東土 - みる会図書館


検索対象: 西遊記(下)
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1. 西遊記(下)

第百回 かえ ただ 径ちに東土に回り 五聖真を成す とうど しん

2. 西遊記(下)

その上で罪に問われてはいかがでしよう」 とうそうきず こうしたのは、太子が心配のり、唐僧を傷つけてはと恐れて、わざと妖魔をとどめたのだが、 悟空がすでに討ち取る手はずを整えていたことには、気がっかなか「たのだ。 まおう たいしげん りゅうしよう たいかついっせし 魔王は太子の言を入れ、竜牀の前面に立って、大喝一声、 おしよう 「そこな和尚は、いつ、東土を離れたか。唐王はいかなる理由で経を求めにつかわしたか」 こうぜん とちゅう 悟空は昻然と答えた。三蔵の出発の年月日、取経の旅に出るいきさつ、そして途中の出来事に とうべん 至るまで見事に答弁したので、魔王も、なんくせをつけるすきがない。そこで目を怒らし、 おしよう とちゅう 「そこな和尚が、一人東土を離れ、途中三人の弟子を収めたことまでは、よしとしよう。しかし、 ぞうやくゆる やっ その雑役は許しがたい。だんじてかどわかして来たものであろう。そ奴の名はなんと申す。また * どちょう 度牒は持っておるか」 おどろ 国王ははっと驚き、ぶるぶるふるえ出して、 しふ 「師父、なんと答えたものやら」 「ご心配なく。わたしがかわって答えてあげますから」 ・こ / 、う こわだかさけ と悟空は言って、なん歩か前にすすみ出ると、魔王に向かって、声高に叫んだ。 へいか つをほ 「陛下、この者は唖でしかも聾ときています。それがし、この男につきましては、ことごとく知 りつくしておる故、かわってお答えいたそう」 ゆえ たいし とうど とうど さんぞう な まおう あ とうおう しゅぎよう まおう おさ 一ようもと ようま 6

3. 西遊記(下)

お がっしよう カナ 三蔵ら四人は、馬をつなぎ、肩の荷を降ろして、ひとりびとり合掌し、如来に向かって身をか によらい さんぞう がめて礼拝した。如来は三蔵に向かい、 きようくどく わがもんきかんな ぎようげんりゅう 「この経の功總は、はかり知れぬものじゃ。これ我門の亀鑑と為すも、じつは三教の源流。もし、 なんせんぶしゅう いっさい ゅめ そちが南贍部州に帰り着きしときには、一切の衆生に示し、夢おろそかにするでないぞ。この おくぎ ばんか きほう じようせんりようどう り出す方しとがあきらかにされておるのだ」 内には、成仙了道 ( 普騁 ) の奥義と、万化の奇方 ( 万 と言われた。 よ によらい さんぞう 如来は、三蔵たちを去らせてのち、八大金剛を呼びよせ、 とうど とう」う しんぎようった 「なんじら、すみやかに神威を現わし、唐僧を東土に送りとどけよ。真経を伝えてのち、そっこ せいそう く聖僧をともない、かならず八日のうちに西天へ帰るよう。おくれてはならぬ」 さんぞう さけ 金剛は、たちまちのうちに三蔵らに追いついて叫んオ しゆきようかたがたわれ 「取経の方々、我らについて来られよ」 けんしよう こんごうしたが 三蔵らは、、 まや身も軽々と雲に乗り、金剛に従って、飄々と飛んで行く。これこそ、「見性 さん めいしんぶっそ こうまったぎようみ すなわひしよう 明心、仏祖に参じ、功完く行満てば、即ち飛昇す」である。 とうど きようでんじゅ さて、東土に帰ってのち、どのように経を伝授するでありましようか。次回をお聞きください。 さんぞう こん・こう さんそう しんい あら だいこん′」う さいてん しゅじよう ミ ) 0 びようひょう によらい 600

4. 西遊記(下)

とうどだいとう 「我らは東土大唐よりつかわされ、西天へ仏を拝し、経を求めに参る者。いま、通関の手形に御 印をいただくため、ここに参りました。なにとぞお取り次ぎを」 まおうようま さんだい ゆる すると門番が奥に入って、奏上した。魔王 ( 妖魔の化けた国王 ) はすぐさま参内を許した。 したが 三蔵らは朝門の中に入った。かの生き返った国王もあとに従って入ったが、行くほどにこらえ しろ きれず、涙をはらはらとこばした。悟空はそれを見ると、そっとたしなめて、いまにこの城もあ きんらんでん なたにもどるのだからと、はげましながら金鑒殿の下にやって来た。 どくうさんぞう 見ると、文武の朝官が左右に居ならび、威儀を正している。悟空は三蔵を案内して、白玉階の 前に立ったが、頭を下げるどころか、びんとそっくり返ったままでいる。なみいる役人たちはき もを冷やし、 おしよう ごんはいれい あいさっ 「この和尚、まったくもののわからぬ奴だ。国王の御前で拝礼もせず、挨拶も申し上げぬ。なん だいたんふてき と大胆不敵な」 まおう と言いも終わらぬうちに、魔王が口を開き、 おしよう 「そこな和尚は、いずれより参った者じゃ」 ・こくう 悟空はふんぞり返って答えた。 さいいぎてんじくこくだいらいおんじ われ なんせんぶしゅうとうどだいとうこく 「我らは、南贍部州、東土大唐国より勅命を持って西域天竺国大雷音寺に生仏を拝し、真経を求 てがたぎよいん めに参る者。いま、当所に至り、手形に御印をいただくべく、特にまかりこした次第」 さんぞう われ なみだ ぶんぶ ちょうもん おく ちょうかん そうじよう さいてんほとけはい やっ ちよくめい きようもと いぎぼとけはい しだい つうかんてがたぎよ しんきようもと は ~ 、ぎ一よく力し 6

5. 西遊記(下)

すがた あらあら ・こくう 悟空は顔色を変え、怒りの声も荒々しく、 「この冷酷無残なくそ坊主め。どこまで俺を馬鹿にしやがるのか」 ちやわん とののしって、鉄棒を振り回し、茶碗を投げ捨て、三蔵の背中めがけて、やっ、と打ち降ろし くろらしゃ さんぞう た。三蔵は目がくらんで地に倒れ、声も立てられない。悟空は二つの黒羅紗の包みをうばい、劬 とうん すがた 斗雲に乗って、どこかへ姿をくらましてしまった。 はち さて八戒は鉢を持って、南の山のふもとに来ると、ふと、山あいに一軒の草ぶきの家を見つけ はつかい た。八戒は心の中で、 みにくつら おれ すがた 俺のこんな醜い面つきでは、きっとこわがって、斎もくれぬだろう。こりや姿を変えて行 かねば 0 じゅもん やみ と思い、そこで秘法を行ない、呪文を唱え、身を七、八ペんもゆすって、やっと青ぶくれの病 かどぐち おしようば 和尚に化け、うんうんうなりながら門口に近づくと、 とうど さいてんきよう ししようとちゅう せしゅひんそう 「施主、貧僧は東土より西天へ経を取りに参る者。師匠が途中で飢え渇いておりまする。もしお めぐ たくなべぞこひやめし 宅に鍋底の冷飯でもありましたら、どうぞどうぞお恵みくだされ」 もともとその家では男はみな畑に出ており、ただ二人だけ女が家に残っていたが、八戒の病み 姿を見、また東土から西天へ行くという話を聞き、この坊さん病気で気がふれたかと思ったが、 あた たおじに なべぞこめしやまも 門前で倒れ死されてはと心配し、畑に運んだ残りの、鍋底の飯を山盛りにして与えた。八戒はそ れいこくむざん はつかい とうど ひほう てつぼうふ さいてん たお おればか さんぞう ・こ ~ 、う と . き せなか わ けん はつかい はつかい お や きん 286

6. 西遊記(下)

すると三蔵、 「だからいいのだ、だからいいのだ」と言う。 悟空が 「あの、化け物の出た大王廟は、どうしたかね」 とたずねると、年寄りが、 「あの廟は、あの年、とりこわしてしまいました。このお寺を建ててからというもの、年々風雨 も順調で、豊作がつづきます。これも、あなたさまのおかげでございます」 ときささ そうしている間にも、村中の者たちが、ぞくぞくと、斎を捧げて集まって来る。やがて真夜中 に、人びとが寝静まったのをみはからい、一同は、こっそり抜け出して、東へと向かった。 すると、なか空から、八大金剛の声がした。 ょに 「夜逃げの者よ、我らについて参られるよう」 とうど こうふう こうして、八大金剛は、ふたたび四人を香風に乗せて送り、ほどなく東土に至れば、はるかに ちょうあん 長安が見えてきた。 さんそう たいそう ぼうぜん そもそもかの太宗は、貞観十三年九月望前三日 ( 陰暦で月の十五日の三日、 」し三蔵を送り出したが、貞観十 ぎようこう まうぎようろう こうふかん 六年には、エ部官をつかわして、西安の門外に、望経楼を建て、年々したしくそこに行幸されて びよう さんぞう ねしす だ、こんこう われ としょ だいおうびよう じようがん だいこんこう せいあん じようがん 605

7. 西遊記(下)

らいしそんしやかむにぼとけ 来至尊釈迦牟尼仏に申し上げた。 ほうざんさんちゃく しゅぎよう 「唐朝の聖僧が、取経のため宝山に参着いたしました」 ぎやたい がらん ぼさっ によらい 如来は、おおいに喜び、ただちに八菩薩、四金剛、五百羅漢、三千掲諦、十一大曜、十八伽藍 りようがわ を集めて、両側にならばせ、唐僧を召し入れるよう伝えた。 ・こ ~ 、う ′」のう・こじよう 三蔵は、悟空、悟能、悟浄に馬を引かせ、荷をかつがせて、威儀を正して山門を入って行った。 れいはい によらい だいゅうでん 四人は大雄殿の前に来ると、如来に向かい、ひれ伏して礼拝した。終わると、左右を拝し、ふ によらい つうかんてがたささ によらい たたび如来に対してひざまずき、通関手形を捧げた。如来は、それにいちいち目を通して、三蔵 あた に返し与えた。 三蔵は、伏して言上した。 ほうざんまい しんきようもと 一うどだいとうこうてし むねほう ていしげんじよう 「弟子玄奘、東土大唐皇帝の旨を奉じ、真経を求め、衆生を済度するため、はるばる宝山に参 強 - ようたも しんおん りまし、た、ねがわくは仏祖、深恩をたれ、すみやかに経を賜うて、帰国せしめたまえ」 じひぶか 一よら、 如来は、はじめて口を開かれ、慈悲深く言われた。 とうど なんせんぶしゅう 「そちの東土、南贍部州は、天高く、地は肥え、物は豊かに人は栄えておるが、むさばり、だま 懸んえん ぶつぎようしたが し、殺すなどということがさかんに行なわれ、仏教に従わず、善縁に向かわず、三光 ()' 月、 ) を敬 じごくわざわ ざいあく あくぎよう ・ここく あざむ せっしよう わず、五穀を重んずることなく、欺き、殺生し、悪業のはて、罪悪は世に満ち、地獄の災いをま さんぞう のぞ さんぞうぎよう くのうちょうだっ わざわ ねくことになったのだ。わが三蔵の経は、苦悩を超脱し、災いを除くことができる。三蔵とは、 とうちょうせいそう さんぞう ころ ぶっそ とうそうめ こ こん・こう った しゅじようさいど らかん さか み さんこう ! ) 、よ要ノ よ、 さんぞう うやま 589

8. 西遊記(下)

「悟空よ、まずわしが行って、一夜の宿を頼むとしよう。泊めてくれると言「たら、呼ぶことに する」 とびら と、三蔵は身仕舞を正し、錫杖をついて門前に来た。扉が半ば開いていたが、外にたたずん ねんぶつ でいると、中から一人の珠数を持った老人が、念仏を唱えながら出て来て、 「これはこれはお坊様。おいでになるのがおそすぎました」 「え、なんとおっしゃいました」 じこく 「おそか 0 たので、施し物がなくな 0 てしまいました。どうしてこんな時刻に来られたのです」 「いや、拙僧は施しを受けに来たものではありません」 「では何をしに、来られましたのか」 おりあ さいてんしゆきよう とうどだいとう 「わたくしは東土大唐から、西天 ~ 取経に向かう者です。折悪しく日も暮れましたので、一夜の やど 宿をおねがいしたいのです」 ろうじん すると老人は手を横に振って、 じようだん 「まあまあ、ご冗談ばかり。大唐からここまで五万四千里もあるのに、どうしてた 0 たお一人で 来られるものですか」 「ごも「ともです。が、わたくしには三人の強い弟子がおりまして、護 0 てくれますので、ここ まで参ることができました」 ・こ ~ 、う さんそうみじまい せっそ ) ほどこ ぼうさま ほどこ じゅす ふ しやくじよう やどたの ろうじん と よ 146

9. 西遊記(下)

「四人のお坊様は、なぜならんでおかけにならないのでしよう」 っ はつかい とたずねる。すると、八戒が口を突き出して、 「我々三人は、徒弟でござる」 ああその声は、深山で虎がうそぶくようだったので、老婆は、あっときもをつぶした。 さんぞう わかものきようどう そこへまた、二人の若者が経堂にや「て来て、三蔵に向か「て平伏した。あわてた三蔵が急ぎ いん力い 礼を返そうとすると、員外がとどめ、 こうりようこうとう・ 「これはわたくしのせがれで、寇梁と寇棟と申します。家塾で勉強しており、昼食にもどりまし あいさつまい ちょうろうさま て、長老様のおいでを知り、ご挨拶に参ったのです」 三蔵は喜んで、 じそんよ ん 「感心、感心。これぞまことに『門弟高からんと欲すれば、すべからく善をなすべし。児孫好か どくしょ らんと願わば、読書するにあり』ですな」 わかもの 若者たちは、父親に向かい、 「このお方は、どこからいらっしたのですか」 と聞いた。員外はにこにこして、 とうどだいとうてんし 「ずいぶん遠方からじゃよ。南贍部州の東土大唐の天子よりつかわされ、霊山へお釈迦様を拝し、 きようもんもと 経文を求めにおいでなされたのだ」 さんぞう われわれ ぼうさま いん・かい とてい とら なんせんぶしゅう さんぞう ろうば かじゅく へいふく れいざん しやかさまはい 538

10. 西遊記(下)

われわれみやげ 「師匠、これはさっきの二人が、我々に土産をさいそくしたとき、何もなかったので、わざと白 洋一ようよう によらい 紙のものをよこしたのです。はやく如来の前へ行って、奴らが、賄賂を強要した罪を訴えてやり ましよ、フ」 、ーカし すると八戒も、 「そうだ、そうだ、訴えてやろう」 らいおんじ とわめく。そこで四人は、また急ぎに急いで、地に足のつくのももどかしく、雷音寺へ取って 返した。 きようしゅむか やがて山門の前に着くと、みなは拱手して迎え、笑いながら、言った。 - よう 「聖僧には、経を取り返しにいらっしゃいましたな」 ・こくう だいゅうでんか 三蔵らは、そうそうに大雄殿下に引き返すと、悟空は大声でどなった。 ぎようたま しんく とうど われしてい によらい 「如来、我ら師弟は、東土よりはるばると、千辛万苦をへて、やっとここまでもうで経を賜わり きよう きようよ。 ) あなんかしようやっ ましたのに、あの阿難、迦葉の奴らは賄賂を強要し、わざと文字なき白紙の経をよこしました。 によらい こんなものをもらって、なんの役に立ちましよう。如来のきついお裁きを望みます」 によらい 如来は、ほほえまれて、 ぎよう 「そうさわがずともよ い。かの者たちが物を求めたことは、わしも知「ておる。しかし、経とい うものは、軽々しく与えてはならず、また空手で取ることもできぬのじゃ。おまえたちは、空手 さんぞう ししよう あた うった わいろ からて もと わら やっ わいろ さば つみ うった からて 596