塊である鎧の破壊は困難なのだ。つまり金属鎧は防御力は高いけど、 すか ? 」 「違うわ。そうなのよ。私の鎧は物理的な強固さに特化しており、その他が低い物品だ ) ということだ。 そのためアルペドの受け流しによって金属特有の防御力を無視して直接 の力は皆無なの」 それは確かに眉を顰めるだけのことはある、とアウラは思った。 ダメージが入った場合、意外に簡単に壊れる可能性が出てきてしまう。 確かに、タンク役として相手の攻撃を受け止めるアルペドが着用する鎧鎧が破損してしまえば防御能力の著しい低下によって、じり貧に追い込 に、優先されるのは強固さであろう。しかし、それ以外の能力が皆無といまれるのは間違いないだろう。切り札とは名ばかりの、一時しのぎの技で うのは問題だ。例えば炎や冷気などの属性攻撃に対する耐性。または魔法しかないとアウラには感じられた。 に対する耐性。他にはアルペドの特殊技能を強化する力など、リソースを「そうね。普通の鎧だったらすぐに壊れて弱体化するのがオチね。でも、 割くべき先は色々とあったはずだし、特化するよりもそちらの方が相対的この鎧を調べたシャルティアはよく分かったでしよ。私の鎧がどういった に強いだろう。それでも ことを考えられて作られた物か。更には切り札は大抵一日に一回しか使え 「それでどうしたの、アルペド。至高の御方より恩寵された鎧に関して不ないけど、私のこの力は三回まで使える」、 「ん ? 強固なのは単純に鎧のを上げて、三回分抑えきれるようにし 平でも言うなら : : : 冗談どとでは済まないよ ? 」 ーーー至高の存在に対する不敬は許される行いではない。 ているんじゃないの ? 」 アウラばかりか、シャルティアの目も鋭く険しい。 アウラの質問にアルペドが答えるよりも早く、シャルティアの声が上が 「違うわ。勘違いしないで。そういう事が言いたいんじゃないの。まず最 0 った。 初にこの鎧の力は私にとって最適な物よ。というのは、私は切り札ーーい 「なるほど ! だからでありんすか ! 」 アルペドがニコリと笑い、疎外感にさいなまれたアウラはシャルティア え、切り札っぽいものを保有しているわ」 習得する前提条件が厳しいクラス職には特別な特殊技能が存在する場合を突っつく。それがどういう意味を持っているかを理解したシャルティア は説明を始めた。 がある。それを切り札と呼ぶこともある。例えばシャルティアであれば、 攻撃力や防御力が自分と同等の能力を持つ、自らの分身を作り出す力だ。 「この鎧は一見すると一着のようですけど、実際は三層式の鎧になってい ちなみにアウラは保有する職に就いていないため持っていない。 るんです」 「私の切り札は自分が受けたダメージを鎧に流すスキル特殊技能。その力ああ、とアウラは声を上げた。つまりは三回までなら壊れないバリアが を使えば、どれほどの一撃を受けてもーーそう、それがアインズ様が誇るあるようなものだ。 最高位魔法、第十位階を超越したところにある超位魔法を打ち込まれたと「そういうことよ、アウラ 9 分かって貰えたようで嬉しいわ」 しても、無傷で済ませることが出来るわ。ただし、その分のダメージは直「なるほど。つまりアルペドの切り札を使用することを前提に最適化され 接鎧に入るので、強固な鎧でなければ一、撃で壊れるというマイナス面も持た鎧ってことなんだ。流石は至高の御方が作られた一品だけあるね」そこ でアウラは疑問に思う。「それでどこに問題があるの ? 」 ち合わせているけど」 「だから、ちょっと慌てないで。ここからが本題になるんだけど、その前 「うーん ? そのスキル特殊技術って強そうだけど微妙だよね」 基本的に鎧などの魔法の武具はスキル特殊技術などの破壊技を使用されに鎧の説明をもう少しさせて。まず最も内側の鎧が液体にも似た同化鎧。 なければ破壊されない。さらには金属は耐久性が高く「純エネルギー 私が本当の姿を晒した際に融合し、肉体の硬質化を行うための鎧ね。その 雷や炎、冷気などーーへの抵抗力が非常に高い。そのため、通常、金属の次がスーツアーマーともいうべき全身鎧。それで最も外側が、そのスーツ
が振るわれ 1 ーあ、ロにはやはりリングギャグをかまないと駄目でありん「はいはい。聞いてるから。さっさと喋ってね」 その間もアウラの手は止まらない。ケーキを倒したりしないように慎重 しようかえ ? 」 これ以上の二人の会話は不味い。変態と変態がかみ合って、何処までもに自分のお皿にケーキを取る。倒れることによって、皿に生クリームが付 くなんて勿体ないことはできないのだ。 進んでいってしまう。壁を突き抜けられたら、誰が修復することになると いうのか。 「全然真剣みがないんですけど : : : 」 アルペドの口調にじとっとしたものが混じり、そこでようやく仲間思い 恐らくは自分だとアウラは賢くもそう判断し、頬を若干赤く染め、目を なアウラは手を止める。決して自分の皿にケーキを載せ終わったからでは トロンとさせたアルペドが何か言うよりも早く、ロを開く。 「 : : : 違うっていうの。あなたたちの面倒を見るのがあたしの役目だと思ない。 「話す相手ならシャルティアがいるじゃん : ・ : ・。面倒くさいなあ、もう。 われているの。ねえ、なんで ? 」 「そうよね。この中で一番小さなあなたがその役目を担うっていうのはおそれで、何 ? 」 「ええ。実は私の鎧に関してなの」 かしいわね。分かったわ。なら、この私がその役目を行ってあげる」 アルペドが豊かな双丘を突きつけるように、胸を張った。対抗するよう「鎧 ? それがどうかしたのでありんすか ? 」 にシャルティアも同じように胸を張った。年齢には似合わないような盛り「話す前に聞きたいんだけど、貴方たちは私の鎧に関してどこまで知って 上がりだが、その正体を知っているアウラの心中には憐みと悲しみしかこいる ? 」 アウラはシャルティアと顔を見合わせてから交互に口を開く。 み上げてはこない。 「至高の御方が作られた鎧なんでしょ ? 」 「あのさ、嫌味が通じないの ? 」 芝「貴女が持っ唯一の神器級マジックアイテムと聞いたことがありんす」 「嫌味なの ? 」 マジックアイテムは含まれたデータ量ーーーこの世界においては魔カーーに 素直な問いかけにアウラは脱カから肩を落とし、くたびれ果てた中年サ ラリ 1 マンのため息を漏らした。 よって区分される。下級から始まり、中級、上級と続き、その最上位が神 ( ・「 : : : もういいよ。それで結局なんのためにあたしたちを呼び出したのさ」器級だ。 「そうでありんすね。わたしもそれは聞いておりんせん。一体、ナニかあ「そう。二人の言う通りだわ。私の鎧 " ヘルメス・トリスメギストス″は 神器級マジックアイテムだわ。ただしーー」 ったんでありんすか ? 」 アルペドが空間から頑丈そうで、分厚そうで、強固そうな黒色の鎧を取 「実は : : : 多くの者には言えない、相談事があるの」 普通であればナザリックの最高位である守護者統括が、各階層のり出す。鎧は騒がしい音を立てて坐した。 「シャルティアはマジックアイテムの能力を解析する魔法を使えたわよね ? 責任者である守護者を呼び出すからには重要な案件だろうと思うだろう。 この鎧に掛けてくれるかしら ? 」 しかし、それは何も知らない者の浅はかな考えだ。 アルペドをよく知るアウラは視線を逸らすと、テープルの片隅に置かれ「構んせんでありんす」 シャルティアが椅子から立っと鎧のところまで行き、魔法を発動させる た銀に輝く三段のケ 1 キスタンドに手を伸ばす。 料理長の作ったたくさんのケーキを口に入れれば、辛い現実から逃避でと眉をめた。 きるし、アルペドの部屋に来たのも無駄ではなかったと自分を慰められる。 ( 「 : : : 何これ ? 神器級の割に・ : : ・性能が。これはもしかして、みなの能 力が見破らりんせんように、阻害系魔法でも掛かってありんすんでありん 「ちょっと ) アウラ。聞いてくれないの ? 」
められるのは色気と性能。その二つを兼ね備えた鎧よ ! 」 アーマーの各所を覆って防御力を増している追加装甲鎧」 あまり関わりたくなかったが、このまま放置しておくのはやはり将来の 「ふむふむ」 「で、追加装甲鎧。全身鎧。同化鎧と順番に壊れていくわけなんだけどーー」自分に迷惑がかかる。嫌なことはさっさと済ませるに限る。。 ) 。どんな魔法の鎧を着ていたって、。露出部 アルペドが息を吸い、アウラは・こくりと唾を飲んだ。一体、どのような】「そんな鎧着てどうすんの 分を攻撃されたらダメージ増すよ」 問題があるのかと思って。 「でも ! でも ! こんな紐水着アーマーであれば、アインズ様の子供を 「ーー鎧が壊れても露出度がアップしないの ! 」 T 身ごもれるチャンスが ! 」 え ? 」 アウラは耳を疑う。 アルペドの指がの形に動いた。 隣で「なるほど」と感嘆しているシャルティアは無視して、もう一度聞「それ鎧じゃないよ : : : 形状的に」 「なら、逆転の発想でありんすえ。透けて見える系の鎧はどうでありんし きたいとジェスチャーを行った。 「良いかしら ? 鎧が壊れれば露出度がアップしていくべきでしょ ? 確よう ? 大事な部分だけ隠れて見えないような」 かに虫けらどもに見せる肌はないけど、私はアインズ様の身を守る役とし「行ける ! 」 てすぐ傍に控えることが多いわ。ならばアインズ様を魅了するためにもそ どこに行くんだろう、この二人は。いや、もうどこまでも行っちゃえば ういった露出度の高い鎧は必須 ! 」 いいや、などと思いながら、アウラははあ、と息を吐き、首を回した。、も 0 はやこんな話には参加していたくはない。 常識じゃない、という面持ちのアルペド。 「素晴らしいでありんすえ。アルペド ! あなたの言ってありんすことは「問題が起こったらデミウルゴスに任せるから」 この場にはいない同僚に願うと、アウラは自分の皿によそったケーキに 間違っていんせん ! 」 フォークを刺す。 馬鹿が増えた。 アウラは悲しくなってきていた。なぜ、自分はあれほどまでに真面目に ケーキを口に含めば、控えめな甘さが疲労した脳に優しく染み渡ってい 彼女の話を聞こうと思ったのだろうか。 バカだったなあ、という気持ちで遠くを見るように、興奮しだした二人「あー、美味しい」 を眺める。 既に鎧ではない鎧論について熱く意見を交わしている仲間の姿はアウラ の視界には人っていなかった。ただ、そんな鎧を作らされる鍛冶師が大変 「私が持っている鎧はこれだけで、ビキニアーマーとかハイレグアーマー だと同情しただけだ。」 みたいな装備って持ってないのよ」 「確か、ペロロンチーノ様から頂いた服などの中にはあったはずでありん「 : : : 誰かこの二人の脳みそに常識とかを人力してくれないかなあ。無理 だろうなあ。アインズ様にお願いするのは失礼だし」 すえ。でも、鎧としての効果はたいへんに頼りない物でありんした」 三ロで一つのケーキを食べ終えたアウラは次なるケーキへと手を伸ばす すっ、と熱が冷めたような表情をアルペドが取った。 「それでは駄目だわ。アインズ様の目を楽しませるのと、アインズ様の身のだった。 辺をお守りする盾。その二つの役目をこなせなくてはならないの」 馬鹿さはすぐに戻ってくる。 「分かるわよね ? シャルティアあなたの鎧も露出度皆無なのだから。求
すメル 行は をは第 ことはす第》 ふ ( つまり : . すまなカ アルペド ふあ・ : あ・ つおア 、モモンガ様
ひとりになりたい : しかし卩 アルペドは」、つ 1 レよ、つ・・ このままじゃ」 タブラさんに、 かお・む 顔向けできない・ 、物第気 あっ 無事だったか !
わたし ムよ、、ゞ 手 , しカカ いたしましよう ? ・ 月リぇ は わたしもと ・ : 私の元へ来い 、つむ : そうだ ! 生きている : さわ 触るぞ ・まさか : 脈がある : : アルペド
寺 ( 0 塹お。うさっ つぎ 次は こちらの番だ ・ : 行くぞ ? ばん 全天使で 攻撃を 仕掛けろ ぜんて「んし 急げ ! ほんとう 本当にお遊びが 好きな奴らだ : やっ あそ : アルペド 下がれ
何かこさい ましたか ? そうだアルペド : 今一瞬 すごい顔に なってたような : しゅごしやとうかっ 守護者統括である ひつよう お前にも必要なアイテムだ まえちゅうぎ お前の忠義にも感謝し わた これを渡しておこう かんしゃ わたししか では : 私は叱られないうちに 九階層に戻るとしよう : 感謝いたします かんしゃ
し物んび 準備に時間がかかり もら・・わけ 申し訳ありませんでした じかん いや・ : 実に 良いタイミングだ ・アルペド じっ セ、なスに何を 聞いてきたのだ : : ト この村を救う : その生きている かとうせいぶっしよぶん 下等生物の処分は 」 , フなさいます、か ? むらすく お手が汚れると いうのであれば わたし おこな 私が代わりに行いますか よご
かってナザリック地下大墳墓を作り上げた至高の四十一 ( 人と言われるギを知っているアウラに喜びの感情はない。 ルドメン六ーたちは各階層にそれぞれの特徴を作った。例えばこの階層は「きっと眠いのね。悪魔である私やアンデッドであるあなたとは違って、 大森林、例えばこの階層は大氷河という具合に。言うなればそれは、十個闇妖精であるアウラに睡眠は必要でしょ ? 」 - の世界を墳墓に閉じ込めたようなものであった。 なるほど、とアウラの心を知らないシャルティアは頷く。 ではナザリック地下大墳墓第九階層はどういった特徴を持つか。 「納得だわ。アウラもまだまだ子供衆。眠くなればそういう顔にもなるわ え。 それを表現するのであれば「神々しいまでの王城だろう。 それにしてもアルペド、悪魔には睡眠も飲食も必要じゃありんせ そんな階層に私室を与えられているナザリック地下大墳墓守護者統括んけれど、取ることもできるのよえ。なんでかしら ? 」 ーー , 全の最高位に坐する″白亜のサキュバス淫魔。アルペドの部屋は、「暴食も怠惰もーー・古来より七大罪は悪魔にとって必須不可欠ということ かってこの地を支配し、今ではたった一人しか残っていない至高の存在たよ。まあ、メリットもないから取る必要の方がないんですけどね」 ちの私室と同じ作りであるがために、高級ホテルのペントハウススイート パフ効果のある食事などを取ったとしても悪魔には効果は発生しない。 のように幾つもの部屋を内包した豪華なものだ。 貴重なアイテムをゴミ箱に捨てるようなものだ。 それは私室というよりは家と言った方が正解かもしれない。 「はあ」 部屋の一つにはグラウンドピアノが置かれ、小さなバーカウンターさえ 二人に聞こえるように、ため息をアウラは吐き出す。 もある。キッチン、べッドルーム複数、浴室も二つという具合だ。 話題が逸れつつあった二人が、同時にアウラに顔を向ける。アウラは半 更に調度品から壁紙に至るまで、華美でありながらも、決して目を疲れ 0 眼のまま、二人に剣呑な視線を送る。 させることのないように計算されており、見る者の目を楽しませると同時区「確かに時間的には夜だけど、別に眠いわけじゃないよ。もっと違う理由 に、感嘆のため息すら吐き出させた。 芝なんだけどさ。この前、デミウルゴスと会った時に、『アウラ。あの二人 とはいっても、全ての者がそうであるというのは難しい。 が暴走しないように、しつかりと手綱を握ってください』なんて言われた 特に、現在、部屋の一つに置かれた白いテ 1 プルクロスの掛かったテー んだよね。可笑しくない ? 」 プルの上で手を組み、そこに顎を乗せた少女の心はこれっぽっちも晴れて デミウルゴスの口調を真似たアウラのその喋り方はよく似ていた。ゆえ はいない。半分しか開いていない目の奥には冷たい輝きが宿り、美貌と相に、その部屋にいた三人の脳裏に第七階層の守護者であり、主人アインズ まって切れるような冷徹さが宿っているように見えた。 ・ウール・ゴウンの命を受けて頻繁に外に出ている悪魔の顔が浮かぶ。 この部屋を訪れてからずっとその態度を取り続けている仲間の姿に、第「ええ。確かに可笑しいわね」 一階層から第三階層までを守護する吸血鬼、シャルティア・プラッドフォ 「でしょ ? 」 1 ルンは問いかける。 アルペドの肯定を受け、我が意を得たりとアウラは頷く。 「ど、どうしたんでありんすか、アウラ。目がアインズ様に逆らった虫け「手綱を取ってもらうならアインズ様よね」 らの指を引きちぎる時みたいになってありんすわよ ? 」 質問に答えたのは、尋ねられた第六階層を守護するダークエルフ闇妖精耳を疑うように、アウラはエルフ特有の人間とは遥かに違う、自らの長 ではなく、部屋の主人であるアルペドだった。黄金の瞳に柔らかい光を宿い耳を触った。 し、慈しむような眼差しをアウラに向けた。 「ああ、そうでありんすね」アウラの困惑を無視し、シャルティアの同意 その眼差しは女神のどとくだが、そんなものは外面にしかすぎないことは続く。「鞭を片手に上に乗ってもらうなんてーー最高でありんすね。鞭