食べたくらいてこんな目にあわなくちゃならない なんてなあ」と羊男はぶつぶっと一人言を言った。 十分ばかり進むと、あたりがだんだん明るくな ってきたそして穴の出口が見えた。穴の外には 明るい日差しがあふれていた 「なんだか変だなあ。穴に落ちたのは午前一時 すぎだから、まだ夜が明けるわけはないんだけれ ど」と羊男は首をひねった。 穴を出ると、がらんとした空地が広がっていた 空地のまわりは羊男がこれまてに見たこともない くらい高い木。て囲まれていた 空には白い雲が浮 かび、鳥の声が聞こえた。
午前一時になるとまわりの家々の灯も誚えて、 空地は真暗になった。月もなく、星も見えない 自分の手さえ見えない 「こんなに暗くっちゃ聖羊上人様だってそりや穴 に落っこちちゃうよな」と羊男はつぶやきながら 懐中電灯て穴を探した。しかし暗すぎて、穴はな かなかみつからなかった。 「弱ったなあ、もうそろそろ一時十六分になっ ちゃうよ。もし穴がみつからなかったら来年のク リスマス・イブまて待たなくちゃいけない。そん なことになったらとてもじゃないけど : ったところて、突然羊男の足もとの地面がすつぼ りと消えた。羊男は穴に落ちたのた。
しいや。そう書いてあるんだもの、その 「まあ、 とおりにすればいいんだ」と羊男は田 5 った。 せま クリスマス・イプはあと三日後に迫っている 三日のうちにトネリコの柄のシャベルを作って、 直径二メートル、深さ二メートル三センチの穴を 掘らなくてはならない。やれやれ、まったく変な ことにまきこまれちゃったなあ、と羊男はため息 をついオ トネリコの木は森の中てみつかった。羊男はの こぎりてトネリコの枝を切り、一日かけてそれを けす 、ナご。フてして ナイフて削ってシャベルの柄にしあ : 次の日、家の裏の空地に穴を掘りはじめた
目 がさめたとき、羊男は自分の部屋の自分のべ ッドの中にいた。何もかもが夢の中て起った ことのよ - フに隸えたが、それが夢てないことは羊 男にはよくわかっていた豆にはちゃんとこぶが 残っていたし、羊服のお尻には油がついていたし、 部屋のおんばろビアノは消えて、そのかわりにま っ白な羊ピアノが置いてあった。みんな本当に起 ったことなのだ 窓の外には雪がつもっていた木の枝にも郵便 かきね 受けにも垣艮にも、白い雪がつもっていた。 その日の午後、羊男は町のはずれにある羊博士 の家を訪ねてみたが、そこにはもう羊博士の家は あきち なかった。ただ空地があるだけだった。羊のかた 107