オズボーン - みる会図書館


検索対象: チャイナ・オレンジの秘密
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1. チャイナ・オレンジの秘密

「いや、まだいいじゃありませんかーオズボーンがあわてていった。 「でも、もう」とミス・テ ・イ・、シ 1 は立ち上りながらもそもそいった。「もうおいとましません と。今ごろはカーク博士がきっとかんしやくを起していらっしゃいます。それはもうたいへんな んですから ! じゃ、どうもいろいろおもしろいお話ありがとうございました、オズボーンさ ん」とドアの方へ行きかけた。 ォズボーンはごくんとつばをのみこんで、「あの : : : テ ・イ・ハシーさん」とおずおず彼女の方へ 近寄った。ミス・テ 。イ。ハシ 1 ははっとして身をひいて息遣いが荒くなった。 「まあォズボ 1 ンさんたら、な、なんですの ? 」 「あの、あなたは : : : つまりその : : : あなたは : : : 」 「何でしようか、オズボーンさん ? 」ミス・ディバシーはわざと通じないふりをした。 「今晩何かなさることが、おありで ? 」 「ああ」とミス・デ イバシーがいった。「あの、別に何も」 「では、その : : : 今晩ぼくと映画に行きませんか ? 」 「ああ」とミス・ディ・ハシーがもう一度いった。「喜んでおともするわ」 リモア主演の新しい映画が〈ラジオ・シティ〉にかかってるんですよ」ォズボ 1 ンが熱をこ めてい 0 た。「とてもいい映画だ「て話です。星を四つも取「てるんですからね」 (N 評の最高 リモアはジョンの方でしようか、それともライオネルの方 ? 」ミス・デイバシ 1 は眉根にし わをよせていた。 ォズボーンは驚いた様子で、「ジョンの方ですよ」 「じゃ、 ~ 喜んでと申しましよう ! 」ミス・テ ・イバシーが大きな声でいった。「あたし、ジョンの

2. チャイナ・オレンジの秘密

って、ほおをおさえると逃げるようにして出て行った。ばたんと音を立ててドアが閉まった。 ォズボーンはため息をつくと、ちょっと頭をさけて、「ところで : : : どんなご用でしようか 「実はですな」と客が帽子をとると、脳天の禿げが現われ、そのまわりが白髪まじりの髪だった。 「カ 1 クさんを、ドナルド・カークさんをずいぶん探しましたよ。ぜひぜひお目にかかりたいの 「わたしはカ 1 クさんの助手、ジェイムズ・オズボーンです。どういうご用件でカ 1 クさんにお 会いになりたいのでしようか ? 」 客はロごもっていた。 「出版関係のご用件でしようか ? 」 男はちょっとかたくなそうに唇をすぼめた。「わたしの用件は、実は内密を要することなんで してね、オズボ 1 ンさん」 ォズボーンの目の色が冷たくなった。「はっきり申しあげますが、わたしはカ 1 クさんの内密 の用件すべてを任せられております。内密のことを他へ洩らすようなことは絶対に : : : 」 肥った男の無表情な目がオズボーンの机の上に置いてある切手アルバムに吸いつけられていた。 突然彼がいい出した。「あれは何です ? 切手ですか ? 」 「そうです。ご用件の方をどうそ : : : 」 肥った男は首を横に振って、「いえ、わたしは待たせていただきますよ。カ 1 クさんはもうお 帰りになるころでしようか ? 」 「はっきりとは申しかねます。もう間もなくお帰りのころと思います」

3. チャイナ・オレンジの秘密

「どうにも抜けられなくてさ」とカークは自分の机へ駆け寄ると、開封した手紙類の山をひっか きまわし始めた。「何か大事な用件は ? あ、いやこれは失礼。クイーン君、ぼくの右腕、ジ、、 ・オズボ 1 ンを紹介しよう。こちらエラリイ・クイ 1 ン君だ、オズボーン 「はじめまして、クイ 1 ンさん : : : ところでカ 1 クさん、別に何も : : : ただちょっと前にミス・ リュ 1 ズがちょっと立ち寄られました : 「アイリンが ? 」とカ 1 クの手から書類がすべり落ちた。「用は何だった ? 」とゆっくりきいた。 ォズボーンは肩をす・ほめてみせた。「何もおっしゃいませんでした。特に何というわけじゃな いとのことで。それからミス・テン。フルもおみえになりました」 「ほお、彼女が ? 」 「はい。ただ夕食の前にあなたにお話があるということでした」 カークは眉を寄せて、「あ、わかった。そのほかには ? クイーン君、待たせてすまないな」 「ゆっくりやってくれ」 ォズボーンは薄茶色の髪をかいていたが、「あ、そうそう ! マクゴアンさんが二十分ほど前 におみえになりました」 「グレンが ? 」カークはひどくびつくりした様子で、「タ食の時間に早過ぎたってわけかね」 「いえ、そうではございませんで。何か急なことでお目にかかりたいとおっしやってました。実 はわたしに手紙をお託しになりました」とオズボーンはポケットから封筒を取りだした。 「クイーン君、すまんな : : いったい何か見当もっかんが : : : 」カ 1 クは封筒を破って手紙を取 り出した。手早く手紙をひろげ、内容を食い入るように黙読していた。読んでいるうちにひどく 異常な表情が顔に出た。その表情は現われたと思ったらたちまち消えた。眉を寄せて手紙をくし

4. チャイナ・オレンジの秘密

% ファンだっていつもいってるもんですからね。ライオネルの方もいいけど、でもジョンは : : : 」 とほれぼれした目つきで天井を見上げた。 「どうも何かわからないけど」とオズボーンがぼそ・ほそいった。「最近の彼の映画で見たところ、 イ・、ン 1 さん なんだかちょっと老けたみたいですね。年は争えないもんですね、デ / 、 ・イ・ハシ 1 がいった。「あなた、うらやましいんでし 「まあ、オズボーンさんったら ! 」ミス・テ 「うらやましい ? ぼくがですか ? 冗談じゃない : ハリモアを見にあ 。イくンーは抜け目なく、「・ 「ですけど、彼ってほんとうにすごいわ . ミス・テ たしを連れてってくださるなんて、オズボ 1 ンさんはすてき。きっとすごく楽しいことになる 「いやありがとうーとオズボーンはむつつりした感じになって、「どうかと思ってお聞きしたわ イ。ハシ 1 さん。さてもう六時十五分ぐら けなんだけど : いいんです、いいんですよ、デ い前ですね : : : 」 。イ。ハシーは職業的な速さで腕時計を見て、機械的にいっ 「五時、四十、三分ですね」とミス・テ 。いかがでしよう、八時十五分前では ? 」と声を落して親しみをみせた。 た。「それでよ、 「けっこうですね」ォズボーンが深い息をついた。二人の目と目が合ったが、素早く目をそらし た。ミス・テ ・イスシーは糊のきいたエプロンの奥で急に暖かいものがぐっと湧き上るのをお・ほえ た。太い指で無意識に髪をまさぐっていた。

5. チャイナ・オレンジの秘密

197 「いやまだ」と警視はうなるようこ、 冫しった。「いいかねォズボーン君、カ 1 ク収集品の中に〃大 公妃の冠〃といわれている宝石があったかね ? 「もちろん、たしかに」 ォズボ 1 ンはめんくらつだような顔をした。 「それから″赤の・フロ 1 チ〃といわれているのは ? 」 「ええあります。どうして : : : 」 「エメラルドの下げ飾りつきで銀の打ち出し細工首飾りは ? 」 「あります。ですがいったい何があったんでしようか、クイーン警視 ? 」 「きみは何も知らんのかね ? 」 ォズボーンは老警視のきびしい顔からエラリイの顔へと視線を移して、それからそろそろと自 分のいすへ腰をおちつけた。「は、はい、知りませんです。わたしはカーク様の古物宝石収集の 方にはあまり関係いたしておりませんのでして、あの方におたずねくださればわかります。カー クさんは宝石類は銀行の金庫にお預けになっておりまして、その出し入れもカークさんだけでや っておられます」 「ところがだ」と警視が大きな声でいった。「それがなくなったんだ」 「なくなりましたって ? 」とオズボーンは息がつまりそうこ ~ いった。しんからまったくひっくり 返らんばかりに驚いて、「収集品全部でしようか ? 」 いやつばかりだ」 「そ、そのことはカークさんもご存じで ? 」 警視は意地悪い笑みを浮べて、「そいつをこれから調べあげようというわけだ」とエラリイや 部長刑事に向って首でこっくり合図をした。「さ、行くとしよう。ちょっとオズ、ホ 1 ンの裏づけ

6. チャイナ・オレンジの秘密

「ほう、そうですかフ 「『反逆者の死』という本でしたけれど、なんだか妙な名前の人の作でした」 「ああ、メレジンスキ 1 でしよう。あれはフェリックス・ ーンが掘りだしてきたロシア人作家 です。彼はヨーロツ。 ( 中をしよっちゅう歩きまわって外国の作家を掘りだそうというわけなんで、 す・ : : ・いやその、 ーンさんはですね」とオズボーンは急に黙りこんだ。 「で : : : 」とミス・ディシ 1 がいった。そして彼女も黙りこんでしまった。 ォズボーンはあごをなでていた。ミス・デ イバシーは髪をなでつけていた。 ・イ・ハシーはちょっといらいらした様子で、「ずいぶん凝った本をお出し 「あの : : : 」とミス・テ になるんですね ? 」 「そうなんですよ ! 」とオズボ 1 ンは声を大きくした。「きっとこんどもまたパ 1 ンさんは新し い原稿でトランクを一杯にして帰ってこられることでしようて。いつもそうなんですからね」 イバシ 1 はため息をついた。話はいよいよおもしろくなくなるばかり 「そうですか」とミス・デ だった。ォズボーンは彼女のきりつとした清潔な様子を尊敬の目でほれぼれ見入っていた。ミス ーンさんはひょっとしてミス・テンプルのことご存じじゃ アイバシ 1 は気分をよくして、「ハ ないでしようね ? 」 「え ? 」ォズボ 1 ンはびつくりした様子だった。「ああミス・テンプルですか。たしかカ 1 クさ んが彼女の新著について・ハーンさんへ手紙を書かれたと思いますよ。いやミス・テンプルはなか なかいい人ですな」 ・イ・、シ 1 の広い肩がぶるっと 「そうお思いになります ? あたしもそう思いますわ」とミス・テ 震えた。「あの、それでは ! 」

7. チャイナ・オレンジの秘密

芻 どうも来年のダ 1 ビ 1 の優勝馬を当てるくらい見当のつかん男なんだからな。い っぺん・ほくはあ いっと千ドルの賭けをしたことがあるんだーーあいつがもし約東の時間に遅れなかったらという わけだったんだがね。なんときみ、・ほくの方が賭けに勝ったんだからな ! マ 1 セラは見かけな かったかね ? 」 「お目にかかりませんです、よ、。 。しこちらにはめったにおみえになりませんし、それにわたしは 「あのね、きみ」とマクゴアンはいらいらした様子で葉巻を吹かしていた。何かいすからあふれ 出るような尊大なところがあった。肩幅は広いが顔はほっそりやせて青白い額が禿げ上っていた。 「今すぐぜひドナルドに会いたいんだよ。きみ、たしかに : ォズボーンはあきれて、「でも、今晩夕食会でお会いになるんじやございませんか ? 」 「それはそう、だけど夕食の前に。せひ会っときたいんだ。きみ、たしかにあいつのいるところは わからんのかいフ マクゴアンはじりじりしながらいった。 「相すみません。どこへ行くともおっしやらずに、早くにお出かけになりました」 マクゴアンは渋い顔になって、「紙と鉛筆を貸してくれ」大急ぎでオズボーンが差し出した紙 に何か走り書きすると、それを折りたたんで封筒に入れ封をして、カ 1 クの机の上に放りだした。 「今夜の夕食前にあいつにこれを渡してくれよ、 いね。大事な用件なんだ : : : それに内密だか らね」 「はい、わかりました」ォズボーンはその封書をポケット へ納めて、「ところでマクゴアン様、 お急ぎでなければちょっとお目にかけたいものがございますが」 マクゴアンはドアのところで立ちどまると、「今、急いでいるんでね」

8. チャイナ・オレンジの秘密

318 「あの男が牧師で、牧師のつけるうしろ向きのカラーをつけネクタイをしていなかったとすると、 例の首のところまである特殊な牧師服用のチョッキを着ていたに違いない。とすると、殺害犯人 はこの牧師服用のチョッキ一つが何もかものぶちこわしになると思って、必ずや持ち去ったに違 いないとぼくは気がついた。だが、そのことを証拠だてるには時が遅すぎた。みんな一人一人身 いったいきみはどうしてあの罪も 体検査するような機会はとっくに過ぎていた : : : ォズボ 1 ン、 ない小男を殺したんだ : : : きみはどうみても人殺しタイプの人間じゃないが ? どうもきみはあ まり得にならん殺人をやったようだな、オズボーン : : : あの切手は人目をはばかって売らなくち ゃなるまいに。しかしまあ、仮に五万ドルに売れたとしても : : : 」 「おいオッジー : ォズボーン、おまえともあろうものが」ドナルド・カ 1 クがささやくように いった。「おれは夢にも : 「それは彼女のためだったんです」とオズボーンは相変らず妙にやさしい調子でいった。「ぼく はためな男でした。彼女は・ほくという男に注意を向けてくれた初めての女性でした。それに・ほく は貧乏な男です。彼女は、安楽な生活も提供できないような男とは結婚しようなどとは考えもし ないとさえいっていました : : : 機会があれば : : : 」と彼は唇をしめした。「それは誘惑たったの です。彼 : : : 彼は数カ月前に中国からカ 1 クさんあてに手紙をよこしました。ぼくがその手紙を 開封しました : : : カ 1 クさんあての手紙はみなぼくが開封することになっているのです。あの切 手のことが詳しく書いてあり、宣教仕事もやめてニューヨ 1 クへ来て : : : もともと彼はアメリカ 人でした : : : あの切手を売って余生を安楽に暮したいというようなことも書いてありました。・ほ、 ・ほくはこれはチャンスだと思いました。彼のいうことがほんとなら、その切手は : : : 」とオズボ

9. チャイナ・オレンジの秘密

321 ォズボーンはまるでシカのようにとび出して、エラリイが振り向く間もなくそのわきをむちゃ くちゃに走りぬけて行った。クイーン警視と部長刑事は同時にわめきながらとび出して行ったが、 ほんのわずかのところでオズボーンはつかまらなかった。そしてオズボ 1 ンは開いている窓の敷 居をとび越えると、一声高く叫び声をあげて、姿が見えなくなった。 「帰る前に」とエラリイ・クイーン氏はそれから半時間後、ほとんど人気のなくなった控室でゆ つくりといった。「きみにだけ話したいことがあるんだがね、カーク」 ドナルド・カ 1 クはいすに腰かけて両手をだらりとひざの間にたらしたまま、まだ身動きもせ ず、むなしく開いている窓をじっと見つめていた。小柄なミス・テンプルがそのわきにおとなし くすわって、待っていた。ほかのものはもう出て行ってしまっていた。 「うん ? 」とドナルドは憂うっそうな目をあげた。「クイーン、・ほくは信じられんよ。あのオッ ジーが : : : あれはいつも忠実で、とても正直な男だった。それがしまいに女のことで大失敗する とはね」と身震いした。 「ミス・デ イバシーを責めないでくれよ、カ 1 ク。責めるよりも気の毒た。ォズボーンは偶然の 状況の犠牲者だよ。あの男は欲望感情を押さえつけられていたし、危険な年ごろでもある。想像 に悩まされ興奮したんだ : : : そしてあの女には男好きのする魅力もある。彼の性格の中のある弱 点素質が表面へ出てきたんだね : : : テンプルさん、おわかりいただけるかどうかわかりませんが : ちょっとあなたのフィアンセを・ほくと二人だけにしていただけませんかフ 彼女は何もいわず立ち上った。 たがドナルドは彼女の手首をつかんで自分のそばへ引きすえると、いった。「いやいや、それ

10. チャイナ・オレンジの秘密

「いやどうもありがとう。なんでしたら、その : : : 」とひじかけいすの方へと行き始めた。 「あの、どうそこちらの方でお待ちくださいませんか」とオズボーンは、二つあるドアの、事務 室へ通じる第二のドアを開けひろげ、もはやタやみの中に暗くなっている部屋を示した。はいっ てすぐ右手の本棚の上にあるスイッチを押して電灯をつけると、さっきミス・デ イくンーカミカ ンをつまみ食いした部屋が明るく照らしたされた。 「どうそお楽になすってください」ォズボーンは肥った男に向っていった。「テープルの上の煙 草入れには紙巻も葉巻もございますし、キャンデー、雑誌類、果物なども。カ 1 クさんがお帰り になりましたら早速お知らせ致します」 「ありがとう」と客はロの中でいった。「ほんとにどうもご親切様に。こりゃなかなか快適なお 部屋で」と男はまだスカーフを巻いたままでテ 1 プル近くのいすへ腰をおろした。「まるでどこ かのクラブみたいで」と気持よさそうにうなずきながら、「いやまったく、けっこうですな。そ れにまた本もたくさんあって」部屋の三方の壁は開放型の本棚でぎっしりふさがり、ただ向い合 せのドアの所と、三番目の壁の飾り暖炉の所だけ本棚が切れていた。暖炉の上の壁には、アフリ カ土民の槍が二本ぶつ違いにかけてあり、それを覆うようにインビ族のでこぼこになった楯が飾 ってあった。四番目の壁には窓が二つ開いていて、そばに読書テしフルが置いてあった。深々と したいすが本棚の前のあちこちにまるで番兵のように置いてある。 「はい、なかなかよろしゅうございましよう」とオズボーンがそっけない声でいって事務室の方 へ戻ってドアを閉めたのと、肥った男が気持よさそうにため息を洩らして雑誌へ手をのばしたの が一緒だづた。 ォズボ 1 ンは主人の机の上の電話を取ると、カ 1 ク家の私室を呼び出した。「もしもし、ハッ