手下 - みる会図書館


検索対象: 西遊記(上)
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1. 西遊記(上)

あたうち 「猪八戒を降ろして、蒸し焼きにしろ、俺は十分喰ってから仇討に出かけるぞ」 さい」しよう 沙悟浄は八戒を恨んで、 「ほれ見ろ、おしゃべりはするなと言ったじゃないか。しゃべった奴から先に喰われるんだぞ」 八戒もこれを聞くといささかおじけづいてきた。すると、そばから一人の手下が、 「大王様、八戒は蒸しても、かたくて喰えません」 と言うので八戒ほっとして、 りつば 「やれやれ、助かった。あの手下様は立派な方だ。そのとおり、そのとおり。蒸しても喰えませ んです」 するとまた、別の手下が、 「奴の皮をひんむきましよう。それなら大丈夫です」 八戒あわてて、 ほね 「いやなに、そんなことしなくても喰えますよ、喰えますとも。骨はかたくて太いけど、お湯に はすぐとけるんだから」 とわめいているところへ、門外からまた一人の手下が注進した。 どくうそん 「悟空孫がまた門前でどなっています」 きんかく 金角ぎよっとして、 ちょはつかい はつかい やっ はつかい はつかい はつかい はつかい む おれ だ、じようぶ ちゅうしん やっ む 550

2. 西遊記(上)

手下が絵を槍でかかげると、銀角は指さして、 そんごくう 「この白馬に乗っているのが三蔵。このひげもじゃが孫悟空 : : : 」 とはじめたので、八戒ひそかに、 氏神さん、どうかおいらだけは、見のがしてくださるよ うに。あとでたんまりおそなえするから : などと、むにやむにややっていると、 、 0 こしよう 「この黒のつほが沙悟浄で、このとんがり口の耳でかが猪八戒だ」と言ったので、八戒あわてて、 口をふところにねじ込んオ ぎんかく すると銀角、 「やい坊主、ロをのばして見せろ」 「いえ、あの、生まれつきの片輪で、のびないんで」 ぎんかく かぎ 銀角は手下に命じて、鉤でひつばり出させようとしたので、八戒があわてて口をのばすと、そ むす ほうとうぬ はつかい おうせん れ八戒だとばかり、宝刀抜いて切りつける。八戒まぐわで応戦し、一進一退、切り結ぶこと二十 はつかいいちねんほっき 合におよんだが、いっかな勝負がっかない。八戒一念発起して、死にものぐるい、耳をあおり、 *tj んかノ、 よだれをとばし、まぐわを舞わせて手向かうので、銀角いささか手こずって、手下どもを呼んで いっせいに跳びかからせた。八戒これはかなわじと、後ろを向いて逃げ出したが、なにしろでこ たお ばこ道にふじづるがかぶさっているものだから、足をとられてぶつ倒れたところへ、手下が追い はつかい と やり はつかい ヾ、」 0 しようふ ま さんぞう かたわ ーカし ぎんかく うしがみ 0 ちょはつかい はつかい いっしんいったい はつかい よ 503

3. 西遊記(上)

「誰を使いにやろうか」 「いずれにしても、こんな廃物どもじゃだめだな」 いっかっ れいりちゅう せいさいき と銀角は言。て、精細鬼、伶俐虫の二人を一喝し、手下の巴山虎、倚海竜を呼び出して、委細 を話し、使いに出した。 ・こ ~ 、う 悟空は部屋のすみにとま「て、す「かり聞いてしま「たので、羽をひろげて、ぶうんとばかり その手下の背中にとま「て行く。二、三里行「たころ、こいつらを打ち殺そうと考えたが、まて いどころ まものばあ よ、その前にまず、魔物の婆さんの居所を聞き出さずばなるまいと、身をゆす「ておなじ手下に け、あとから二人に追いついて声をかけた。 「おい、おい、そこを行くお人、ちょっと待ってくれ」 きかいりゅう 倚海竜が振り向いて、 「どこから来た者だ」 あにき 「兄貴よ、身内も知らないのかい」 「はて、うちじゃあ見たことのない顔だが」 「そのはずだ、俺は外回りだからな」 「外回りなら会わないはずだ。それがどこへ行くのだ」 「大王の命令で、もっと急いで行けとのことだ」 ぎんかく せなか おれ はいぶつ はざんこ きかいりゅうよ ころ 52

4. 西遊記(上)

ごくうてつぼう 「変われ」と叫べば、一本一本が悟空に変じ、無数の悟空が手に手に鉄棒を振るって手あたりし たお ひめい だいなぎ倒す。手下どもは逃げまどい悲鳴をあげて、 みなそんごくう 「大王様あ、もうだめです。どこもかしこも、皆孫悟空ばかりです」 に たお きんかく と言うまにも、手下どもはみるみるなぎ倒されて、金角はひしと取り囲まれ逃げ場を失い、あ あお ばしようせんぬ わてて左手に宝剣を持ちかえ、右手で芭蕉扇を抜き取ると、東南の方をのぞんで、さっとひと扇 ほのおも えんえんくれない ぎ。見るまに地上から炎々と紅の炎が燃え上がる。そもそもこの宝は火を扇ぎ出すことができる ・もうカ きんかくむじよう のだ。金角は無情にもたてつづけに七、八回も扇ぎ立てたので、猛火は天をこがし地を焼き、一 ぐれんほのお 面紅蓮の炎の海と化した。 ぎようてん 悟空はこのありさまに仰天し、急ぎ身をゆすってにこ毛たちを体に収めると、一本だけ身代り きんとうん れんげどう じゅもん を残して、本身は避火の呪文を唱えて劬斗雲に飛び乗り、大火を脱し、師を救うべく蓮花洞へと さん 馳せ参じた。 どうもん 洞門の内外には、悟空の身外身の法に痛めつけられた手下どもが多数ひしめきうめいている。 ふ 悟空は鉄棒を振り回して一路奥へつきすすめば、手下はすべて絶滅してしまっていた。悟空はな かえん おも奥にすすむと、またも火炎がたちのばっているのが見える。 ししよう 「しまった。これじゃ、師匠を助けられない」 ほのお おそ と恐れながらよく見ると、ああそれは炎ではなく、一条の金色の光であった。近寄って見ると おく さけ ほうけん ひか に おく むすうごくう あお いちじようこんじき 妊つめつ たから てつぼう おさ し あお ちかよ 第」 ~ 、とノ 552

5. 西遊記(上)

ついて来て押さえつけ、おおぜい群がって、八戒のたてがみをつかむやら、耳を引っぱるやらし て、えっさ、えっさとかつぎ上げ、洞の中へ運んで行った。 びき 「兄貴よ、一匹つかまえて来たぞ」 きんかく と銀角が言うと、金角は八戒を見て、 「こりゃあちがう。役立たずだ。だが裏の池にひたし、塩づけにして、干して酒の肴にでもし はつかい ろ」手下どもは八戒をかついで行って、池の中へ放り込んオ きんかくぎんかくよ 金角は銀角を呼び、 やまめぐ 「八戒がっかまったほどだから、きっと唐僧がいるはず。もう一度山巡りをして、ぬかりなく捕 えて来い」 「よしきた、がってんだ」 しよううん とばかり銀角は、五十名の手下をそろえて出かけて行った。やがて行くほどに祥雲たなびき、 端気たちのばるのが見えたから、 とう”てう 「唐僧が来た」 と手下に教え、山頂より見おろすと、悟空が馬前に立ち、鉄棒振るい、神通力をあらわしなが ら、堂々とすすんで来るではないか。 「おお、聞きしにまさる手ごわい奴」 あにき はつかい ぎんかく ぎんかく お さんちょう はつかい やっ どう とう - てう ーカし てつぼうふ じんつうりき さかな とら 50

6. 西遊記(上)

・こじようほうじようふ の人をさらおうとした。あわてた悟浄、宝杖振るい手向かうと、魔物は大手をびろげてむずと わぎ さんぞう つかまえ、左脇にはさみ、右手で三蔵をつかみ、荷物もついでに、とがった足の先にひっかけ、 れんげどう 大口あけて馬をもくわえ、「人さらいの法」で一陣の風に乗り、蓮花洞へと飛び帰った。 あにきぼうず 「兄貴、坊主をのこらずつかまえて来たぞう」 と、声はり上げると、金角は喜んで出て来たが、 「弟、こりや、ちがうぞ」 とう、う 「だって、唐僧をつかまえろと、言ったろう」 そんごくう 手ごわい孫悟空をつかまえなければ、安心して唐僧を喰うこともで 「うん、たしかに唐僧だが、 きんのだ」 ぎんかくわら 銀角は笑って、 「孫悟空なら、三つの山で押さえつけておいたから、手下をやって、あの宝物の中へ吸い込ませ て来ればよかろう」 ようしぎよくじようへいわた せいさいきれいりちゅう と言うので、精細鬼と伶俐虫の二人の手下を呼びつけ、紫金紅葫蘆と、羊脂玉浄瓶を渡して、 そんごくう 「よいか、これを持って山にのばり、『孫悟空』と呼ぶんだ。奴は山の下につぶされているが、 『おう』と答えれば、この中に吸い込まれるからな」 手下どもは「へい」とお辞儀をして、さっそく出かけて行った。 そんごくう とうそ - う・ ぎんかく す よ いちじん よ しぎんこうころ やっ まもの たからもの A う、う 570

7. 西遊記(上)

「手下ども、宝物はまだいくつあるか調べよ」 しちせいけんばしようせんしようへい 「七星剣と芭蕉扇と浄瓶の三つがあります」 かんり と管理の者が答える。 「あの瓶は役立たずだ。もともと人を吸い込むものなのに、悟空めにさとられて、あべこべに自 けんおうぎ 分の弟が人れられてしまった。すぐ剣と扇を持って来い」 ばしようせんえりくび 「かの手下が二つの宝を持って来て差し出した。金角は芭蕉扇を襟首にさし、七星剣をひっさげ、 と 門外に跳び出してののしった。 わるざる 「この悪猿め、無礼千万、わが兄弟を殺めたにつくき奴」 悟空もののしり返した。 キ、さま どうない 「貴様こそ死にぞこないの怪物め。わが師や兄弟、馬まで洞内につるしやがって、これでじっと おれ していられるかいってんだ。さっさと俺に返せ。そしたら命は助けてやる」 ほうけんふ こ ~ 、うてつぼう 金角あとは言わさず、宝剣振り上げまっこうから切りかかる。悟空は鉄棒かかげて迎え打ち、 、んかノ、 戦うこと二十合 、いっかな勝負がっかない。すると金角は切っ先を指さして合図をし、 「ものどもかかれ」 よ と叫べば、三百余の手下がいっせいに押し寄せて悟空を取り囲む。悟空すこしもひるまず、自 分のにこ毛をひとっかみ抜き取って、かみ砕き、身外身の法を用いて、 きんかく さけ たからもの ぶれいせんばん たから ぬ かいふつ しようぶ きようだいあや す し お きようだい よ ぎんかく やっ ・こくう ・こくう しちせいけん むか 55 ノ

8. 西遊記(上)

いっこう 「和尚、一行は何人おるか。一人で西天まで行けるはずはあるまい」 三蔵は、その刀を見て正直に話した。 とう まつばやし とぎ 「二人の弟子がおりますが、斎を受けに出かけております。それに荷物と馬一頭を、松林の中に おいてあります」 「これはまたありがたい。二人の弟子とあらば、おまえとで三人、馬を入れれば四つにな「て、 かなり喰いでがあるわい」 手下が、 とら 「行って捕えて来ましよう」と言うと、 ししょ ) すた 「行くにはおよばぬ。表門を閉じよ。弟子どもがもどて、師匠の姿が見えねば、かならずここ へたずねてくる。『売り込みに来たものは安く買える』と言うではないか。来るのを待「てつか まえよう」 手下どもは言われたとおり、表門を閉じた。 さ′」じよう い「ぼう沙悟浄は、林を出て穴庭を探し十里余りも行 0 たが、村らしいものはとんと見えない。 っえ ながわた そこで小高いところに立「て眺め渡していると、かたわらの草の中から人声がする。急いで杖で ね・こと はつかい 草をかき分けてみると、なんと八戒が一人で寝言を言っていたのだ。 おしよう さんぞう しようじき さいてん と さが 431

9. 西遊記(上)

その黒い男は聞いた。 「この三匹はどこからっかまえて来たのかな」 「いやなに、『とんで火に入る夏の虫』で、わざわざ自らやって来たんだ」 まおう と魔王が答えると、でぶ男が、 「ほう、じゃあ、ご馳走してくれるかね」 「もちろんだとも」 「だが、。 へろりとやっちゃあおしい。まず二匹だけたいらげ、一匹はとっておこう」 しんぞう まおうしようち 魔王は承知して、すぐさま手下を呼び、見ている前で二人の従者の腹を裂き、心臓をえぐり出 しんそう すとその屍をばらばらに切り砕いた。首と心臓とを二人の客にご馳走し、手足は自分が食べ、余 とらひつじ こつに′、 った骨肉は手下の妖怪に分配して、まるで虎が羊を食べるように、もりもりと音を立てて、すっ かり食べ尽してしまった。 くなん さんぞう もはや三蔵は、人心地とてはなかった。じつに、長安を旅立ってのち、はじめての苦難であっ たいさん かいぶつ た。こうしているうちに、東の方がしだいに白みかけた。それを見ると、怪物どもは退散してし しぎふめい しかし三蔵は、昏々として意識不明、いまにも息が絶えようとしていた。と、このときふいに、 ろうじんあら 杖を手にした老人が現われ、手でさっとはらうと、三蔵の繩はばらりと切れた。また面と向かっ っえ しかばね さんぞ ) びぎ つく こんこん よう・カし ひとごこち ちそう よ びき さんぞうなわ ちょうあん じゅうしやはらさ ちそう びき あ 200

10. 西遊記(上)

おしよう もというもんじゃない。唐僧でなければだめだ。俺はか 「おっと、そうあわてるな。和尚ならい、 おしよう 、てすかたえか ねて奴らの様子を覚えていて、絵姿を描いておいたから、おまえ持って行くといい。和尚に出会 ったら照らしあわせてみろ」 どう ぎんかくえすかた と言って、いちいち説明した。銀角は絵姿を受け取るとすぐさま洞を出て、三十匹の手下ども やまめぐ を引き連れ、山巡りをはじめた。 こちらは八戒、悟空に言われて、いやいやながら山の様子を見に、一足先に山をのばって行っ まもの た。てくてく歩いて行くうちに、運悪く、魔物どもとばったりぶつかった。 「やい、そこへ来たのは誰だ」 八戒が頭を上げて見るとこはい、に、魔物がぞろっと行く手に立ちふさがっているではないか。 ーカし しゆきよう 八戒はあわてて、もしも取経の者だなんてもらしたら、とつつかまるから、 ほよ第 - 」 / 、 「なに、 ただの通行人です」と言うと、手下がそのとおりに銀角に報告する。 まもの 魔物どもはがやがや言っていたが、中の一人力 えすがた 「大王、この坊主は、絵姿の中の猪八戒にそっくりです」と言うので、銀角はその絵を掛けさせ どうりで、このごろ元気がないはずだ。こいつが、俺の 八戒これを見て、おおいに驚き、 絵姿を写し取っていようとは。 こ 0 はつかい はつかい ようす はつかい ぼうず せつめい おどろ ちょはつかい まもの ようす んかく とうマてう ぎんかく びき おれ おれ 502