魚屋 - みる会図書館


検索対象: ルドルフともだちひとりだち
15件見つかりました。

1. ルドルフともだちひとりだち

おまえのリエちゃんなんかしゃない。ぼくのリエちゃんなんだ。そういいたい気持ちと、 まっ それから、なみだを、いっしようけんめいこらえて、ぼくは、ころげおちるように、松の 木づたいに、下におリた。 さかなや あだち 魚屋のさきには、まだ、あの足立ナンバーのトラックはとまっているだろうか。 ぼくは走った。ても、いそきたくて走ったんしゃない。はやくいきたくて走ったんしゃ おも ない。リエちゃんの顔を見ちゃいけないと思って、それて走った。 さかなや うんてんしゅの 魚屋のさきにとまっているトラックには、いまちょうど、運転手が乗リこむところたっ ぜんりよくはし た。ぼくは、ほろがあけはなたれた荷台めがけて、全力て走っていた。 かお 2 に

2. ルドルフともだちひとりだち

そういいのこして、ブッチーはいってしまった。 じんじゃ ひとリて神社にいてもつまらないし、朝こはんもまだだったのて、ぼくも出かけること にんげん にした。ぼくとイツバイアッテナは人間にも友だちがたくさんいるのて、ほうぼうてエサ をもらえる。魔女みたいに見えるけど、ほんとはとってもやさしいおばあさんとか、クマ じゅ、つい みたいな小学校の先生。ィッパイアッテナがデビルにやられて大けがしたとき、獣医さん きゅうしよくしつ につれてってくれたのはその人だ。それから給食室のおばさんもしんせつにしてくれる。 しようてんがいさかなや 岐阜の魚屋のおやしは、おにみたいな男だったけど、こっちの商店街の魚屋は、とって もやさしいおにいさんがやっている。 ぎふ 岐阜っていえば、リエちゃんはどうしているだろうか。それから、ロープウェーて働い げんき ているとなリのおねえさんも元気にしているかな。このごろぼくは、あんまリ岐阜のこと おも を思い出さなくなってしまったようて、あのふたリのことを考えると、わるいような気が する。 さかなや まじよ あさ とも かんが ぎふ はたら

3. ルドルフともだちひとりだち

かえみち に帰る道がわかる。 こうえん やす 公園が見えたとき、ぼくは知らないうちに、走っていたようた。すこし息がきれた。休 みたい気持ちょリ、はやくリエちゃんや、ロープウェーのおねえさんにあいたい気持ちの つよ ほうが、はるかに強かった。 ひろば の ひろば 広場た ! ロープウェー乗リ場の広場だ。とうとうついた。見おぼえのある町なみ。ぼ かえ くは帰ってきたんだ。 ロープウェー乗リ場をのぞいてみる。おねえさんのすがたは見えない。きっと、山の上 にいっているんた。 おねえさんがいないのをかくにんしてから、ぼくは自分のうちまての道を全力疾走し どうろ ひろどうろ た。広い道路やせまい道路を、いくつも横きる。 ま 右に曲がる。左に曲がる。 おな しようてんがい しようてんがい 商店街だ。ぼくが大きらいな魚屋のおやしがいる、あの商店街だ。あのときと同しよう さかなや おおがた に魚屋のちょっとさきに、ほろをかけた大型トラックがとまっている。 おな おや。あれは、あのときと同しトラックしゃないかな。 の ま し さかなや じぶん みちぜんりよくしっそう 202

4. ルドルフともだちひとりだち

かんしん びよ、つき 「へえ、病気のおしさんのみまいにいくって ? そいつは感心た。それて、おまえのおし しよ、つばい さんは、なんの商売をしてるんだ。 さかや 「やお屋か。そうだよな、魚屋しやますいもんな。ねこが魚屋やるなんて、おれが酒屋を しようばい やるようなもんだ。商売もんに、かたつばしから手をつけちゃうもんなあ。ハハハ : びようき はままっ ともかく、ぼくは、やお屋をやっている浜松のおしさんの病気みまいにいくことにされ ぎふ てしまったわけだけど、ぼくにしてみれば、岐阜にちょっとても近づけば、それていいわ はなや びよ、つき けて、やお屋のおしさんの病気みまいだろうが、花屋のおばさんの店のてつだいだろうが、 そんなことはどっちてもよかった。 タンプカーのおにいさんが、かしリかけのかまぼこをわけてくれたのて、おなかがへつ たのは、ひとますおさまった。 じかんはん はままっ 二時間半ほど走って、浜松のインターチェンジにつき、料金をはらうと、おにいさんは タンプカーをとめて、 かえ 「おい、ねこさえもん。おれはこの町てひと仕事したら、厚木に帰る。おまえ、どうする ? や 0 や さかなや や しごと あつぎ さかなや りようきん ちか みせ 0

5. ルドルフともだちひとりだち

とうきよう ぼくだって、岐阜から東京にきちゃったんだしな。 さかなや ても、ぼくは好きてきたんしゃなくて、魚屋のおやしに追いかけられて、トラックの荷 あたまめいちゅう 台ににげこんだところて、うしろからなげられたモップが頭に命中して気をうしない、そ とうきよう のまま東京につれてこられちゃったんだ。 それしゃあ、イツバイアッテナはどうなんだろうか。線路のむこうくらいにはいくけど、 とお 遠くの町には、いったリしない。 ぼくは、イツバイアッテナがこの町をはなれないのは、この町がくらしやすいってこと ぬしま おも もあるけど、やつばリむかしの飼い主を待っているせいなんしゃないかと、ふと思った。 せんろ

6. ルドルフともだちひとりだち

今年の二月に大雪がふったときもそうたった。 まっ ゆき 雪がしゃんしゃんふるなかを、松の木づたいに、わさわさ神社の屋根にのぼって、屋根 のいちばん低いところからてつべんにはいあがリながら、 「くそ、ここまてきて、ふぶきにあうとは ! 」 なんて、わけのわからないことを口ばしっていた。いったいなにをしているのかと、寒い のをがまんして、ぼくは下て見ていた。するとイツバイアッテナは、てつべんまてとどき そうになると、わさとまた手をはなして、ズルズルすべリ落ちながら、 ちょうじよう 「さ、さんねんた。項上まて、あとちょっとなのに。 と、くやしがったリしている。 とお さむ 「う、はらかへった。寒い。ねむい。ああ、気が遠くなる。」 さむ 寒いというのはほんとうたけど、おなかがへっているっていうのはうそた。その日は、 さかなや 魚屋のおにいさんに、売れのこったタラの切リ身を食べきれないほどもらって、イツバイ アッテナはさっきまてケップをしていたんだから。 そうなん 「い、いかん。遭難する。 、」とし ひく おおゆき じんじややね さむ

7. ルドルフともだちひとりだち

18 エピローグ と、つきよ、つ そういうわけて、ぼくはまた、東京にもどってきてし まった。 おも さかなや ぼくが思ったとおリ、魚屋のさきにとまっていたト おな さいしょ とうきようの ラックは、ぼくが最初に東京に乗ってきたトラックと同 そうこ うんそうがいしゃ し運送会社のものて、とちゅう、倉庫みたいなところに よる とう強」よ、つ よって、荷物をつみたしたあと、夜になってから、東京 しゆっぱっ にむけて出発した。荷物のつみたしのとき、見つかるん しゃないかとドキドキしたけど、いちばんおくのタン ボール箱のすきまて、息をころしていたら、だいしよう ぶだった。 とうき髪、つ と、つきよ、つ ひろ 東京といっても広いから、トラックが東京のどこにつ しんばい くか、心配しゃなかったかって ? そんな心配なんかせ と、つきよ、つ んせんなかった。だって、荷台の中には、あて先が東京 かっしかく えどがわく の江戸川区や葛飾区になっているつみ荷がたくさんあっ しんばい によッっ に 4 っ 幻 3

8. ルドルフともだちひとりだち

ブッチーの名案というのはこうだった。ブッチーのうちは、せとものもあっかっていて、 いえしなもの どんや まいっきはつか かながわけんあつぎ せともの問屋が、毎月二十日に、神奈川県の厚木というところから、ブッチーの家に品物 をおろしにくるというのだ。 とんや 「その問屋がな、うちのおやしのむかしからの友だちてよ。うちにくると、晩めしを食っ と、つめい てったリするんだ。そのときに、『きようは東名がこんていた。』とかなんとか、よくいっ おも てるから、あいつのトラックにしのびこんしゃえば、厚木まてはいけると思う。あんまリ きれいなトラックしゃねえけどな。 とんや 「厚木っていうと、ここだな。間屋のトラックは、ここのインターチェンジをおリるんだ り・よ、つきんじよ なごやほうめん ろう。そしたら、料金所てとまっているあいだにとびおリて、名古屋方面にいく、べつの なんど いちのみや ぜんぶある トラックにとび乗るんだ。そういうことを何度かくリかえせば、全部歩かなくても、一宮 につける。」 とうめいこうそく さがみがわよこ そういいながら、イツバイアッテナは、地図の上て、東名高速が相模川を横きるあたリ をゆびさして、 しゅ、つが′、りよこ、つ 「これてきまリだ。なあ、ルド。これはおまえの修学旅行みたいなもんだ。いきがなんと あつぎ めいあん の とも あつぎ 3

9. ルドルフともだちひとりだち

うらしまたろう うらしまたろう 浦島太郎のかくし芸を見せるといわれても、なんのことだかわからす、浦島太郎というの うみそうなん おも は、海て遭難した人のことだと思ってしまった。 おも 思い出すと、ふきたしそうになるが、だって、あれはどう見ても、カメのせなかにリよ ちんばっせんせんいん うしがゆうゆうと乗っているというようなものてはなく、沈没船の船員が、たるにつか ひょうりゅう まって漂流しているようにしか見えなかったからた。 てもぼくは、そのかくし芸を見て、イツバイアッテナとデビルが、ほんとうになかなお こころ あんしん かくしん リしたことを確信し、すごく安心した。ィッパイアッテナがデビルを心からしんらいして れんしゅう いなければ、あんなかくし芸の練習なんかてきっこない。 どんや かなものや よくはつか 翌二十日の夜、せともの問屋のおしさんが、金物屋のおくて晩ごはんをごちそうになっ とんや こがた ているすきに、ぼくは、ほろのかかった小型トラックの荷台にしのびこんだ。問屋のおし みせ さんが店から出てくるまて、ぼくとイツバイアッテナとブッチーは、トラックの荷台の中 て、いろいろな話をした。 ブッチーは、スズメをとるのがぼくほどうまくない。ぼくはスズメとリのコツを、身ぶ でんじゅ リ手ぶリを入れて、伝授した。ほんとうはみんな、スズメとリのコツなんて、どうてもよ て よる の み 9

10. ルドルフともだちひとりだち

きぶん かな おもでばなし かったのだけど、そういう話をしていないと、悲しい気分になってしまう。思い出話なん かしたら、泣いちゃうにきまっているのだ。 うんてんせきの 問屋のおしさんが運転席に乗リこんたらしい。ドアがしまる音につづいて、エンジンが かかった。なごリおしそうに、ふたリは荷台からとびおリた。 「それしや、イツバイアッテナ。それからブッチーも、長いあいた、せわになったけど、 かえ ルドルフは岐阜に帰リます。」 みち げんき 道ばたてこっちを見あげるふたリに、ぼくはてきるたけ元気をたして、そういった。 っしよ、つ 「もう、一生、あえないかもしれねえなあ。 ブッチーは、なみだ声になっていた。 「てもおれは、またルドにあえるような気がする。先のことなんかわからねえ。 最後にイツバイアッテナがこちらをむいて、 げんき 「しゃあ、ルド。元気てな。」 といったのと、トラックが走リだしたのは、ほとんど同時たった。 げんき 「ふたリとも、元気てねー ! 」 とんや ぎふ ごえ ど、つじ なが ロ 0