, ・・・・ーー今、これ、女もののジャケットを作っておられるわけなんですけれど、宮下さんはず っとこういうものをつくってらっしやったんですか ? 宮下「いえ、私は以前は紳士服をやっていたんですが、紳士服がやっていけなくなって、 婦人ものに変ったんです。戦後は一時、紳士物がすごく景気良かったんです。ただね、紳士 物ってあれでしよ、回転が少ないでしよ、それに競争が激しいーーー要するに誰にでも縫える んですよ、職人なら。だから職人がみんな紳士物に集まりまして、利が薄くなる。台湾・韓 国に発注するということで、我々としては苦しいことになりまして、それで婦人物に変った 場 工わけです」 国 どうです、コム・デ・ギャルソンの仕事って面白いですか ? る 宮下「ふふふ、私はね、私は面白い 出 っていうか、毎日がこう、要するに一種の発見で すね。そりや我々はね、デザイナーが発見したものにあとからくつついているだけの話なん だけれど、でも私にすればそこまで到達するのは発見ですからね。そこに喜びがあるんじゃ ないですか」 型紙がまわってきて、ばっと見て、「こんな奇妙なもの作って売れるのかねえ ? 」な んて思うことあります ? 宮下「そうねえ、私たちも縫っててどう着るのかな、奇抜だなと思うことはありますけど、 モデルさんが着てるの見ると、それほど突拍子もないとは思わないね ( 笑 ) 。だからいっぺ 162
料を塗りまして、レーザーをあてて記録していくわけです」 電気屋さんがガラスをタワシで磨くというのはおかしいけれど、しかし千分の一ミクロン というのも驚異的である。百万分の一ミリですよ。そんなのアリか ? とにかくこれが原盤。レーザー・カッティングしたものを現像しちゃうと原盤のあがり。 幻次にマスタリング、要するに原盤から子、孫、ひ孫を作っていくわけである。作り方は 顔のパックと同じで金属メッキをかけて、ひつばがし、ネガ↓ポジ↓ネガの要領でマスター マザー、スタンバーを作る。 工最後にレプリケーション、要するにディスク量産工程です。スタンパーからディスクに 国信号を転写し、そこにアルミニウムのコーティングをし、その上に保護膜をかぶせる。アル る ミニウム・コーティングはレーザー・ビームを反射させるためのものです。そしてそこにラ 出 日ベルを印刷して一丁あがり、いわゆるコンパクト・ディスクが完成する。 の工程を行うマ この中で人々がいちばん気を使い、また聖域扱いとなっているのが、①② スタリング・ルームで、ここに入るにはなんともう一度ェア・シャワーを浴びなくてはなら 。しかし普通の見学者はまず入れてもらえないところなので文句は言えない。、両手をあ げて、クルリとまわってパタバタと : : なんかすぐに馴れちゃいますね。ピンポンバン体操 みたいでけっこう楽しい なぜもう一度ェア・シャワー室に入るかというと、このマスタリング・ルームは、クリー
うことになるのかもしれない。なんだか巨大なオセロ・ゲームみたいですね さてここまで読んでこられた読者の中には「いろいろと大変なことは聞いててよくわかっ た。しかし O ってそもそもいったい何なのだ ? 」とおっしやる方もおられるかもしれない だから一応 OQ について簡単な説明をしておきますが、これはまったくの受け売りであって、 本当の細かいことまでは僕にはわからないし、大筋だって正確とはいえないかもしれない。 ズだからこれはあくまで「素人の目から見た専門的知識」として御理解いただきたい。 オ O というのは要するに、 ウ 183 という形をしたものであって、ここに約七〇分くらいの長さの音楽が録音されており、そ の情報を OQ プレイヤーのレーザー・ビームが読みとって音声化するわけです。従来のレコ ー 2 セし 4
つきますから。要するに確認のために出すようなも のなんです。それで、あの、御夫婦の場合は一通で ノ済みますよね。そうしますと、八〇名様の披露宴で 一〇名くらいは減らして計算できま / すと、だいたい 、つ—-' C い / ゝノ す。だから七〇枚くらいでいいと思いますね。招待 廴」「状もいくつかお値段ありますが、平均的なもので一 場 部三六〇円ですね」 式 辷千土な 力「よくわからない。まかせます」 の 荒「席次表の印刷もございます。これは招待状の て 場 ゝ、 ) 数と同数ですね。一部五〇〇円にな 0 ております」 工 力「やって下さい」 荒「ま、、 ( コリコリ、コリコリ、と ) 次に御衣 しよう f 、、 ~ 。裳の方なんですが、どういたしましよう ? 」 ・し 0 み「やつばり、打掛けね。ね ? 」 力「ふむ」 荒「お色直しは ? み「今のはやりっていいますと :
牧場の中にこういう広い道があるんだね、すごいですね。 菊池「ええ、暴走族のたまり場になってるんですよね。要するにこれは県道であって、誰 でも入ろうと思えば入れるわけです。有料道路でして、来るとき料金所があったでしよう ? 金は県に入って、農場には入らないんですけれどね。夜中はあそこは人がいなくなるもんで 工すから、そりや大変なものです」 国ーー牛も迷惑でしょーね。 る 菊池「まあ、こっちの方までは入ってきませんからね。何年か前に遊園地の中に入ろうと 出 したのがいたんで鎖を張ったんですが、鎖に首をひっかけられて死んだ人もいましたね」 おうし 『マッド・マックス』の世界ですね、もう。牡牛を二、三頭放して番をさせたらどう ですか ? 菊池「 : ・ ( いったい何なんだ、この取材は ? という風に力なく笑う ) 。最近では自動 販売機がつづけて荒らされたりしましてね、やはり物騒ですね」 ーーー夜中に牛を盗んでいったりする人はいないですか ? 菊池「それはないですね ( いるわけないだろ、そんなのが ) 」 114 と広いから、施設と施設のあいだを車で移動するわけだが、この道路がなかなか立派なもの である。 だれ
社もどんどん大きくなっていくのだろうが、果してそれによって世の中のかつらユーザーが みんな人前で「いや、実は私 : べリべリ、というのを抵抗なくやれるようになるか というと、これはやはりちょっとむすかしいんじゃないだろうかと僕は思う。アデランス成 功の秘密は「デリケートな薄毛の顧客」のデリケートさをきちんと丁寧に扱った点にあるの であって、アデランスという会社がどれだけ明るくふるまおうが、そのような企業と顧客の 関係の本質はいつまでも不変であるだろう。 場 産だからアデランスの工場には企業秘密というものは一切ない。「何を見ていただいても、 音何を書いていただいても結構です」と彼らは言う。「我々の企業秘密というのは要するにユ まわ 福 ーザーに対するきめ細かいサービスの動員力であって、これは他の会社には真似できないん る 明です」。 帰りの新幹線の中で、僕はこの企業は何かに似ているな、とまたずっと考えていた。そう、 新興宗教団体に似ているのだ。清潔で力強く、強固なポリシーを持ち、そして明るく、人々 かて の悩みを糧として発展している。そして上原謙や若原一郎や藤巻潤、ポール・アンカといっ た改宗者たちがキリストの十二使徒のごとくでアデランスの福音を説いている。人々は 様々な理由で不幸になるし、また様々な理由で幸福にもなるのだ。 235
ているのだ。 これが我々の第一の誤算であった。 要するに「実際に行って、見て、説明をしてもらえば消しゴムエ場の仕組みくらいすっと わかるさ」とタカをくくっていたのが、見事に根底からくつがえされてしまったわけである。 おまけに僕も水丸さんも編集のみどりさんも物理・化学方面に圧倒的にうといから、説明を うければうけるほど「何のこっちゃ ? 」という暗い沼の底へと沈みこんでいってしまうこと 場になる。水丸さんなんかはそれでも「ワシら絵を描いたらおしまいだもんね、あとのこと知 工らんもんね」と涼しい顔で構えてられるけれど、僕とみどりさんはもう真っ青である。 おれ 国「こんなの俺わかんないよ」 る 「困っちゃいましたわね、しくしく」 出 とい , っことになってしま , つ。 そもそも〈消しゴムエ場〉という認識そのものが間違っている。何故ならこの工場で製産 される消しゴムの八五バーセントはプラスチック製で、これはもはや消しゴムとは呼べない からである。正確には英語だと eraser 日本語だと〈字消し〉と一言うべきである。 「困っちゃいましたね、ゴムじゃないんだ」 それに一五バーセントと大幅にマイナー化しちゃった消しゴムにしたところで、天然ゴム なんてほんの少ししか使ってはいなくて、あとは全部合成ゴムである。
101 りゅうちしゅう ここはひとっこう、丸く収めてくれんかね ? え、どうかね ? 」と笠智衆風に丸く収めちゃ うわけである。若い気の立った消しゴムも「おじさんにそう言われちゃしょーがねえな」と 収まっちゃうから、このあたりは人徳である。 〈マアマアおじさん機〉はひどく単純な機械で、要するに消しゴムを中に放りこんでグルグ ル回転させるだけの話だ。グルグル回っているうちに消しゴムがまわりの壁にゴンゴンとぶ つかって、自然にカドが取れちゃうわけだ。なるほどね。 春「よくできてますね」 密 秘 の ラ「はい、河原の石ころが下流に行くと丸くなるというのと同じ原理です」 工春「何分くらい回すんですか ? 」 ゴ ラ「ものによっては五時間くらい回すのもあります。この機械はまわりがこういう風に金 網ですね。向うの方はまわりが木になってますね。それそれ、かかり方が違うわけです。イ ンク消しみたいなものは、金網の硬いものでやらないとゴムが硬いですからね。鉛筆用の軟 かいのは木でやるとか」 たぶん僕なんかはまわりが金網の方に放りこまれちゃうんじゃないかなという気がする。 五時間くらい回されて出てきたらすっかりカドがとれていて、『笑っていいとも』に出て 「ワッ」なんてやってたりしてね。どうでもいいようなことですけど。 というようなわけで、〈マアマアおじさん機〉から出ていちおうの完成品となった消しゴ
シュコシュコと音をたてているだけである。しかしこの機械は x 5 の消しゴム・シー トを一日に製品にして二千から三千製産するそうだから、見かけによらず立派なものなの かもしれない。細部は社外秘ということである。でも本当に一見したところでは厚あげを作 る機械みたいなんだけどなあ。 加硫後のゴムシートはベルト・コンべアで運ばれて水の中をくぐらせられ、冷却される。 春「カツオのたたきを作るのと同じ手順だな。で、いちおう消しゴムが完成したわけです 密 秘 の しいえ、これからまだヨージョーという段階があります」 工春「ヨージョー ? ゴ ラ「養生ですね。要するに一晩なら一晩、じっくり寝かせておいてやらないと落ちつかな いんです、ゴムが。冷やして落ちつかせて、寸法をキチンと定めるわけです」 そういうかんじは非科学的頭脳をもった僕のような人間にもよくわかる。消しゴムにとっ てもムフ日とい , つ一日は「イツツ・ビーン・ナ・ ードディズ・ナイト」だったのだ。こねく りまわされたり、のばされたり、一五〇度の蒸気をあてられたり、水につけられたりしても うぐったり疲れているのだ。だから彼らが「わしらもう寝るけんね。あとのことはもう知ら ふとん んけんね」と布団をかぶって眠ってしまったからといって、誰にそれを責めることができょ すみ う ? 工場の隅の方ではそういう〈知らんけんね〉ゴムシートが折りかさなるようにして、
とえば人工皮膚を機械ではさんで両方からひつばり、何キログラムの加重でちぎれるかとい う、まるでスペイン宗教裁判みたいなサディスティックなテストも行なわれている。ひつば くもん 、お願い、やめて」と苦悶の叫びを洩らしている。 られる人工皮膚が「あ : 村上「・水・丸き、ん、こ , つい , つのけっこ , っ好きでしょ ? 」 水丸「やなこと言うね、村上君も最近、ふふふ」 窓の外ではこれも人工皮膚が太陽の光にさらされて、耐久テストを受けている。まるでカ 場 ばくろ ぎやくさっ 工 スター将軍虐殺のあとのような光景である。これを研究者は「曝露テスト」と呼ぶのだが、 産 音それにしてもずいぶん大胆な呼び方をするものだ。 一口田 そろ る 髪を揃える部屋 原毛処理室で脱色、殺菌、染色された髪がここに運ばれ、ミキシングされて、巨大な剣山 のようなもので梳かれる。若い男の工員が髪の根元を持って、まるで脱穀するみたいにシュ ヾリバリになった毛もこ バッ、シュバッと何度も剣山で梳いていくわけである。乾燥させてノ れにかけると再びやわらかくしっとりとしてくる。要するに一〇〇回・フラッシングの理屈で ある。 剣山にかけると相当な量の髪が抜けて床に落ちる。見ていると、僕なんか貧乏症のせいか 225