ちがい - みる会図書館


検索対象: 二重人格
72件見つかりました。

1. 二重人格

217 うだ ! 今度はわかったそ、誰の細工だか。つまりこういう 細工なんだ。やつらはきっと嗅ぎ しかし、坐らせたということは 別に大したこ 出して、それであの男を坐らせたんだ : ・ とじゃないな ? アンドレイ・フィリッポヴィッチが坐らせたわけなんだから、あのイワン・ ーヌイッチをさ。しかし、それはそうとして、なんだってあの男を坐らせたんたろう、 それにいったいなんの目的で坐らせたんだろうな ? ・おそらく、なにか嗅ぎ出したにちがいな よこ 1 レ こいつはヴァフラメーイエフの仕事だそ、いやヴァフラメーイエフじゃよ、 ろあいつはまるで丸太ん捧みたいな馬鹿野郎だからな、あのヴァフラメーイエフってやつは。 いやこれはつまりやつらがみんなであいつをかげであやつっているんだ、あの悪党をここへけ しかけてよこしたのも、つまりはおなじ目的からやったことなんだ。それにあのドイツ女もさ んざんおれのことを言いつけやがったにちがいない、あの化物め ! おれはいつも怪しいとに らんでいたんだが、この陰謀はなかなかどうして簡単なもんじゃないそ。あの糞たれ婆あの蔭 ロのなかにはきっとなにかが隠されているにちがいないんた。これと同じことをおれはクレス チャン・イワーノヴィッチにも言っておいたんだが、やつらは人を斬り殺そうっていう誓いを たてやがったんた もちろん精神的な意味においてだけれどなーーー・・それでカロリーナ・イワ ーノヴナをまるめこみにかかりやがったのさ。いや、明らかに名人芸だー たしかに名人の腕 の冴えた、ヴァフラメーイエフずれのできるこっちゃない。前にも言ったように、ヴァフラメ ーイエフは馬鹿野郎だが、この手ぎわは : いまこそわかったそ、誰がかげで糸を引いている

2. 二重人格

106 0 、 0 で来たのを見て、こちらもいささか困惑しながらアントン・アントーノヴィッチは言った。 : ここに、アントン・アントーノヴィッチ・ : ここにーー官吏が一人お 「私は、まったく : るのですが、アントン・アントーノヴィッチ : : : 」 「それで ! やつばりどうもわからないねー 「私が中しあげたいのは、アントン・アントーノヴィッチ、ここに新しく入って来た官吏が 一人いるということなのです」 「さよう、たしかにおりますな。君と同姓の男だが」 「えっ ? 」とゴリャートキン氏は叫んだ。 「君と同姓の男たと言っているんですよ。やはりゴリャートキンという名前だからね。君の 兄弟じゃないのかね ? 」 え、ちがいます、アントン・アントーノヴィッチ、私は : : : 」 「ふむ ! これは驚いた、私はまたきっと君の近い親戚かなんかにちがいないと思ったのだ しかしどうだね、なにかこう一族の類似といったようなものがあるじゃないか」 ゴリャートキン氏は驚きのあまり茫然としてしまった。そしてしばらくのあいだロもきけな いありさまたった。こんな奇怪な、前代未聞の出来事を、かくもあっさり片づけてしまうとは。 これこそは真に稀有の出来事に属するものであり、最も冷淡な傍観者をも愕然たらしむるに足 る出来事ではないか。真相はまさに鏡に映して見るように明瞭なのに、それを一族の類似など

3. 二重人格

幻覚ではなかった ! 手紙、まさに手紙、紛れもない手紙、しかも彼に宛てられたもの ど ) き ゴリャートキン氏はテープルの上の手紙を手に取った。心臓は激しく動悸を打っ ていた。『これは、きっと、あのペテン師が持って帰ったものにちがいない』と彼は考えた。 『そしてここへ置いといて、それつきり忘れてしまったんだ。きっと、そのとおりにちがいな : ・』その手紙はゴリャートキン氏のかって 正しく、そのとおりのことだったに相違ない : の親友であり、若い同僚である事務官のヴァフラメーイエフから来たものであった。『しかし、 おれは前からこうなるだろうと思ってたんだ』とわれらの主人公は考えた。『それにこの手紙 に書いてあることだって、おれにはちゃんと見当がついていたんた : : : 』手紙はつぎのような ものであった。 『ャーコフ・ペ トローヴィッチ様 お使いの者は酩酊の様子にて、筋道立ったことはわかりかねますので、そのために書面を もってお答えすることにいたします。取り急ぎ申し述べますが、貴下よりの御依頼の件、つ まり貴下の手紙を小生の手を通してさる人物に手渡しせよとの御依頼は、まさに了承、間違 れ′ - 」第ノ いなく確かに履行することにいたします。貴下もよく御存じの右の人物は、いまでは小生の 親友となっておりますが、その名をここに挙げることは遠慮いたします ( と言うのは、全然 罪のない人物の名声をいたずらに傷つけることは小生の好まないところであるからです ) 。

4. 二重人格

271 でございましようかね、あなた ? というわけでつまりその : いや待てよ、これじやどうも まずいな : : これじゃまったく見当ちがいだ、まったく見当ちがいじゃないカ おれとし たことがなにを口から出まかせなことを言ってるんだ、この大馬鹿野郎め ! これじゃおれは まるで自殺するようなもんじゃないか ! まったく、これじゃお前まるで自殺行為たぞ、とん だお門ちがいじゃないカ しかしお前もまったく自堕落な人間たよ、だからいまこんな目 にあわなけりゃならないんだー ところで、おれはいったいこれからどこへ行ったらいい んた ? え、 いったいこれからどうしたらいいというんだね ? おい、このおれがこれからな んの役に立っというんたい ? ほんとに、 こうなったらいったいなんの役に立っというんたね、 ところで、 まったくあきれたゴリャートキンだよ、とんでもないやくざ野郎だよ、お前はー これからどうしたものかな ? まず馬車を雇わなくちゃなるまい。おい、馬車をつかまえてこ こへ連れて来てくれ、馬車がないと足が濡れちゃうじゃよ、 オしかというわけた : それにし ても、こんなこととは誰も御存じあるまい ? いやはや、お嬢さん、いやさ御令嬢さま ! 品 かがみ 行方正な淑女があきれますよー とんだ淑女の鑑があったものさ。大したことを仕出かしまし たね、お嬢さん、恐れ入りました。大したことを仕出かしたもんですー しかしそれとい うのもみんな不道徳な教育方法から来たことさ。おれは今度こそじっくりと見定めて、よくよ く吟味をしてみたが、たしかにこれはほかならぬ不道徳から来ていることにちがいないんだ。 むち 小さいときからその、なんだ : ・ : 笞ででもときどき躾けをすりやよかったのに、あの連中とき かど

5. 二重人格

「そのとおりだよ、お前、そのとおりだとも。おれはなにもそんなことを、お前、なにもそ んなことを言ってるんじゃないんだ。 しいかね、実はこうなんだよ、お前 「わかってますよ、旦那。そんなことはもうちゃんとわかってまさあ。現にわしなんそは、 ストルプニヤコフ将軍のとこで御奉公しておりましたがね、サラートフのほうへ移られるので、 おをいたたきやしたんで : : : なんでもそちらのほうに先祖代々からの領地がおありになると かで : : : 」 「いいやちがうよ、お前、おれはなにもそんなことを言ってるんじゃないんだ。おれは別に なにも : : : 変なふうに取ってもらっちゃ困るよ、お前 「わかりきったことでさあ。わしら風情は吹けば飛ぶような代物で、御承知のとおり、難癖 をつけるなあわけのないこってさあ。わしはどこへ行っても気に入られたもんでさ。大臣さま や、将軍さまや、元老院の議員さまや、伯爵さまもお出入りなさいましたしね。わしもいろん な方のお邸へ、スヴィンチャートキン公爵たの、ペレポールキン大佐だの、ニエド・ ( ーロフ将 軍などのお邸へうかがったこともありまさあ。先方からもよくお見えになって、御一緒に領地 のほうへお出かけになったこともありましたし。わかりきったことでさあ : : : 」 「そうかい、お前、そう力し ししよ、お前、結構だよ。ところでおれも今度、旅に出るこ とになったんだ : : 。人はそれそれ行く道がちがっているもんで、どの人がどの道を行くこと になるかわかったものじゃないんだ。そこで、お前、これからおれの着替えをひとつ手伝って

6. 二重人格

320 一一五八『警察新聞』 一八三九年に発刊された『サンクトペテルプルク市警察新聞』。一八四四年からは日 刊となった。 毛一一ファ化ハラーーープーシキンの詩『ヌーリン伯爵』の一節に出て来る寄宿女学校の校長の名前を借用し たものか ? 三 0 九誰かが遠い旅に出るとき : ・ ーー・・旅立ちの前には必ず一度腰をおろしてそれから立ち上がる習慣であ っこ 0 三一六ちみは ( 君は ) : 医者はドイツ人なので、正しいロシャ語の発音もできず、文法もちがっている。

7. 二重人格

232 「公式なと中しますとどういうことで、アントン・アントーノヴィッチ ? どうしてまた公 式ななんておっしやるんです ? 」とわれらの主人公はおすおずと尋ねた。 「そんなことはわれわれのとやかく言うことではないよ、ヤーコフ・ペ トローヴィッチ、首 脳部がお決めになることたからね」 「汽脳部ですって、アントン・アントーノヴィッチ」とますますおじけづきながらゴリャー トキン氏は言った。「首脳部になんの関係があるんです ? どうして首脳部なんてものを煩わ さなければならないのか、私にはその理由がわかりませんね、アントン・アントーノヴィッチ あなたは、ひょっとすると、きのうのことについてなにかおっしやりたいのじゃないん ですか、アントン・アントーノヴィッチ ? 」 「いやちがうよ、ぎのうのことじゃないんだ。君にはほかにもまだちょっとおかしなところ があるんでね」 「なにがおかしいんですか、アントン・アントーノヴィッチ ? ・私には、アントン・アント ーノヴィッチ、なにもおかしなところはないと思いますがね」 「それじゃいったい誰に対して策略を用いようとしたのだね ? ことアントン・アントーノヴ ィッチは、すっかり落ちつきを失ってしまったゴリャートキン氏を、ことば鋭く極めつけた。 ゴリャートキン氏はぎくりと身を震わせ、ハンカチーフのように蒼ざめてしまった。 「そりやもちろん、アントン・アントーノヴィッチ」と彼はやっと聞こえるくらいの声で言

8. 二重人格

立てる始末なんですからねえ、そうしないではいられないんですよ : : : 」 「尊話を触れまわるんですって ? こ 「そうですよ、クレスチャン・イワーノヴィッチ、話を触れまわった連中がいるんですよ。 つまりわれわれが熊と呼んでいる人物と、その甥に当たるわれわれのマスコットとが、ここに 介入して来たわけなんです。もちろん二人が例の婆さんとぐるになって、まんまとやってのけ いったいやつらが たことにちがいありませんよ。ところであなたはどうお思いになります ? 人間一人を殺すために、どんな方法を考え出したと思います ? 」 「人間一人を殺すために ? 」 「そうですとも、クレスチャン・イワーノヴィッチ、人間一人を殺すためにです、つまり精 神的に殺害するためにですね。やつらはデマを飛ばして : : : これはみんな私のごく親しい友人 のことなんですがね : : : 」 クレスチャン・イワーノヴィッチは一つうなずいた。 「やつらはその男に関するデマを飛ばして : いですよ、クレスチャン・イワーノヴィッチ」 「ふむ : : : 」 「やつらはデマを飛ばして、彼はもう結婚の約東をかわした、だからある意味でもう花婿同 しかも、クレスチャン・イワー / ヴィッチ、相 然だなんてことを言い触らしたんですよ : 正直なところ、ロにするのも気がさすくら

9. 二重人格

「いや、結構だよ、ベトルーシャ、行ってくれたんなら結構なんだ。どうだ、おれは怒って なんかいないだろう : : え、おい」とわれらの主人公は、さらに馬力をかけて従儺の機嫌を取 るようにして、その肩を叩いたり、にこにこ笑いかけたりしながらことばをつづけた。 「それで、ちょっと一杯ひっかけたというわけだな、悪党め : : : 十力。ヘイカがとこひっかけ たというわけか ? このペテン師め ! しかしまあ、そんなことはなんでもありやしない。ほ らどうだ、おれは怒ってなんかいないだろう : : : 怒ってなんかいるもんか、な、怒ってなんか いやしないよ : : : 」 「いいや、なんて言ったって、わたしはペテン師じゃねえですよ : : : 。親切な人たちのとこ ろへちょっと寄っただけで、ペテン師なんてものじゃありやしねえ、いままでたって一度もペ テン師なんてものにはなったことがねえんですから : : : 」 「いや、そうじゃないんだ、ちがうんだよ、ベトルーシャー まあよく聞いてくれ、。ヒョ トル。おれは別になんにも、。へテン師って言ったって、別にお前を叱ってるわけじゃないんだ。 あれはお前を慰めてやろうと思って言ったんだ、いい 意味であんなことを言ったんだよ。あれ はなあ、ペ トルーシャ、人によってはお世辞になるくらいで、えいこの古狸めとか、したた、 者めと言っても、実は抜け目がなくって、決して人にごまかされない男だという意味なんだ。 人によっちやかえってそれを喜ぶくらいだよ : : なあに、まあ、大したことじゃないさ ! と ころで、ベトルーシカ、今度はひとっ友達に打ち明けると思って、包み隠さず、はっきりと一言

10. 二重人格

175 を赤らめた。自尊心を傷つけられた悲しみを発作的に思い起こすと、眼に涙さえにじみ出て来 た。そうして三十秒ばかり棒立ちになっていたが、やがて不意に思いきったようにとんと一つ 足踏みすると、たった一跳びで入口の階段から往来へ飛び降りた。そしてあとをも見ずに、息 を切らして、疲れも忘れ果てて、シェスチラーヴォチナャ街のわが家を目ざして駆け出した。 家へ帰ると、いつもならゆったりとした部屋着に着換えるのに、上衣さえもとらず、なにより も先に手を出す。 ( イプにも目をくれず、彼はいきなり長椅子に腰をおろした。そしてインク壺 を手もとに引き寄せ、ペンを取り、便箋を取り出すと、内心の動揺にぶるぶると震える手で、 つぎのような手紙をしたためはじめた。 『ャーコフ・ペ トローヴィッチ殿 ! 当方の事情、ならびに貴下自身がかかる行為を強制しなかったならば、小生は決してペン を取らなかったにちがいありません。ただやむをえざる必要が貴下に対してこのような釈明 を余儀なくさせたものと、御了承ください。したがってまず第一に、小生のこうした行為を 貴下を侮辱せんがための作意的もくろみとお考えなきようお願いします。これは現在われわ れを結びつけている事態から生じた必然の結果にほかなりません』 『どうやら、これでいいようだ。礼儀にもかなっているし、丁寧だし、そうかといって力強