「呪われている ? という理由もな」 「だって博士、その理由はもうわかってますよ。 それは下宿のおかみさんが僕にビアノを弾かせて くれないからてす」と羊男は言った。「もしヒアノ さえ弾かせてくれれば : しいや」と羊博士は首を振りながら 言った。「そうてはないぞ。 そのピアノが弾ければ フてこにはネもっ イカてきるというものてはない。 ともっと深い理由がある」 「と言いますと ? 」と羊男はたずねた。「呪われて おるんじゃよ」羊博士は声をひそめて言った。 のろ
ひナ 「ふむふむ」と羊博士は髭をなてた。「それなら 私が助けてあげられるかもしれんぞ」 「本当てすか ? 」と羊男は疑わしそうに言った。な せなら羊博士は羊のことしか研究しないというい ささか変った学者て、町の人々のあいだては頭が少 しおかしいという噂がないてはなかったからだ 「本当じゃよ」と羊博士は言った。「タ方の六時 に私の家に来なさい。良い方法を教えてあげよう ところてそのシナモン・ドーナツもらっていいか ね ? そして羊男が「いい、、 て亠 9 ・」よ」し」「い」 - フて」し」 も言わないうちに、ドーナツをつかんてむしやむ しやと食べてしまった。 うわさ
そ の日の夕方、羊男はシナモン・ドーナツを六 個おみやげに持って、羊博士の家をたずねた 羊博士の家はとても古いれんが造りの家て、欟恥 はぜんぶ羊のかたちに刈りこんてあった。ドアの もんちゅう しきいし ベルも、門柱も、敷石も、何から何まて羊だった。 こりやすごいや、と羊男は田 5 った。
のとおり」と羊博士は言って何度も頷い 「呪われておるからこそ君はピアノも弾けん し、もてきんのだ」 「ふうむ」と羊男はうなった。「なんだってまた、 呪われたりしたんてしよう ? 何も悪いことして ないのに」 羊博士は本のべージを。へら。へらとめくった。 「君はひょっとして六月十五日に月を見上げなか ったかね ? しいえ、もう五年も月なんて見上げちゃいませ あな 「それじゃ去年のクリスマス・イ。フに穴のあいた ものを食べなかったかね ? 」 ん」 うなす
男は暗い気持てカレンダーを見つめた。クリ スマスまてあと四日とい - フのに、約束した亠日 いっしようせつ 楽は一小節だって。てきていやしない。。 ヒアノが弾 けないせ 羊男が、沈んだ顔つきて、昼休みに公園。てドー ナツを食べていると、そこに羊士が通りかかっ 「どうしたんだね、羊男くん」と羊博士はたずね た。「ずいぶん元気がないじゃないかクリスマス も近いとい - フのに、そんなことじゃ困るね」 「僕の元気がないのは、そのクリスマスのせいな いちぶしじゅう んてす」と羊男は言って、羊博士に一部始終を打 ちあナご。
博士は , ハ個のドーナツのうち四個ま。てを息も つかずにむしやむしやと食べ、残りの一一個を 大事そ - フに戸だなにしまった。そして指につばを つけて、テーブルの上にちらばったかすを拾いあ つめ、。へろ。へろとなめた。 「この人は本当にドーナツが好きなんだな」と羊 男は感、いした。 指をきれいになめてしまうと、羊博十は本棚か ら一冊のぶ厚い本をとりだした。本の表紙には『羊 男の歴史』と書いてあった。 「さて羊男くん」と博士は重々しい声。て言った。 「ここには羊男に関することが何もかも書いてあ るのだ。君がどうして羊男音楽を作曲てきないか
目 がさめたとき、羊男は自分の部屋の自分のべ ッドの中にいた。何もかもが夢の中て起った ことのよ - フに隸えたが、それが夢てないことは羊 男にはよくわかっていた豆にはちゃんとこぶが 残っていたし、羊服のお尻には油がついていたし、 部屋のおんばろビアノは消えて、そのかわりにま っ白な羊ピアノが置いてあった。みんな本当に起 ったことなのだ 窓の外には雪がつもっていた木の枝にも郵便 かきね 受けにも垣艮にも、白い雪がつもっていた。 その日の午後、羊男は町のはずれにある羊博士 の家を訪ねてみたが、そこにはもう羊博士の家は あきち なかった。ただ空地があるだけだった。羊のかた 107
っちゃったな」と羊男はとても弱って言った。 リ「その呪いをとく方法というのはないのてす 「ふうむ」と羊博士は言った。「呪いをとく方法 しかしそれは簡単なことてはな いぞ。それてもいいのかね ? 「かまいません。なんだってやります。教えて下
「ク リスマスおめてとうー 」とみんなが叫んた 部屋の中にはみんながいた右ねじけも左 ねじけも、 208 も 209 も、海ガラスの奥さん も、なんてもなしもいたなんてもなしはロのま わりにドーナツのかすをつけていたのてわかった のだ。羊博士の姿ま。て見えた。
「そんな話は聞いたこともありませんよ」と羊 男はびつくりして言っご。「いつごいなんのことて すか、それは ? せいひつじさいじっ 「聖羊祭日を知らんとは、これは驚いたな」と 羊博士はもっとびつくりして言った。「近頃の若い 者は何も知らんのだな。君は羊男になったときに、 羊男学校に通っていろんなことを習ったじやろう カ ? 「ええ、まあ、それは。ても僕は学校の勉強が あまり得意な方じゃなかったもんて、その」と羊 男はばりばりと頭を蚤いた。