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検索対象: 西遊記(下)
485件見つかりました。

1. 西遊記(下)

えんりよ 「いやいや、せつかくじゃが、わしは遠慮する。わしはやつばり西宮へ行って、宮女と寝ようわ ぎさき い。后は一人で静かに休まれよ」 そう言って、それぞれ別に寝についた。 ほんそうあら ・こくうにせしゅんきよう さて、悟空の偽春嬌は、宝物を腰にさげると本相を現わし、身をひとゆすりして眠り虫を収 ひび すずひょうしぎ め、表の方へ出て行った。そのとき鈴と拍子木がい「せいに鳴り響き、つづいて三更 ( ) を知 ごくうじゅもん らせる太鼓の音が聞こえた。悟空は呪文を唱え、隠身の法を使って、まっすぐに門のところに来 じようお てみると 、門にはしつかりと錠が降りている。そこで鉄棒を取り出し、解鎖の法を使って、たや すく門を開き、門を跳び出して、大声で叫んオ きんせいこうごう 「賽太歳、金聖皇后を返せ」 つづいて二、三度呼ばわると、手下どもは仰天し、跳び出して行ってみると、 あか じようさが あわてて燈りをともして錠を探して、門をしめ、奥に駆け込んで、 よ だれ きんせいこう′」う 「大王様、誰かが大門の外で、金聖皇后を返せ、と呼ばわっています」 じじよ すると、侍女が、寝殿から出て来て、そっと言った。 「静かに、大王様は、いまお休みになったところです」 てした 悟空はまたも門外でわめく。手下どもは知らせにも行けない。悟空はなおも門外でわめきとお さいたいさい と よ しんでん たからのこし しん てした さけ ぎようてん おんしんほう おく てつぼう 力しさ ドがあいている。 こう ねむ ね おさ 452

2. 西遊記(下)

ぶたひつじ やっし、三人は豚や羊を追って、山路をたどって行った。 きようあく まもなく山あいにさしかかると、またしても凶悪な顔をした手下に出会った。手下は左脇に色 ・こくう ぬりの文箱をかかえ、悟空を迎えて言った。 こかいちょうさん びきぶたひつじ 「古怪ョ鑽、二人とも帰ったのか。何匹、豚や羊を買って来た」 「この追ってるのがそうじゃあないか」 てしたごじよう 手下は悟浄の方を見て、 だれ 「この人は、誰だい」 かちくあきんど 「これは家畜商人さ。はらいが少したりないんで、取りに来てもらったんだ。ときに、おまえは どこへ行くのだ」 おれちくせつざん 「俺は竹節山へ、明日の会のために老大王を迎えに行くのさ」 「お呼びするのは、みんなで何人ほどかね」 し J う : も・、 「老大王を主賓として、本山の大王から頭目まで、あらまし四十人ばかりだ」 二人が話しあっていると、八戒が、 「さあ、行こうぜ。豚や羊が散り散りになっちまうから」 「おまえ、追い集めておいてくれ。俺は、ちょいと手紙を見せてもらおう」 ふばこ しよじようごくうわた 手下は身内の者と思い込んで、文箱をあけ書状を悟空に渡した。悟空が開いてみると、明朝、 ろうだいおうしゅひん てした よ あす ぶたひつじ こ むか はつかい やまじ ろうだいおうむか おれ てした てした わぎ 495

3. 西遊記(下)

めすおすおも すがたみうしな おすめすおも り、たがいに姿を見失った。雌は雄を想い、雄は雌を想うてやまぬ。これが双鳥失群ではない か」 役人どもはロをそろえて、「まこと神僧じゃ。神医じゃ」とほめたたえる。 しやごくう そこで、いあわせた医者が悟空にたずねた。 ちりよう 「では、どういう薬を用いて治療いたせばよろしいので」 むかし 「昔から言うだろう。処方にはこだわらぬ。適量に用いればよいと。だからありったけの薬を整 えておいて、随時、かげんするのだ」 ン」うちょ ~ 、 医者はうけたまわって、急ぎ宮門を出ると、当直の役人に命じて、町中の薬屋にふれさせ、各 ・こくう 種の薬をそれぞれ三斤ずつ、悟空のもとに送らせた。 ごくうどてん さんぞう 悟空は御殿に行って、三蔵に、 かいどうかん いっしょ 「一緒に会同館に来て、薬を作ってください」 さんぞう おくごてん たの ぶんかでんしゆくはく と頼んだ。三蔵が出かけようとしたとき、奥御殿からお達しがあり、法師には文華殿に宿泊し つうかんてがた てもらい、明朝服薬して、病がいえたら通関手形を改めて出発させる、ということであった。 さんぞうおどろ 三蔵は驚いて、 ・こくう ひとじち 「悟空よ、これはわたしを人質にするつもりだ。病気がなおれば、喜んで送り出してもらえるが、 もしなおらなかったら、わたしの命はない。 よく気をつけてやっておくれ」 しゃ きん しよほう やまい しんそう てきりよう しんい たっ ほうし そうちょうしつぐん 409

4. 西遊記(下)

ちゅうつ されたので、大王が怒って、明日は朱紫国と戦争をされるのだ」 こラとうぶ 悟空は手をこまぬいて一礼して、別れて行くふりをして、身をかわしざまに、妖精の後頭部を くびお ようせし いちげき 一撃した。妖精は頭から血を流し、頸を折って死んでしま「た。悟空はは「と後悔し、 ・ええ、ままよ」 「しまった。こいつの名を聞いておくんだった。 どら みちばた そで ちょうせんじよう と、妖精の持っていた挑戦状を取り出して袖にしまい、旗と銅鑼を道端の草むらに隠し、脚 を引っぱって谷間に投げ込もうとしたとき、かたんと音がして、金でふちどった象牙の牌が妖精 ふくしんかし の体から落ちた。その牌の上には、「腹心の下士一名。名は有来有去。身体は短小、顏はでこほ にせもの ひげ こ、髭なし。牌なきものは偽者なり」と書いてあった。 悟空は笑って、 ゅうらいゅうぎよ 「こいつ、有来有去 ( 得ったり来たり ) という名なのだな。俺に打たれて有去無来 ( 往「たきり ) になってしまったわ」 かえんどく そう言って牌をといて自分の腰につけ、死骸を谷に投げ込もうとしたが、また火煙の毒を思い っ むねてつ・ほう ようせし どうふ 出し、洞府に行くのはやめて、妖精の胸に鉄棒を突きさして、高くかかげ、朱紫国に帰って来た。 ちょうせんじようそで 悟空は、まず三蔵に会って挑戦状を袖の中に隠させてから、国王に死骸を見せた。すると国 王は、 おもてきんこう たけじようしやくうで 「これは賽太歳ではない。奴は身の丈一丈八尺、腕の太さは五にぎり、面は金光を放ち、声は ようせし わら さいたいさい ふた さんぞう こ やっ しがい こ ゅうらいゅうきょ おれ しがい ゅうぎよむらい ちゅうつ そうげ ようせい ようせ、 あし 43 イ

5. 西遊記(下)

やくそくわす 「ご馳走の約東を忘れないで。俺たちは承知したんだから、女王に一席もうけさせて、結婚承諾 の祝い酒をふるまってくださいよ」 ほうこく 駅丞と大臣はおお喜びで、女王に報告に行った。 あとで三蔵は悟空を引きとめ、 「猿め、わしをなぶりお 0 て。なんということを言う。わしは死んでもいやだ」 きしよう 、。市匠のご気性はわかっています。これは計略です」 「ご安心くださ自 けいりやく 「どんな計略だ。女王がわしを招けば、きっと夫婦の礼をしようとするだろう。わしはどうあっ とくこう ぶつけ ても仏家の徳行を失って、堕落することはできぬ」 こうて、 きようこんやくむす 「今日婚約を結んだのですから、女王はき 0 と皇帝の礼をも 0 てお迎えに来るでしよう。師匠は ぎよくざ ほうでん じたい 辞退することなく、お迎えの車に乗 0 て宮中に入り、宝殿にのば「て南面して玉座に着き、女王 しゆくがそうこうえん こくじ に国璽 ( ) を出させて、我らの通関の手形に押印して渡してください。一方、祝賀と壮行の宴 えん を開き、宴が終わ「たら、三人を見送 0 て来る、と言 0 て城門を出て、師匠は車から降り、すぐ くんしんかなしば に白馬にお乗りになる。わたしは『定身の法』を使「てかれら君臣を金縛りにする。そのあいだ じゅもん われわれいっこう に我々一行はどんどん西に向かいます。一昼夜た「たら、呪文を唱えてかの女たちを元にもどし けいりやく しろ て、城に帰らせます。これが『偽って婚し、網を脱がれる』計略です」 ゅめ なっとく さんぞう 三蔵はこれを聞くと、はじめて納得し、夢から覚めたようで、 えきじようだいじん さる ちそう さんぞう ししよう むか われ おれ まね つうかんてがたおういん じようしんほう こん しようち あみの さ じようもん けいりやく むか ししよう けっこんしようだく お ししよう 230

6. 西遊記(下)

とうどだいとう 「我らは東土大唐よりつかわされ、西天へ仏を拝し、経を求めに参る者。いま、通関の手形に御 印をいただくため、ここに参りました。なにとぞお取り次ぎを」 まおうようま さんだい ゆる すると門番が奥に入って、奏上した。魔王 ( 妖魔の化けた国王 ) はすぐさま参内を許した。 したが 三蔵らは朝門の中に入った。かの生き返った国王もあとに従って入ったが、行くほどにこらえ しろ きれず、涙をはらはらとこばした。悟空はそれを見ると、そっとたしなめて、いまにこの城もあ きんらんでん なたにもどるのだからと、はげましながら金鑒殿の下にやって来た。 どくうさんぞう 見ると、文武の朝官が左右に居ならび、威儀を正している。悟空は三蔵を案内して、白玉階の 前に立ったが、頭を下げるどころか、びんとそっくり返ったままでいる。なみいる役人たちはき もを冷やし、 おしよう ごんはいれい あいさっ 「この和尚、まったくもののわからぬ奴だ。国王の御前で拝礼もせず、挨拶も申し上げぬ。なん だいたんふてき と大胆不敵な」 まおう と言いも終わらぬうちに、魔王が口を開き、 おしよう 「そこな和尚は、いずれより参った者じゃ」 ・こくう 悟空はふんぞり返って答えた。 さいいぎてんじくこくだいらいおんじ われ なんせんぶしゅうとうどだいとうこく 「我らは、南贍部州、東土大唐国より勅命を持って西域天竺国大雷音寺に生仏を拝し、真経を求 てがたぎよいん めに参る者。いま、当所に至り、手形に御印をいただくべく、特にまかりこした次第」 さんぞう われ なみだ ぶんぶ ちょうもん おく ちょうかん そうじよう さいてんほとけはい やっ ちよくめい きようもと いぎぼとけはい しだい つうかんてがたぎよ しんきようもと は ~ 、ぎ一よく力し 6

7. 西遊記(下)

さんぞういっこう ぎしどうす えんしょ さて三蔵一行は、稀柿鵆を過ぎて、西へと馬をすすめるうち、またも炎暑の候となった。やが ちゅうつ てさしかかったのは朱紫国である。 いっこう びんきやくせったい かいどうかん さんだい 一行はまず賓客を接待する会同館に入り、三蔵は衣服を整えて宮中に参内した。国王はながい さんぞう 病に苦しんでいたが、三蔵を見てたいそう喜び、てあっくもてなした。 ・こ ~ 、う かいどうかんごじよう したく まち いっぽう悟空は、会同館で悟浄に食事の仕度をさせ、八戒を連れて、調味料を買いに街へ出か 亠ノこ 0 ふこく ふと見ると、鼓楼の下におおぜいの人だかりがしている。もぐり込んでみると、国王の布告が かかげてあり、 やまいふ いまだ効なし。あ 「朕、近ごろ病に臥しおりしが久しくいえず、国内の名医種々処方を奉るも、 けんし ちりよう まねく天下の賢士、もし医薬にくわしき者あらば、急ぎ宮中に来りて治療にあたらん事を。もし あた 朕の病いえなば、国のなかばを与うべし」 と書いてある。 ′」くうえ ぎっぽう 悟空は得たりとほくそ笑み、我に独特の秘方ありと名乗り出たので、宮中では、吉報とばかり ・こ ~ 、う 喜んで迎え入れる。これを見て三蔵は驚き、はらはらしながら悟空を叱りつけたが、悟空はすず ・こてん しい顔をして、奥の御殿にすすみ入った。 ちんやまい やまい ちん むか おく ころう やく われどくとくひほう さんぞう びさ おどろ さんぞう ふく ー、刀し しゅじゅしよほうたてまっ ごくうしか こう こう 407

8. 西遊記(下)

さいうんあら らの彩雲が現われ、 そんごくう 「孫悟空、しばらく待たれよ」 ′こくう もんじゅぼさっ と、呼ばわる声。悟空が振り迎いでみると、それは文殊菩薩であ。た。急いで棒を収め、すす み寄って礼をし、 ぼさっ 「菩薩、どちらへ行かれます」 「わしは、そなたにかわって、この妖魔を収めに来たのだ」 そで しようようきよう ようま ・こ ~ 、う ′」じよう と言って、袖の中から照妖鏡を取り出し、妖魔の原身を照らし出した。悟空は八戒と悟浄を かがみ キ」んこう キ - ようあくしし 呼んで、いっしょに鏡の中を見ると、そ奴は、身に青毛はえ、紅眼から金光を放っ凶悪な獅子で あった。 ばさっ ござよう 「菩薩、これはあなたの御座用の、青毛の獅子ではありませんか。なんだ 0 て、げ出して僊け 物になどなったんですか」 ぼさっ すると、菩薩が、 に によらい おぼしめし 「悟空、これは逃げ出したのではないのだ。如来の思召によって、つかわされて来たものなのだ」 ちくしよう によらい 「こん畜生め、化けて帝位をうばったくせに、こんども如来がっかわしたというんですかい」 とき ぜん そう によらい 「そなたは知るまいが、鳥難国王ははじめよく善を行ない、僧に斎をほどこしたため、如来がか さいほう ぼんそう れを西方へみちびこうとされ、わたしを差し向けられた。そこで、わたしは凡僧に身をやっし、 よ よ よ うじ ふ あお ようま やっ おさ あかめ ぼうおさ はつかい

9. 西遊記(下)

きさぎ 「兄弟、そうさわぐな。まず太子を呼んで父君を搨させ、お后にも夫君に対面させてあげよう」 わた じようしんほう ぶんぶひやっかん と言い、定身の法をといて、文武百官に向かい、真の国王を拝すように申し渡した。そして、 ・こじよう 八戒と悟浄には、 くんしんきさき 「こちらの君臣や妃たちと、わが師匠をくれぐれもお護りするように」 ごくうかげ と言いつけたかと思うと、はや悟空の影はなかった。 ・こくう 悟空が空中に飛び上がって、四方を眺めると、魔王は命からがら、まっすぐに東方めざして逃 れて行くところだ。悟空はたちまち追いついて、 そん 「やい化け物、どこへ行く気だ。孫さんのお出ましだぞ」 ほうとう・ さけ まおうふ 魔王は振り返り、宝刀しごいて叫んオ きさま そんぎようじゃぎさま 「孫行者、貴様はなんてでしやばりだ。わしが帝位をうばったからといって、貴様になんの関係 おれひみつ がある。なんでわざわざ乗り込んで、俺の秘密をばらすのだ」 たかわら 悟空は、わっはつはと高笑いして、 だいたんふてきようかい おれそんぎようじゃ 「この大胆不敵な妖怪め。俺を孫行者と知りながら、遠慮もせずに、たてつくとは不届千万、逃 げ隠れせず、この棒をくらえ」 まおうささ ほうけん むす と打ち込めば、魔王も宝剣とって切り返す。二人は切り結ぶこと数合、ついに魔王は支えきれ りようがわ ふんぶひやっかんむ じようちゅうと は ~ 、ぎ - よ ~ 、力し ずに、ばっと後ろを向くや、城中に跳び込み、白玉階の両側にいならぶ文武百官の群れの中に はつかい ・こ ~ 、う きようだい こ まおう こ ししよう よ なが 、戔 ) 0 まおう しん えんりよ ふくん ふとどきせんばんに が 5 6

10. 西遊記(下)

だいらてんぎよばかん ・こくう ぎよくてい ごくうおそ 馬がなぜ八戒を恐れず、悟空を恐れたかというと、悟空は五百年前、玉帝から大羅天の御馬監 ひつばおんかんしよく に封ぜられ、馬を飼う弼馬温の官職についていたからである。だから、ず「と今日に至っても、 さるおそ 馬というものは、猿を恐れているのである。 三蔵は手綱も引けず、鞍にしがみついて馬が走るにまかせ、二十里も駆けたところで、や 0 と そくど 速度を落とした。 あま りようがわ 少し行くと、とつじよ、銅鑼の音が響き、道の両側から三十人余りの男が跳び出し、おのおの さんぞう 槍や刀や棍棒を持って、三蔵の前に立ちはだかった。 おしよう 「和尚、どこへ行く」 みちばた さんぞう 三蔵はびつくりして、馬からころげ落ち、道端の草の根元にしやがみ込んオ かしら 「お頭、命ばかりは」 かしら すると頭らしい二人の大男は、 「どうもしやしねえ。路銀たけおいて行け」 さと は なかま お さんぞう 三蔵は、やっとかれらが追い剥ぎの仲間だと悟り、 さいてんぎよう だいとうてんし かしら 「お頭、わたしは大唐の天子の命で、西天 ~ 経を取りに参る者。出家のこととて、道々布施を乞 うて行くばかり。どうして銭金を持ちましよう。着ているものも、あちらの家で布をもらい ちらの家で針をもらい、少しずつもらい集めてこしらえたもの。これを剥がれるのは、わたしを やり さんぞうたづな こんぼう はつかい ろぎん くら どら ぜにかね ひび しゆっけ こ と ミ ) 0 ぬの ふせ 262