだい不平等の訴えが出てくるのだが、それを ゆっくりと受け容れて聞いてやっていると、だんだんときようだい間の差違の存在ということ から、自分の個性の発見というほうに話が向ってくるから、不思議なものである。人間の成長 への動きは、一見マイナスの様相をとって現われることが多いものである。 きようだいの力学 きようだいはきようだい同士の間に、一種の力学が作用している。それに両親相互間、親子 間の力学がからみあってきて、家族全体の関係ができあがる三人きようだい 特に男ばか り、あるいは女ばかりの三人きようだいーーの真中の子が夜尿や吃音などといった軽い情緒障 118