角日庫 湯殿山麓呪い村 湯殿山麓呪い村 角川文庫 山村正夫作品集 ボウリング殺人事件 湯殿山麓呪い村 ( - D 湯殿山麓呪い村 (F) 断頭 ( 5 月上旬刊行 ) ゆどのさんろくのろむら 湯殿山麓呪い村 ( 下 ) レトルト食品の大手メーカー「アル プス食品』の社長淡路剛造が、自宅の 浴室て、何者かに撲殺された。現場はい わゆる密室状態て、、浴室のガラス戸は 内側から施錠されており、小窓が開い ていたものの、大人て、は絶対に侵入不 可能な小さなものだった。 だが、この事件をさらに奇怪にした のは、犯人がこれ見よがしに置いてい らやかっしよく った遺留品て、ある。それは茶褐色にひ からびたミイラ状の人間の指て、あった。 淡路家と関りのある、光華学園大学史 たきれんたろう 学科助手の滝連太郎は、親友の警視庁 おおぞわ 捜査一課の大曾根警部と事件解決に乗 り出したのだが・・ 角川小説賞受賞の傑作伝奇本格推理。 HERO MAGAZINE どの さん ろく のろ 山村正夫 日本初の文庫版冒険雑誌 小説王 冒険のない時代は、詩のない 時代より暗い。巨星復活 / 山 川惣治の新作絵小説十三妹」 ほか、劇画十瞠目の小説群。 毎月 28 日発売、定価 390 円。 角川文庫緑四一ニ 3 I S B N 4 - 0 4 ー 1 4 1 2 0 ろー X C 0 1 9 ろ \ ろ 4 0 E 定価 340 円 晩印刷 カ / く一
湯殿山麓呪い村 ( 下 ) 山村正夫 角川文庫ラ 7 。
253 湯殿山麓呪い村 ( 下 ) 淡路能理子は、本当に十三歳の少女だったのだろうか ? もしかするとあどけない少女の仮 面をかぶっていても、その実態は一人前に成熟した大人の女性と同じだったのではフ すわこ 滝は両手で頭をかかえこむと、ロビイのソファーに貧血を起こしたように坐り込んでしまっ 「どうしたんだね ? 滝君 : : : 」 っせいに心配そうにのそき込 柳沢教授の驚く声とともに、そばにいた香代子や成田らが、い んだが、滝の目にはそれらの顔という顔が、すべて十一「三歳の少年と少女の顔のように思え てならなかった。
89 湯殿山麓呪い村 ( 下 ) のだった。 あわじご、つぞう さがらどうかい 1 淡路剛造を殺害し、相良道海の命を狙っている犯人は、単独かそれとも複数の人間の共犯 2 単独とすれば、それは久造か ? それとも他のかかフ 共犯とすれば、誰かが筧を雇ったのか ? その場合に筧が果たした役割は何か ? ふしはらきんさく 4 伏原欣作との関係はどうなのかフ へんろ 5 遍路が路上で消失した謎の解明はフ 密室トリックの解明はフ 7 事件当夜、相良道海はニレの木の下で誰を目撃したのか ? 「まるで、クイズの問題と取り組むみたいね」 もど クスッと笑った香代子は、メモ用紙を滝に向けると、その目の前に戻した。 「この ZO ・ 1 から ZO ・ 7 までの疑問点について、個々に考えてみようというわけフ 「そういうことだな。君の意見を、参考までにぜひ聞かせてほしいんだよ」 「意見だなんて改まった言い方をされると弱いけど、無責任な推理でよければ : : : 」 「それでいいのさ」 なぞ ねら
184 かたたた さそ 滝は警部の肩を叩いて誘った。 れいいき 御宝前とは、御神体の岩のある霊域のことである。 きよ、フこく しゅげんどう この霊域は梵字川の峡谷の底にあり、修験道とともに栄えた古来から、出羽三山の奥の院と しんせい さんざんもう はぐろさん 称されて、もっとも神聖な場所とみなされていた。三山詣での場合はまず羽黒山神社 ( 出羽神 さんけい がっさん 社 ) に参詣し、それから一日がかりの行程で月山神社、湯殿山神社と回るのがコースになって むかし いる。最後に御宝前の御神体を拝するのがしめくくりで、昔はみだりに登ってはならないとい こも かじごや う定めがあったため、月山神社から行くには刀匠の月山が籠ったといわれる九合目の鍛冶小屋 へ なんしょ きゅうしゅん を経て、そこから出羽三山一の難所といわれる月光坂の急峻を二〇〇メートルほど降りるのだ てっさ った。ます鉄鎖がかかった金月光を降り、次に鉄梯子を降り、さらに水の流れている水月光を 降りて霊域に達するのである。 たど だが、現在はそうしたコースを辿る者は熱烈な三山信仰の信者以外にはなかった。一般の参 つるおか ろくじゅうりごえかいどう 拝客は鶴岡から・ ( スで六十里越街道 ( 国道 112 号線 ) の湯殿山口へ出てから、二・六キロの 庄内有料道路を経てん祈疇所に発り、さらに御宝前までは徒歩で山道を登るのだ 0 た。 こんなん もっともその登拝も困難になる冬期には、羽黒山神社の本殿が月山、湯殿山両神社の里宮 ( 遥 も、つ 宮 ) として祭神を合祭し、三神合祭殿と称しているので、そこへ参れば出羽三山詣でを果たし ) 」りやく たのと同じ御利益があるとされていた。 いわまだ 湯殿山神社御宝前の霊域には、本殿も拝殿もない。御神体は崖から黄褐色のドーム状の岩腮 とうししっ てつばしご がけ おうかっしよく いつばん
赤川次郎 ノ , ボで童顔の独身刑事片山と時に物思いにふける = = ー円 5 三毛猫ホームズの推理クな猫、名探偵ホームズ。二人の周りには事件がい。ばい 竹内宏 様々な原因で停滞する世界各国の経済。その現場での鋭い 民族と風半 ~ の経済宀子分析は、真の経済立国をめざす我が国の貴重な教訓となる円 永井豪Ⅱ原作永井泰宇Ⅱ著 蘇る 悪虐の黄金王が大恐竜軍団をひきいて襲来 ! ナゾの王国に円 1 ー、 1 ゴッドマジンガ 展開するファンタジー。日本テレビ系連続アニメ原作 魔神 嵐山光三郎 男ゴコロとか女ごころとか、色々なことがわかる。愉しい 0 刊チ = ーサン階級の「目険うえに読めば効く、世の中に初登場の「みなさまの本」 ! % 円 糸井重里 ほかならぬイトイのシゲサトを、「まいっこなー、 最 私は嘘、が嫌いにと驚嘆させた、強力本当ばなしが編。浅田彰「解説」付別円 庫山村正夫 悲業の死をとげたミイラの呪いが現代に甦り、恐怖の連続 上下殺人を巻き起こす。角川小説賞の傑作伝奇本格推理映画化円 湯殿山麓呪い村 (t 一会 角 あなたをお招きする、ファンタジックなスリラー ウス知円 ウ - スいったい、何が出てくるか。スリラーショート・ショート 都筑道夫スリラー 渡辺一雄 「会社のために、ウンとい 0 てくれ」。納得できない社命鬨円 山山亠に及・はオ・ - により次第に転落していく男の悲哀を描いた傑作企業小説 志賀貢 美人看護婦が多いと評判の下町医院で、色男の転八郎、お 0 医聿のないしょミネ婆さんなど貧乏医者との交流を描いた傑作シリーズ ! 円 志賀貢 床屋の六さんの浮気発覚防止の数々、子連れ情事の噂もあ円 祝医者の、ない 1 レよるグラ「ーな早川の奥さんの話など、傑作シリーズ第 2 弾
5 湯殿山麓呪い村 ( 下 ) ご齢 爽豸な の実れ千 く たっ予 に た 雄粤五戦て名少 るて科 だ よ 勇い練 会か五参終 ロ 姿た だ ら と て 百加戦 っ 区 が に は た別予少西ミ海 は十し時千 が さ科年条 ! 軍 たに 名 そ 1 、れ練 たノ朝飛 の 名 に のは みふ 戦 と ち十そ行 甲 が て は 、重えく いを作予 飛戦 . 局 し、 が 出死甲豸 っ 魅詞 科 、ら オこ 身 鹿かん 熾し し飛ひ て了うに練 者 で児ごだ烈そ も しな習 て 島鬟 は い に の の る十 、練な甲甲豸彼 う の 奈な習る種種等ら七略 ち 、大期 良ら航 に も のっ称 鹿 多 つ発乙弩血釦 で 旧 し数 で美み隊れ足種肉はん 島 で保はも 、当 、を桜海 は 、最年初丙こ躍瑟に 県特あ 「兵 の攻 る松粤初 の種ら 錨 ; や 々 鹿劣出 、せ り陸 は 屋や撃総な土飛ひ期特きた の士 基 ど浦 3 躍 : で数 、乙弩せ勇穹と 地散一十 だ的ー い壮言共 な に期 ど っ 万 八 け になに レ ) 増 ほ歌戦 かた は に 尢者千 戸万 つ大 、分 かが時 隊 ば し 採 な全中 を か た 委気 か百 て 用 れ ら国の に の 配 が 、な に少 、人 り ぇ 属 貝応れ、喧年 だ 十 た 。そ が募ば 。伝ーオ さ っ九 の期百資し れ た 名 さ ち 後以二格 2 、 れ て の そ 続降 て憧 い の は た 々 の 歴 と そ の 目リ ち 増期後 の的 た や と年 ち 半 が 颯冫 設 よかれん ゅうかいしようにんまうさっ 八章幽海上人殺 あこが
いえやすひでただいえみつ はうしゅ てんかいそうじよう の法主は、有名な天海僧正だった。天海僧正は家康、秀忠、家光と三代の将軍の帰依を受けて、 くろまくてきそんざい さいしよう 天台宗の教えを説き、世に黒衣の宰相と称せられて、徳川幕府の黒幕的存在たった。 天宥はこの天海僧正に取り入って、出羽三山の各寺をすべて真一三ロ宗から天台宗に改宗させる ことを条件に、羽黒山に支配権を与えて欲しいと密約を結んだんだよ。ところが、湯殿山を中 ほんどうじ だいにちばう 心とする注連寺、大日坊、大日寺、本道寺の四か寺が天宥の意に真向から逆らい、改宗を拒否 した上に本来四か寺は、羽黒山とは別な存在であると主張したので、が起こ「たのさ」 「それで、どうなったんですか ? 」 たず 成田がアイス・ティーのストローからロを離して尋ねた。 ばくふうった くつぶく 「天宥は意に従わぬこれら湯殿山四か寺を、一挙に屈服させようとして、さっそく幕府に訴 え出た。四か寺は、本来、羽黒山の支配する末寺であり、羽黒山は三山の別当であると言って 下 時に寛文十六年のことだった。 村 以後、羽黒山側は訴訟をくり返し、実に百六十年間にも及ぶ長期の紛争がつづけられるので 呪 山ある。 湯だが、そのたびに湯殿山の反訴を受けて、審理に当たった寺社奉行も決め手がないままに、 さいけっ 最終的には「羽黒山と湯殿山は別のもの」という裁決を下し、天宥の敗訴に終わったのだった。 かいごう 「このとき湯殿山側が、羽黒山とは本質的に異なる特色として挙げたのが海号と即身仏だっ しんり はな およ よいそ きょひ
テント小屋に引き返して柳沢教授の許可を得ると、香代子を呼んで死体発見の事実を道海の 妻に報らせてくれるようにたのんた。それから野次馬の目をかすめて、こっそり境内から抜け 出した。 山門の前に大網署の幌つきジープが待っている。運転手は小森巡査だった。 湯殿山口から庄内有料道路を儼ん〈向か 0 た。道が梵字川から離れると、・フナ、ミズナラ ささごゃあと さえぎ などの広葉樹林帯が道の両側を暗く遮 0 てつづき、二十分ほどで笹小屋跡を通過した。帯にこ ) しどうろう こうばうぢやや こを弘法茶屋と呼んだそうで、灯籠や弘法大師碑、湯殿山碑などが建っている。そこを過ぎ るとダケカイ ( の林に変わったが、その茂みのひときわ高い樹上から、鋭い鳥の鳴き声が聞こ えた。 じひしんちょう 「ああ、ありゃあ、湯殿山にしか棲んでいない慈悲心鳥の鳴き声ですよ」 小森巡査がハンドルを握りながら教えてくれた。 下 村そういえばよく耳をすますと、鳴き声が「ジヒシン ! 」と言っているように聞こえるのだ。 さんこうちょうせいそく 呪湯殿山にはそのほか、注連寺の境内に「ツキ、ヒ、ホシ」と鳴く三光鳥が棲息しているとい 山う。どちらも夏に渡来する渡り鳥なので、その季節しか鳴き声を聞くことができないという話 しっちたい ダケカイ ( の林が切れると、しばらくは平地の湿地帯になる。白い大きな花弁を持っミズバ ショウがいまを盛りと咲き乱れていた。 さか ほろ するど
現地へ直行することになっているが、柳沢教授やタレントたちのためには、『鶴岡ホテル』が 予約してあった。そして、明朝、山形大学の教授連中と合流して弥勒寺へ向かうという手はす であった。 滝がその下相談を了えて大師村へ向かったのは、その日の午後である。鶴岡市から湯殿山麓 しようないこ、つつ、つ までは、庄内交通バスで約一一時間ばかりの行程だった。 ろくじゅうりごえかいどうさんがくぶ あかがわせいりゅうじがわ 赤川と青竜寺川にはさまれた六十里越街道を山岳部を目ざして走ると、やがて赤川との合流 ばんじがわ あさひむら ハス道はつづら折 点を過ぎて朝日村へ着く。川はその合流点から分かれて梵字川と名をかえ、 おおあみたむぎまた りの登り坂を登り、大網、田麦俣を経て志津に至る。 大師村は大網と田麦俣のほぼ中間にある、すり鉢状の地形をした村だった。 だんきゅうしき 周囲の山肌はところどころが耕されて、段丘式の水田や畑になっている。すり鉢の底には人 かわらやね 2 家が点在しているが、都会的な瓦屋根にモルタル塗りの家々の合間に、草屋根に神社のような 村千木をせた多層民家が介在して、滝には珍しか 0 た。このあたりは昔、平家の落人遠藤が しらかわごうがっしようづく ひら 切り拓いた場所と伝えられ、その多層民家は民俗研究家のあいだで、白川郷の合掌造りの家と かた 山肩を並べる遺物として注目されたものである。 湯現在はんの祈所までバスが通じているが、大正時代までは。 ( ス道からはずれた七五三 かけぐち ふる 掛ロと大網口に、旧い登拝コースがあったそうた。 ちゅうざいしょ 肖防団の 大師村の。ハス停は、ちょうど農協の建物の前にあった。村役場や郵便局、駐在所、冫 やまはだ ばちじよ、フ つるおかし さんろく