アメリカ - みる会図書館


検索対象: おんなの仕種
6件見つかりました。

1. おんなの仕種

るから、「ガップレッシュウ」ということは、「神があなたを祝福した」あるいは「神があ なたを清めた」とかいうことになるのだろう。 アメリカではくしやみをすることは神様に祝福されたことになるのだ。あるアメリカ在 ささや 住の英語の達者なばくの友人は、この英語を「神があなたに囁いた」というふうにも言っ ていた。 そんなこともあって、ばくも六番街のデザイン・スタジオにいた時、うしろのデスクで 仕事をしているジェニファ 1 がくしやみをする度に「ガップレッシュウ」と声を掛けた。 もう一つ余談。今度は映画の話。 ロマン・ボランスキー監督の作品に『袋小路』という映画があって、これがなかなかい もしかしたら彼の作品のなかで一番いいかもしれないのだが、ここにフランソワー ズ・ドルレアックという女優が出ている。この女優はカトリ 1 メ・ドヌーヴの姉で若くし て交通事故で死んでいる。 フランソワーズ・ドルレアックは、とてもしなやかでエロティックな身体をしており、 そんな彼女がべッドから全裸で立ち上がりぎわ、小さくくしやみをするシーンがある。演 出ではなくほんとのくしやみみたいで、「クシュン」とやった時、彼女のあばら骨が動く。 これが演出だとしたら、やはり口マン・ボランスキーという男はただ者 ( もちろん天才な のだが ) ではない。 あんなにセクシーな女のくしやみは見たことがなかった。 くしやみをする

2. おんなの仕種

驚きの擬音というのはいろいろある。漫画などにもよく出てくる。 どっきり % ぎよっ ( これはひと頃一世を風靡した ) 。 きゃー ( これは女性の驚きの声の古典で、悲鳴とも言われている ) 。 その他にも、さまざまなコメディアンや漫画家たちの創作した驚きの擬音はある。「シェ ー」「がびよーん」「あっと驚く為五郎」「ウォップ」、アメリカ人の女性のよく発する「ワ オ」なんていうのは発する時の唇の形までうかんできて可愛い。その点、近ごろの日本女 生の「やだあ」とか「えーええ」「うっそおー」は唇の形を想像してもやや品生に欠けるよ うにおもえてならない よく街角などでも女性は驚きの声を発する。キングコングが現われるのだ。 「わきや 1 つ」 さがし 何ごとかと立ち止ると、女性が二人で向い合っている。キングコングではない。 求めていた仇討ちの相手が見つかったのでもない。銀座の松屋横の公衆電話から出てきた 1 5 7

3. おんなの仕種

老若男女を問わず趣味は何かと訊かれたりすると、散歩と答える人が多いらしい。散歩 ねえ、散歩って趣味かなと、ちょっと考えてしまうことがあるけれど、訊かれた本人が答 えるのだからこれは仕方がない。 そう言えば、ばくの友人に、某大手商社の人事部長を務めている男がいるのだが、先日 彼に社内報を見せてもらったところ、趣味の欄があって、ここでも散歩と答えている人が 多かった。 そんなこんなで、今回は散歩について書いてみる。 ばくの仕事場のある青山は、かっては住宅街だったのだが、今はすっかりオフィス街に 変わってしまった。散歩といっても、オフィス街の場合は、ランチ・タイムを終えた が、数人でプティックや本屋などを覗いて歩く散歩で、まあウインドー・ショッピングに 近い。それはそうと、ウインドー・ショッピングという英語、もちろんアメリカからの一言 葉だろうが、なかなか的を射ていて面白い 散歩というのは、これという当てもなく、ただぶらぶらすることとばくはおもっている けれど、これには意外と深い哲学が隠されているようで、さぐっていくとどんどんと深み に人っていく。

4. おんなの仕種

「一つ、 1 ・」 何に対する「うそー」かはわからないが、それと女性どうし腕を組むこととは何の関係 もない。アメリカのゲイのカップルのパレードなどの写真を見ると、男性どうしや女性ど うし手をつないだり、腕を組んだりしている光景があるが、おそらく日本ではそういった ことから腕を組んだりはしないだろう。むしろもしもレズビアンだったりしたら街なかで そんなところは見せない。 ばくはある時、数人の女性に、なぜ女の人は大人になっても女性どうし腕を組んで歩い たりするのか訊いたことがあるが、その結果、これといった回答は得られなかった。 ①なんとなく、いっしょに歩いていると相手にくつつきたくなって。 ②別に変な意味ではなく、腕を組んで歩くと気持ちいいから。 ③癖みたいになっている。 ④腕を組んでいると安定感があって歩きやすい。 ⑤恰好いいし、一人でいるより男の人へのアピールが強いようにおもえる。 ⑥仲よしといると、自然にそうなる。 ⑦べたべたするのが好きだから。 ⑧女どうしで抱き合いたいから。 と、まあいろいろと理由は出たが、ここでの⑧は嘘で、ばくがイタズラで書いただけで す。 170

5. おんなの仕種

ステスというわけだ。しかも彼女はホステス業のなかでも特攻隊と呼ばれる危険な役も 時々こなしているらしい。特攻隊というのは、お客といっしょに帰り、場合によっては一 夜を共にすごしてしまう。ホステス業界のなかでは、いっしかそんなこともしてしまう女 性をそう呼んでいるという。一年前、婚約までしていた彼が他に女をつくり破談されたこ とが原因で、どうもグレたらしいのだ。そんなことはともかく、彼女は今、下着に凝って いる。それもちょっと派手目というか、見せる下着に凝っているのだ。いつも買い求める のは、新橋の高速道路下のショッピング・センターにある店。 姿見の前で、下着のファッション・ショーさながら、あれこれと着替えていると、身体 が熱くなってきて時間の経つのを忘れてしまうらしい わたしってふしだらかしら、とふとおもう。 困ったな。まあつづけよう。 つい最近、大森に本社を移した外資系企業で働く篠木まゆみさん三十五歳、茨城県出 身 ) の一人でいる時も変わっている。じっと窓の外を見たり、消えている (--* のプラウン 管を見つめたりして泣くのだという。彼女の自慢は黒目がちなきれいな瞳だそうだ。 「君の目って、エマニュエル・べアールみたいだね」 これはアメリカのシアトルから出張できたコンピューター会社のアラン・ギャラガー研 究員に言われたセリフらしい。 「時々泣くとね、目のなかの汚れが取れてきれいなお目々になるんですよ」

6. おんなの仕種

まだ成田空港がない時代、広告代理店で働いていたばくは羽田空港に取材に行ったこと ・ショップで休んでいた。すぐ隣のテ 1 プル があった。その時、少し疲れたのでコーヒー に日本の若い女性と、多分アメリカ人とおもわれる中年の紳士がこれといった会話もなく 向い合っていた。これといって気にしていたわけでもないが、二人の会話の少ないことが うりざねがお ちょっとだけ気にかかった。女性の方は瓜実顔で好みだった。 しばらくして、ばくはカメラマンと二人で見送りゲ 1 トに出た ( 当時、羽田空港の見送 りゲートは屋外にあった ) 。八〇メートルほど先に、これから離陸するらしいパンナム機が . ショップ あって、乗客がタラップを上って行くのが見えた。ふと横を向くと、コ 1 ヒー の女性がすぐ隣に立って、じっとパンナム機を見つめている。 ああ、あの外国人を見送りにきたんだな。 ばくはそうおもってパンナム機に目をやった。おもったとおり、中年の紳士が茶色い革 かばん の鞄を持ってゆっくりとタラップを上っていった。女性はわずかに右手を振った。 ばくは今でも彼女のあの涙を忘れられない。 中年紳士はタラップを上りきると足もとに鞄を置き、見送りゲートに大きく両手を振っ たのだ。ばくはおもわず隣に立っている女性を見た。一瞬、彼女が微笑んだかのように見