気持ち - みる会図書館


検索対象: 半径500mの日常
28件見つかりました。

1. 半径500mの日常

れを見てみたいと思った。私たちはまだ見ぬ「うなぎ。ハイ」の姿を、あれこれ想像していた。友 人は、 た 見 「うなぎの輪切りが、。ハイの間にサンドウィッチされているに違いない」 を 真といった。友人は、 「頭を落としたうなぎを、丸ごと筒状に。ハイ皮でくるんだもの」 ン といった。私は、 ネ に「うなぎのすり身のペ 1 ストが、。ハイ皮に挟んである」 イ と想像した。しかしどれもこれも考えただけで気持ちが悪くなった。そして「夜のお菓子う ななぎ。ハイ」が、いったいどういうものであるかわからないまま、私は高校を卒業してしまったのだ。 子大学にはいると、同じク一フスに浜松出身の男の子がいた。私は早速、 お「うなぎ。ハイって知ってる」 夜 と聞いた。すると彼は、 る す「夜のお菓子でしよ。浜松でうなぎ。ハイを知らない奴はモグリだよ」 刺 といって胸を張るのだ。地元の人が胸を張るということは、そんなに気持ちの悪いものではな を 女いということだけはわかった。 乙 「うなぎ。ハイってどういうもんなの」 259

2. 半径500mの日常

のびてしまう。あわてるとますます始末におえなくなるので、冷静かっ沈着にお餅を食べるのは 大変なことだった。しかし緊張しながらもひとロ食べると、体の奥からじ 1 んと幸せな気持ちに なった。現在売られている・ハックに入ったお餅では、すぐ切れてしまうから、そういう苦労はし なくてもすむけれどどうも味気ない。へたをすると命を落としかねない、スリルに満ちた食べ物 という思いが、子供の私によりお餅をおいしく感じさせていたような気がするのである。 240

3. 半径500mの日常

タイを中途半端にゆるめ、背広を " 小林旭の渡り鳥シリーズ。風に肩にかつぎ、歯の間に楊子を ーやりながら歩いていった。おじさんたちは他の人が何をやっている つつこんでシーハ 1 シーハ か見えないから仕方ないとしても、それを見て、 「ゲゲ、気持ち悪い」 と思 0 たのは偽らざる事実である。女子大生と中年のおじさんのああい 0 た姿は何かもの哀し いなあ、と会社に帰る道すがら考えたのであった。 158

4. 半径500mの日常

が目的なのである。それには変に小細工してあるよりも、スクール水着タイプのほうがふさわし いだろう。しかし、あの雑誌のグラビアを見てしまったら、どうもあれを着る気にはなれない。 ところが、どの水着を買ってプ 1 ルにいこうか悩んでいるうちにだんだん、水泳をしたいという 気持ちさえ薄れてきてしまったのだ。その後、彼女が電話をかけてきて、 「プ 1 ルに行ってるんでしよ」 と触れられたくない話題を持ち出した。相変わらず私はごろごろしている。 「きっとこうなると思ってたわよ」 彼女のひつひっぴという、あざけりの笑い声を聞きながら、私は「我ながら情けない」とため 息をついている。 168

5. 半径500mの日常

私が初めて「うなぎ。ハイ」の存在を知ったのは高校生のときだった。いまは発行されていない 「ビックリハウス」という雑誌の読者の投稿欄に、 「浜松には、夜のお菓子『うなぎ。ハイ』という名物がある。近所のおじいさんは若い後妻をもら い、毎日うなぎ。ハイを食べていたら子供ができた」 という記事が載っていたからである。私は友だちとそれを読んで、 「うなぎ。ハイなんて気持ち悪いわね。夜のお菓子ってことわってあるところをみると、もしかし てこれは、大人のおもちやを売っている店にあるのかもね」 と話していた。そして「夜のお菓子うなぎ。ハイ」が話題になるたびに、ひと目でいいからそ 乙女心を刺激する「夜のお菓子うなぎ 。ハイーにネーミングの真髄を見た 2 ) 8

6. 半径500mの日常

この夏、目の調子が相当に悪くて落ち込んだ日々が続いた。ものすごく疲れるし出歩くと涙が ポロポロでてくる。朝起きて鏡を見ると、明らかに目がどんよりしているし、冷たいタオルを目 に当てると体中がグンニャリしそうなくらい気持ちがいい。今までこんなことがなかったので、 私はもしかしたらこれはヘタをするとまずいことになるかもしれない、と真剣に考えていた。い ちばん具合の悪いとき、原稿を渡すために会った顔なじみの編集者に、 「目の調子が悪くて」 と話すと、 「そういえば白内障や網膜剥離の手術ってすごいんですよねえ」 薬九層倍とはよくもいったり。人の弱み につけこんで、暴利をむさぼる漢方薬局

7. 半径500mの日常

町中を歩いていて一番恥かしいのが、。ハチンコ屋の前を通ったときである。だいたいそこでは 軍艦マ 1 チや行進曲の類いが、ガンガンかかっていることが多い。戦後四十年以上たっても、日 本人の気持ちを高揚させるのはああいった音楽しかないのか、物妻い大音量である。あの行進曲 が聞こえてくると、突然私の足は、何かにあやつられるように変化をきたす。そこまでは何も意 識せずに歩いてきたのに、行進曲が聞こえると曲のリズムに合わせて、 「イチ、ニ、イチ、ニ」 と行進しそうになってしまうのだ。そんなみつともないことをしてたまるかと、頭の中で何と かリズムをずらせて歩こうとするのだが、意識すればするほど緊張してけつつまずきそうになる。 町中の軍艦マ 1 チに思わず「イチ、ニ」 と体が動く。こんな私に誰がした 245

8. 半径500mの日常

彼は、 「報告おわりです」 などという。 「報告おわりって、どういうことですか」 よく聞いてみたら、写真を取りにこいというニュアンスなのである。 「私はうちで仕事をしていて、そちらのほうには行かないので送ってください」 A 」い、つン」、 「送るんですかあ」 と、とても不満そうなのである。会社の経費節約のため、たった百円程度の切手代をケチるの も結構だが、それで客に悪い印象を与えるということがわからないのも、考えてみれば気の毒で ある。 そして、それから一カ月以上もたつのに、いまだにうちには写真が送られてこない。それはそ れでいい。そういう店には金輪際行かないだけである。問題は彼に教えた電話番号のメモがどう なったかである。ゴミ箱行きになっていれば喜ばしい。そういう男に、うちの電話番号が知られ ていたのかと思うと、ものすごくソンした気持ちになる。 zee には悪いが、正直いって電話は もう捨ててしまいたい。もっと手紙で連絡がとれる世の中になればどんなにいいかと思っている。 118

9. 半径500mの日常

「これでもお母さんもかわいいこといったりするのよ」 というようになった。三カ月に一度くらいの割で、お母さんが、 「いろいろと悪いねえ」 などといたわってくれるそうなのだ。一時はいがみ合っていたといえ、そういわれると彼女だ って、何となく優しい気持ちになってくるのである。 「あの頑固なお母さんだって、気を使ってくれるようになったのよ。それなのにあいつらったら そういって彼女はキ 1 ッとヒステリ 1 を起こす。このあいつらというのは第二の問題である、 旦那の友人のことである。 「あいつらって本当に進歩がないの」 と本当に憎たらしそうである。 彼女は真面目な性格なので、旦那が友だちをつれて来たらどんなに疲れていてもちゃんと御飯 を作ってあげたり、晩酌の面倒を見たりしている。ところが彼らにとってそれがとってもうれし かったのか、それから会社の帰りだけではなく、土曜日や日曜日にまで呼びもしないのにやって 来る。彼女だって旦那が休みの日くらい二人でのんびりしたいのに、昼御飯を食べ終わってほっ としていると、突然玄関から、

10. 半径500mの日常

私はどうも、他人からみると文句をいい易いタイプのようである。これは私個人に対してでは なく、他人が私に、彼らが持っている不満をぶつけてくるのである。 大学入試のとき、どこを受けようか迷い、当時はやりだったコンピュ 1 タ 1 診断を受けたこと があった。これは学力は一切無視して、性格的にどの大学のどの学部が合うか、そして一番性格 に合っている職業は何か判断してくれるのだ。学力が伴えばこんなに喜ばしいことはないが、そ の大学に入ることができる能力がなければ、あまり役にたたない。 私の性格に一番適しているとコンピュ 1 タ 1 が判断したのは、東京教育大学 ( 現筑波大学 ) の 社会学部で、将来カウンセラ 1 になるといいと書いてあった。いつもたらんこたらんこして日々 手紙、電話で人生相談。あなたはスッキリ 気持ちがいいが、私にや時間のムダ遣い 111