こえな と、ひと声鳴いて、はとは飛びたった。ぼくは、ちょっとはすかしくなって、てれかくし 「ばかやろう、ざまあみやがれ。」 と、どっちがばかたかわからないのに、いってみた。それから、木からおリようとして、 おも はっと、さっき " フッチーがいったことを思い出した。えつ、なんたって。ィッパイアッテ ナが、むかし、飼いねこたったって。人間の字が読めるって。そのしゅんかん、ぼくは足 まっ をすべらせて、松の木から落ちてしまい、せなかをしたたかに打ちつけた。
もくじ プロローグ : おも 思いもよらぬ旅のはしまリ : 2 大きな町へ : 3 ツ。、 ノイアッテナ : 4 魔女のすみか : 5 ぼくはどこからきたんだろう : 6 キョウョウとクリームシチュー さかなや 7 魚屋とイッパイアッテナ : 8 キョウョウへの第一歩 : ぎゅうにゆう 9 牛乳とグシャグシャになった月 : 9 " フッチー、おおいに語る : ィッパイアッテナおこる : ひみつ ィッパイアッテナの秘密 : まじよ 103 94 78 71 65 58 49 42 引 20 凵 8 4 物ハをロロロ ロロ冂 0 0 0 ロ 0 ′・を物・ 4 ロロ プロ c 0 0 驫 0 0
い気 そんなこというつもリしゃなかったのに、しせんにそういうことばが出てしまった。 " フッチーがこっちを見ている。 ルドルフ、おまえは、ステトラをあんなにいためつけたやつを助けてやるのか。そうい いたけな目た。ても、もうこれくらいていい いのちたす たろう。ィッパイアッテナたって、命は助 かったのだから。 「それたけしゃねえ。これからは、あまった えさは、ねこにわけるんた。わかったか。」 こえ しばらくして、デビルの声がした。 「わかったよ、アッププ。なんてもやくそく するし、えさもわけるから、おねけえた。か みつかねえて、上にあがらせてくれ。」 ぼくがだまっていると、デビルは、こちら およ にむかって泳いてきた。 d 6 k たす
きって、ドラえもんみてえなツラにしてやる おも から、そう思え ! 」 こえひく こんどはすこし声を低くして、ドスのきい こえつく た声を作っていってみた。うん、うん、かっ こいいなあ。ぼくは、このせリふがいつべん て気にいってしまった。 れんしゅう ぼくがこのせリふを木の上て練習している あいだ 間に、もう " フッチーは下におリていた。 「おおい、ルドルフ。おれはいくからなあ。 おまえも気をつけておリろよー。それからな あ、いいこと、教えてやろうか。ステトラ は、むかしは飼いねこたったんたそー。しゃ あなあ。」 ぼくはあいかわらす、うっとリしてせリふ
25 出発の朝 たか クマ先生は高いびきてねむっていた。ぼくと " フッチー は、ねむらすに、すっとイッパイアッテナのまくらもと にすわっていた。ふたリとも、ひとことも口をきかな トか 0 た。ィッパイアッテナは、こんこんとねむ 0 てい る。ぼくたちは、イッパイアッテナの気がつくのを待っ た。このまま、目をさまさないのしゃないかって、とき ふあん ふあん どき不安になったけれど、そんな不安はロには出さな かった。 がた 明け方、イツバイアッテナの目が、一度うっすらとひ こえ らいた。ても、ぼくが声をかけるまもなく、またすくと してしまった。 そのうち、クマ先生が起きたした。ぼくたちかしっと すわっているのを見て、 「なんた、おまえら、きのうから、そのままのかっこう 248
おも このねこもイツ。ハイアッテナをこわがっているんたな、とぼくは思った。 「イッパイアッテナがこわいのかい。」 ひがし 「くだらねえこときくやったなあ。そういうのは、お日さまは、東からのぼるのかいって おな きくのと同した。」 「やつばリ、こわいんたね。」 「あったリめえしゃねえか。このへんてステトラをおそれてないのは、 ルくらいのもんた。」 ほんとうをいうと、ぼくはイッパイアッテナがみんなからこわがられているのが、すこ おも しうれしかった。みんなと、もっとなかよくすればいいのにと思ったリもするけど、こわ きも じぶん いやつが自分にたけはやさしいっていうの、ちょっと気持ちがいいだろ。それて、イツ。ハ ィアッテナのことをこわがっていないやつがいるってことが、すこし、しやくにさわっ た 「へえ、そのデビルってやっ、どんなねこたい。」 さも意外そうに、そうぼくがたすねると、 " フッチーは、 川さんちのデビ
「おれは、 " へつにかまわねえけど、あんた、ほんとうにおどる気かい。」 ってきいたんた。 ステトラは、なんにもいわすに、たたこっくリとうなすいたたけたった。目が、らんら ひか んと光っていたつけ : それて、ステトラが庭にとびおリて、おれもあとに続いた。おれは、おっかなびつくリ まえ だったけど、ステトラはどうどうとしていた。 " テ " ヒルの前に出て、 「どんなタンスかいいんた。」 ってきいたんた。 「そうだな、はらを上にして、ころかリタンスてもやってもらおうか。」 あのやろう、そういった。 おも ステトラは、こリやああ " ふねえって、思ったんたろうな。 「それなら、おれひとリてやったほうが、うまくてきらあ。 " フッチーがいると、かえって しやまて、うまくおどれねえかもしれねえからな。」 っていって、おれに、むこうにいっているように合図するんた。 243
「や、ややつ。これはボスしゃないか。ど、どうしたんた。」 クマ先生は、イッパイアッテナの上にかがみこみ、手をイツ。ハイアッテナのむねにもく らせた。 「お、生きている。ひどい出血たが、また生きてるそ。」 おも そういったかと思うと、クマ先生は、イツバイアッテナのからだを両手てたきあけ、街 灯の下に持っていった。 せんもんか 「こいつはひどい。こリや、いぬたな。いぬにやられたな。ううん、これは専門家に見せ たほうがいいな。おれしゃあ、なおせないたろう。よし。」 クマ先生、いったいどうするのたろう。 とっせん、先生は走リたした。 こんどはぼくがあとを追いかける番たった。もちろん、 " フッチーもいっしょに走った。 先生は、イッパイアッテナをかかえたまま、どんどん駅のほうに走っていく。それをぼく たちが追いかける。 「どいた、どいたあー とう しゆっけっ ばん えき り、って 235
たてもの 「そうしゃない。大きな建物に、本がきっしリつまってるってことだよ。」 「へえー。」 かんしん ぼくは、たたたた、感心するたけたった。 「おまえみたいに、ひらがなとかたかなたけしか読めないんしや、いくら本がいつばい あっても、まったくむたたけどな。」 ぼくは、ちょっとむっとした。このごろ、ぼくは、ひらがなとかたかなたけ読めれば、 おも かんじ それていいんしゃないかと思いはしめていたところたった。たって漢字にはふリがなか おも ふってあるしゃないか。ぼくがそういうふうに思っていると、イツバイアッテナは、 よる 「それからな、ルド。おまえ、このあいたの夜、字が読めない " フッチーをからかっていた たろう。ああいうことをしてはいけない。おれは、ああいうことをさせるために、おまえ に字を教えたんしゃないからな。ちょっとてきるようになると、それをつかって、てきな さいてい きようよう いやつをばかにするなんて、最低のねこのすることだ。教養のあるねこのやるこっちゃね とつけたした。 凵 7
そう " フチねこがいったとき、はしめてぼくは、なんてこいつがぼくの名まえを知ってい おも るんたろうと思った。それを見すかしたように、 " フチねこは、 おも 「なんておれが、おまえの名まえを知ってるんたろうって、へんに思ってるんたな。ああ ゅうめい しよっちゅう、ステトラといっしょにいちゃあ、いやても有名にならあ。おれは、 " フッ かなものや しようてんがいさかなや チーだ。商店街の魚屋のすしむかいに、金物屋があるたろ、あそこんちのねこさ。」 かなものや その金物屋のねこが、ぼくになんの用事かあるんたろう。そんなに乱暴そうにも見えな いから、ぼくとけんかをするために、おリてきたようてもなさそうたし。 よう 「なにか用かい。」 よう 「へつに用ってわけしゃないんたけどよ。こないたから、ちょっとおまえと話してみた かったんたけどな。いつもステトラといっしょたったから、そういうわけにいかなかった んた。」 「イッパイアッテナといっしよしや、いけないのかい。」 もんだい 「いけないとか、いけなくないって問題しゃない。こっちがいけなくなくたって、むこう が、そうはさせてくれないたけさ。」 し ようじ らんばう し