「どっちにしても、ちょっと運動したほうがいいみたいだな。おれとブッチーは、神社て ごしんじゅっ 護身術のけいこをしてるけど、おまえもやってみるか。だけどな : ・ 「だけど、なに ? ごしんじゅっなら 「だけどな、ああいうのに、おまえはむいてないみたいだし、護身術を習って、やたらに つか 使われてもこまるしな。ブッチーには、そのへんのところはよくいってあるけど、飼いね ひつよう せいりよく こっていうのは、必要がないときても、けんかをしたがるからな。精力があまってるから ごしんじゅっ 飼いねこ ? このあいたデビルも、ぼくのことをそういってた。護身術のことはどうて もよかったけど、飼いねこってことばには、どこか心にひっかかるものがあった。 「ぼく、飼いねこなのかな。」 まいにち 「まあ、そういうことになるんしゃないか。エサたって、毎日きちんともらえるんたし、 人間といっしょに住んてるんだからな。」 飼いねこても丿ラねこても、ぼくはぼくなのだから、どっちてもいいようなものだけど、 なせか、ぼくは、飼いねこということばが気になってしかたがなかった。 0 か か す カ か うんどう こころ じんじゃ か 凵 6
くろぐろ さいきん 「おまえな、最近、かがみて自分のすがたを見たことがあるか。その黒々とした毛なみ、 そリや、どう見たって、丿ラねこには見えねえよ。どっから見たって、手いれのいい飼い ねこだせ。 , といった。 ぼくは、毛なみがよくなったなんていわれ、ちょっとうれしくなっただけて、そのとき かんが は、べつになにも考えなかった。 よるかえ 日野さんは、新しい家にいることはめったになかった。昼間はもちろん、夜も帰らない ことがしよっちゅうある。こういうところは、イツバイアッテナににている。 いえよ、つじ そういうわけて、日野さんは、おてつだいさんをひとリやとって、家の用事や、ぼくた ちのめんどうをみる仕事をやってもらうことにした。 ばしゅうねんれいふもん おてつだいさん募集。年齢不 ただし、ねこ好きの人にかきる。 しようてん うんてんしゅ か あの晩、日野さんといっしょだった運転手が、こう書いたはリ紙を何まいも持って商店 ひの ばんひの あたら し ) 」と ひの じぶん ひるま がみなん か 日 9
′ノブク - きそくただ てそうしゃない。規則正しく、ねいきをたてて、いかにもスャスャねむってますっていう かん 感しを出さなくちゃならない。たぬきねいリってことばがあるけど、たぬきは、そういう どうぶつずかん ことがとくいなんたろうか。動物図鑑には、そんなことは書いてなかった。 そうやってねたふリをしていると、ほんとうにねむくなってしまう。げんにその晩、ぼ ー、カくえんき くはいつのまにか、ねむってしまったのだ。しかたなく、計画は延期になった。 あっ つきの日は、夜になっても、ばかにむし暑く、たぬきねいリにはもってこいだった。な おも せってそんな晩は、ねようと思っても、ね くるしくて、なかなかねつけないからだ。 「ルド、ねちゃったのか。」 ィッパイアッテナが耳もとてささやいた。 もちろん、ぼくは、へんしをしない。 「うん、ねちゃったよ。 こた なんて答えたら、ねたふリにならない。し ばらくすると、イツバイアッテナがむつく よる
うらしまたろう うらしまたろう 浦島太郎のかくし芸を見せるといわれても、なんのことだかわからす、浦島太郎というの うみそうなん おも は、海て遭難した人のことだと思ってしまった。 おも 思い出すと、ふきたしそうになるが、だって、あれはどう見ても、カメのせなかにリよ ちんばっせんせんいん うしがゆうゆうと乗っているというようなものてはなく、沈没船の船員が、たるにつか ひょうりゅう まって漂流しているようにしか見えなかったからた。 てもぼくは、そのかくし芸を見て、イツバイアッテナとデビルが、ほんとうになかなお こころ あんしん かくしん リしたことを確信し、すごく安心した。ィッパイアッテナがデビルを心からしんらいして れんしゅう いなければ、あんなかくし芸の練習なんかてきっこない。 どんや かなものや よくはつか 翌二十日の夜、せともの問屋のおしさんが、金物屋のおくて晩ごはんをごちそうになっ とんや こがた ているすきに、ぼくは、ほろのかかった小型トラックの荷台にしのびこんだ。問屋のおし みせ さんが店から出てくるまて、ぼくとイツバイアッテナとブッチーは、トラックの荷台の中 て、いろいろな話をした。 ブッチーは、スズメをとるのがぼくほどうまくない。ぼくはスズメとリのコツを、身ぶ でんじゅ リ手ぶリを入れて、伝授した。ほんとうはみんな、スズメとリのコツなんて、どうてもよ て よる の み 9
だってわけしゃないんた。それはわかるた ぼくは、うなすいた。 「ようするに、おまえは、リエちゃんのこと おも ぬし を飼い主たと思ってるから、日野さんの家に いることが、スッキリしないんたろ。それて、 せいかっ 丿ラねこ生活もなかなかのもんだ、なんて、 おも 思っちゃってるんしゃねえか ? そんなこん なて、丿ラねこがどうの、飼いねこがどう のって、おかしなことを考えてるんた。 いや、これだって、タイガーがそういった おも ことなんたけど、おれもそう思うよ。」 、、フッチーは ぼくは、たまって下をした。 " つづ ことばを続けた。 かんが ひの
「たけど、すげえ車に乗ってきたせ。タイガーの飼い主って、金持ちしゃなかったんだろ。」 「むかしはな。ても、たぶんアメリカて、ひとやま、あてたんたろうなあ。」 ブッチーとデビルが話しているあいだに、男は、イツバイアッテナをたいて、ドアをあ けつばなしにしたまま、家の中に入ってしまった。 しばらくすると、家の中のあちこちに、バッ、バッとあかリがついた。 「どうする ? 」 ぼくがそういうと、ブッチーは、 「いってみようせ。」 こた と答え、へいからとびおリた。 こえ げんかん ぼくたちは、しのび足て、玄関まて歩いていった。家の中から声がもれてくる。 ぼくたちは中をのぞいた。ろうかのゆかは、ヒカヒカの木ててきている。左右にドアが ならんている。声がきこえるのは、左がわのいちばんてまえの、あけはなたれた部屋の中 からだ。 おも よかった、とか、おれはきっとおまえが待ってると思ってたとか、かんろくがついたと こえ ある かねも ロ 2
「そうだ。わかってるんしゃないか。わかってるなら、そういうことはするな。 「ごめん。 「まあ、いい 。立ってないて、そこにすわれよ。」 げんかんまえ かいだん だんぶんにわ たか ぼくは、イツバイアッテナのとなリにすわった。玄関の前は、階段て三段分、庭よリ高 くなっていて、タイルがしいてある。すわると、つめたくて、おしリが気持ちいし 庭のほうを見まわすと、かきねになるのか、プロックになるのか、それともコンクリー しきち うえき トぺいになるのか、まだわからないけど、敷地のまわリにかこいがてきて、植木が植えら いえかんせい かねも れれば、もう家は完成だ。 すいぶんリつばな家になリそうだ。やつばリ、お金持ちが住む んだろう。 ぼくがそんなことを考えていると、イツバイアッテナが、小さな声て、 「ルド : : : 。」 とつぶやいた。 「なに ? 」 てん ふリむくと、イツバイアッテナはうつむいて、タイルのゆかの一点を見つめている。 かんが こえ
「それしや、なんて訓練なんかするのさ。」 うんどうぶそく ふゅ 「そリや、おまえ、なんだよ。つまリたな、冬はどうしても運動不足になるから、こう やって、からたをきたえるんしゃないか。いいからおまえも、ゴチャゴチャいってねえ て、おれがやるみたいにやってみろ。 , ぼくはしぶしぶ、イツバイアッテナのすくそばにはいつくばった。 「ル、ルドルフ。もうちょっとのしんぼうだ。がんばれ ! ねむるんしゃないぞ。 「ねむるなって、こんな寒いとこしや、ねむれるわけないたろ。 , ぼくがそういうと、イツバイアッテナは、 「おまえな、ほんとになにもわかっちゃいねえんたから、いやんなっちゃうせ。あのな、 ふゅやま 冬山ってのはな、ねむくなって、それてねむってしまうと、こ ) 」え死んしゃうんた。だか きぶん ら気分たして、そういってるたけしゃねえか。おまえもてきとうに合わせろよ。ほら、も ういつ。へんいうからな。まったくもう : ル、ルドルフ。もうちょっとのしんぼうた。がんはれ ! ねむるんしゃないぞー 「は、はい。ィッパイアッテナ先生。がんばリます。」 くんれん さむ
ある そんなふうに湖をながめながら歩いてると、うしろて声がした。 「あ、ねこ。」 ふリむくと、十メートルくらいうしろのごみ箱のそばて、小さな女の子が、お母さんら しい女の人と手をつないて立っている。 くろ 「ママ、黒ねこよ。」 ぼくのほうをゆびさして、女の子がお母さんに教えている。 「あら、ほんと。かわいいわねえ。 女の人はそういうと、しやがんて、こちらを手まねきした。 「クロ、ほら、クロちゃん、こっちおいて。」 にんげん あれは、かなリねこなれしている人間だ。知らないねこをよぶときには、ああいうふう にしやがんてよはないと、ねこが近づかないことを知っている。 やさしそうな女の人だ。ちょっといってみようかな。ても、いけば、あの小さな女の子 にいしくリまわされそうだし : ぼくがその場て立ったままていると、女の人は立ちあかリ、一「三歩近よってから、ま みずうみ ちか かあ おし こえ ばちか かあ 円 2
別れの宴会とニ度のびつくり 「それしゃあ、もう一曲、この二十世紀最大の天才ねこ うた 歌手、ブッチーが、タイガーのかどてのために、歌わせ ていたたきます。」 「ちょっと待った。おめえ、これて三曲ぶつつづけしゃ ねえか。こんどはおれの番た。」 きよくうたお おんど 「フッチー音頭』、『ブチねこプルース』と二曲歌い終わ き【よく、った リ、ブッチーがもう一曲歌おうとしたとき、デビルがも んくをつけた。 おんど 「だいたい、ブッチー音頭とか、プチねこプルースなん うた てのは、タイガーのための歌しゃねえしゃねえか。 さいしょ きよくれんしゅう 「そんなこといったって、最初の二曲は練習みたいなも きよく ほんばん んだから、こんどのが本番なんだせ。あと一曲だから、 もうちょっとがまんしてろよ。これが終わったら、おま うた えにも歌わせてやるからさ。 , かしゅ きよく きょ′、 てんさい