妖怪 - みる会図書館


検索対象: 西遊記(下)
185件見つかりました。

1. 西遊記(下)

この 「この猿め、わしを馬鹿にしおって。ほんとうに妖魔が出たときは、なんでもないと言い ようにおだやかなところに来ると、わしをおどかし、やれ僊け物が出たなどとわめき立て、たえ ようせ、 通りすがりの妖精だったなんぞと言い ず足を引っぱっては馬から降ろす。そしていまみたいに、 わけする。もしころんで、けがでもしたらどうするのじゃ」 1 」 ~ 、第ノ すると悟空、 、。けがならちゃんとなおりますが、化け物にさらわれてごら 「師匠、そうとがめないでくださ さが んなさい、探しようがありませんから」 ごじようひっ さんぞう と言 0 たものだから、 = 一蔵はおおいにり、憎々しげに緊箍呪を唱えようとしたが、悟浄が必 くらこし 死にとめたので、やむなく馬上の人とな「た。すると、まだ鞍に腰がおちつかぬうちに、またし ても、 「お師匠様、助けて」 じゅじよう おさな さんそう という叫び声。三蔵が頭を上げて見ると、まだ幼い子どもが、丸裸で、樹上から吊り下げられ ・こくう ているではないか。三蔵は見るなり悟空をののしって、 だれよ わるざる 「この悪猿が、ずぶとい奴だ。わしがあれほど、誰か呼んでいると言「たのにつべこべ言いお 0 て、とうとう妖怪だと言いは「た。見てみよ、あの木に吊るされているのは、まさしく人間では な、刀」 ししよう ししようさま さる さけ 、ムに ' : 力し さんぞう やっ お にくにく ようま ぎんこじゅ まるはだか 8

2. 西遊記(下)

・こ / 、う と悟空がうながすので、三蔵はまた馬をすすめた。と、一里も行かぬうちに、またも、 「助けて」という声がする。 三蔵おちつかず、 よ第 ) 力し 「あの叫び声は、妖怪のたぐいではないぞ。もし妖怪なれば、その声はこだましないものじゃ。 そちにも聞こえるだろう、あの叫び声が。あれはきっと難にあってる人だ。行って救ってやろう ししよう じひしん 「師匠、ただいまは、その慈悲心をひとまず収めて、とにかくこの山を越えてからのことにしま えたい 。、、、つばい住みついてるところです。うつかり しよう。このあたりは、得体の知れない化け物カ あぶ したら、命が危ない。さ、行きましよう、行きましよう」 ・こ ~ 、う じゅもん むち こし J ば したが 三蔵はやむなく、その言葉に従い、また馬に鞭をあててすすんだ。悟空はそこで、呪文を唱え、 さんぞう みねこ ざんしゆくちほう 「稷山縮地の法」を使「て、三蔵たちを、峰を越えたはるか先の方にや 0 てしまい、妖精をおい てきばりにし。こ。 けはい 三ゞ、、つこうに人の来る気配がない。は さてかの妖精、山坂でつづけざまに四、五へん呼んオカ てと、思案して、 「唐僧を見かけたとき、三里とはなれていなかったのに、どうしていまだにやって来ないのだろ う。さては、近道をして行ったかな」 さんぞう とうそう さんぞう さけ ようせい やまさか さんぞう さけ おさ よ よう・カし なん すく ようせし 2 8

3. 西遊記(下)

っているではないか。 「こいつを捕えろ」 ・こくう すずす よう・カし 、、、、、っせいに襲いかかった。悟空はあわてて鈴を捨てると、本相を現わ おおぜいの妖怪ども力 たからものおさ きんこ・ほう し、金箍棒を取り出して、めったやたらに打ちまくる。そのまに魔王は宝物を収めて、前門をし びきはえば のが めさせてしまった。悟空はもはや逃れがたく、棒を収め、身をひとゆすりして一匹の蠅に化ける かべ と、火の来ない石の壁にびたりととまっていた。 妖怪らは、 ぞくに 「大王様、賊は逃げてしまいました」 大王は怒って、 たからぬす だいたんゅうらいゅうぎよすがた やっ 「なんという奴だ。よくも大胆に有来有去の姿に変じ、わしの宝を盗むとは」 ~ 、ま、んし すると、熊の軍師がすすみ出て言った。 そんごくう 「大王様、奴はきっと、孫悟空にちがいありません。途中で有来有去に出会って彼を殺し、黄旗 どら すがたば や銅鑼をうばってその姿に化け、大王様をだましたのです」 「そうだ。それにきまっている。手下ども、よくよく探して、門から逃すでないぞ」 さて悟空は、どのようにして妖魔の門から逃れ出るでありましようか。次回をお聞きください。 トろ′力し ・こ , 、う とら やっ ようま てした おそ ・よう おさ とちゅうゆうらいゅうきょ さが まおう ほんそうあら ころ こうき

4. 西遊記(下)

へいか 「陛下もお気が弱すぎます。なぜ閻魔の庁に訴え出ないのです」 じんつうりき 「ところが、かれは広大な神通力があり、その上、十代閻王はじめ、カのある面々とじっこんに しておりますから、訴え出てもしかたがないのです」 「では、ここへ来られて、どうなさろうというのですか」 たましい しふ やゅうしん 「師父。わたしのさまよえる魂が、こよい、夜遊神の風に送られて、ここへ来たのです。夜遊神 しふ すいなん が申しますには、わたしの三年の水難の時期も満ちるので、師父にお目にかかって、助けていた しふ せいてんたいせい だくようにとのことでございます。と申しますのは、師父には、斉天大聖といわれるお弟子があ うでまえ ようかいたいじ 妖怪退治のすぐれた腕前がおありとのこと。なにとぞ、わたしの国へおはこびくださり、妖 怪を捕え、正邪をただしていただきとう存じます」 たいじ 「なるほどわたくしの弟子は、妖魔を退治する腕はたしかですが、ただひとつ、こまったことが あります」 「なぜこまるのです」 よう・カい すがたば す 「その妖怪が、あなたの姿に化けて、現在まで過ごしているとすれば、宮中の文武百官や後宮の 」さ . さ 妃たちとの仲がしつくりいっているからでしよう。そういたしますと、うかつには手出しができ ますまい」 「それでしたら、わが宮中に、たしかな人物がおります」 とら せいじゃ なか うった こうだい ようま えんま げんざい ぞん ちょううった み えんおう ぶんぶびやっかん やゅうしん よう

5. 西遊記(下)

しふ 「師父よ」と呼ぶ声がした。 ふっと頭を上げてみると、戸の外に男が立っており、全身びっしよりで、水をしたたらせ、目 に涙をためて、 しふ しふ 「師父」「師父」と呼びつづける。 さんぞう 三蔵は身を起こして言った。 だいとうちょ ~ 、めい われこうめいせいだ、 まもの われ 「なんじは妖怪か魔物か。我をたぶらかしにやって来たのか。我は公明正大の僧、大唐の勅命を のぞそ ) こうりゅうふつこ ほう 奉じて、西天へ経を求めに行く者。三人の弟子があり、いずれも降竜伏虎の豪傑、妖魔を除く壮 のが 士。かれらに見つかれば、その身はみじんに砕かれるであろうぞ。すみやかに身を隠して逃れ去 んもん れ。わが神門に来ることはまかりならぬ」 すると、その人はたたずんだまま、 しふ 「師父、わたしは妖怪や魔物ではありません」 「そうでないなら、この深夜にやって来たのはなんのためか」 しふ 「師父、よく目を見開いて、もう一度おたしかめください」 へきぎよく ちゅうてんかん さんぞう 三蔵がびとみをこらして、つくづく眺めると、ああ、頭には冲天冠をいただき、腰には碧玉の はくぎよくけい ひりゅうぶほ 帯をしめ、身には飛竜舞鳳の模様のある朽葉色の袍を着、足には無憂履をはき、手には白玉の圭 を持っている。それは皇帝のいでたちであった。 おび なみだ さいてんきようもと よ 5 ・カし よ 編ムう・カし よ こうてい まもの う、もよう なが くちば うわぎ むゅうり ごうけつようま そう 4

6. 西遊記(下)

っ に、ま 0 すぐ天を突いて立ちのばり、集ま「て一団の火気とな「た。悟空はおおいに驚き、三蔵 のところへはせ寄って、馬から助け降ろし、 きようだい 「兄弟よ、ちょっと待て、妖怪が出たぞ」 ごじようほうじようふ と叫ぶと、あわてて八戒は、まぐわを取りなおし、悟浄は宝杖を振り上げて、三蔵を中に囲ん で護りについた。 その紅い光の中には、はたして妖精がいたのだった。かれは数年前から、人のうわさを聞いて とうど こうそうさいてんきよう きんぜんちょうろう いた。それによると、唐土の高僧が西天に経を取りに行くが、かれこそ金蝉長老の生まれ変わり しゅぎよう ( ) で、十世の修行をつんだ人故、その肉を一切れでも食べた者は、天地と同じく永久に長生き できる、とい、つことだった。 - よう そこで妖精は、毎日のように山あいで待ち受けていたというわけだが、はからずも今日、その 唐僧がやって来たのであった。 ようせし 妖精がなか空からよく見ると、三人の弟子が馬上の三蔵を囲んで、おのおの身がまえている。 妖精はしきりに感心して、 おしよう おしよう とうちょうせいそう りつばな和尚だ。あの馬に乗った色の白いふとった和尚こそ、唐朝の聖僧であろう。だが、 まも みにくぼうす どうして三人の醜い坊主どもに護られているんだろう。ど奴も、えものをかまえて打ちかかって ようせい さけ あか ようせし よ はつかい よう・カい ゆえ ようせい いちだん さんぞう やっ ・こくう さんぞう おどろ さんぞ ) 0 8

7. 西遊記(下)

「妖魔がわが師匠に化けて、まったく見分けがっきにく い。なんじら見分けがつくならば、ひそ とら ししようでんじよう かに師匠を殿上にお連れして、俺に妖魔を捕えさせてくれ」 うんむ ・こ ~ 、う ことば と言うと、かの妖魔、雲霧をよくするしたたか者だから、悟空の言葉を聞くよりはやく、ばっ きんらんでん やっ と金鑒殿上に飛び上がった。悟空は棒を振り上げ、残った奴に一発と、三蔵めがけて振り降ろせ あわ だぶつ てつぼう ば、哀れ、お陀仏というところを、守護神らが鉄棒をささえて、 でんじよう 「大聖、妖怪は雲に乗れるので、ひと足先に殿上に飛んで行きました」 と でんじよう 悟空が殿上に追い駆けると、妖魔はまた跳び降り、さっと三蔵をひつばって、人垣の中に紛れ 込み、どうにも見分けがっかない。 悟空がいらいらしているとき、ふと見るとそばで八戒がにたにた笑っているので、悟空はかっ もカ と怒り、 あほう ししよう 「この阿呆、二人の師匠でこんがらかっているというのに、何をそんなに喜んでるんだ」 はつかい と言えば、八戒は、あいかわらず笑いながら、 あにき おれあほう あほう 「兄貴よ、おまえは俺を阿呆と言うが、おまえの方がよっぽど阿呆だな。師匠がどっちかわから ないからって、なにもそんなに苦労することはないだろう。ちっとばかし頭の痛いのをこらえて、 ししよう まじな おれごじよう 師匠にあのお呪いを唱えてもらえばいいんだ。俺と悟浄で、一人ずつつかまえて、聞いてみるか ら。唱えられない奴が、化け物にきまっている。かんたんだろう」 こ ようま よう・カし ししよう やっ ようま ・こ ~ 、う ようま おれようま わら しゅ・こしん お はつかい さんそう わら さんぞう ししよう ひとがぎ まぎ 6

8. 西遊記(下)

お 「兄貴、この妖怪たちは、俺たちを恐れて、車を押し出し、どこかへ引っ越しするらしいよ」 こしにしきこしあて じようしやくかえんそう 妖精は一丈八尺の火焔槍をかまえ、よろいかぶとなどは何もつけず、ただ腰に錦の腰当をお び、はだしのまま門前へ立ち現われ、 「何者だ、そこでどなっている奴は」 ちかよ と叫ぶ。悟空はにこにこしながら近寄って、 ししよう かたぎ 「甥ごよ。はやく師匠を出してくれ。仇づらして親類のよしみを失うなよ。もしおまえのおやじ そん に知れて、孫さんが年下のおまえをいじめたなどと思われては、ばつが悪いからな」 これを聞くなり妖精はかっと怒って、どなりつけた。 だれおい わるざる 「この悪猿め、俺とてめえと、何が親類だ。誰が甥ごなもんか」 そんごく ) てんきゅう わか 「おい若いの、おまえは知るまいが、わしこそは五百年前天宮をおおいにさわがした孫悟空オ ごうけっ そのころわしは、もつばら天下の豪傑とっきあっていたが、おまえのおやじの牛魔王とも兄弟の むす ちぎりを結んだのだ。行き来していた時分は、まだおまえは生まれていなかったんだ」 かえんそう 妖精どうしてこれを信じよう。やにわに火焔槍をしごいて突っかか「て来た。悟空、さっとそ てつぼうふ の鉾先をかわして、鉄棒振るってののしった。 ぶれいせんばん 「この小童め、無礼千万、この棒を見よや」 こう やり 「なにを、このえて公のわからずや。この槍をくらえ」 あにき ようせい ようせい ほこさき さけ こわっぱ よう・カし おれ ようせい おれ あら やっ ぼう お っ ひ ぎゅうまおう きようだい ミ ) 0 100

9. 西遊記(下)

「して、どのお弟子様が、あたられますので」 「てまえどもがやる」 と、悟空が腕組みして言うと、人びとは身ぶるいして、 じんつうこうだい 「だめです、だめです。あの妖怪はまことに神通広大、おまけに図体が馬鹿でかく、どうもうな おしようさま やっ 奴です。このやせっぽちの和尚様じゃあ、あの妖怪の歯のすきまから、こぼれ落ちてしまいます わい」 悟空は笑って、 こつぶこつぶ 「みそこなってはこまる。小立は小粒でも、実がいってるんだ」 ちょうろう それを聞くと、長老たちはやむをえず、 「妖怪を退治していただいたら、お礼はどのくらい ま、 「わたくしどもは出家ゆえ、一杯の茶、一碗の飯でけっこう」 ちょうろう とっん と話しているとき、突然、びゅ 1 びゅ 1 と風の音が聞えて来たので、長老たちはすっかりうろ せんせんぎようきよう たえ、戦々兢々として、 おしよう 「この和尚が悪口を言ったので、さっそく妖怪が現われた」 りろうじん 李老入はくぐり戸を開くと、長老や三蔵に呼びかけた。 「入ってください、入ってください。妖怪が来ました」 よう・カし ・こ ~ 、う わら うでぐ でしさま しゆっけ よう・カし ちょうろうさんぞうよ よう・カし わんめし ト ( ) ) 力し み よら・カし あら ずうたい 392

10. 西遊記(下)

かえん げぎど ちゅうつ されてしまった。だから大王は激怒して、朱紫国に挑戦状を持って行かすってわけだ。大王は みなごろ すな ちゅうつ 火煙を使い、砂を飛ばすから、あの国王も人民も皆殺しになるだろう。そしたら、俺たちは朱紫 かんしよくしやくい せんりよう 国を占領し、大王は皇帝となられ、俺たちは臣下となって、さだめしいろいろの官職や爵位がも らえることだろうて。だが、それは天理には背くことだなあ」 これを聞いて悟空は、 きんせいこうごう 妖怪にも良心はあるのだな。だが、金聖皇后がまだ身を汚されていないというのは、どうい うことかひとっ聞いてみよう : ・ : ・ と、また身をゆすって道士の稚児まげに結った童子に化け、妖精の手下の前に立ってお辞儀を 「お役人様、どこに行かれます。おとどけになるのは、なんの書面ですか」 ようせし 妖精は顔見知りと思ったようで、銅鑼をやめて、にこにこ顔で礼を返し、 いいつけで、朱紫国に挑戦状を持って行くんだ」 「大王様の 「朱紫国のあの人は、まだ大王と床をひとつにしていないのですか」 ころ′こう・ こうこう ごしきせんい 「先年さらって来たとき、一人の仙人が来て、五色の仙衣を皇后にくれたのだ。皇后がそれを着 とげ ると、全身刺がはえて、大王はさわることもできんのだ。なぜだかわからん。が、それでいまま そんぎようじゃ で身を汚さずにいるのさ。さきほど、また宮女をうばいに行った者が、孫行者とやらに打ちまか し、 ちゅうつ よ。う・カし けが こうてし ちゅうつ どうし ちょうせんじよう とこ せんにん どら 0 おれ ゅ しんか そむ どうじ ちょうせんじよう けが ようせ、 てした おれ 433