化け物 - みる会図書館


検索対象: 西遊記(下)
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1. 西遊記(下)

すがたば もぐり込んだ。そこで身をゆす 0 て、三蔵とま 0 たく同じ姿に化けると、ならんで階の前に立っ ていた。 ・こ ~ 、う 悟空が追い駆けて来て、棒を振り上げ打とうとすると、その化け物が、 「これ弟子よ、打つでない。わしじゃ」と言う。 さんぞう 急いで棒を取りなおし、もう一人の三蔵を打とうとすると、またもや、 「これ弟子よ、打つでない。わしじゃ」 瓜二つの二人の三蔵、どうにも見分けのつけようがない。 とうそう もしも妖魔の化けた唐僧を、一発のもとにしとめれば、これは成功だが、かりに、ほんも おおごと ののわが師匠にくらわしたんじや大事だ。はてさて、どうしたもんだろう : : : ・こじようよ と思いあぐねて、手をやすめ、八戒と悟浄を呼んで、 「おい、どっちが化け物で、どっちがわが師匠だ。見分けがついたら指さしてくれ、ぶつ殺すか ら」 すると八戒、 あにき 「兄貴が空中で打ちあ 0 ているのを見てたとき、俺がばちっとまばたきしたあいだに、もう師匠 が二人になっちまったんで、どっちがどっちだかわからない」 しゅどしんよ ごくうじゅもん 悟空は呪文を唱えて、守護神を呼び出し、 こ ばう ししよう はつかい ようま さんぞう ばうふ はつかい さんぞう ししよう おれ せいこう 0 きざはし ころ ししよう 8 6

2. 西遊記(下)

「人につくすなら、とことんまでつくせ、って言うだろ。大王が出て来るのを待って、喰われて やくそく わざわ こそ、その約東を果たしたと言えるのだ。そうしなければ、化け物は災いをもたらすんだから、 まずいのだ」 と言っているところへ、ひゅうー、ひゅうーと怪しい風の音。 「こりやいけねえ。化け物のお出ましだあ」 「しいつ、黙ってろ。俺が返事をするから」 かいぶつあら やがて門の外に金紅色にぎらぎら光った怪物が現われ、廟の入口に立ちはだかった。 さいしゅ 「今年の祭主は、どこの家だあ」 ちんとうちんせい 「はいつ、陳澄、陳清の両家です」 悟空の化けた男の子が、につこりして答える。怪物の方がいぶかしがって、 そなもの 「この童男は、馬鹿にはっきりしているな。これまでの供え物は、俺の声を聞いただけでぐった りしてしまうんだが、今年の子どもは、どうも変わった奴だわい」 と首をかしげて、手をのばすのをひかえ、 どうなんどうじよ 「童男、童女の名はなんと申すか」 男の子は、またもやにつこりして、 いっしようきん 「童男は陳関保、童女は一秤金と申します」 どうなんちんかんぽ どうなん だま ぎんこうしよく どうじよ おれ あや かいぶつ やっ びよう おれ 16

3. 西遊記(下)

じんつうこうだい 「かれが三味火を放ち、神通広大にて、そちの手におえぬとあれば、なぜ、まっさきに、わたし をたのみに来ないのか」 けむり 「来ようとしたんですが、煙にやられ雲に乗れませんので、猪八戒をお迎えに差し向けたので ちよどのう 「猪悟能は、参りませんでしたぞ」 すがたば ばさっ 「そうです。ここまで来ないうちに、あの妖怪が菩薩のお姿に化け、八戒をだまして洞中に連れ つる かわふくろ ま、皮袋に入れて吊し、蒸して食べようとしています」 込みました。い ぼさっ 聞くなり菩薩は、ら中おおいにり、 すがたば 「あの化け物めが、こしやくにもわたしの姿に化けおろうとは」 ・こく ) ほうじゅじようへい と言ったかと思うと、手にしていた宝珠の浄瓶を、海中めがけてはっしと投げ込んだ。悟空は じりつ ぎよっとして、身もすくむ思い。ばっと身を起こし、下手に侍立して、 じよう ばさっ 「菩薩さんはかんしやくがなおらないな。俺の話し方がまずかったんで、威厳を損い、それで浄 おく 瓶を投げ込んだんだ。おしい、おしい。い「そ孫さんにでもくだされば、、い贈り物になるの ちゅうおう と言い終わらぬうちに、たちまち海の中央に波が逆巻き、中から一匹の亀が浄瓶を背負「て浮 ぼさっ かめがけは かび出て来た。亀は崖を這い上がると、菩薩に向か「て、こ「くり、こ「くりと、つづけざまに さんまいか こ よ 5 ・カし おれ そん さかま しもて ちょはつかい はつかい びきかめじようへいせお むか げんそこな もの こ どうちゅう 128

4. 西遊記(下)

おどろ てんんかん いっこう ぼうさてい と言うと、王はからくも驚きを押えて、典膳官に、一行に暴紗亭で斎をもてなすよう言いつけ ごぜん さと 三蔵はあっく礼をのべ、御前をさがると、一同を連れて亭内に入り、弟子たちをたしなめ諭し ているうち、食卓の用意が整い、斎の品々がならべられた。師弟は黙って、みんなおとなしく、 とき めいめい斎をいただいた。 さて、王が宮中に入って行くと、三人の王子が父の顔色のただごとでないのを見てとり、さっ そくたずねた。 、よう 「父上、今日は、何事か起こったのですか」 しゅぎようそう そこで王は、大唐より取経の僧が来たことを話し、「その弟子たちの無礼なこと、しかもその 化け物のような面がまえに、思わずぎよっとしたので、顔色が変わったのであろう」と答えた。 こぶしつ ぶげい もともとこの三人の王子は、なみすぐれており、いずれも武芸の達人なので、さっそく拳を突 き出し、腕まくりして、 「そいつは山から出て来た妖怪が、人に化けているのかもしれません。我々が武器を持って、見 に行って参りましよう」 あ「ばれ王子。第一王子は斉眉棍 ( 鬱をお「とり、第二王子は九歯のまぐわを回し、第三王 さんぞう うで しよくたく つら 編ムう・カし せいびこん とき ていない きゅうし たつじん とき ぶれい われわれぶぎ 73

5. 西遊記(下)

「妖魔がわが師匠に化けて、まったく見分けがっきにく い。なんじら見分けがつくならば、ひそ とら ししようでんじよう かに師匠を殿上にお連れして、俺に妖魔を捕えさせてくれ」 うんむ ・こ ~ 、う ことば と言うと、かの妖魔、雲霧をよくするしたたか者だから、悟空の言葉を聞くよりはやく、ばっ きんらんでん やっ と金鑒殿上に飛び上がった。悟空は棒を振り上げ、残った奴に一発と、三蔵めがけて振り降ろせ あわ だぶつ てつぼう ば、哀れ、お陀仏というところを、守護神らが鉄棒をささえて、 でんじよう 「大聖、妖怪は雲に乗れるので、ひと足先に殿上に飛んで行きました」 と でんじよう 悟空が殿上に追い駆けると、妖魔はまた跳び降り、さっと三蔵をひつばって、人垣の中に紛れ 込み、どうにも見分けがっかない。 悟空がいらいらしているとき、ふと見るとそばで八戒がにたにた笑っているので、悟空はかっ もカ と怒り、 あほう ししよう 「この阿呆、二人の師匠でこんがらかっているというのに、何をそんなに喜んでるんだ」 はつかい と言えば、八戒は、あいかわらず笑いながら、 あにき おれあほう あほう 「兄貴よ、おまえは俺を阿呆と言うが、おまえの方がよっぽど阿呆だな。師匠がどっちかわから ないからって、なにもそんなに苦労することはないだろう。ちっとばかし頭の痛いのをこらえて、 ししよう まじな おれごじよう 師匠にあのお呪いを唱えてもらえばいいんだ。俺と悟浄で、一人ずつつかまえて、聞いてみるか ら。唱えられない奴が、化け物にきまっている。かんたんだろう」 こ ようま よう・カし ししよう やっ ようま ・こ ~ 、う ようま おれようま わら しゅ・こしん お はつかい さんそう わら さんぞう ししよう ひとがぎ まぎ 6

6. 西遊記(下)

みあか 「はて、お経もすみ、みな終わ 0 たあとに、なんでまた御明し (* 硼などあげるのだろう」 げなん まっくら ちょうちん といぶかしがり、数人の下男がやって来てみると、あたりは真暗。すぐさま提燈に火をともし、 ごじようつら そろってやって来てふと顔を上げると、そこに八戒、悟浄の面がまえがあったので、びつくり仰 ちょうちん 天して提燈を放り出し、 「化け物だ、化け物だ」 ごくうちょうちん しよくだいあか とわめく。悟空は提燈を拾い上げ、燭台に燈りをともし、椅子を正面に運んで三蔵にかけさせ、 ろうじん きようだい りようがわざ 兄弟はその両側に座した。老人がその前にかけて話をしていると、奥からまた一人の老人が杖に すがって出て来て、 しんこう 「どんな化け物だ、夜更けにこの信仰あっき家に現われるとは」 ろうじん 前に座していた老人は、急いで立ち上がり、 とうどだいとう こうそう 「兄さん、化け物ではありません。東土大唐から経を取りに来られた高僧で、お弟子の方は顔つ きはこわいけれど、いたって気のよい方々です」 あいさっ がわざ その老人はやっと杖をおき、三蔵たちに挨拶をして向かい側の座につき、 と、さ 「さあ、お茶をお出しして、斎の用意をせよ」 げなん くだもの と言いつけたので、下男たちもやっと安心して、お茶を出し、野菜や果物、うどん、ご飯など を並べた。八戒このときおそしとばかり、やたらにかき込んで、「おかわり、おかわり」とわめ てん なら ろうじん はつかい ぎよう よふ っえ さんぞう かたがた はつかい きよう あら こ やさい おく さんぞう ろうじんっえ かた はん ぎよう プ 49

7. 西遊記(下)

ーカし 八戒は、ちょうどうつらうつらしていたが、「斎」と聞くや、がばとはね起き、 おれ おれ 「俺たちです、俺たちです」 ぎ、も 役人はひと目みるなり肝をつぶし、ぶるぶるふるえながら、 「こりや、猪の化け物だあ」 はつかい とわめく。悟空は聞いて八戒をひきとめ、 ぎようだいひん 「兄弟、品の悪いまねはするなよ」 と言うと、役人たちは悟空を見て、 さるば 「猿の化け物、猿の化け物」 ・こじようきようしゅ とさわぐ。そこで悟浄が拱手の礼をして、おもむろに、 い、こおどろ とうそうとてい 「おのおの方、驚くにはおよびませぬ。我ら三人、いずれも唐僧の徒弟でございますれば」 とのべると、役人たちはまた、かれの顔を見て、 そうくん 「竈君 ( と ) だ、竈君だ」 おどろ 0 ぎよくかおう ようやくのことで、三人が王府にやって来ると、先に役人が玉華王に知らせた。王は、ふと目 がっしよう おどろ しゅうあくつら を上げてかれらの醜悪な面がまえを見るや、内心はっと驚いたが、三蔵が合掌して、 ぜんりよう 「なにとぞご心配なく。この者は醜い顔ではありますが、心は善良でございます」 そうくん ぶた 第」ノ、、とノ みに ~ 、 われ とぎ さんぞう 72

8. 西遊記(下)

~ 、よう ぼさっさま したら、それは猿の化け物でございました。そこで、菩薩様のところへ行ってうったえましたが、 ほうこく やはり見分けがっかず、手助けもできないので、先にご報告にもどりました」 三蔵はそれを聞いて色を失った。そのとき、不意に空中からやかましくののしりあう声が聞こ ・こ ~ 、う えた。驚いて一同が出てみると、二人の悟空が打ちあいながらやって来る。 はつかい 八戒はたまりかねて空中に飛び上がり、 あにき ちょはつかいさますけだち 「兄貴、まあ、さわぐな。猪八戒様が助太刀だ」 すると二人の悟空はいっせいに、 ぎようだいば 「兄弟、化け物をやつつけろ」 きようだいば 「兄弟、化け物をやつつけろ」 、いっそう三蔵らを と言う。家の者たちは、こうして雲にのばり、霧に乗る羅漢様たちと知り んしん せっそう 供養した。三蔵が、ご安心ください、拙僧がきっと弟子を捕え、善心にかえらせます、と言って ・こじよう 、ると、届旧浄が、 . し 「師匠はここにおいでください。わたくしは八戒といっしょに行って、一人ずつ連れて来ますか ら。師匠はあの呪文を唱えてください。痛がる方が本物、痛まないのは偽者ですから」 そう言って空に飛び上がり、 しんぎ 「しばらく、しばらく。二人とも 、いっしょに師匠のところへ行って、真偽を見分けてもらおう さんぞう ししよう ししよう おどろ さんぞう さるば じゅもん はつかい ふ ししよう きり らかんさま とら にせもの さんぞう 308

9. 西遊記(下)

す にわとり 「八戒よ、よく言うだろ。『鶏もただ喰いはしない』。ちゃあんと玉子を生んでるんだ。俺たちだ ちそう って、さんざんご馳走になったんだ。難儀してるのを見ながら、助けないって法があるかい」 あにき おれば 「兄貴よ、俺は化けるのはにがてだ」 「なんでにがてだ。おまえも三十六通りの化け方ができるだろ」 さんぞう すると三蔵が、 ・こ ~ 、第ノ ぶっとう ごのう つく 「悟能よ、悟空の言うとおりだ。『人の命を救うのは、浮屠 ( 仏塔 ) を造るにまさる』と言う。 きようだい いんとく こうじようかんしゃ こちらの厚情に感謝のため、また自分の陰徳をつむために、兄弟二人で出かけるがよいぞ」 八戒が、 「そうはおっしやるけど、俺はただ、山や、木や、岩とか、それから象に水牛、大でぶ男なんぞ というでかいものならまだしも、ちつぼけな女の子に化けるなんて、どうも、にがてなんで」 すると悟空が、 「陳澄さん、信じちゃだめですよ。かまわないから、お嬢ちゃんを抱いてらっしゃい」 おく 陳澄は急いで奥に入ると、一秤金を抱いて来た。家中の者たちがぞろぞろと出て来て礼拝し、 かみかざ 子どもの命を助けてくださいと頼んだ。その女の子は、きれいな髪飾りをつけ、つやつやした繻 くだもの どんす 子の着物に、緞子の被布を着て、果物を食べている。 はつかい むすめ 「八戒、これが娘さんだよ。はやくこの子そっくりに化けるんだ。いっしょに出かけようぜ」 はつかい ちんとう よっかい ちんとう おれ いっしようきんだ たの なんぎ ふと じよう たまご ぞう おれ れいはい しゅ 757

10. 西遊記(下)

すじしようこう ごくう・こじようばさっ ごくうぎん さて、悟空と悟浄は菩薩に別れ、二筋の祥光を飛ばして、南海をはなれた。もともと悟空の劬 ・こじよう とうん ・こじよう せんうん 斗雲ははやく、悟浄の仙雲はのろいので、どうしても悟空が先に行きそうになるのを、悟浄は引 きとめて、 あにぎ 1 ) り・か / 、 あたまかく 「兄貴よ、頭隠して尻隠さず、先に行ってうまくやろうとするのはよせ。俺といっしょに行こう じゃないか」 ・こ ~ 、う 悟空は、痛くもない腹をさぐられるのは心外なので、二人ならんで雲をすすめることにした。 どう かかざん やがて花果山に着いたので、雲を降ろし、洞の外からうかがうと、はたしてもう一人の悟空が、 さかも さいちゅう ようす 石の台の上におおあぐらで、おおぜいの猿どもと、酒盛りの最中である。その様子は、まるで悟 あかげ もめんじきとっ 空そっくりで、黄髪の頭に金の箍をはめ、光った火眼で、身には木綿の直輟をつけ、腰には虎の おとがいは ひたい 皮を巻き、手に金箍棒を持ち、足に鹿の皮の靴をはき、毛づらで雷神のロ、腮張って額は広く、 ・こじよう 牙がはえている。何から何まで自分と寸分たがわないのを見て、悟空はか 0 とり、悟浄を打ち てつぼう 捨て、鉄棒おっとり、ののしった。 強 - さま おれすがたば おれしそん 「やいやい、貴様はなんの化け物だ。俺の姿に化け、俺の子孫をうばい、俺の仙洞に入っていば りくさりおろうとは」 すると向こうの悟空は平として答えず、これも鉄棒をも 0 て迎え打つではないか。二人の悟 1 0 空が一つに集まりやりあえば、どちらが本物か、偽者か、てんで見分けがっかない。二人はそれ ま ぎんこぼう はら たが お すんぶ さる くっ あかめ にせもの てつう ・こ ~ 、う むか らいじん おれせんとう おれ こし ・こ ~ 、う とら