( ああ、桃様っ ! 今日も一段と凛々しゅう御 座います、私のような犬畜生が桃様のお傍 にお仕えでき、大変喜ばしく思っておりま す。その全てを射抜く真っ直ぐな瞳と、日 頃の鍛錬の賜物と言って良い健康的な肉体。 まさに私の理想、憧れの集大成で御座いま す。私がどのような暮らしを営もうとも、 桃様のように遥か高みに位置する方には到 底、足元にも及ぶことすら許されません。 でも、どうか、ただ、今だけ、瞬間、この 刹那、桃様の面前を世界でただ一人、私だ けが独り占めできるというものなのです。 あの日あの道端で俺と共に鬼を退治してく れないかと言われたあの瞬間から、私の人 生、いえ、今後私に子が出来ようともすっ と、未来永劫、桃様を始めとする父上殿、 母上殿、吉備津一族を守りたい一心で日々 を生きております。この気持ち、どうか桃 様にだけは悟られないで欲しい、決して知 られてはいけないものなのに ・どうして こんなに胸が昂ぶるのでございましようか。 愛しい、尊い。恋患いなわけがない、なぜ なら桃様と私は同じ性別の人間であるが故、 生物として踏み出してはいけない禁忌なの です・・・。でもいつかは伝える時が必ず来る かもしれない、そんな日がもし来るとして も、どうかそれまでは、いつまでも果敢で 細で健気なオ兆様をすっとお守りしていき たい所存でございます、これからもお慕い 申しております・・・。 ) 「・・・い ? ・・・ぬか・・・い ? おい、犬飼 ? 」 駄目だ、完全に意識が飛んでしまってい そんな犬飼を尻目に華麗な箸捌きで ちょっかいを出すのは楽々森彦 ( ささも りひこ ) 。猿のお面が特徴的だ。 身のこなしも秀でており、よく住処の 森から木の実や果実を分けてもらったり している。 1 若いように見える彼だが、実際の ところ友である 3 人の実年齢というもの を知らない。 まあそのような些細なことなど関係 ないのだが ー 69 ー
戦場にあるまじき軽口をかわしあう。久しぶりに会った彼女との : : : まあ、形式美みた いなものた。 「まあ、助かった。ありがとう」 「アシェお姉様にそんな言葉をかけられるなんて、嬉しくなっちゃいますわ」 助けて貰った礼を言うと、リンは頬を両手て挟み込んて喜びを全身でアピールする。 「やはり、褒めるのは止めた方が良かったか ? 」 「いえいえ、ドンドン褒めて下さいまし。褒められれば褒められるほどに熱く熱く燃やし 目くして差し上けますわ ! 」 「で、いっ戻ってきたんだ ? 」 「つい先程。サンドお姉様、アシェお姉様が戦っていると聞いていてもたってもいられな くなり 、駆け付けたのですわ」 「じゃあ、これからまた一緒に戦うことになるのか、またよろしく頼む」 「はい。わたくしからもよろしくお願いし 、たしますわね」 読んでいた本をゆっくりと閉じて、眼鏡を外す。 ため息をついて、マメールが何時淹れてくれたかわからない冷めた紅茶を飲む。 「私達の戦いがこんな形で記録されているとはな。マメールから話を聞いていたが・ 5 7
備津とピーターたけだった。ピーターの果物は早になく 「ああ、これは吉備団子と言ってだな」 なり、団子もみんながかわるがわるロ直しにと手を伸はし 「吉備団子たア ? 吉備津の名前が入ってんのか ? 」 「ああ。俺が俺の世界で鬼退治に出発するときに婆様が持たのでかなり多めに婆様に頼んだというのになくなって しまった。 たせてくれたものた」 「それって全然変わってないじゃない ! 」 「そうか ? 俺の名前が入っている時点て変わった食べ物 さんさん盛り上がった後、皆て後片付けをすることになり、 ではないかと思うが」 : と不満けなアリスをよしよし吉備津は持てるたけの食器を持ち炊事場へとやってきた。 そういういみじゃなー とシャドウが撫てているのを横目に、吉備津は皆に一つす各自が持ってきたものてあるから壊したりしてはいけな いと慎重に慎重に洗っていたところにサンドリョンが追 7 っ団子を配る。 2 加の皿を持ってやってきた。 「うん、おいしいね ) 」 「吉備津さん、これ追加てす・ : つ」 「おいしい・ : 」 「む、すまん。重いたろう。かたじけない」 「なかなか美味いじゃねえか」 「いえ、大丈夫です : ・えっと、どこに置いたら : ・」 ロに美味しい美味しいと言われてはまんさらてもない 「その、台の上においてくれぬか」 作ってくださった婆様に礼を言わねはな、と吉備津は思っ 「わかりました。ほかに何か手伝うことはありますか ? 」 「いや、いまのところは。それより、タ餉の支度はどうな るのだろうか ? 今日はマメールがいないだろう」 「そうでしたね : ・昨日がパンでしたから、今日はお米にす 士旧局、、 しわゆる変わり種ではないものを持ってきたのは吉
非常に賑やか、 い方を変えれば騒がしい。 【昼】 日ノ本の食事と言えば、やはり炊きた ての白米を茶碗一杯に乗せ、 豆腐と新鮮なネギを刻んで人れた味噌汁 に限る。 近所から頂いた七草のおひたしも、鰹 節の風味が良き味わいを醸し出している。 「えっへへ、勿体無いお言葉で御座いま 主食である焼き魚は、仲間である犬飼 す ! おかわりも用意して御座います故、 がこしらえてくれたものだ。 存分にお召し上がり下さいね ! 」 父と母は俺が起床する前から、仕事と 家事のために早くから出かけてしまって フルネームを犬飼健 ( いぬかいたけ る ) 、黒い長髪に薄紫の着物に身を包み、 いるため、基本的には誰もいないはすな 獰猛な犬のお面を頭につけている。 のだが。 「いつも馳走になり申し訳ありませんな 母性に満ちているという例えは大い に語弊があるので、面倒見がよく世話好 「桃様っ桃様っ ! お味は如何でございま きである。という表現に留めておく。 頼んだことはなんでも最善を尽くし すか ? 」 てくれるし、知らないことでもすぐ調へ ・・基本的には誰もいないはずなのだ て教えてくれる。努力の天才だ。 「あっ、桃様、頬にご飯粒カ咐いており まする」 「む、すまんな、夢中になりつい」 「お任せ下さい」 静かにそういうと、手ぬぐいでそっと 俺の口元を拠ぬぐ ) う。 その顔は何故か幸せそうだ。 「うむ、いつもながら美味である、かた じけないな」 「へっヘーん ! 犬飼殿よ、御前ががら空 きでござるよっ ! 」 「あっ ! 猿めは行儀がなっておらんであ ります ! 」 「ぬぬっ ! 笑止千万、食卓を制しものが 全てを制するのでござる ! 」 ー 68 ー
てすわ」 「ファンって : : : そこまで慕ってくれる理由がさつはりわからないのたが。私ではなくサ ンドを慕うならわかるけどなー 誰にでも優しく、聖母のような純白のドレスを纏った金髪の女性を思い浮かべる。 そう言うと、リンは目を丸くして驚いて見せる。 「あら、あんな衝撃的な出会いをお忘れなんて、わたくしはショックを隠せませんわ」 「そんな衝撃的なものだったか ? 」 始めてリンと会った時を思い出すが、何のことはない戦いの前で軽い自己紹介をした記 憶しかない。 「あら ? お忘れですの ? わたくしは今も鮮明に思い出せるほどに記憶に刻まれていま すのに・ 「まったく覚えがないな」 「もう・ 凄くがっかりしてから、少し怒った風に頬を膨らませながら、説明を始める。 その日、わたくしは初陣をむかえましたの。 初めての戦場で一緒にいたミクサさんとはぐれて、闇の軍勢に囲まれてしまった時に助 けてくれたのがアシェお姉様でしたわ。 その姿は忘れようがありません。 夜空に浮かんだ月の光を背にした、黒いドレスお姉様の姿。 8 7
子供の面倒を見るような、騒がしいお茶会を済ませたその夜・ 聞こえてくるのは虫や獣の鳴き声くらい。そんな静かな夜の空気が心地よい 昼間はアリスやミクサ達がおしゃべりを楽しむこの庭園も、夜では人影は見当たらない 思わす鼻歌でも交えてしまいそうな気分で、月明かりの読書を楽しむ。 「あら、淑女がこんな夜中に明かりもつけす、一人で読書なんて感心しませんわね」 「またお前か・ 声をかけられたので顔をあけると、ほんやりと月光が降り注ぐ庭園に明かりを持った金 髪少女の姿が浮かんでいる。 「またお前か、と言われましても困りますわ」 「私をこうも付け囘して、お前はストーカーなのか ? 」 「いえいえ、ストーカーなどではこさいません。わたくしはアシェお姉様の一番のファン これはするいじゃないか。ここで帰ったら私か完全に悪者だ。 「わかったわかった。相席すれはいいだろう ? 」 「アシェお姉様が話の分かる方で良かったですわ」 「はいは、 そんなやり取りを見るマメールの笑顔か憎たらしく田 0 えたが、お茶会自体は和やかに始 まった。 〇 7 7
神俗 捌に 大聖様が列から どきませんわ : 0 0 リト肌ぞ 、ヤ、らご それ言いたかった だけちゃうん ですの 0 望 0 ぞ、う ヤ、いたむて : トセ幵ワトなて "
削明ヤ ⅱ、単、 , り、川 0 引、町曲い 麕 000 を 0 。は 00 、 0 、 0 、叮、 ' ' タライ 新第女、第訓卩を 0 ・俺様から 言わせてくれ タちイなんたし だ 0 宅らないよー 、、まオいじゃ : ・ たった一言で ー 54 ー
【起床】 る朝。 覚ます。 チュンチュン、小鳥の鳴き声でふと目を 季節は巡り、年月も幾らか流れたとあ 「桃様ァ ~ ~ い うとした最中、 そう思い上着を脱ぎ去り、いざ袖を通そ 朝の支度をせねばなるまい、 「吉備津彦」それが俺の名前だ。 れていた。 服の裏には朱色の刺繍で名前が施さ な品だ。 なる母が時間をかけて作ってくれた大切 炎のように真っ赤なその着物は、親愛 着物に手早く着替え始める。 いつものように寝床から抜け出すと、 と言ってくれたのである。 を、俺の為にわざわざ私室に使ってくれ もなかったが、物置に使っていたところ といっても別段置く物があるわけで く気に人っていた。 屋。 6 畳にも満たぬ小部屋だったが、深 いつからか与えられた、自分専用の部 玄関の引き戸を勢いよく開ける音が ー 0 仲間である留玉臣 ( とめたまおみ ) の威 勢の良い声が開こえる。 彼女は原典でいうところのキジにあ たる。灰色の長い髪と、クノイチのよう な身軽な軽装、手裏剣、そしてお面が特 徴的だ。 巷では熱狂的なファンも多く、彼女の ことを愛してやまない輩も多いだのなん だのと噂を開いたことがある。 うちには毎朝起こしにきてくれる・・ いや、正確には目が覚めて、 丁度この時間を見計らって来ている かのように思える・・ 明るく活発で、笑顔の絶やさない女性 である。 が故に。 ドタドタドタドタ・・ 欠点というものもある。 「桃様ァ ! お早う御座いま ~ 」 ー 65 ー
御伽の国の娯楽事情鉢 そういや 船長もさあ やつば憧れた 人とか いるのか ? : フフ、 まあな そ - っ 第ろ、つ 船長がそんなに。 慕うなんて どんな人だろ ? 実はは その者に敬意を 表し付けた名だ マジで ? 伸俺せ び様っ るのか 事腕く だも 本当は獲物も 別の名前に したかったが ・そう、 ゴムそれ以上は マスイせ END