「四十八番街の・ハ ーベキュー屋で会いましよう。あんたがとても気にいってた店よ 「たしかに、きみに会えたらいいとは思うんだが 「そうでしよ、何時にする ? 「そうだなあ、いますぐでも出られる。そういえば、腹がへってるんだ」 「すてき、そっちが先についたとしても、長くは待たせないわよ。あたしも何か羽織るだけで いいんだから」 「こっちは、身支度すっかり整っているんだ」 「狩りの身支度 ? 「いいようによればね 受話器を置くと、彼は鏡の前に行った。 「動くな、命はないぞー鏡に向っていうと、しょんばりとうなずく。「糞ツ、今朝の稽古のと おりになりやがった」 そこで部屋を出て、ロビーにおりる。 カウンターの奥のフロント係が声をかけた。 「保安官、ちょっと待ってくださいー マクロード が引っ返すと、封筒を渡してよこした。 はお
納税者といわれるにすぎないのだ。無実の証明がこれまた厄介で、ちょっとやそっとではでき そうもないというのが、いずれの場合にも共通している。 「なあドーナ、これにはわけがあって、説明できる : : : 」 「もうひとっ教えてあげることがあるわ」 「もうたくさんだよ」 「いずれにしてもいうわよ。あんたにあげた二分間はもうすぎたわ」 彼を押しのけると、寝室のほうに行く。 「待ってくれよ、ドー ナ、説明がつくんだ。それをこんなに : 「いいわけはできるでしようよ。あんたは、何だって説明をつけられるんだから」 「しかし、きみだって知りたいはずだよ」 「ええ、知りたいわ。本当に知りたいわよ。保安官さん、何もかもすっかり聞きたいわ」 「だったら、人のいうことも少しは : : : 」 「でも、いまはだめ。こんどまたね」 きつばりした口調だった。寝室にはいってドアをしめると、なかから鍵をかけてしまう。鍵 がかかったことはたしかだった。普通寝室のドアの鍵は、ほとんど音を立てずにかけられるよ うにできているものだが、いまの音に遠慮会釈は何もなかった。雷鳴のような音がして鍵がか
「それがいま、帰れる見こもなくなったようだな。そうだろ、保安官 ? 」 っしょに ( 行か 「いくつか問題があるな」サム・マクロードはいった。「向うまで、わたしがい なければならなくなった」 「そうだ、あんたになら、ひとつわたしのためにやってくれられることがあるのが、わかって もらえるかもしれない 「できることなら、やろう」 「なあ、わたしはここんとこ調子が悪くてーー体の調子ではないよーーーそれに、近ごろの事件 のせいというわけでもないんだ。だから、あんたが来たからといって、別にどうということは なかった。どうせここはやめるつもりだった。ただ、それでもひとつ、あんたがきれいなやり 方をしてくれれば、助かるんだがね」 「できることなら、そうしよう 「この部屋で決着をつけないでもらいたいんだ、このいまいましい機械の前でな」ジェンキン ズはいった。「昻然と頭を上げて、この部屋から出て行かしてもらいたい。手錠なんかかけら れなくても、い っしょに市警本部に行くよ」 マクロードはちょっと考えていた。 「この機械のことを話そう。聞きたいだろ ? わたしは、夜中にこいつの夢を見るんだよ。こ ネ 03
彼はジェンキンズのほうを見た。 「どうやらこいつは、事件に蓋をする手のひとつらしい」彼はいった。 「保安官、わたしにいってるのかね ? 」ジェンキンズが眉をひそめていった。 「ここにはおたがいふたりしかいないよーマクロードはいう。「なあ、わたしの勘違いならい いと思ってたんだがねー 「何が ? 「あんたが例の強盗の片棒かついでいるということさ」サム・マクロードはいった。 ジェンキンズはデスクの前から立ち上ると、両手をポケットにいれ、ゆっくりとコンビュー ター室に出てきた。 「なあエルロイ、おれはあんたに好意みたいなものを持ってたんだよ。あんたがなぜこんなこ とをしたかも、わかってるような気がするんだ」 「ほう ? それで、ここでわたしが恐れいって白状するというのかね ? デイダクション 「その必要はない。すべてここに出てるんだ。単純な引算の問題だな」 ジェンキンズは大して取り乱しもしないようだった。たぶん、コンビューターの報告書には、 自分を現実に有罪にするものは何もないと知っていたからだろう。それとも、ほかの何かかも しれない。たが、老人のロのいたずらつばい輝きは消えなかった。
彼がドアをしめたところに、重い花瓶がドアに当って砕けた。 ナはいった。 「あれは七十五ドルの花瓶よ」 「それだけの値打ちはあったわ。できることなら、あいつの頭をぶち割ってやりたかった」 「ねえ、ジョンソン」ドー ナがいった。「この部屋であの保安官の頭をぶん殴る権利があるの は、あたしよ。あたしに権利があるのよ 「あんたに権利がある ? あたしはどうなのよ ? あいつはあたしを、二時間も浴室にとじこ めたんだから。列車のトイレのことはいわないとしてもねー 「浴室にとじこめた ? 二回も ? 」 「二回よ ! 最初は、ひとをじゃがいもの袋みたいにかつぎ上げて、列車のトイレにほうりこ んだのよ。二度目は、ただ陰険なペテンにかけただけだけど。あんたのあの記事のねたを、ど こから手にいれたと思うの ? 」 ーナの目が、急にはじめてキスされた女学生の目のように輝いた。 「マクロードは、あんたにそんなことをしたの ? 」まるで夢みるようにいう。「すばらしいじ サマンサには相手のこの反応は思いがけないものだった。しかし、どういうわけか、自分が 19 ラ
きわどいところで間にあったのだった。馬に乗った三人が、馬を駆ってくるのが見えた。 まるで一挙動といえるようなリズムを見せて、三頭はいっせいに警察の車をとびこえてしまっ 拳銃を手にした警官たちも、ロあんぐりと見送るばかり。 だしぬけに、彼らの頭がびくっと向きなおった。 サム・マクロード・こ、 オ追ってきていたのだ。 またしても、彼らの顔がぐいと反対側にねじ向けられる。 前方で三人の無法者たちは、馬をある劇場横の行き止りの路地に乗りいれたのだった。様子 を悟った馬上の男たちは、手綱をしばって、まわれ右して出てこようとする。 しかし、馬上のサム・マクロード保安官が路地の入口を封鎖していた。 一台、また一台と、通りの。 ( トカーが向きを変えて路地の入口に集まり、マクロードの援護 をする。 「お前たち、カリカリしても無駄だぞ ! 」 マクロード が路地のヴァージルとそのふたりの仲間に叫んだ。 「お前たちがとじこめられたのは、おれたちが故郷でいう箱の谷というやつだぞ。拳銃を捨て て出て来たほうがいいぞ」 223
「もしもし、サムね」女の声がいう。 「やあ、ドーナ、いまきに電話しようと受話器をとったとこなんだ」 で、銀色サテンの部屋着でソファーのわきに立っているの トーナ・マーチは自分のアパート 「おかしいわね、あたしもいま電話しようと受話器をとったとこなのよ 「それで信号音が聞えなかったんだな。電話が故障してるのかと思ったよ 「本物の刑事らしいせりふね。消えた信号音の謎。事件は解決せり。解決したのは、豪胆なサ ム・マクロード保安官。二十世紀後半の探偵すべてが羨望する、彼の輝かしい経歴をつづる、 またしても目ざましい勝利のひとっー 「そうかもしれない。それとも、ほかのもうひとつのことを示すだけのことかもしれない」 「何なの ? 」 「きみとわたしが近いということさ。二頭だての馬具でつながれた二匹のロみたいにね」 ーナは受話器に向ってうなずいていった。 「そう、波長が合ってるということね 「何が合ってるって ? 」 「波長よ。ニュ 1 ヨークでは近ごろ、波長という言葉をよく使うのよ。あんたはあたしのと同
「しかし、その褐色砂岩のアパートと、姿を消した当のロイ・。ハーカーはどうだったんだ ? 」 ーいオ「西部の歴史の専門家なんです 「あの男は、悪いことはしてませんよーマクロードよっこ。 よ。彼のアパートのガラクタは本人のものだったんですが、新聞の切抜きはエルロイのでした。 エルロイは友だちの。ハーカ 1 が二週間ばかりニューヨークを留守にするのを知って、この絶好 のチャンスは見すごせないと思ったんですよー グローヴァーゞ カこの話のところに来て口を出した。 「マスコミの連中が来てますよ、部長。何か発表が欲しいって プンヤ 「フロードハースト、記者相手のグローヴァーの手伝いをしてやれクリフォードは命じた。 サム・マクロード保安官に向きなおる。 、忘れて 「マクロード、あしたの朝、きみがあらゆる規則を破ったことで叱言をいうとき、いし しまうといかんから、いまいっておこうー彼は深く息をついた。「よくやったー 「そ , フら、 ってくれた ! , マクロードはうれしそうにいうと、ふりかえってそこに立ってい たサマンサを見た。彼を見るとサマンサは、鉛筆とメモ帳をパッグにつつこんで、大きく両腕 をひろげた。 彼もサマンサに抱きっかれるように、その腕のなかにはいっていったが、あまり急のことだ ったので、彼女が腕をひろげるためにレインコートの前がはだけて、下の短い寝巻が見えてし 22 ラ
市長を襲ったとき以来、こんな保安上の理由なんて見たこともないぞ。こいつは何か。ヒーンと 来るものがあるはずだぞ」 「それはそうと、そのときの新米巡査はどうなった ? 」となりの記者が尋ねた。 「そういえば、セントラル・アイスリツ。フで事故にあい、おかしな情況からすっかり腑ぬけに なっちまったそうだ」 ドアがあいて、サマンサ・ジョンソンがはいってきた。すばやくファーギソンを見つけると、 やはりすばやく彼のところに来た。 「ファーギー、話があるんだけど」 ファーギソンはふりかえった。相手がだれかわかると、実に嬉しそうな笑顔になる。さあさ あいらっしゃいという笑顔。 「とにかく、オズの魔法使いの国から来たお嬢ちゃんでないにしても、テレビ・ニュースの世 界ではもっとよく知られている顔だ」 サマンサは無理に力ない笑顔を見せた。 「ファーギー、あんたとはニュースの話はしたくないのよ」 「だったら何の話をしたいんだね ? 」 「つまり、ニュース対ニュースの話はいやなのよ、新聞対テレビの話はいや 4
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