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検索対象: 日出る国の工場
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1. 日出る国の工場

絽りたい。、冫月における進化とは何か ? 【例証】 「パリにうち ( コム・デ・ギャルソン ) の会社がありまして、そこの社長がフランス人の女 性なんです。向うはフランス人が社長じゃないと会社が作れないもんで。で、彼女はそれま でぜんぜん違うタイプの、オートクチュール系の会社にいたんです。だからいつもきちっと したしわひとつない服を着て、毎日のように美容室に行ってという生活をしていたわけなん ですけれど、それがうちの服ばかり着るようになって、やつばりいろいろな感化を受けたと 場 工 いうか、それで今までの洋服を全部捨てちゃうくらいになったんです。生活もいろんなこと の 国ががらりと変っちゃいました。うちの服というのはナチュラルなんです。もっと大げさに気 るぎ 出障に言っちゃうと、生き方がナチュラルであれば、自然に濃い化粧なんてしないだろうし、 何か変に見栄をはった服装や家とは無縁だろうし、というのはありますよね、やはり」 ( コ ム・デ・ギャルソン広報・武田さん ) なるほど、と僕は思う。べつにコム・デ・ギャルソンの肩を持つわけではないけれど、武 田さんのおっしやることは僕にもよくわかる。一九六〇年代末期に青春を送った方なら、 オしか、ピース」というかもしれない。僕もそう 、それじゃまるで『緑色革命』じゃよ、 ナチュラル 思う、ピース。その昔「自然であることがベストなのよ」と一一 = ロってマハトマ・ガンジーみた いな眼鏡をかけ、よれよれのタンクトップとカットオフ・ジーンといった格好でワイヤ入り

2. 日出る国の工場

不思議にあの人体標本の小腸のひだの形だけははっきりと今でも覚えてるんだよねえ」 さて全国数百万 : : : そんなにはいないか : : : 数十万の人体標本ファンの皆さん、いよいよ きら 人体標本工場の登場です。正直言って、僕もこういうのが決して嫌いな方ではない。好きな 女の子の十二指腸をティッシュペー ーにくるんで持ち歩きたいというような倒錯した趣味 はもちろん持ちあわせてはないけれど、それでも前出の友人と同様、少年時代にはあの理科 力い - っ 室にすらりと並んだ骸骨や分解できる人体標本やホルマリン漬けのわけのわからない白っぱ 本い動物たちに妙に心をひかれ、食い入るようにそれを眺めたものである。これは僕の勝手な 体想像にすぎないのだけれど、世間の殪んどの人々は同じような経験をお持ちなのではないだ 的 ろ , つか ? ・ フ なぜ骸骨や人体標本がこれほどまでに強く子供たちの心をひきつけるのか ? めぐ メそれはおそらく、子供たちがはじめて巡りあう〈生と死のメタファー〉だからではないか と僕は推測する。子供たちはその標本の前ではじめて〈自己〉という存在の相対化を行うこ とになる。自分の皮膚のーーっやつやとした何のかげりもない皮膚の下には色とりどりの奇 妙な格好をした内臓がくねくねと折れまがり重なりあうように存在し、そのもっと下には漂 白したようにまっ白な、そしてあの不吉で不気味な骸骨が存在しているのだという事実を彼 は知るのである。内臟は不確かな生を表象し、骨は死を表象する。 もちろん彼はその場でそれらの全ての事実をくつきりと認識するわけではない。認識はお

3. 日出る国の工場

が本の取材で京都まで人体模型製作の工場見学に行くと言うと、何人かの友人はそれに 場 工ついて真剣にうらやましがった。 国「ねえ、人体模型っていうと、あのさ : : : あ、あの小学校の理科室にぶらさがってるやつで ずがいこっ る しょ ? 頭蓋骨のふたがバカッととり外せたり、ひきつったみたいな赤い筋肉がビッビッと 出 走ったりしてるやっ」 「そうだよ」 「心臓が赤くて、肝臓が茶色で : : : うらやましいなあ。俺なんか小学校ってきくと、反射的 にあれ思いだすんだよね。しんとした暗い廊下があって、理科室があって、スライド映写用 の黒い厚いカーテンが引いてあってさ、アルコールの匂いがあたりに漂っていてさ : : : そし て人体標本があるんだよ。なんとなく全体的に古びていて、そのくせ内臓の色なんか生々し い説得力持っていてね。なっかしいよな。運動会とか遠足なんてちっとも思いだせないのに、 おれ

4. 日出る国の工場

とえば人工皮膚を機械ではさんで両方からひつばり、何キログラムの加重でちぎれるかとい う、まるでスペイン宗教裁判みたいなサディスティックなテストも行なわれている。ひつば くもん 、お願い、やめて」と苦悶の叫びを洩らしている。 られる人工皮膚が「あ : 村上「・水・丸き、ん、こ , つい , つのけっこ , っ好きでしょ ? 」 水丸「やなこと言うね、村上君も最近、ふふふ」 窓の外ではこれも人工皮膚が太陽の光にさらされて、耐久テストを受けている。まるでカ 場 ばくろ ぎやくさっ 工 スター将軍虐殺のあとのような光景である。これを研究者は「曝露テスト」と呼ぶのだが、 産 音それにしてもずいぶん大胆な呼び方をするものだ。 一口田 そろ る 髪を揃える部屋 原毛処理室で脱色、殺菌、染色された髪がここに運ばれ、ミキシングされて、巨大な剣山 のようなもので梳かれる。若い男の工員が髪の根元を持って、まるで脱穀するみたいにシュ ヾリバリになった毛もこ バッ、シュバッと何度も剣山で梳いていくわけである。乾燥させてノ れにかけると再びやわらかくしっとりとしてくる。要するに一〇〇回・フラッシングの理屈で ある。 剣山にかけると相当な量の髪が抜けて床に落ちる。見ていると、僕なんか貧乏症のせいか 225

5. 日出る国の工場

本書はいくつかの「工場」を選んで取材し、そこの探訪記事ーーあるいは探訪記事に類す 場 工るものーーーを書くという趣旨・方針のもとに成立しているわけだが、中には世間の一般常識 国ではとても「工場」とは呼べないようなものもいくつか混ざっている。たとえばこの結婚式 出場〈松戸・玉姫殿〉なんかはその良い例である。 もちろん、言うまでもなく、結婚式場は正確な意味での「工場」ではない。料理をべつに すれば、結婚式場は何か形のあるものを生産するわけではないし、ベルト・コンペアやコン 。しかしながら、もしあなたが結婚 プレッサーがうなりをあげて稼動しているわけでもない 式場ーーーべつに〈松一尸・玉姫殿〉である必要はない、〈ホテル・オークラ〉の結婚式場だっ から何組かの新婚夫婦が順次送り出されていくプロセス て成りたちの本質は同じなのだ をこと細かに眺める機会をお持ちになったとすれば、それを「工場」というカテゴリーの中 に収めることにおそらく反対なさらないのではないかと思う。正直な話、それは工場以外の なが かどう

6. 日出る国の工場

社もどんどん大きくなっていくのだろうが、果してそれによって世の中のかつらユーザーが みんな人前で「いや、実は私 : べリべリ、というのを抵抗なくやれるようになるか というと、これはやはりちょっとむすかしいんじゃないだろうかと僕は思う。アデランス成 功の秘密は「デリケートな薄毛の顧客」のデリケートさをきちんと丁寧に扱った点にあるの であって、アデランスという会社がどれだけ明るくふるまおうが、そのような企業と顧客の 関係の本質はいつまでも不変であるだろう。 場 産だからアデランスの工場には企業秘密というものは一切ない。「何を見ていただいても、 音何を書いていただいても結構です」と彼らは言う。「我々の企業秘密というのは要するにユ まわ 福 ーザーに対するきめ細かいサービスの動員力であって、これは他の会社には真似できないん る 明です」。 帰りの新幹線の中で、僕はこの企業は何かに似ているな、とまたずっと考えていた。そう、 新興宗教団体に似ているのだ。清潔で力強く、強固なポリシーを持ち、そして明るく、人々 かて の悩みを糧として発展している。そして上原謙や若原一郎や藤巻潤、ポール・アンカといっ た改宗者たちがキリストの十二使徒のごとくでアデランスの福音を説いている。人々は 様々な理由で不幸になるし、また様々な理由で幸福にもなるのだ。 235

7. 日出る国の工場

な格好になったんですか ? 阿部「ですからね、まあフィリップスさんという非常に素晴しいメーカーがそのすごい技 あとひとつはそれをサポートしたファミリーと 術の中でやったということがひとっと : いうか胴元がね、フォノグラムという会社なんですがね、この会社はドイツ・グラモフォン を持っている、フィリップス・レー・ヘルを持っている、アルヒーフを持っている、ロンドン、 ォワゾリールも持っている。まあクラシック・レコードの半分ですわ。それだけ強かったん ですよ。 工 たとえばですね、ビクターさんがこのシステムを ( 独自で ) 手がけても相当に辛いことに の 国なったでしようね。 ( フィリップス側の抱える ) ソフトの量と中身の良さ、それがみんなが る 賛同した原因でしようね」 出 つまりフィリップスⅡソニー主導でコトが進んだのは技術力の差というよりは、あくまで ソフトの差が原因なのだ、ということで、独自の研究をつづけていた松下Ⅱ阿部さんとして はかなり悔しそうである。非常に卑近な例で申しわけないが、隣りどうし並んで新規開店し た二軒のソープランドが、設備にはそれほどの差がないのに集めた女の子の質で差がついて やむなく店をたたむという感じである。こういう情報産業ではこれから情報ソフトの価値が どんどん上がってくることになるだろうが、そういうのは高次の戦略的政治判断によって左 右される類いのものであり、技術畑の人としてはいろいろと面白くないこともあるだろうと おもしろ つら

8. 日出る国の工場

るのだろう。直殳、、ゝ、 イ力しささか高いので、我々一般市民が個人的に気軽に買える種類のもので 。ないが、まあ逆の見方をすれば、こういう特殊なものを一般市民が気軽にちよくちよく買 い求められるような社会というのもけっこう布そうである。 こうして見てるとモデルの顔にもいろいろありますねえ。 横山「えー、たとえば、このナイチンゲール像 ( 前述 ) の顔でもめましてね。昔から写真 がありまして、それでやったら顔が怖い言われまして、看護学校の先生から全部そっぱ向か れましてね、ははは。だからものすごく優しい顔にしてあるんですよ。肖像画で昔のやつら 工しいんですけど、ものすごく怖いんです、顔が。みんなにそっぱ向かれました。難しいんで 国す。看護学校の先生はね、人形でも目もとがちょっときついとか、ありますよ、は、。 る 顔には苦労しますねえ。新製品、必ずどこかクレームついて、またやり直したりなんかし 出 日 てますよ。結局まあ、うける顔つていうとまず優しくて可愛いということになりますね。だ からタイプが決まっちゃって、たとえばある顔が気に入られたら、それじゃ次も同じように しょ , つか、とい , っことはありますね そういうのは『こういうのはどうですか ? 』といって持っていった看護学校の先生の判断 に影響されるわけなんですよね。だから、という先生はこれでいいわと言っても、ほかの 学校行ったら『なんですか、これ、もうちょっとなんとかなりませんか』というような、よ くそういう話はしていますね。我々の立場からするとしようもない話なんですけどね。教育

9. 日出る国の工場

一声叫ぶまで格闘やります。牛が叫ぶとね、格闘は終りなんです。参ったということなんで じゃあ無言の闘いがつづくわけですね ? 凄みがあるなあ。 田沼「もうガタガタ、ガタガタやってますね。角で相手のわき腹とか睾丸とか、柔らかい めす トコをやるんです。これが集団でいた場合には牝をいかに自分のものにするかというライバ おす ルになるからね。強いものがリーダーになる。だから牡は小さいときからでも常に格闘の訓 練しているわけですよ」 場 工 田沼さんにかかってくるときはどういう風にやるんですか ? 国田沼「その場合はね、鼻で一回ポンと突くんです。で、人間が倒れるでしよ、そうすると る 出前脚を折 0 てやかわけですよ。それが奴らの格闘術なんです。倒れた相手を角で持 0 て歩く 一く のね。私の場合は持って歩かれて、柵の陰に行ったから奇跡的に助かったわけです。私、も ろっこっ う二十年くらいやってるんですが、二回やられてますね。肋骨も四本くらいやられてます。 三回めかね。やつばり、そういう経験もなきや、こういうことってできないです。こういう 仕事してる人って、まず大抵やられますね。私はこういう風に管理をして面倒を見ているわ とにかくいっかは人間に勝つんだという執念を持 けだけれど、因 5 を仇で返すというか : っているんですよ、奴らは」 どうして角を取っちやわないんですか ? 角があると危険なんじゃないんですか ? あだ

10. 日出る国の工場

まえがき 森永ミルク・キャラメル」の工場を覚えていた。菓子工場というのは、みんなけっこう鮮 明に記憶が残っているようで、話を聞いていると、これはもう「通過儀礼」と表現していし のではないかという気がしてくるほどである。 っちおと 昭和三十年代前半というと、朝鮮での戦争が終って日本経済復興の槌音が高らかに鳴り響 いている時代で、当然「工場」という一一一一口葉の中にも前向きかつひたむきな響きがあった。 『キューボラのある街』ではないけれど、「俺ら一所懸命やってんだい ! 」という素直にポジ ティヴな姿勢があった。もちろんそういうのは今でもあるのだろうけれど、当時は国民的コ ンセンサスとしてのそんな響きがあり、姿勢があったんじゃないかという気がする。公害と か騒音とかも、今ほどは問題にならなかったし、モクモクと黒煙を吹きあげる煙突は経済復 興の力強いシンポルであった。だからこそ我々は工場に出かけて、そのオートメーション化 ( なっかしい一一 = ロ葉ですね。なんとなく ) された生産ラインを目にして「わあ、すげえ」と単 純に感心しちゃったわけである。 以来ーー・というか、工場見学とは関係なくただ個人的性向としてそうなのかもしれないの だけれどーーー僕は心の底に何かしら工場にひきつけられる薄くらがり的部分を持つようにな った。ある場合にはそのイメージははっきりとした個体 ( たとえば象 ) を作りだす具体的な ナいじじよう 工場 ( 象工場 ) であり、べつの場合には形而上なるものを作りだす形而上工場である。そう 1 いういろんな工場について、僕はしばしばすごく真剣に考えることがある。たとえば性欲