欠伸 - みる会図書館


検索対象: おんなの仕種
10件見つかりました。

1. おんなの仕種

デートなどした場合、待ち合わせ場所に行くと彼女の方がすでに来ている。悪気がある わけではないがちょっと見ていようと、これからいっしょに食事をするはずの美しい彼女 の姿をもの陰から見つめる。 すてきだなあ。 などとおもっていると、突然はじまったのだ。顎がはずれてしまうのではないかとおも うほどの大欠伸。 と、 いうことで、少し専門的にこの欠伸というものを考えてみる。 一般に欠伸は眠い時や退屈した時に起る無意識的な開口動作ということになっている。 普通、深い吸気を伴う。口を大きく開けると上下の顎の骨の間に張っている咬筋 ( 歯を咬 み合わせる働きをする筋肉 ) が強く引き伸ばされる。そうすると咬筋のなかの筋紡錘 ( 筋 肉の収縮を感知する微小な感覚器 ) から多くの感覚の信号が脳へ送り込まれるのだそうだ。 結果、欠伸は頭をはっきりさせる反射的動作ということになる。人間以外の動物も欠伸は ゝ 0 小 するが、その生物学的意義は人間と同じだという。が、くわしいことはわからなし も猫や犬が欠伸をしているのを見たことがある。もちろん犬や猫はロをおさえて欠伸をし たりしない ( するのかな ) 。 これで欠伸が、頭をすっきりさせる現象だということがおわかりいただけたとおもう。 ばくは女性の欠伸は決して嫌いではない。酒場などで、眠そうに欠伸をしている女性を よく見かけるけれど、あれはあれで可愛いとおもう。会社の上司に誘われて、あるいは仕 伸をする 1 5 1

2. おんなの仕種

「欠伸、何、それ」 「ひでえ顔すんだよ。彼女。もうさ、ぐおーんって、顔が縦に伸び切っちゃってさ。目は 吊り上がっちまうわ、とにかくゾンビだ」 そこまで言わなくてもいいのにとおもったけれど、ばくもちょっとだけその村山このみ という女性の欠伸を見てみたいとおもった。 男のなかには、美形の顔の女性の崩れた表情に異常に興奮する性癖を持つものもいるの でくれぐれも気をつけるように。正面きっての欠伸は禁物です。もしも欠伸が出そうにな ったら、そっと掌かハンカチを当てましよう。人前で欠伸をしてしまう、あなたはとても いい人だとおもうけれど、やはり口のなかを見せるのは歯科医かロ腔外科の先生くらいに しておいた方がいい 伸をする い 5

3. おんなの仕種

先日、退社時刻の西武池袋線で眼鏡をかけた瞬間、前の座席の二十六、七の風の女 性が「ふああーああ」とやったのでおもわず見つめてしまった。 欠伸である。 あまりにもあけすけにやったので、虫歯を治療した銀色の金属まで見えてしまった。右 奥の方に二本つづいていた。 別に見ようとしているわけではないが、ばくはこのように欠伸 ( 考えてみるとこの漢字 もなんだかおかしい ) をしている女性とよく出合う。 欠伸に関しては、よく子供の頃から出そうになったらロを手でおさえなさいと、うるさ く母親に言われてきたので、反射的にロに手がいくのだが、どうもその点が徹底していな い人が多い。スポーツ選手くらいならなんとか「ふああーああ」とやっても我慢できるの だが、若い女性はどうかなとおもうのだが : ちなみにスポーツ選手で大欠伸がよく似合うのはかって読売ジャイアンツにいた長嶋一 茂氏である。 誰も見ていない。 こうおもうのが女性が大欠伸を目撃される原因だろう。誰かがあなた を見つめているのである。 150

4. おんなの仕種

欠伸をする ムおうあ

5. おんなの仕種

事の関係上、仕方なく酒場について来たけれど内心は早く帰りたくて仕方がない。彼に電 話をしなくてはならない。電話はしたのだが、約束の時間より二十分ほど遅れてしまった のだ。電話したら彼の電話はコール音をくり返すばかりだった。留守電もはずしてしまっ ている。時間にうるさい彼だから、怒っちゃったのかもしれない。、 とうして遅れてしまっ たのか、その時間に課長がカラオケを二曲も歌ってしまい席を外せなかったのだ。 こんな経験をしたことのある女性は多いとおもう。多くはないにしても数人はいるはず ああ、とても眠いわ。 彼女はおもわず欠伸をする。こうなると気分は幼稚園児のようになってしまい、ロをお さえるどころではない。大きく、「ふああーああ」とやってしまう。ほんとうなら両腕もぐ ーんと伸ばし、両脚もぎゅーんと伸ばしたいのだ。 先日地下鉄丸ノ内線の車内に立っていたら、二人の若いサラリーマンが自分の会社の女 子社員の話をしていた。 「ほら、庶務課の村山このみ」 「ああ、俺好きだよ、あのタイプ」 「うん、普段はいいよな」 「なんかあったの ? 」 「いや、この前、欠伸してんの見ちゃったんだよ」 1 う 2

6. おんなの仕種

眠る 5 くしやみをする 鏡を見る 郵便を出す ランチを決める 待っている 一人旅にて 立ち読み 酔う 笑う 歌う おんなの仕種目次 】散歩する 一人でいる 口紅をつける 同情する 0 髪をかき上げる つまむ ハンカチを使うに 電話をかける引 . 噛む 】並ぶ 欠伸をする ノ、 5- 1 1 ろ 甘える 腕を組む 財布を持っ鵬 フルーツ・パフェを食べる四 よじる 8 脚を組む 自転車に乗る 写真を撮られる 悪口を言う あ一とがき 2 14

7. おんなの仕種

は、こっちで ( アムステルダムのこと ) 日本の本を買うのは高いけど、いちおう『マリ・ クレール』 ( もちろん日本版です ) だけは買ってとってあるんですよと言っていた。あり がとうございます。何を言ってるんだ、ばくは : さて、それで桜井百合子さんは一ッ木通りの金松堂書店へと着いた。途中、の大 きなガラスのドアに自分の姿を映してみたが、やはりこの日の服装計画は失敗したとおも まず店頭で女性週刊誌を手にしようとする。手をのばした時、横の女性の骨盤に自分の 骨盤がふれる。 「あ、失礼」 とは言ったものの、相手の女性はやはり週刊誌に夢中で彼女には目もくれない。 なにさ。皇室の記事なんて読んじゃって。 店頭で週刊誌を立ち読みしている女性は、桜井百合子さんの他に、六人ほどいる。みん な二十代で、どこかその日の出がけに服装計画を失敗したように見える。 あら、眼鏡曇っちゃった。 子さんは読んでいる週刊誌を一度もとにもどし、眼鏡のレンズを拭いた。再び手にし た時は読んでいたものではなく二冊下のを抜き取って読み出した。 あくび 子さんは松田聖子の記事を読みながら二回欠伸をした。 0 子さんは小林麻美風に何度 も髪をかき上げる。時々ガラスに映っている自分の顔を上目づかいに見たりしている。 、ち読み

8. おんなの仕種

「そう、好きになりすぎたのね」 「よくわかんないのね、はじめは相手に奥さんがいること、それほど気にならなかったん 「辛いわよね、彼の奥さんっていくつくらい ( 歳のこと ) なのかしら」 といった具合だ。仕種としては、彼女はいつも相手の話を聞く時、右手の人さし指を鼻 の頭にそっと触れているのだという。可愛さと、相手の気持ちを自分の顔の中心に集中さ せることを無意識にしているらしい。ここでも時々の頷きは欠かせないという。くり返す が、同情は無料だ。 同情する 11 1

9. おんなの仕種

高校生だった頃、親しくしていた大学生の女友だちから「笑いの研究をしている」と聞 かされ驚いたことがあった。笑うことをどうやって研究するのかとおもったが、 , 彼女のそ のひと言がばくのその後の生き方に大きな影響を与えたことは確かだった。人の笑いがと ても気になるようになった。 もうだいぶ前に読んだ本だが、あの三島由紀夫が、自分の欠点として「不必要な高笑い」 と書いていた。おそらくこれは三島氏の正直な気持ちだろうとおもう。 ここは女の仕種について書くべージなので、女性の笑いに絞りたい。女の人でも、三島 由紀夫同様不必要な笑いをする人は多い。そんな女性が電話しているのを聞いていると、 ひと一一一一口、ひと言会話のたびに凄まじい高笑いが起る。おそらく本人はあまり気がついてい ないのだろうが何事が起ったのかとおもうことさえある。どうも電話の話を聞いていると、 相手はさほど面白いことを言っているようにもおもえない。 これは商事に勤めている友人の高木昭夫から聞いた話だ。 「凄いんですよ。三宅という女子社員がいましてね。電話でとにかく凄いんですよ」 彼が言う凄いとは、三宅女子社員の高笑いのことだ。彼の話を再現してみる。商事総 務課、三宅咲代さん三十七歳 ) の電話だ。

10. おんなの仕種

うものだ。 これはこのごろよく見かけるけれど、ハンカチをミニスカートをはいた膝の上にかける 女性がいる。たぶん露出した股の部分を隠しているのだろうが、逆につい見てしまったり することもある ( らしい ) 。 これは余談だけれど、友人の個展のオープニング・ ーティーの二次会で、一人の美女 がワイングラスを倒し、それがスカートにかかってしまった。まわりにいた男たちが咄嗟 にハンカチを出した。隣にいたばくは一番早かったとおもう。しかしたまたまばくの持っ ていたのは作者である友人からいただいたオサムグッズ ( イラストレ 1 ター・原田治氏が 描いたもの ) のハンカチだったのだ。ばくはおもわず引っ込めてしまった。オサムグッズ が悪いのではない、それをばくが持っていたことが照れくさかったのだ。 いうわけで、女性もハンカチにはいろいろデザイン、その他気を配っているようだ。 ばくも時々酒場などで酒をこばしてしまい、女性からハンカチを借りたりすることがある。 柔らかくて、なんとなく女の匂いがあって、あれはあれでいいものだ。 友人の加島愛子さん ( 銀座にある真珠店勤務、二十六歳、埼玉県在住 ) は、よく笑う。 つまらないことでもよく笑い、やがて泪を出す。そのためハンカチは欠かせないとのこと だ。そう言えば、この前、地下鉄銀座線に乗っていた女性のハンカチには・というイ ニシャルが刺繍で入っていた。 , 彼女はときどきそのイニシャルをじっと見つめては、何か 妙な笑みをうかべていたけれど、大丈夫だろうか。 12 8