ル製の水冷直列 6 気筒ディー ゼルで 212 Ⅳを出す。 ターレットは , 鋼板を熔接 して造ってあり , 外形は戦車 なみにスロープをつけて造ら れていて , このなかに , 最初 に話題にしたベルギーのクッ ケリル社の 90E 砲が搭載され ている。ェンゲサがこの砲を ライセンス生産しているのは 最初に書いたとおりだ。この 砲は , 砲弾の装填は手動で , 射撃は手動でも電動でもでぎ る。砲弾は H E , H E A T ( 対 E E 17 スクリはフランス製の 105 砲塔を持ち , 戦車には強敵 戦車 ) , HESH, 発煙 , 訓 練などの各種があり , 状況によってはこれより大口径の る。 砲を装備した戦車とも対決できる能力があるし , 命中精 それでいて , 6 x 6 の駆動系はプーメラングと共通 , 度や信頼性の高さでは世界のトッフ。・クラスだという。 デトロイト・ディーゼル製 6 V53 N 水冷 6 気筒ェンジン カスカベルの駆動系は前述の 6 x 6 トラック , フ・一メ は , カスカベルと同じなので , コストや信頼性のうえで ラングと同じで , セルフロッキング式のデフを持ち , 最 非常に有利である。 大速度は 100 を / h も出せる。 水上走行には , 後部にあるダクトっきの 2 コのスクリ そして , 一般には知られていないが , すでにフ・ラジル ーを使い , 折畳み式の舵 2 コでステアリングを行う。 陸軍のほか , リビアやカタールへ輸出され , トルコやイ キャビンには車長と運転手を含めて兵員 15 名を収容で ラクから引合いを受けているといわれ , 数年前にリビア き , これで戦闘重量は 13 , 000 ん 9 と軽く , 最大速度は 95 軍がエジプト軍と交戦したとき , エジフ。ト軍の戦車と砲 / h も出る ( 水上では 8 / h ) 。 火を交えたと伝えられている。 武装は , リングに装着する 12.7n 機銃 , 20E 砲装備の ターレット , 60E 迫撃砲 , 90m 対戦車砲っきのフランス E 11 ウルツ水陸両用車 製ターレット , 20E 対空砲 2 門っきのターレットなどか これは本格的な水陸両用車で , 装甲もじゅうぶんなう ら自由に選べる。 え , 特別装備をつければ , 海上でも走行できるというか すでに , フ・ラジルとリビア両国の陸軍に配備されてい ら , アメリカ海兵隊の L V T P 7 の小型版といったとこ て , その後も受注が続いている。 ろである。 E17 スクリ戦車洋 しかも , この車は単に APC , つまり兵員を輸送する ために使うという単純な考えで造られているのではなく カスカベルとウルツの経験を生かして , ェンゲサが新 指揮車や治安維持用の車としてはもちろんのこと , 対空 たに設計した装輪式の戦車がこの EE17 スクリであ 自走砲や装甲救急車などにも使えるように設計されてい 戦車というと , すぐ装軌車を思い浮 かべるが , この戦車は , コストダウン も兼ねて車輪を使い , ターレットはフ ランス製の揺動式 ( AMX13 と同 じ ) 洋のものを買ってとりつけ , 足ま わりはプーメラングと共用である。 そのうえ , ェンジンは同様にデトロ イト・ディーゼル製 53T という水冷 6 気筒 ( 5250CC ) で , スーパーチ ャーをつけて 2800rPm で 300 Ⅳを出す。 車体は , ウルツなどと同様に鋼板を 熔接して造られ , 鍛造のような大規模 冊 9 カスカベル。全長 6.2 第 , 全幅 2.5 町 高さ 2.3 78
プラジルのエンゲサ社が送り出す 軍用車輛とは BraziI Engesa's Military Vehicles 中島日出矢 フ・ラジルの話をここで持出すのは , 読者にとっては ほうだった。 この 90E 砲は , 実のところ , プラジルの国産ではな 意外かもしれない。 ベルギーのクッケリル社から製造権を得てライセン 南アメリカの果てにあり , 航空機も艦船もたいし く , たものを持たないブラジルには , もちろん戦車や火器に ス生産しているものである。 それが世界中を騒がせているのは , この砲がリビアへ もたいしたものがない。 送られると , そのままソ連へ筒ぬけに送られて , BMP この、たいしたものがないプラジルで , 軍用の新鋭 をはじめソ連の新型車に装備されてしまうのではない 車輛がここ数年のあいだに次々と造られて , 車輛専門家 のあいだではとっくの昔に注目すべき国になってしまっ かという推理があるからだ。 それを裏づける情報はたくさんある。リビアがソ連と 0 密接な関係にあることがひとつ。リビアにはソ連の技術 そのプラジルが世界を騒然とさせたのは , リビアがフ・ 顧問団がいて , すでにプラジル製のこの、兵器をみて ラジル製の車輛数百輛を発注したという一 ーユースであ いるのは確実なこと。 さらに , もっと重大なのが , ソ連が B M p 1 に装備す 具体的には , 同国のエンゲサ社がウルツまと薹カス る 73E 低圧砲の不調に悩まされているらしいというこ カベル両装甲車の注文を受けたことだが , 世界が驚が くしたのはむしろカスカベルに装備されている 90m 砲の と。これは , 公式にも非公式にも「否定されたことはな リビアへの輸出 て話題をまいた カスカベル装甲 車。主砲は 90 新 低圧砲 75
ラックを造ることが国家的な要請であったこ とが響いている。 それに , プラジルは昔からの縁でポルトガ ルとの関係が深く ( いまでも国語はポルトガ ル語である ) , ポルトガルの左派政権化のお かげでプラジルへ逃避したポルトガルの資本 や技術者が , 仕事をはじめるにも好都合だっ たという政治的な条件もある。 E E 1 5 と E 25 トラック ェンゲサのトラック・ファミリーには , E E 15 と E E25 の 2 つのシリーズがある。 E E 3 ャララカ。全長 3.9 宿 , 全幅 2.0 認 , 高さ 1 . 28 E E 15 は , コンパクトな 1.5 トン級 , ポン い」というまわりくどい表現になっているが , もしこれ ネット型のオン・ロードとオフ・ロードの両方に使用で が事実だとすると , カスカベルのリビアへの輸出は少く きる車で , ェンジンはべンツ製直列 6 気筒水冷の 0M352 ともソ連に優秀な対戦車砲製造のノウ・ハウを教えてし という 56958 のディーゼルである。 まった可能性がきわめて高い これに , 同じべンツ製 G40 という 5 速変速器が組合わ また , カスカベルかその類似車輛が , 将来ソ連で生産 され , サスペンションは前後とも半楕円リーフ・スプリ される可能性もあるのだ。 ングにデュアル・アクション式ショック・アフ・ソーバー いずれにしても , NATO 加盟国の戦略商品が間 がつく。 接的にせよ敵洋の手に渡ったことについては , さまざ 車重は 4100 ん 9 , 最大重量は道路上で 6600 , オフ・ロ まな憶測が流れているが , とりあえずここではこれを追 ードで 5350 ん 9 , ペイロードは道路状況によって変り , 12 ん 9 から 2500 と幅を持たせている。 わない。 ただ , プラジルという国が軍事物資を第 3 国へ売るこ つまり , E E 15 はオーソドックスで頑丈なトラックを とに対しては , きわめておおらかなことが改めて確認さ 狙って造られた 4 X4 車というわけで , 用途も一般の輪 れた。ェンゲサ製のトラックは各国が輸出をひかえてい 送のほか , 消防 , 給水 , 燃料輸送 , 救急 , 指揮 , 通信に および , 民間用では一般作業や冷凍車から , 囚人の護送 る南アフリカへも輸出されている。 などにも使える。 ライセンス生産から出発 このため , E E15 には 10 車種が用意され , 変速器はア ェンゲサ社の車輛市場への参入は , トラックからはじ リソン A T 540 という自動変速器 , ェンジンはパーキン スのディーゼルやシポレーのガソリン・エンジンなども まった。 まず , ェンジンやトランス ミッションのような複雑なも のは外国のものをライセンス 生産か輪入し , シャシーやポ ディを自力で開発して売り出 し , その成績を確かめたうえ で装甲車輛にも進出した。 装甲車輛もトラックと同様 に , 最初のうちは高い技術力 を要するところはライセンス 生産するか輪入した。 トラックから手をつけたの は , 工業力の遅れたフ・ラジル で , できるだけ外国に依存す る度合を低めたいことと , ア マゾンを含めて未開の道路が 多いこの国に , 最も適するト E 25 6 x 6 。軍民両用のトラックで , 工ンゲサ社の下地を造った 76
ノイ - ノン な設備を要するものは採用し ていない。 装備している主砲は 105E 砲で , 砲弾の装填はセミ・オ ートマチック式。射撃統制装 置は機械式と電気式のいずれ かを選べる。 ほかに , 同軸式 7.62E 機銃 1 挺と発煙榴弾 4 コを装備す る。 E 17 スクリ。全長 6.3 も全幅 2.6 鷹 , 高さ 2.8 宿 また , 要求によっては , 7.62 対空機銃 , レーザー式照準器 , 夜間視察装置 , 無線や 能で安いとなれば , もうどこに出しても恥かしくない インターコム装置などを積むことができる。 輸出商品となる。 ちなみに , 105m 主砲は毎分 8 発を発射でき , 砲弾は とりわけ , 他の武器輸出国のように , 政治的な立場に HE 弾 , 発煙弾 , 訓練弾など合計 23 発をターレット内に ついてとやかく文句をつけないとなると , 、死の商人 積み , 必要に応じては車室内にさらに 20 発を積むことが としての資格はじゅうぶんだ。 できる。 だいぶ , ぶっそうな話にはなるが , 世界各地の紛争地 車長は , ターレットのいちばん上にある 8 コのビジョ 域にエンゲサの軍用車輛がちよくちよく顔を出すような ン・ゾロックっきキューボラを使って 360 。の視界が得ら 事態も起こりかねない。いや , すでにプラジルは武器輪 れる。 出国の第 3 勢力として , 1978 年の調べでは , 輸出額で南 最大速度は 110 / h で , 航続距離は 600 もある。 アフリカに次ぐ世界で第 12 番目の地位を占めるまでにな っているのである。 こうしてエンゲサ社の車輛をみてくると , どれも品 - 質が高く , しかしコストは非常に安くできるように考 . えられているのがわかる。もちろんこれは , 第 1 にフ・ラ ジル陸軍の要求にそってできあがったものだが , 高性 0 〇 0 0 カスカベル装甲車。砲は最新型の 部新で , 上にはレーザー・レンジ ファインダーの籀が乗っている
を持たせてある。 最大速度は 100 / h , 最大 障害物乗越し高さは 40 , 最 大登坂傾斜度は 65 % , 側方傾 斜角度は 27 。 , 最大航続距離は 約 600 を。 E E25 には 4 x 4 と 6 x 6 の 2 種類があり , 6 x 6 のも のは , フ・一メラングとよばれ る。基本的には EE15 の大型 版で , ェンジンはべンツの 0 M352 という直列 6 気筒 5675 cc のものを装備し , のちに述 べる 3 車軸の装甲車と足まわ りを共通にしている。 65 % , 側方傾斜角度は 30 。 , 最大障害物乗越し高さは 40 E E 3 ャララカ装甲車。ェンゲサ社の名前がアラビア語て書かれている ! E E25 は , ペイロードは 2500 ん 9 から 5000 ん 9 と E E15 の 2 倍あり , 最大重量は 6 x 6 が 11 , 8 開た 9 , 4 x 4 が 10 , 4 00 た 9 。 最大速度 100 を / h , 航続距離 68 , 最大登坂傾斜度は 望に応じてオプションをたくさん用意し , 軍用と民間の 型は 6 x 6 で 11 車種 , 4 x 4 で 13 車種あり , 顧客の要 C 加 0 E E 1 1 ウルツ。全長 6 ・ 0 町全幅 2.5 町高さ 2.7 第 刊 3 ャララカ偵察装甲車 両方の型があるのは E E 15 と同じである。 それにもかかわらず , 3 人の乗員を保護するための装 てすむ。 け多くしている。このため , 補用品や整備の費用も安く 品を共通化し , 商業車市場で入手できる部品をでぎるだ とり入れている反面 , コストを下げるためトラックと部 輛技術が用いられ , 世界の偵察車や装甲車の流行、を 4 x 4 の軽偵察装甲車を発表したが , これには最新の車 ェンゲサは , 最近になって E E 3 ャララカとよばれる 甲板はパイメタリック , つまり 2 枚の金属を貼り合わせ たものを特別に開発してとりつけてあり , この種の車輛 のうちでは最も乗員の安全度が高いといわれている。 機動力はすぐれているし , 武装は 12.7n 機銃から 60E 迫撃砲 , ミラン対戦車ミサイルにいたるまで幅広く選択 できるので , 非常に魅力的な装甲車である。 ェンジンは , べンツ製の水冷直列 4 気筒デ ィーゼルで , 出力は 102 田。 12.7 機銃装備 のときの車輛重量は約 508 ん 9 で , これで最大 速度 110 を / h , 航続距離 600 である。 3 名の乗員は , 上部の 3 コのハッチと側面 の 2 コのハッチを使って短時間に出入りがで き , 操縦手には偵察時に防弾で折畳み式の大 型風房を前に立て , 戦闘時には右に折畳んだ ハッチをかぶせられるようになっている。 ただ , EE3 はまだ原型のテストがおわっ たばかりなので , 実用性能や売れゆきについ てはなんともいえないが , プラジルがこのよ うな車を自力開発できるということには大いに注目した E 9 カスカベル装甲車 い 77 ェンジンは車体の後部にあり , デトロイト・ディーゼ はソフトな材質を使っている。 車体は特殊鋼板を熔接して造られ , 外部は固いが内部 用いていて , 確かに魅力がある。 で , 装甲は EE3 と同様に , くイメタル式の立派なものを や構造を簡易化しているので値段が安い。整備も容易 けられ , それでいて商業車と同じ部品を使ったり , 機構 同軸機銃のほか , レーザー測遠機つきの照準器がとりつ われているもので , 大型ターレットには 90E 砲と 7.62E これは , 装甲車として世界のトップレベルにあるとい
射機などを備えることができ , 警察 や軍の治安維持用に好適である。ェ ンジンや機械部品については公表さ れていないが , 同社がスペイン陸軍 にリアェンジン式の軍用トラックを 納入しているので , これと同じか , 共 用部品が非常に多いと考えられる。 ◆ XM 1 戦車の最新の開発状況 去年はさんざん物議をかもしたア メリカの XMI 戦車の改修評価テス トが , いまフォート・ノックスで昼 夜兼行で続行されている。テストに 使われている X M 1 は 3 輛で , それ それの戦車に 2 組のチームが交代で テストを行い , 整備や修理は原則と して夜間に行われている。 試験中の x 1 A 2 プロトタイプ。砲塔はカスカベル装甲車と同じものを積む 改修前には , 68 , 500 マイルのテス トで 47 カ所の欠陥が報告された X ◆プラジルの新型国産戦車 新作車が造られている。これら 2 輛 1 だったが , 今度のテストでは , 最 これまで , 名前は知られていなが の試作車は国防装備局の手でテスト 初の 6482 マイルで , 締め方がまずか ら , 実体がほとんど明らかになって 中で , 今年中には陸軍機甲戦闘学校 いなかったプラジルの国産軽戦車 , ったポルトが外れてエンジンに吸い に移されてさらにテストが行われる X 1 A 2 が , 最近報導関係者に公表 予定である。 込まれ , 1 段目のコンフ。レッサーを 破損しただけ。その後 , 去年 8 月中 この他にも , 車体を前後に分離し された。 旬には 2 回目の故障を起こしたが , はじめて確認された XIA2 の重 てジョイントで結合した画期的な戦 秋には 3 輛とも 680 マイルを走行し 車 ( 砲とミサイル装備 ) なども検討 量は 20t で , 90E 砲を主砲としてい 対象になっているようだ。現在の計 る。 1 月号の「戦車世界地図」にも ている。 画では次期 MBT の本格開発は 1983 陸軍は , これで最初は 145 マイル あるように , フ・ラジル陸軍は他に M 年にはじめられる予定だ。 (N) だった MMB F ( 破損平均走行マイ 4 , M3 A 1 , M41 を持つだけだか ル ) を 272 マイルに上げ , ゆくゆく ◆スペインの新装甲車 M A C Ⅱ ら , 軽量とはいえ X 1 A 2 はプラジ は 320 マイルまで持って行きたい考 クライスラー・スペイン社は , ア ル陸軍のなかでは最も強力な戦車と メリカの V 150 コマンドと外観が非 なる。その他のデータは最大速度 60 えである。 陸軍の XM 1 調達計画は 7050 輛だ 常によく似た装輪装甲車の生産を間 川 , 航続距離 600 登坂カ 60 % が , 目下のところは 1980 会計年度で もなく開始する予定である。 となっており , これを信ずる限り , 110 輛の生産が認められたにすぎず , じゅうぶん水準に達しているといえ この車は , 車体の前後左右に厚い 81 年度も 352 輛またはそれ以下にと る。乗員は 3 名で , 外形はかなりコ 防弾ガラスを張って視界を良く , 車 どまる見とおしで , 量産と実戦配備 内から射撃がでぎるように数コのス ンパクトだ。 リットを持ち , ゲリラ鎮圧用に拡声 は計画より大幅に遅れている。 ◆スエーデンの新戦車開発 スエーデンでは S 戦車の後継とな る M B T について , 少くとも 3 種類 の案を検討中で , すでに一部はテス トに移っている。 びとつの案は S 戦車の発達型で , 乗員配置を変更し , 自動装填機構を 改良した試作車が製作されている。 もうひとつの案は S 戦車の 105E 砲 と自動装填機構を揺動式砲塔 ( ただ し AMX13 のものとは全く形式が異 る ) に移したもので , 新形式の砲塔 をマルダー MI CV の上に搭載した ロ ロ 0 クライスラー・スペインが発表した M A C Ⅱ装甲車 1 1 0