食べ - みる会図書館


検索対象: ルドルフともだちひとりだち
18件見つかりました。

1. ルドルフともだちひとりだち

「ね、ママ。このねこちゃん、ことばがわかるのかな。ウナギっていったら、すくきたよ。」 「ことばがわかったんしゃなくて、においがしたんしゃないかしら。 「ふうん。」 あたま ふたリは、ぼくの頭の上て、そんなことをしゃべっている。 あっというまに食べ終わると、待っていたように小さな女の子は、しやがんて、ぼくの あたま もの 頭をなてはしめた。もらう物だけもらって、はい、さようなら、というわけにはいかない。 耳なんかをちょっと引っぱられるくらいはかくごしていたが、女の子は、そういうらんぽ うなことはしなかった。 「ヨーコちゃんがのこしたのを、ねこちゃんに食べてもらって、すてすにすんて、よかっ たね。 , 「うん。ねこちゃんに食べてもらって、よかった。」 なんという、おくゆかしい親子だろうか。おなかのすいたねこに食べ物をくれて、しか きようよう も、「食べてもらってよかった。」っていっている。なまはんかな教養ては、こういうふう かんしん にはいえない。ぼくは感心してしまった。 おやこ もの 円 4

2. ルドルフともだちひとりだち

なっかしさが、イツバイアッテナの話しぶリにあふれていた。日野さんは、かなリびん ぼうて、レインコートもそれ一まいしか持っていないほどだったそうだ。デビルの家のと ばしょふるい なリの、いま、新しい家がたっている場所に古い家があって、そこをかリて、住んていた やちん のたが、家賃もはらえないときがあったらしい。それても、どういうわけか、食べ物だけ り - よ、つり はばかにせいたくて、料理もしようすて、イツバイアッテナも、おいしいものをけっこう 食べていたということだ。 ねこに字を教えるくらいだから、かわった人にはちがいない。 「飼われていたというよリ、いっしょに住んていたといったほうがいいかな。しっさいそ じゅう いつは、『おれはおまえを飼っているつもリはないから、自由にしていいぞ。出ていきたけ れば、いっても出ていっていし そのかわリ、おれも出ていきたくなったら、いってもい なくなるからな。そのときになって、すてられたのなんのって、そんなことはいいっこな しだ。』って、ロくせみたいにいってた。」 ひの かんけい ィッパイアッテナと日野さんの関係は、ぼくとリエちゃんの関係とは、どこかちがった みたいだ。どこがちがうのかは、よくわからないけど。 あたら はな け ひの もの

3. ルドルフともだちひとりだち

かえ 「せんぶ食いな。なんなら、持って帰ってもいいぞ。」 そうだ。ィッパイアッテナにも食べさせてあげよう。ても、ぼくは、いますくに食べた くて、もうがまんがてきなくなっていた。 はんぶん 「それしや、半分食べて、のこリの半分はイツバイアッテナのおみやけにしていいかな。 「イツバイアッテナ ? あ、タイガーのことか。かまわねえけど、あいつはたぶん、おれ からもらった肉なんか、食わねえたろうな。」 かな デビルはすこし悲しそうな顔をした。 ぼくはロを大きくあけて、肉にかみついた。肉がせんめんきから飛び出しそうになる。 あわてて、手ておさえる。グイツとかみちきる。 おいしいなあ。 はんぶんた ぼくが食べているところを、デビルはしっと見ていた。あっというまに半分食べてし まった。もっと食べたかったけれど、のこリはイツバイアッテナに持っていくのた。 ロのまわリを舌てべロべロなめていると、デビルがいった。 「ほんとに、半分、タイガーに持っていくのか。」 はんぶん はんぶんた した かお

4. ルドルフともだちひとりだち

「おまえらのところにくると、いつもうまいものが食えるのはいいけど、あのブラシには まいるよなあ。」 ブッチーは、飼いねこのくせに、ブラシがあまリ好きてはないのだ。 ましにち よるヘや おいしいものを食べて、毎日ブラシをかけてもらって、夜は部屋の中てゆっくリねむつ て。神社のえんの下て生活していたときとは大ちがいだ。 そういう生活がしばらくつづいて、季節は真夏になった。朝はやく、ぼくは小学校に出 なつやす かけた。夏休みがはしまっているのて、子どもたちはいないはすだ。日野さんの家にも、 がっきゅう 本はたくさんあるけれど、どれもぼくにはむすかしすきる。やつばリ本は、小学校の学級 文庫にかきる。 せいもんてつ 正門の鉄のさくをくくって、グラウンドに入る。 がっきゅうぶんこ いる、いる。木のかげにも、グラウンドにも。きようの目的は、学級文庫の本だけては もくてき なかったのだ。もうひとつの目的は、スズメだ。 ひく たか プロックベいにそって、高くて太い木と、低くて細い木がジグサグにならんている。あ そこが、あな場なのた。太い木のかげにかくれて、細い木のえだにとまったやつを、下かⅢ ぶんこ じんじゃ せいかっ か た せいかっ ふと ふと きせつまなっ す ほそ ほそ もくてき あさ ひの

5. ルドルフともだちひとりだち

「そうだよ。ブッチーは飼いねこたから、けっこうおいしいもの食べてるけど、ぼくたち ぎゅうにく は、こういう牛肉はめったに食べられないからね。」 「そうか。いいもんだな。」 ぼくはデビルがなんてそんなことをいうのか、わからなかった。 「食べられないのが、なんていいんだよ。おいしいものを食べられるほうがいいしゃない 「おいしいもの ? いや、そうしゃない。そのことをいったんしゃない。おまえには、そ かえ 、いいなっていったんだ。それに、おまえたち うやって肉を持って帰ってやる相手がいて は自由だしな。」 かん ぼくもまえから感していたんだけど、飼いいぬってのは、かわいそうた。へいの外には 出られないし、さんぽだって、くさリにつながれたままだもんなあ。 「世の中には、ごちそうなんかよリ、すっといいもんがある。 デビルはひとリごとをいうみたいにいった。 まいにちじゅう 「ようするに、おれはひがんていたんだ。それて、毎日、自由に生きているタイガーに、 か。」 じゅう そと

6. ルドルフともだちひとりだち

せつかくきたんだから、朝めしののこリても食ってくか。」 あさ そういえば、ぼくは朝ごはんがまたたった。 ある デビルは玄関のほうに歩きたした。 「この中に、ステーキののこリが入ってる。せんぶ食ってもいいぞ。」 げんかん デビルは、玄関のわきにおいてあったせんめんきを鼻ておした。そばによって、中を見 てみると、なるほど、タバコの箱くらいのステーキが食べのこしてある。ぼくは、おなか がグーツと鳴ってしまった。デビルの本心がよくわからないうちに、肉なんかもらってい おも いのたろうかと思ったが、どうもぼくは意地きたないようた。つい、 「これ、ほんとに食べていいの。 なんていってしまった。 「いいよ。」 ぎゅうにく しようしんしようめい」ゅうにく においをかいてみた。正真正銘の牛肉た。ちょっとかしってみる。牛肉どくとくの、な んともいえないかおリがロの中にひろがる。こんないい肉は、ほんとうにひさしぶリた。 まえに食べたのはいつだったか、わからないくらいだ。 げんかん あさ ほんしん

7. ルドルフともだちひとりだち

しんばい ィッパイアッテナがデビルのステーキを食べるかどうかっていうことは、心配なかった。 いわすれていたけど、このあいたデビルにもらった肉たって、イツバイアッテナはおい しそうに食べていたからだ。もちろん、デビルにもらったということも、ちゃんと話した。 そういえば、あのとき、イツバイアッテナは、 「いつまても、うらみつらみをのこしといたんしや、あとあとよくないからなあ。 おも なんていっていた。いまから思えは、アメリカにいくことを考えて、そのまえにちゃんと おも なかなおリしておこうと思っていたにちがいない。 ぬし そういうわけて、あとは、デビルが飼い主からステーキをもらえる日がくるのを待った まいにち けになった。ぼくは、毎日夕がたになると、デビルのところに出かけていった。 とうとう五日めのタがた、デビルはうれしそうにいった。 「おーい。きようはステーキたぞ。さっき、おれの飼い主かそういってた。食ったふリし て、かくしておくから、夜になったら、みんなてこいよ。」 いっか よる かんが

8. ルドルフともだちひとりだち

たから、そんな大金持ちしゃないよな。たけど、こんどあそこに家をたててるやつは、も かねも のすごい金持ちたっていうからな : かえ 「しゃあ、もう帰ってこないってこと ? 」 「なにしろ、アメリカにいったんたって、おれたちが生まれるすっとまえのことらしいし おも な。おれは、待っててもむたたと思うけどなあ。」 おも " はくはブッチーがいってることはもっともだと思った。だけど、そうすると岐阜のリエ かえ ちゃんも、ぼくが出ていってから一年も帰らないから、ぼくのことをあきらめてしまった たろうか。 きぶん かな なんとなく悲しい気分になリかけたとき、カーン、コーンという、かなづちの音がきこ えてきた。 はじ 「お、やってる。やってる。べんとうを食べ終えて、大工がまた仕事を始めたんだ。はや にんげん たか く見にいこうせ。大工ってな、人間のくせに、高いとこをピョンヒョンはねまわるんだせ。」 ブッチーが走リたしたのて、ぼくもあとを追って走った。 おおがねも し′」と

9. ルドルフともだちひとりだち

ィッパイアッテナだった。いつのまにか、そばにきていたのだ。 「なんだ。びつくリするしゃないか。いっきたのさ。」 「いっきたのさしゃねえ。なんだ、そのさまは。スヒードがまったくないしゃねえか。そ たか れに、高さだって、あリやあ、とどいていなかったぞ。 たしかにそうたった。ィッパイアッテナのいうとおリだ。しそこなったことなんか一度 もなかったのに。 うんどうぶそく 「おまえな、運動不足なんしゃないか。それに、このごろ太ったみたいだぞ。 . 考えてみれば、それもイツバイアッテナのいうとおリだった。毎日、おいしい物を食べ て、ゴロゴロしてばかリいたんだから。だけど、そのつきにイツバイアッテナがいったこ とばはショックたった。 きようだい 「ほら、ちょっとまえに、川むこうのドラゴン兄弟ってやつらがきたたろ。おまえ、なん かん だかからだの感しが、あいつらに、にてきたみてえたな。」 きんに′、 きんにく あのとき、イツバイアッテナは、あいつらの筋肉のことを、筋肉しゃなくてせい肉たっ きんに′、 ていってた。ぼくの筋肉は、せんぶせい肉になってしまったのだろうか。 かんが ふと ものた 凵 5

10. ルドルフともだちひとりだち

今年の二月に大雪がふったときもそうたった。 まっ ゆき 雪がしゃんしゃんふるなかを、松の木づたいに、わさわさ神社の屋根にのぼって、屋根 のいちばん低いところからてつべんにはいあがリながら、 「くそ、ここまてきて、ふぶきにあうとは ! 」 なんて、わけのわからないことを口ばしっていた。いったいなにをしているのかと、寒い のをがまんして、ぼくは下て見ていた。するとイツバイアッテナは、てつべんまてとどき そうになると、わさとまた手をはなして、ズルズルすべリ落ちながら、 ちょうじよう 「さ、さんねんた。項上まて、あとちょっとなのに。 と、くやしがったリしている。 とお さむ 「う、はらかへった。寒い。ねむい。ああ、気が遠くなる。」 さむ 寒いというのはほんとうたけど、おなかがへっているっていうのはうそた。その日は、 さかなや 魚屋のおにいさんに、売れのこったタラの切リ身を食べきれないほどもらって、イツバイ アッテナはさっきまてケップをしていたんだから。 そうなん 「い、いかん。遭難する。 、」とし ひく おおゆき じんじややね さむ