「見のがしている ? 」 「そう。問題はまたコンビ = ーターのことになるが、この機械とわしらが知っていた生活との 遠いだ。それがぐるぐると堂々めぐりになるのがわかるかね ? コンビ、ーターなんかを夢に 見て、どうなると思う ? 」 マクロードはうなずいていった。 「よかろう、エルロイ。あんたのしたいようにさせよう。このまま、 行くだけだ」 「とにかく、機械から離れるんだね ? 」 「そう、機械から離れられる。手錠もなしでな。コートをとってこいよ。行こうー ふたりは心から理解しあったように、顔を見あわせた。 ルロイ。ジェンキンズが小部屋に行って、壁の釘からコートをとり、着こんだ。 「さあ、用意はできた」 ふたりはいっしょに出て行く。 外は暗くなりかけていた。 「そこを動くな、保安官ーどこからともなく声がかかった すっかり西部劇の服装をしたヴァージルが立っていた。 っしょにここから出て 207
マクロードはうなずいた 「もう一度、よく考えなおしてみたほうがいいんじゃないかな。この前、きみがいってたこと と、ちょっと違うようだからね 「サム、おたがい。 ここんなことをいいあってる暇はないのよ。その古い家に行って、さぐりま わして、何が出てくるかどうか見てみなければならないのよ」 「ははーん 「どういう意味、″ははーん″だなんて ? 」 「いまわかったということさ」 「何がわかったの ? しいかえると、きみはすでにその家に行ったが、なかにはいれなかったんで、こんどは警官 のバッジの助けを求めているんだ」 「サム、本気でそう思ってるの ? 「そうだよ。別に何も悪いことはないさ。きみの考え方はわかるよ。きみが背中を流してくれ れば、こっちもその背中を流してやる」 彼女はにつこりした。 「サム、あんたも本当のニューヨークっ子になってきたわね 172
トウヒー・ ハリスは大きな溜息をついた。 「サム、わたしはおとなしく、あの話は二度ともちだすまいとしていたんだぞ。それを、きみ のほうがまたもちだしてきた」 チャールズ。。フライスが、「銀行強盗の一件かい ? 」と口を出した。 「そうなんだ。このトン子ちゃんはその記事の取材にいったんだが、一件は彼女の思うとおり にーいかなかった。そうだろ、トン子ちゃん ? それでちょっとした議論になって、まあ挨拶 みたいなもんだが、 主にトン子女史の今後の仕事の話になったんだが、とにかくそれはすんだ こととして片づいたんだ。少くとも、こっちはそのつもりだった。それを、一日のうちでもい ちばんまずいこんなときに、もう一度むしかえしにこうやって乗りこんでくるなんて、思いも よらなかったよ 。フライスが、「そのニュースはきのうやったよ」といった。 「そいつをたしかめるつもりだったよ」ハリスがいう。 サマンサは必死に首をふった。 「でも、本当のニュースはやってないわ」 トウビ ・ハリスは思わず原稿を見て、読みはじめた。 「本当のニュースは流してなかっただって ? 」 -6
またしても返事はない。 「何とかいったらどうなの ? 」 「ああーはっとしたように、彼はいった。「いや : : : むしろ、ちょっと考えたほうがいいよう な気がしてね」 「え、ニ = ーヨークっ子ほど、ひねくれた考え方をする人間はいないんだけど、これだけは、 見たとおり信じないではいられないわよー 「そのとおりだね。ただ、見られるだろうと思っていたとおりのものを見せられるときは別だ : それとも、見せられることが、だれかの。フログラムのなかに組みこまれていたとしたら、 話は別だよ。きみこの壁の古い新聞の切抜きだけを見ているようにね」 「あんただって、同じものを見てるのよー 「そうともいえない 「じゃ、何を見てるの ? 」 「こいつを止めているテー。フを見ていたのさ。ほら、新聞は古いが、テー。フは箱から出したば 一週間か二週間もたっていないよ」 彼女はマクロードを見つめた。 「プログラムどおりといってたわね ? たしか、。フログラムといってたでしょ ? 」 179
「何だって ? 」 「イエスかノ 1 か ? 彼女にキスしたの ? 」 「そうだなあ、したようなものかな。つまり、キスしたとはいえないようなもので、その、感 謝のキスのようなもの、この頬べたにだよ 「それなら、どうして口紅の跡がないの ? 「彼女は口紅はつけてなかった」 「つけてなかった ? なぜ ? 「彼女は、服を着てなかったからさ 「服を着てなかった ? 「つまりさ、べッドから出たままだったからだよ。化粧するがなかったんだよ」 驚いたことに、ド ーナは笑いだした。よろよろとあとすさりして、ソファーに倒れこんでし まい、彼がもじもじしているのが、有頂天になるくらい楽しいのだった。 彼はそういう彼女を見つめて、うなずきはじめた。 「よかろう。もういいだろう。ヴ = ニスの商人どの、わが肉を一ポンド、抜きとったはずだ。 これで満足してくれれま、 ーしいと思うだけだな」 彼女はマクロードを見上げた。 229
「生か、ビデオ・テープか ? 」。フライスが口をはさんだ。 「フィルムだよ、今朝用意したんだ」 だしぬけにドアがパッとあいて、サマンサ・ジョンソンがとびこんできた。手に何枚かの原 稿をつかんでいるーーその顔には得意そうな色。 彼女はまた、かけてきたのか息をはずませていた。 ハリスさん。でも、写真と美術 「遅れてごめんなさい。締切りはすぎてるのはわかってます、 のほうの仕事に引っかかってしまって。これを読んでくれれば : : : 」 ハリスは首をふった。「サム、そんなものを読んでる暇はないよ。読みたくても、もうその はないんだ。別に読みたいとも思わないがね」 「でも、読んでさえすれば : : : 」 「聞えないのか、いまいったように : : : 」 だが、それでも彼女は原稿を彼の手に押しつけてしまった。 「お願い、読んでみさえすれば : : : 」 「だから、そんな瑕はないといったろ : : : まあいい、早いとこ片づけるために、話を聞こう。 その上でだ : : : 」 「きのう警官が強盗にやられたでしよ、あの有線テレビ用の一件です」 なま
「本当か ? 」 「本当さ。さあ、支度よ、 しし、力し 2 ・」 「とにかく、あわてて得するためしはないぜー マクロードはいって、拳銃をベルトに突っこむと、帽子をかぶりなおした。 「もっとうまくできそうだと思うなら、もう少し稽古するぜ 「いや、もうたくさんだ」 「おれの故郷では、稽古が完全を作るというがね [ 「あんたの故郷の連中も、この = = ーヨークの連中とご同様に、それなりに狂ってるよ。両方 あわせりや、だれもが気違いということさ。いっかこういうご時勢が来ると、お袋がいってた つけ いや、考えてみると、お袋もこんなご時勢になるとはいってなかった」 「そういう考えはやめろよ。第一、気持が集中できなくなる。どうだい ? 」 「やつばり、おたがいみんな狂っちまってるようだよ [ ふたりは戸口に向った。マクロードがしう 「これも警察の仕事のうちと考えるんだよー 「これも警察の仕事だって ? マクロードはドアをあけながらいった。
「やあ、部長ー っこ 0 マクロード・ 、刀し / グローヴァーが救援隊の責任者として来ていた。 「部長、十分以内に切り離せます。焼き切るより早い手がないもんで」 「ふたりとも焼いちまえ。責任はすべておれがとる、 マクロードは咳払いして、いった。 「そんな部長、部長の気持はわかりますが : ・ 「マクロード、きみにわたしの気持がわかって来たなんて : : : まさか」 クリフォード の声は肚とは裏腹に明るかった。 「こういったらいいかな。アセチレン灯をもったこの男を見ろ。わたしにこれからとっちめら れたら、ふたりとも、耳の穴をこの烙で焼きつぶしてもらったほうがよかったと思うだろうな」 彼はグローヴァーに向きなおり、「こいつらを運んで行け」といった。 「どうやってです ? 部長、ふたりとも歩くこともできないんですよ」 プンヤ 「だったらかつぎ出すんだ。ここから運び出して、記者たちの目にふれないようにしたいんだ。 それから、もしどっちかが、自分の名前でもしゃべりだすようなことがあったら、撃っちまえ」 「はいツ」グローヴァーはいっこ。
マクロードもそのあとから追い立てられて乗りこんだ。 いま、ドアが・ハタンとしまり、ライト・ハンは走り出す。後部ではマクロードとジェンキンズ が縛られていた。車がどっちに向っているのか見当がっかなかったし、ちょっと走ってから、 車は車庫にはいった。大きなディーゼル・トラックともう一台のライト・ハンがあって、それに はニューヨーク市公共事業局のしるしがついていた。 いま、カウポーイのふたりがライト・ハンからおりて、車庫のなかで待っていた四頭の鞍を置 いた馬のほうに行く。ギャングの五人目の男が、市の職員の上っ張りを着て、そのあとにつづ ヴァージルは最初のライトバンの配電コードをむしり取り、ガソリンのカンを取り上げてま わりにまきはじめた。 彼はジェンキンズを見おろしていった。 「爺さん、いろいろとありがとよ。お前さんなしでは、おれたちにはできなかったからな」 マクロードは顔を上げて、ジェンキンズのほうに頭をふっていった。 「この爺さんには手当てが必要だぞ。出血多量で死んじまうぞー 「あいにくこっちには、ほかに計画があるんでな」ヴァージルはいった。「今夜は最後の仕事 だ。二百五十万ドルだ。それだけあれは、引退して悠々と遊んで暮せるせ。そう思わないか ? 」
「しかし、それにしても指紋と人間の性質や何かとは違いますよ。そうでしょ ? ーマクロード 、カ」し十 / 「蒐集して、資料を集めるという科学という点で、どこが違う ? 」 「だって、機械の前にこんなふうに人間やその考えを大の字にひろげて調べるなんて、個人の 自由というのにぶつかるようなことがあるでしょ ? ギリスは不思議そうに彼を見た。 「きみは個人の自由というものを、どういうふうに考えている ? 「あたしにだって、暗誦していることがいくらかありますよ。ちゃんと書いてある 「書いてある ? どこに ? 「合衆国憲法というやつだったと思いますがね」 もしそんなことをいって、相手に何かショックを与えられると思っているのだとしたら、こ キリスはにやにやしていた。 れは大外れだった。・ 「マクロード君、あんたは何か忘れてるよー 「あたしが ? 」 「そう。驚くくらい大勢の人が忘れていることだ。ねえきみ、合衆国憲法は変化に応じられる ように考えられている。現在もわれわれは、ある種の自由を犠牲にして、かわりに保護を与え 9