4 ー をしなかったことによって与えられた場合、その子供が大人になってから自分の人生に起き る問題と親との関連性を見抜くことは非常に難しくなる。また、そういう親を持った子供 は、もともと自分の抱える問題と親との関連性を否定する傾向が特に強いので、その作業を いっそう難しくする。 問題を複雑にしている要因のひとつに、この種の親の多くは自分が抱える問題のためにす でに救いようのない状態にあるため、他人がそれを見ると哀れを感じてしまうということが ある。これは、その子供となればなおさらで、親の救いようのなさ、あるいは無責任さを見 ると、子供はつい弁護したくなってしまうのである。それは、犯罪者をかばって被害者が謝 っているようなものだ。 そういう子供が大人になると、よく「親は悪意があってそういうことをしたわけじゃない んです」「彼らなりにできるかぎりのことはしたんです」と言って親を弁護するが、そのよ うな弁護は、親が責任を果たさなかったという事実をあやふやにしてしまう。その子供が健 康な心の発達ができずに苦しんだのは、ほかならぬその親のせいだったのである。 もしあなたが「義務を果たさない親」の子供だったなら、あなたは「親が抱えている問題 の責任は、彼ら自身にある」ということを知らないまま成長している可能性がある。もしそ うなら、あなたは親の問題に引きずられ、親の都合に踊らされているのは自分の運命のよう に思え、おそらく自分がそのように選択しているのだとは思っていない
・もし彼らがどれほど私を傷つけたかわからせることができたら、彼らも態度を変えるに 違いない。 彼らがたとえどんなことをしたにしても、親なんたから敬意を払わなくてはならない。 、りノ 1 ・私は親にコントロールなどされていない。私はいつも親とは闘っている。 っ もしこれらのうち四つ以上が「イエス」だったら、あなたの心はいまだに親と相当からみ の 合っている。受け入れるのはつらいかもしれないが、いまサンプルとしてあげた十六の「考 行 え方」は、すべてネガテイプで自分をダメにする考えである。こういう「考え」を持ってい るかぎり、あなたは独立したひとりの人間にはなれない。あなたは引き続き精神的な依存に 主月 縛られたまま、エネルギーを奪われ続けていくだろう。 多くの「毒になる親ーに共通していることは、彼らは自分の不幸や不快な思いを他人のせ んいにするということである。そしてその対象にはたいてい子供が使われる。もしあなたが、 親が幸福か不幸かに責任があると感じさせられているとすれば、あなたは自分が親を ( ひい 章てはほかのだれでもを ) 喜ばせたり悲しくさせたりすることができると考えているというこ 第とになる。 だが、ここが大事なところだ。人間の感情が他人の一一一一口動から影響を受けるのは事実だが、 大人であるなら、だれかに傷つけられた時に自分を癒すのは自分の責任である。それは親で
もちろんそうはいっても、常に百パーセント本当の自分でいられる人はない。人間は社会 的な生き物であり、他人の同意などまったく必要ないということはあり得ないからだ。感清 的に他人にまったく依存していない人もいないし、そうなりたいと思う人もいないだろう。 人とオープンにつき合っていくには、ある程度の相互依存は必要なのである。したがって る「本当の自分でいる」ことには柔軟さがともなわなければならないのは当然である。そうい う意味では、親のために何かを妥協したからといって悪いことはひとつもない。大切なの 自は、なんとなく押し切られて、本当はいやなのにそうなってしまったというのではなく、自 当分の自由意思で選択してそうなったということである。それはつまり、自分に誠実であると い一つことだ。 か自分に誠実であることと利己主義は混同されやすく、多くの人は利己主義だと言われたく 何ないために、自分に誠実になることに二の足を踏む。親に対する過剰な義務感を背負ってい 分る人というのは、自分が利己主義でないことを証明するのがあまりにも重要なことになって いるため、自分が本当に必要としていることを親の要求の下に埋めてしまっているのであ 一る。そのような態度でずっと生きてきた人は、大人になってから子供時代を振り返ってみる 第と、自分が本当にやりたいことをしたという思い出がほとんどなく、そのために長いあいだ ちに心の奥にたまった怒りと、心から充実した気分になったことがないという事実が、しだい にうつ病やかんしやくとなってあらわれてくる。
2 ラ 0 来へ向けてエネルギーの方向を変えるまでの時間といってもよい。大きな傷も、いずれはい くつかの小さな痛みに分かれていく。「自分が失ったものについて自分には責任がない」と 確信できた時、悲しみは癒えはじめるだろう。 自分の責任を取る 責任は負わなくてはならない人間に負わせる、つまり、子供の時の不幸は親の責任だと確 信できたとしても、だからといって、大人になった後も自分の自己破壊的な行動のすべてが 親のせいだということにはならない。子供の時のあなたにはいっさいの責任はなかったが、 その事実は、いまでは大人になっているあなたから自分に対する責任を免除するものではな いのである。 つぎにあげるリストは、現在は大人であるあなたが、親との関係において果たさなくては ならない責任について考えるのに役立つであろう。声に出して「大人である私には、 に責任があります」といってみてほしい。 親から独立したひとりの人間になること。 親との関係を正直に見つめること。 3 ・自分の子供時代について、目をそらさすに真実を見つめること。
らない子供だった時に大人からされたことに対して、あなたに責任はないのである。幼い子 供に対して親がしたことに関するかぎり、すべての責任はその親が負わなければならない。 もちろん、私たちは、大人になってから後の人生については自分に責任がある。だが、そ の人間がどのような大人に成長するかということは、成長の過程において自分のカではコン トロ 1 ルできない家庭環境というものによって大きく影響され、それによってその後の人生 の多くが決定されてしまうということも忘れてはならない。 大人としてのあなたの責任とは、現在自分が抱えている問題に対していますぐ建設的な対 策を講じ、問題を解決する努力をすることなのである。 本書にできること これからあなたが出発する旅は、嘘のない、そして発見のためのとても重要な旅だ。この 旅が終わった時、あなたはいままでなかったほど自分の人生を自分の意思で生きていること を実感するだろう。ただし、本書を読んだからといって、あなたの抱えている問題が魔法の ゝ。サれども、もしあなた ようにたちまち消え失せるなどというようなことは約束できなしし め じに、本書に書かれていることを学び、行動する勇気と強さがあれば、あなたはひとりの人間 として本来与えられているべきにもかかわらず親に奪われてしまった「カ」や、人間として 本来備えているべき尊厳のほとんどを取り戻すことができるようになるだろう。
( 誤解 5 ) 特に十代の少女は大人の男性を誘惑するようなそぶりを見せることがよくあり、 少なくともいたすらなどをされる責任の一部は本人にもある。 ( 真実 ) 多くの子供は、家族など強い結びつきのある大人に対して、性的なフィーリングや 衝動を無邪気に、そして模索するように表現することがある。それは基本的には幼い女の子 が父親に媚びを売ったり、男の子が母親に甘えたりするのと同じようなことだ。十代の少女 のなかには、あからさまに大人の男性を挑発する者もいることは確かだが、そういう場合で も適切な態度で対応することは百パーセント大人の側の責任である。まして家庭内ならなお 親さらのことだ。 る す を 為 ( 誤解 6 ) ほとんどの近親相姦の話は子供の性的な願望が作り出した空想や白昼夢で、作り 行 な話だ。 性 ( 真実 ) この誤解は二十世紀はじめにフロイトによって作り出されたもので、それが心理学 章者のあいだに広められたのがはじまりだ。フロイトはウィーンで精神分析の研究をしていた 第時、信頼のおける中流家庭の娘たちからあまりにも多くの近親相姦のリポートが寄せられた ため、すべてが本当の話とはとても考えられないと結論してしまい、それらの多くは空想の 産物だと断定してしまったのである。フロイトの犯したこの誤りのため、勇気を奮い起こし こ
毒になる親一生苦しむ子供 ・子供が従わないと罰を与え続け る「神様」のような親 ・「あなたのため」と言いながら子 供を支配する親 ・大人の役を子供に押しつける無 責任な親 ・脈絡のない怒りを爆発させるアル 中の親 「毒になる親」に傷つけられた子供 の心は、歳を重ても癒されない。 悩む数千人の人々を 20 年以上にわ たってカウンセリングしてきた著者 が、具体的な方法をアドバイスする 、、現実の希望 " にみちた名著 ! ! 講談社 / 定価 : 本体 780 円 ( 税別 ) 毒になる親ースーザン・フォワード 玉置悟 = 訳 好評既刊 「家族の中の心の病』 斎藤学 「「家族」という名の孤独』 斎藤学 いや 『心の傷を癒す力ウンセリング 366 日』 西尾和美 「ローラ、叫んでごらん』 リチャード・ダンプロジオ関口英男 = 訳 『ほとけさまの智恵と慈悲』 ひろさちゃ 「「 9 つの性格」人間判断法』 鈴木秀子 「マンガ「禅」入門』 中野東禅 = 監修吉祥寺ー矢 + 八剣ヒロキ = 作画 * にれでわかった「現代思想・哲学」大全』 鷲田小彌太 「「軽うつ」かな ? と感じたとき読む本 苜野泰蔵 「アイとアユム』 松沢哲郎 * 印は書き下ろし・オリジナル作品 9 7 8 4 0 6 2 5 6 5 5 8 5 スーザン・フォワード略歴 医療機関のコンサルタント、グルー プ・セラピスト、インストラクターをつ とめながら、ラジオ番組のホストとし ても活躍。講演活動にも精力的であ る。著書に「ブラックメールー他人に心 をあやつられない方法」 (NHK 出版協 会 ) 、「男の嘘」 ( TBS ブリタニカ ) などが ある。 玉置悟略歴 たまき・さとる一 1949 年、東京都に生 まれる。東京都立大学工学部を卒業。 音楽業界で活躍後、 1978 年より米国 在住。 訳書に「私がわたしになれる本」「本当 に好きな人とめぐり逢う本」 ( 以上、 KK ベストセラーズ ) などがある。 1 9 2 0 1 1 1 0 0 7 8 0 6 I S B N 4 ー 0 6 ー 2 5 6 5 5 8 ー 7 C 01 1 1 \ 7 8 0 E ( 0 ) 毒ーる親 TOXIC PARENTS 一生苦しむ子供 FOt•、 スーザン・フォワード著 玉置悟 = 訳 いや スーサン・フォワード 玉置悟・訳 いろんなテーマで、あらゆる視点で。 プラスアルフアは、次々生まれます。 講談社ート文庫のテーマ分類は次のとおりです。 生き方ことば生活情報 工ンターテイメント歴史 心理・宗教ビジネス・ノンフィクション 事典・辞典サイエンス 講談社文庫 Y780 プラスアルファ F ・ 35 ・ 1
1 1 はじめに 私たちの親の世代までは、子育ての方法については、ほとんどの場合あまりそれが上手では ない人々、つまり彼ら自身の親から学ぶ以外になかったのである。私たちは親が自分を育て たやり方を見て気づかないあいだに学び、自分に子供ができた時には無意識のうちにその多 もほ、つ くを模倣してしまう。こうして世代から世代へと受け継がれてきた子育てのための古いアド イスには、 ) しまでははっきりいって間違っていると言えるものがたくさんある。「子供は 叩いて育てろ」などはそのいい例である。 「毒になる親」は子供の将来にどのような影響を与えるか 「毒になる親」に育てられた子供は、大人になってからどのような問題を抱えることになる のだろうか ? 子供の時に体罰を加えられていたにせよ、いつも気持ちを踏みにじられ、干 そまっ 渉され、コントロ 1 ルされてばかりいたにせよ、粗末に扱われていつもひとりばっちにされ ていたにせよ、性的な行為をされていたにせよ、残酷な一 = ロ葉で傷つけられていたにせよ、過 保護にされていたにせよ、後ろめたい気持ちにさせられてばかりいたにせよ、いずれもほと んどの場合、その子供は成長してから驚くほど似たような症状を示す。どういう症状かとい えば、「一人の人間として存在していることへの自信が傷つけられており、自己破壊的な傾 向を示す」ということである。そして、彼らはほとんど全員といっていいくらい、いずれも 自分に価値を見いだすことが困難で、人から本当に愛される自信がなく、そして何をしても
だ。自分が感じたり考えたりしていることと違うことを絶えず自分や他人にいっていな くてはならない状態では、自分に対する信頼感を育て、自信ある人間となることは不可 能である。その子供の内面には無意識のうちに罪悪感が生まれ、自分が人から信用され るかどうかの自信が持てない。その感じは成長するとともに続き、その結果、自分のこ とを積極的に人に話したり、自分の意見を自由に述べたりすることを尻込みしがちな人 間になる。アルコール中毒の親を持っ子供の多くは、外見はともかく、内面は悲痛なほ ど内気である。 子供にとって、家族についての取りつくろいを続けるのには、非常に大きなエネルギ ーを必要とする。その子供は、常に内心では身構えており、うつかり家族のことをバラ したらどうしようと恐れている。あまり友人を家に連れてきたがらないことがよくあ り、友達を作りたがらないこともある。そのため、彼らはしばしば非常に孤独だ。 だが、外の世界で孤独であることは、暗い家族の問題にさらに深く引きずり込まれる 原因ともなる。そして、共通の秘密を抱えている唯一の人たち、つまり家族のメンバ との歪んだ結びつきを強めることになるのである。こうして親との密着度が増し、親に 無批判に忠実であることがその子供の習い性となっていく。そのことは、大人になって から破滅的な人生を生きる要因となり続ける。 しりご
みんなから放り出された状態のことを考えると怖くてなかなかできなくなる。 それと同じ心理状態は、大人になってからもあらゆる人間関係にあらわれる。他人による 自己の″からめ取られ〃に慣らされてしまうと、恋人、上司、友人、時には見知らぬ人に対 してすら同様な反応をしてしまうのである。人にどう思われるかが気になって仕方がないた め、常に自分以外のものからの承認と賛同を得ていなければ自己が保てない人間になってし まうためだ。 「兄弟を比較する親」のタイプ このタイプの親は、ターゲットとなる子供をひとりだけほかの兄弟姉妹と比較して叱り、 親の要求に十分応えていないことを思い知らせようとする。よくもっとも独立心の強い子供 がターゲットにされるが、これは子供たちが全員で団結して反抗しないようにするための分 断作戦のようなものだ。親のいうことをいちばん聞かない子供が家庭内の統率をいちばん乱 すというわけである。 こういう親の行動は、意識的であれ無意識的であれ、本来なら健康的で正常な兄弟間の競 争心を醜い争いへと変えてしまい、兄弟間に嫌悪感や嫉妬心を生じさせてしまう。そうなる と、その子供たちは、将来、一般的な人間関係においても無意識のうちに同様のネガテイプ な感を抱く傾向が身についてしまう。 しっと