お母さん - みる会図書館


検索対象: 罪と罰 上巻
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1. 罪と罰 上巻

きこうとするとき、一生懸命にとりつくろう表情なのである。 「お父さんは君を可愛いがった ? 」 「お父さんはリードチカを一ばん可愛いがってたわ」を彼女は大まじめに、にこりともしないで、 もうすっかり大人口調でことばを続けた。「あの子は小さいから、可愛いがってもらえたの。それ みやげ に病身だったから。あの子にはいつでもお土産を持って帰ってらしたわ。あたし達はお父さんにご 本を読むことを習ったの。あたしは文法と聖書のお講義ーと彼女は澄まして言い添えた。「お母さ んはなんにも言わなかったけど、それを喜んでらしたのは、あたし達もわかってたわ。そして、お 父さんも知ってらしたわ。お母さんはあたしにフランス語を教えてやるとおっしやったのよ。あた しもう教育を受ける年ごろなんですもの」 「君お祈りができる ? 」 「ええ、そりやできなくってさ ! もう先からよ。あたしはもう大人みたいに、ロん中でお祈り とな するのよ。だけどコ 1 リヤとリードチカは、お母さんと一緒に声を出して唱えるわ。はじめは『聖 母マリア』を唱えて、それからも一つのお祈りをするのよ。『主よ姉ソーニヤを許し祝福したまえ』 巻っていうの。そのあとでまた『主よ、われらの第二の父を許し祝福したまえ』って。それはね、先 上 のお父さんがもう死んでしまって、今のは違うお父さんだからなの。あたしたち先のお父さんのこ とも、やはりお祈りしてよ 「ポーレンカ、僕の名はロジオンていうんだよ。いっか僕のこともお祈りしてちょうだい。『奴 隷ロジオンをも』って , ーーそれつきりでいいから」 「あたしこれから一生、あなたのことをお祈りするわーと彼女は熱心にいった。そして急に笑い せん

2. 罪と罰 上巻

思わず眉をしかめた。ラスコーリニコフは一向注意もしない様子で、青白い唇に妙な徴笑を浮かべ ながら、もの思わしげにしっとすわっていた。彼は何やら考え続けているのであった。 と 「さあ、それでどうしたい、その馬車にひかれた男は ? ・ほく話の腰を折ってしまったがー ラスーミヒンは急いでこう叫んた。 「何 ? ーこちらは目がさめたように問い返した。「そう : : : それでつまり、その男を家までかっ いで行く手伝いをしたとき、血まみれになったんだ : : ときにお母さん。僕はきのう一つ申しわけ ないことをしちゃったんで。実際、正気じゃなか、ったんですね。お母さんが送ってくださった金を、 昨日すっかりやっちゃったんです : : : その男の細君に : : : 葬式の費用として。今はやもめになった、 肺病やみの、みしめな女なんです : : : 小さいみなしごが三人ひもじい腹をかかえていて : : : 家の中 はがらんどう : : : また外に娘が一人いるんですが : : : 全くそれをごらんになったら、お母さんだっ ておやりになったかもしれませんよ : : もっとも、僕にそんな権利はなかったんです。ことに、お 母さんがどうして調達してくだすったか、それを知ってるんですからね。人を助けるには、初めに まずその権利を得なくちゃなりません。でないと、 Crevez chiens, si vous n ・åtes pas contents ひもじけりや ) ですからね ! 」彼はからからと笑い出した。「そうじゃないか、ね、ドウー = ャ ? 犬でも殺せ え、そうしゃないわ」ドウーニヤはきつばりと一一一口った。 ぞうお 「へえ ! じゃお前も : : : 何か思わくあってだな ! 彼はほとんど憎悪のまなざしで彼女を 見やり、あざけるような微笑を浮かべながらつぶやいた。「僕もそれを思い合わさなくちゃならな かったんだ ! ましいさ、けっこうなことだ。つまりお前のためになるよ : : : そして、ある一 線まで行きつくさ。それはね、踏み越さなければ不幸になるが、踏み越しても、一そう不幸になる

3. 罪と罰 上巻

349 罪と罰上巻 んでしようか ? ときに、あなたそうおっしゃいましたねえーーーあの子は腹にあることを外へ出し : もちまえの : ・ : 弱い性分で、あの子を て見せるのが嫌いだって。ですからわたしもしかすると : しったいあ トミートリイプロコーフィッチ、、 : ・ねえ、 うるさがらせはしないかと思いましてー れにはどうし向けたらいいのか、教えてくたさいませんか ? わたしはもうごらんの通り、途方に 暮れているんですから」 「もし顔でもしかめるようでしたら、あまりうるさくいろんな事を尋ねないようにするんですね。 ことに体のことを聞いちゃいけませんよ、いやがりますから , ートリイ・プロコーフィッチ、母親というものはなんてつらい役Ⅱでしはう ! で 「ああ、 すが、もう階段です : : : なんという恐ろしい階段だろう ! 」 「お母さん、顔色まで青くなってることよ。落ち着いてちょうだいよ」とドウー = ヤは母にすり よって言った。「兄さんたら、お母さんに会うのを喜ばなくちゃならないはすだのに、かえってお 母さんの方がそんなに気苦労なさるなんて , 両眼をぎらぎら光らせながら、彼女はそう言いたした。 「ちょっと待ってください、起きたかどうか、僕さきに見て来ますからー ーミヒンについて、そろそろの・ほって行った。もう四階まで 二人の婦人は、先に立って行くラズ 上って、おかみの部屋の戸口へさしかかったとき、ドアがごく細目にあいていて、すばしつこい一 つの黒い目が、闇の中から二人をうかがっているのに気がついた。けれど、双方のⅡがばったり出 会うと、ドアはいきなりばたんと閉まった。それはプリ〈ーリヤが驚きのあまり、危うく叫び声を 立てそうになるほど、猛烈な勢いたった。

4. 罪と罰 上巻

おわかりですかね、あなた様にはおわかりですかねーーーそのさつばりした身なりというのが、何を 意味するのか ? おわかりですかねーーールージン夫人のさつばりした身なりは、ソーネチカのさっ ばりした身なりと同じだという事が ? いや、事によったらもっと悪い、もっと汚らわしい、もっ と卑しいものかもしれないのだよ。なぜといってごらん、ドウーネチカ、お前の方はなんといって も、多少楽をしようという目算も潜んでいるが、一方はそれこそもう飢え死するかしないかという 問題なんだからな ! 「このさつばりした身なりというやつは高いものにつくんだよ、ドウーネチ 力、高いものに」ところで、もしあとでカ及ばす後悔するようになったら ? その悲しみはどれほ のろ だってお前はマルフア・ どかーーー嘆き、呪い、人しれす流す涙は、どれくらいかしれやしないー へトローヴナとは違うからな。いったい、その時母さんはどうなるのだ ? たって、お母さんはも はんもん う今から不安を感じて、煩悶しているのだもの。万事がはっきりわかった暁はどうだろう ? それ ドウーネチ にまたおれはどうなるのだ ! : : : 本当にお前たちはおれのことをなんと考えたのだ ? 力、おれはお前の犠牲なんかほしくない。お母さん、僕はいやです ! 僕の目の黒い間は、そんな 事をさせやしない、断じてさせるものか、させるものか ! 承知するわけにいかん ! 』 彼はふいにわれに返って、足を止めた。 巻 上 『させない ? じゃ、そうさせないために、お前はいったいどうするつもりだ ? さし止めるの 罰か ? どうしてお前にその権利がある ? そういう権利を持っために、お前は自分の方で何を彼ら 罪に約東することができるのだ ? 大学を卒業して地位を得た時に、自分の運命全部を、自分の未来 いや、それはもう聞きあきた。だって、それはまだ第 いっさいを、彼らにささげるというのか ? 二段じゃないか。たが今は 2 いま現に何かしなければならんしゃないか、いったいそれがわかっ

5. 罪と罰 上巻

226 し、今ではやっと正気に返って、食欲も出てきましてね、喜んで食事をしたくらいです。ここにい るのはドクトルで、今ちょうど診察してくれたばかりなんです。僕はロージャの友人で、やはり前 ごしんしやく の大学生、今はこの通り先生のお守りをしてるわけです。だから、どうそわれわれには御斟酌なく、 かまわずお続けください。いったいなんのご用ですー 「いや、ありがとう。しかし、わたしがここにすわって話をしたんしや、ご病人にさわりやしま すまいかね ? , とルージンはゾシーモフの方へふり向いた。 いや」とゾシーモフはロの中でもぐもぐ言った。「かえって気晴らしになるかもしれませ んよ」こう言ってからまたあくびをした。 ーミヒンは続けた。この男 「なに、先生はもうずっと正気でいるんですよ、朝つから ! 」とラズ じゅん・ほく のなれなれしさには、偽りならぬ純朴さが見えたので、ルージンはちょっと考えて、だんだん元気 づいてきた。それはこの厚かましいぼろ書生が、自分でいち早く大学生と名乗ったことも、一部の 原因たったかもしれない。 「あなたのお母さまは : : : 」とルージンは切り出した。 ーミヒンは大きな声でこうやった。 「ふむ ! 」ラズ ルージンはけげんそうにその顔を見た。 「いや、なんでもありません。僕はただちょっと。どうかお続けください : ルージンはひょいと肩をすくめた。 あて 「 : : : あなたのお母さんは、わたしがあちらでご一者こ 吊冫いた間に、あなた宛の手紙を書きかけて おられたのです。で、わたしはこっちへ着いてからも、わざと四、五日訪問を遅らしたのです。万

6. 罪と罰 上巻

町へ行くのが遅くならないように、さっそく水浴び場へ行ったそうだよ : : : 実は、あの人は何かそ んな水浴療法をしていたそうだから。あすこには冷たい泉があってね。あの人はそれへ毎日きまっ てはいってたんたそうだよ。ところが、水へはいるとたんに、いきなり発作が起こったんだね ! 」 「そりやそうでしようともー とゾシーモフが一一一口った。 「で、あの男はひどく細君をなぐったんですか ? 」 「そんなこと、どうでもいいじゃありませんか」とドウーニヤが口を入れた。 「ふむ ! しかし、お母さんはいい物好きですね、こんなくだない話をするなんて」とふいにラ スコーリニコフはいら立たしげに、つい口がすべったという調子で言った。 「まあ、お前、わたしもう何を言ったらいいか、わからなかったもんだからね」とプリへーリヤ は思わず口をすべらした。 「いったいどうしたんです、あた方はみんな僕をこわがってでもいるんですか ? 」と、ひん曲が ったような微笑を浮かべて、彼は言った。 「そりや全くほんとよ」ドウーニヤはいかつい目つきでまともに兄を見ながら、こう言った。「お 巻母さんは階段を上る時から、びくびくして十字を切ってらしたくらいですものー 上 彼の顔はけいれんでもしたようにゆがんた。 ー罰 「ああ、ドウーニヤ、お前何を言うんだね ? ロージャ、後生だから、怒らないでね。ドウーニ と ヤ、なんだってお前はあんなことを ! 」とプリへーリヤはまごまごして言った。「そりや全く、わ 引たしはこっちへ来る途中も、汽車の中でずっと考えてばかりいたんたよ , ・ーーお前に会った時の事た の、お互いにいろんな話をし合う模様たのをね : : : そう思うと、わたしはうれしくてうれしくて、

7. 罪と罰 上巻

296 彼はその肩に両手をおいて、何かしら幸福な感じをいだきながら、じっと彼女を見た。この女の 子を見ているのがなんともいえずこころよい どういうわけか、それは彼自身にもわからなかっ 「誰が君をよこしたの ? 」 「ソーニヤ姉さんこ、 冫しいっかったの」少女はひとしお楽しげにほほえみながらそう答えた。 「僕もそう思ったよ ソーニヤ姉さんがよこしたんだろうと」 「母さんも行けって言ったのよ。ソー = ャ姉さんが行けってった時に、母さんもそばへ来て、そ う言ったのよ。『急いで駆け出しておいでよ、まーレンカ ! 』って」 「君ソーニヤ姉さんが好き ? 「ええ、誰よかも一等すき ! 」なんだかこう特別力をこめて、ポーレンカは言「た。と、その徴 笑が急にまじめくさってきた。 「僕も好きになってくれる ? 」 返事の代わりに、彼は自分の方へ近づいてくる少女の顔を見た。ふつくりした唇が、接吻しよう として、無邪気に前へ突き出される。ふいに、マッチのような細い手が、固く固く彼の首に巻きっ き、頭がその肩へ押し当てられた。こうして、少女は次第に強く顔を彼の体に押しつけながら、し くしく泣き出した。 かわいそう 「お父さんが可哀想たわ ! 」しばらくたってから、彼女は泣きはらした顔を上げ、両手で涙をふ きながら言い出した。「このごろこんな不仕合せなことばかり続くんですもの」彼女はことさらし おとな かつめらしい顔つきをして、だしぬけにこう言い足した。それは子供が急に『大人』のような口を こ 0 せつぶん

8. 罪と罰 上巻

ごほん : : : ああ、つくづくいやになってしまう ! 」と彼女はたんを吐き出して胸を抑えながら、叫 ぶように言った。「わたしがね : : : ああ一番おしまいの舞踏会の時 : : : 貴族会長さんのお宅の舞踏 会の時 : : : べズゼメーリナャ公爵夫人がねーーーこれはあとでわたしがお前のお父さんと結婚した時 この方がね、わたしを見るとすぐ『卒業式の時に に、祝福してくだすった方だよ、ポーレンカ ショールをもって踊ったかわいいお嬢さんは、あの人じゃなかったかしら ? 』とおききになったん だよ。 ( ああ、ほころびを縫わなくちゃ。さ、早く針を持って来て、わたしが教えた通りにつくろっ : 」ほん、ごほん、ごほん ! もっとひどく : ごほん ! 明日は : てごらん。でないと、明日は : 裂けてしまうから ) 」と苦しげに身もたえしながら、彼女は叫んだ。「そのときね、ペテルプルクか じじゅうふかん らいらっしたばかりのシチェゴリスコイ公爵という侍従武官が : : : わたしとマズルカをお踊りにな って、その翌日わたしに結婚の申し込みをなすったんだよ。その時、わたしは自分でごく丁寧にお 礼を申し上げて、わたしの心はもうほかの人にささげているからと、お断わりしたの。そのほかの 人というのが、つまり、お前のお父さんだったのよ、ポーリヤ。するとおじいさまがたいへん腹を 2 なだ一 お立てになってね : : : あ、お湯はできたかえ ? さあ、肌着をおよこし、そして靴下は ? ・ 巻や」と彼女は下の娘を呼びかけた、「お前今夜は仕方がないから、肌着なしでおやすみよ。どんな 上 にかしてね : : : 靴下は傍へ出しておおき : : : 一緒に洗うんたから : : : なんだってあの飲んだくれは ぞうきん 罰 帰らないんだろうね ! 、肌着を雑巾みたいになるまで着て、・ほろ・ほろに破いてしまった : : : 二晩も と 罪 立て続けに骨を折らされるのはたまらないから、みんひとまとめに片付けたいんたけどねえ ! あ あ ! ごほん、ごほん、ごほん、ごほん ! また ! あれはなんだね ? 」と彼女は、入り口の控室 でがやがやしている群集と、何か荷物をかついで部屋へ押し込んで来た人に気がついて、彼女は思

9. 罪と罰 上巻

さん話したい事があるというのも、どういう事かおれにはよくわかっている。お前が夜通し部屋を 歩き回って、何を一生懸命に考えたか、お母さんの寝室に据えているカザンの聖母の前で、 い何を祈ったか、おれはちゃんと知ってるそ。そりやゴルゴタへ上るのは苦しいさ。ふむ : : : しゃ つまり、き「ばりと決めたわけなんだな : = ・・え、アヴドーチャ・ロ「ーノヴナ ( ト ヤの本名一 = ) 、実務の人 で、思慮分別のある自分の財産を持っている ( もう自分の財産を持っていると、こいつは中々重み があって、すっと人聞きがいいて ) 、ふた所に勤めて、新しき世代の確信をもわかつもので ( これは お母さんの言い草だ ) しかもドウーニヤ自身の観察によれば、善良らしい男の所へ嫁っしやるんで すね。このらしいが何よりすてきだて ! そしてあのドウーネチカは、このらしいと結婚しようと いうのだー : 結構なことだ ! 結構なことだ ! : だが、なんだってお母さんは「新しき世代」の事なんか書いてよこしたんだろう ? 単に 当人の性格描写のためか、あるいはもっとほかに目的があるのか ? つまり、ルージン氏をよく思 ろうらく わせるために、おれを籠絡しようというのか ? ああなんという策士たちたろう ! それから、も いったい母たち二人はその日も、その晩も、それから う一つの事情も知っておきたいものだな すっと先も、どの程度まで互いに打明け合ったのだろう ? 二人の間にはすべてのことばが、歯に衣 上きせず言われたのだろうか、それとも二人は互いの心持や考えを悟り合って、何もそんな事を口に 罰出して、かれこれいう必要がないどころか、ことばを漏らすのも無駄なくらいだったのか ? 大方そ 罪んな事も多少あったろう。手紙を見てもわかり切っている。お母さんは、あの男が少々とげとげし 、ものだから、自分の観察を馬鹿正直にドウーニ いように思われた。ところが、お母さんは人がいし ヤに話した。妹はもちろん腹を立てて、「いまいましそうに答えた」わけた。当たり前じゃないかー きぬ

10. 罪と罰 上巻

かしているんだーー、荷物は旅費よりも安くつくからな。事によると、まるまるただでいくのかもし どうして二人のものはそれがわからないんたろう。あるいは、わざと気のつかないふりを さんばそう しているのかな ? とにかく満足してる、満足し切っているのだ ! しかしこれはほんの三番叟で、 本当の芝居はこれからなんだから、考えただけでもそっとする ! 実際この事件でかんじんなの はーーーやつのしみったれでもなければ、欲つばりでもない。万事につけてそうした調子なんだ。だ ってこれが結婚後すっと先々までの調子なのだから、つまり予言た : : : それにお母さんはなんだっ ルー。フリ銀貨 てそんな散財をするのだろう ? 何を懐にしてペテルブルグ三界へ来るんたろう ? : ふむ ! それに、 三つか「お札ーの二枚も持ってか ( これはあいつの言い草た : : : あの婆あの ) ・ お母さんはゆくゆくべテルブルグで、どうして暮らしていくつもりだろう ? 結婚の後は、ほんの 当座しばらくでさえも、ドウーニヤと一緒に暮らせないのを、何かのわけでもう気がついたんじゃ ないか ! あの優しい紳士が、きっと何げなく口をすべらして、自分の腹をにおわせたに相違ない。 もっとも、お母さんは両手を振って、「わたしの方からご辞退しますーとは言っているけれど、いっ たいお母さんは誰を当てにしているのだろう。ーーアファナーシイ・イヴァ 1 ヌイチの借金を差引い そでぐちし えりまき た百二十ルしフリの年金か ? それから冬は老いの目を悪くしながら、襟巻を編んだり、袖ロの刺 共」しゅう 上繍をしたりする。だが編物や刺繍は、例の百二十ルしフリにせいぜい年二十ルしフリも増すくらい 罰な事だ。おれはよく承知している。すると、つまり、やはりルージン氏の男気を当てにしているわ 罪けだーーー「自分の方からいい出して、どうそと頼んでくるだろう , というつもりでな。だが、ご用し ご用心ー こういう事は、ああしたシラー式の美しい心をもった連中によくあるやつだからな くじゃく どたんば いよいよという土壇場まで孔雀の羽毛で相手を飾ってさ、最後のどんづまりまでいい事ばかり頼み さっ