「さ、いきましよ。ねこちゃんも、あんまリいしると、いやがるから。」 女の子はまだなごリおしそうだったけれど、お母さんにそういわれて、立ちあがった。 きゅうけい こういうようなくあいに、このやさしい親子をはしめ、ぼくは、サービスエリアて休憩 もの している人たちから、いろいろと食べ物をわけてもらえたし、栓のゆるんた水道がひとっ あったおかげて、のどがかわくこともなかった。きのうの夜のけいけんて、ぼくは、トラ ックならなんてもいいという気持ちにはなれなかったし、ここはけしきもいいのて、しょ なんじかん うけんのそろったトラックが見つかるまて、何時間ても待っことにした。 みずうみ 湖をながめたリ、しばふの上てゴロゴロしているうちに、きのうのつかれはすっかリと ちゅうしやじよう れていた。ときどき、駐車場にようすを見にいった。 ぎふ こがた 、小型トラック、ほろっき、ただしほろのゴムがちょっとゆるんて出入リ 岐阜ナンバ よくじつあ が楽なもの、というしようけんのそろった車が見つかるまて、ぼくは翌日の明けがたまて おも たの はまなこ 待たなければならなかったけれど、浜名湖サービスエリアは、ぼくにとって楽しい思い出 の場所になっている。 らく たび 旅というのは、楽あれば苦あリ、苦あれば楽あリなのだ。 きも おやこ かあ よる せん すいどう 円 5
ざんばん るっていうことは、残飯があるっていうことた。 そうだ、そうた。もうひとふんばリして、そこまていこう。ここのインターチェンジて、 やす あんぜんばしょ つごうのいいトラックが見つかるっていうほしようはないし、休むのに安全な場所も、食 もの べる物もないだろう。 とうめいこうそく ぼくは、つかれきったからだを引きすって、また、東名高速の本線を西にむかうことに した。 ある それから、どれくらい歩いたたろうか。気がっかないうちに車道のほうによろけて、自 なんど 動車にクラクションを鳴らされ、あわててはしによることが何度もあった。 あたま どうろ ある 頭がもうろうとしてきて、道路を歩いているような気がしない。まわリがぼうっとかす うみ かんが んて、木も家も見えない。なんだか海の上を歩いているみたいた。あとから考えれば、そ うみ みずうみ のとききっとぼくは海の上を、いや、せいかくには湖の上、つまリ浜名湖にかかった橋 ある はまなこ ひょ、つし」 の上を歩いていたのだろう。そのさき、おぼえているのは、浜名湖サービスエリアの標識 ある を見つけたことだけだ。歩きながら、半分ねむっていたのたろう。どこをどうしてたどリ ついたものやら、目がさめたときには、サービスエリアの中の、一本の太い木の下に、ぼ どうしゃ はんぶん ある しやどう ほんせんにし ふと 190
ふたりのルドルフ ちゅうしやじよう 駐車場をくるくるまわるよリも、サービスエリアの入 リロて待っていたほうがいいことに気づいたぼくは、車 が入ってくる坂を見おろせる場所に、しんどった。日が くれてすすしくなる。岐阜ナンバーの車はけっこう入っ じようようしゃ てくるけど、乗用車やライトバンばかリだった。九時ご ぎふ こがた ろ、岐阜ナンバーの小型トラックが一台入ってきたけれ きゅうがた おん ど、かなリ旧型て、エンジン音がガーガーうるさいのて やめておいた。それに、ほろもかかっていない。ほろな んか、なくてもよさそうなものだけど、あれがあるのと あんしんかん ないのとては、安心感かせんせんちがうのた。 おおがた こうそくどう 夜中になった。大型トラックがふえる。夜中の高速道 てんごく おおがた 路は大型トラックの天国だ。ぼくはひとねむリすること にした。 明けがた、しけみのかげてねていたぼくの顔に、つめ よなか さか よなか かお 円 6
くは横になっていた。 たいよう いつのまにか晴れたようて、ばかにまぶしい。見あけると太陽はかなリ西にかたむいて いる。すいぶん長いあいだねむっていたようだ。 しき じぶんあんぜんばしょ ほとんど無意識のうちに、自分て安全な場所をえらんだのたろう。そこは、コンクリー にんげん トの建て物のうらて、人間がめったに入ってこないような場所だった。 ものまえ ぼくは起きあがリ、建て物の前に出てみた。ははん、ガソリンスタンドたな。そうする と、あっちがレストランしゃないだろうか。おなかがへってしかたがない。なにか食べな ざんばん きや。残飯てもなんてもいい。 こうしてみると、なかなか見はらしのいいところにあるサービスエリアだ。湖につきた はまなこ したみさきの上にあって、浜名湖がひとめて見わたせる。あれはヨットだな。それから、 はばしらにんげん あれはなんだろう。板に帆がついていて、帆柱に人間がしがみついている。しすみかけた ョットかな。それにしては帆が小さい。それに、もししすみそうになっているのなら、そ しんがたの ふねたす ばの船が助けにいきそうなものた。そうしないところを見ると、あれは新型の乗リ物なん ものずかん たろう。こいつは、乗リ物の図鑑てしらべないといけないな。 もの みずうみ もの
よゅうはなかった。西へ、ひたすら西へ、ぼくは歩きつづけた。 あ ひょうしき はままつにし 『浜松西 2 』という標識が見えたころには、とっくに夜は明けきっていた。もうへッ はまーまつにし ドライトをつけている車は一台もない。浜松西のインターチェンジについても、そこてう りようきんじよ あか まいくあいに、トラックが見つかるたろうか。あたリも明るくなってしまったし、料金所 かかりいんお のボックスのかげにかくれていて、係員に追いはらわれないだろうか。 お おおがた 車がぼくを、どんどん追いこしていく。さっきまて、ほとんどが大型トラックだったの に、乗用車の数がふえてきた。 こうそくどうろ はままつにし ひょうしき やっと浜松西の出口の標識が見えてきた。道を左にそれて、高速道路を出ていく車がある。 とうめいこ、っそく 東名高速の本線とインターチェンジに出る道がわかれているところまてたどリつき、と おも こうそくどうろ おも にかく高速道路を出なきやと思ったとき、ぼくは、あることを思い出した。 ちゅう はまなこ そうだ。このインターチェンジのさきに浜名湖サービスエリアがある。そこには大きな駐 ちゅうしやじよう しやじよう 車場と、それからレストランがある。駐車場があるっていうことは、車がたくさんとまっ おも ているということだ。車がたくさんとまっているということは、あぶない思いをしてとび 乗らなくても、ゆっくリトラックをえらべるっていうことだ。それから、レストランがあ の じよ、つよ、つしやかず・ ほんせん みち みち ある よ 188
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