40 。十 40 十 41 Ⅱ 1681 日 41X41 こういう例もあるのだから、絶対に誤りのない判断を下そうとすると、油断は禁物である。 これは、 全体より部分に及ほす誤り 「すべてのがである」は誤りである。 という主張を あるはである。 におきかえる誤りである。たとえば、 すべてのクレタ人はウソッキである。 という琳について考えてみよう。どんな場合に、 第一に、 クレタ人にはウソッキもいるが、正直者もいる。 という場合が考えられる。は一部分本当だったけれども、全体としては誤りである。また第二 こよ、 クレタ人にウソッキはいない ( 正直者ばかりである ) 。 という場合も考えられる。噂が全く根も葉もない中傷だった場合である。どちらの場合にも、 「すべてのクレタ人がウソッキである」は誤りである。 このが「誤りである」といえるのだろうか ?
が結論されるなら、でない。 という部分は、なかなかの曲者である。このために、「推論の結果ーと「事実ーとがズレてしま 、ひいては ( との関係で ) 矛盾が発生したのである。 首斬り役人の論法 「でないことが結論されるならば、である」 ( は正しいであろうか ? 若者の首をチョン斬ってしまったときには、「田 5 ってもいなかったーと いう言葉のアヤ ( これが「わかっていなかったーのと同じかどうかには問題がある ) でごまかし てしまったが、王様の命令がすべて絶対であるなら、このさえちゃんと論証できるのである。 「でないことが結論されるなら、でない」 これは、王 と仮定しよう。すると、天文学博士の論法が成り立って、どの日にも処刑できない。 この仮定は誤りである。 様の命令「金曜日までに処刑せよ」と矛盾する。ゆえに、 これで形式論理としては 無茶苦茶のようであるが、前提が矛盾しているのだから仕方がない。 全く欠陥がない、正しい論証である。これは、矛盾した前提の恐ろしさを教えてくれる、恰好の 例ではないかと思う。 論理の問題は、身近なもの、高級なものが、ほかにもさまざまある。よくとりあげ おわりに られる問題の中でも、たとえば 194
ての仔猫は猫でない」というのは明らかに誤りである。このように、正しいかどうかが場合によ ってちがうので、「推論の形式 ( 考え方 ) としては誤りである」とみるのである。この誤りを、 否定一一前提の虚偽という。 前提のどちらかが否定文ならば、結論も否定文でなければならない。それな 不当肯定の虚偽 のに、結論が肯定文であるときは、その論法 ( 誤り ) を不当肯定の虚偽とい う。たとえば「天才は狂人である」、「彼は狂人でない」、ゆえに「彼は天才であるーなどがこれ である。 しかしこの虚偽はあまりにも見えすいていて、詭弁術には使えそうもない。 前提がふたっとも「ある特定の : : : 」という形 ( 特称文 ) であるときは、結 特称ニ前提の虚偽 論の真偽は保証されない。つまり推論の形式としては認められないので、そ のような論法を特称二前提の虚偽という。たとえば「ある金持はウソッキである」、「あるユダヤ 人は金持である」、ゆえに「あるユダヤ人はウソッキである」というのは、結論は正しいかもし れないが推論としては誤りである ( これだけの前提からは何ともいえない ) 。 【応用 1 】 あるオランダ人は、借りた金を返さない。 あるオランダ人は、背が高い。 9
なら、わざと犯したところで、見破られる可能性は小さいであろう。幸か不幸か、推論上の誤り は、アリストテレスの時代から分類・整理されているから、しばらくその分類にしたがって、詭 弁術に使えそうな「術」をひろってみることにしよう。 ひとつの同じ主張 ( 論理学の言葉では、命題 ) でも、いろいろと言いかえるこ 正しい言いかえ とができる。たとえば、 はである。 という主張は、 でないものはでない。 と言いかえられる。 猿は尻が赤い。 を言いかえれば、 尻が赤くないものは猿ではない。 という要領である。もちろん前者 ( 言いかえるまえ ) が正しければ後者 ( 言いかえたあと ) も正 しく、一方が誤りなら他方も誤りである。同じように、 O はでない。 ( 例、夫は女でない ) を言いかえれば、 0
という主張が成り立つ。しかしこれを あるクレタ人はウソッキである。 と言いかえてよいのは第一の場合だけであって、第二の場合には、その「言いかえ」さえ、いわ れのない中傷なのである。 最初の主張 : は誤りである。 : とはいえない。 : とは限らよ、。 という形で述べられていると、全体から部分に及ぼす誤りはいっそう自然に ( もっともらしく ) 見える。ふつう「 : : : とは限らない」といえば「 : : : のときもあるし、そうでないときもある」 という意味になるからである。こういう言葉のまぎらわしさを利用すると、次のような「おきか え」さえもっともらしく見えてくるから、注意しなければならない。 飛 ( 正しい事実 ) はどれも、例外なく、でない。〔全体の否定〕 ( その表現 ) すべてのはでない。 ( その解釈 ) すべての < がであるとは限らない。
ある O はでない。 からといって あるは O でない。 ともいえない (O を人間、を男または女におきかえてみれば、すぐわかるであろう ) 。 よくある手は、 ある ( 特定の ) はである。 という主張を、 すべての < はである。 におきかえることである。恋人にフラれた男が、 あの女は不誠実だ。 ということでは満足できず、 女は不誠実だ。 ということが多いのも、このクチである。たとえ〇山 x 子さんが不誠実であったとしても、それ 飛を全女性にあてはめるのは「言いかえ」でも何でもない詭弁なので、古くから「部分より全体に 及ぼす誤りーといわれている。 なお実生活で、行動の決断を迫られているときには、この種の誤りを敢えて犯すことがある。
【例 1 】誤り。男でないソクラテスの妻に、男についての主張 ( 大前提 ) をあてはめられるわけがない。形 の上では「不当肯定の虚偽」を犯している ( しかし結論自体は正しい ) 。 【例 2 】正しい。 金持でない詩人クライツは、金持でない芸術家でもある。これは第三格の 0 ス 0 型の三段 論法である。 【例 3 】誤り。動詞という字が、二重の意味で使われている ( 最初の前提の「動詞」は「動詞という言葉」 をさしているし、あとの前提の動詞は、歩くや走るなどを意味する、ふつうの意味の動詞である ) 。媒概念 曖昧の虚偽あるいは四個概念の虚偽とみられる ( 「」を省いて書くと、さらにもっともらしくなる ) 。 この種の混同は、昔から話の種にされている。 "What is the last letter of the alphabet ~ : 先生 ( イギリスの小学校 ) が期待した答は ( <no : : : の最後の文字 ) であ 0 たが、生徒 ( ある日本人 ) は「アルフア・ヘット」の綴りの最後の字と混同したのであった。 【例 4 】誤り。十字架や = ン = クが嫌いな人間も、いないとはいえない ( キリシタンを弾圧した人たちはど うだったろうか ? ) 。形の上では「媒概念を包まない虚偽」に陥っている。しかし結論は正しい ( とされて 解答 ( 問題は四ーペ 206
巫詭弁術 B ( = 人問 ) A(= 女 ) は正しい推論であるが、 ( 第一段 ) すべてのは O でない。 ( 第二段 ) あるはでない。 のと ( 第三段 ) ゆえに、ある < は O である。 、刀し などは、誤った推論である。これらは のな < Ⅱ女 重 Ⅱ人間 の囲 も範 ) たの 0 Ⅱ犬 解がをあてはめてみれば理解しやすいであろう ( 図参照 ) 。 図囲 を範 次に、どんな推論が誤りであるかを調べてゆこう。 囲の イ オ 前提がふたっとも否定文であるときは、結論 の 否定ニ前提の虚偽 例と を は正しいかもしれないし、誤りかもしれない。 実こ のる 、なたとえば「すべての犬は猫でない」、「すべての人間は大でない」、 れよしたがって「すべての人間は猫でないーという場合には、 ( 考え 含に方としてはおかしいが ) 結論は正しいわけである。しかし「すべ ての犬は猫でない」、「すべての仔猫は犬でない」、ゆえに「すべ
主張の言いかえ はじめは当り前だと思っていた話が、途中からだんだんおかしくなる、というのは決して珍し 術 い話ではない。 へんだな、と思いながらも、理クツにヨワい男性や、すなおな女性が、まんまと 詭 術中に陥ったりする。 「術」のひとつは、「犯しやすい推論上の誤り」を逆用することである。誰もが犯しやすい誤り るが、金銭で釣られて「よし、いっちょうやったるか」と積極的に秘密を漏らしたときには、 「そそのかし」にならないのであろうか ? それに、男女関係がある場合でも姻戚関係がある場 合でも、立派な大人の行動が、泣く泣くやったのかむしろすすんでやったのか、微妙な場合に第 三者に判断できるのだろうか ? 「悪魔にもわからない」ことを判断なさろうとする裁判官殿は、 たぶん恋をされたことがないにちがいない。 少々話が脱線しすぎたかもしれないが、「定義を曖昧にして、結論を簡潔に、関係ないことを 長々と述べよーというのも詭弁術のひとつであるから、この二審判決は大いに参考になることと 思う。
うがった見方悪魔にもわからない深遠な言葉 深遠な冗談 論点のすりかえ 議論のはずみ上手にはぐらかす感情に訴える 7 主張の言いかえ 正しい言いかえ逆は必ずしも真ならず部分よ り全体に及・ほす誤り全体より部分に及・ほす誤り 三段論法否定二前提の虚偽不当肯定の虚偽 特称一一前提の虚偽媒概念曖昧の虚偽四個概念 の虚偽包むということ三段論法のパズル 三段論法の複合形両刀論法 4 0 消去法 犯人さがし ・ハズルへの応用消去法の失敗 失敗の逆用派閥の消去法選言的三段論法 ドミノ理論 将棋だおし身近な実例 -6 詭弁術の総括 4