いとしても、拒絶されるまでは傍にいて、好きでい続け 「えワ・」 ーっと前から色々考えようと決めたの」 「郁美ちゃんは、鈴よりもずー てたんだから」 私だって全然気が付いてなかったわけじゃない。ただ、 「そうなの ? 」 と自分にいい聞かせていたのだ。 そんなはずは無い、 「鈴は知らなかっただろうけど、私は郁美ちゃんから、 は何度、鈴に郁美ちゃんの気持ちを教えようとした 色々相談受けてたんだよね」 「えー かわからないわ。でも、自分の気持ちに鈴が気づくか、 自分が告白するまでは何も知らない顔でいて欲しいって そんなの全然知らなかった。 「鈴がさっきいってたことも、郁美ちゃんから聞いたの頼まれちゃって、結構辛かったんだよ。郁美ちゃんの健 気な姿をみてると、ほんと涙でちゃうわ」 と、ほとんど同じ内容だった」 「そうなんだ・ さやかちゃんは、そっと目頭を手の甲で拭った。 。さやかちゃんは、その時も大笑いし 「あーやだやだ、ほんとに涙出てきちゃったわ」 たの ? 」 さやかちゃんは、さっきの笑い涙とは違う涙を浮かべ 「は ? するわけないじゃん。可愛い後輩の恋の悩みを ていた。 笑ったりしないよ」 聞いてみ「でも、なんかスッキリしたわ。鈴が郁美ちゃんの気持 それじゃ、私の時は何だったんだろう : ちに気が付いてよかったわ。鈴も郁美ちゃんのこと好き こいけど、バカにされそうだからやめておこう。 「郁美ちゃんは、鈴なんかよりもっと真剣だったよ。郁みたいだし。なんか、肩の荷が下りた感じだわ」 私の知らないところで、さやかちゃんも色々悩んでい 美ちゃんの気持ちに全然気づいてない鈴に、告白してい たみたいだ。本当にさやかちゃんは、晴れやかな顔をし いのかすごい迷ってた。鈴を好きなのにその気持ちを伝 えられなくて、でも気づいて欲しくて、鈴の気を引こうていた。 それとは逆に、私はどんどん気が重くなっていく。 と色々やってた。それなのに鈴は全然気づいてなくてさ。 「私、ど , っしょ一つ : 一時期諦めようとしたこともあるみたい。でも、鈴のこ 「どうしようって、まだ迷ってるの ? 」 とを本気で好きだったから、たとえ振り向いてもらえな
「ううん、そうじゃなくて。私今まで郁美ちゃんに、酷「あのね、鈴・ いことをしていたのかもしれない」 さやかちゃんは、相談したときと同じようにあきれた 私は郁美ちゃんの気持ちを無視し続けてきた。郁美 表情で眉間を押さえた。 ちゃんは傷ついているはずだ。 私、変なことを言っただろうか。 はか。郁美ちゃんは、そんなこと思ってないって。そ「鈴は今、郁美ちゃんを好きだと自覚した。そうで れどころか、鈴に気持ちを気づいてもらえて、ちょーハッしょ ? 」 ピーって感じよ」 「 , つん」 「そうかなワ・」 「そして、郁美ちゃんも当然鈴が好き、ここまではオー 「そうよ」 さやかちゃんが明るく言うので、私も少しだけ心が軽「うん、うん」 くなった。 私は首振り人形のように、ぶんぶんと縦に大きく首を 「さやかちゃん」 振った。 「んワ・」 「それでなんで告白されるの待ってにゃならんのよ。鈴 「私、今なら郁美ちゃんを受け入れられると思う。私も は仮にも上級生でしよ。アンタから決めなさい ! 」 郁美ちゃんが好き。大好き」 さやかちゃんは、ビシッと人差し指を私に突きつけた。 ああ、やっと自分の気持ちに整理がついた。私は自分「ええええ。私からあ」 でも信じられないくらいに、郁美ちゃんが好きだったん それはなんだか、凄く恥ずかしい。 「そうよ。郁美ちゃんの気持ちを無視し続けて悪いと 「そっか。なら晴れて両思いになったわけだ。めでたい 思ってるんなら、鈴から告白して喜ばせてあげなさい」 ことじゃない。私は応援するよ」 コつうう、わ、わかったよお」 さやかちゃんが両手を叩いて、につこりと笑った。 やつばり、それくらいのことはしないとダメだよね。 「ありがとう、でも、郁美ちゃんは告白するのは、まだっ 「よしよし。そうと決まれば、郁美ちゃんから告白され て言ってたし : : : 」 る前に、さっさと行ってきなさい」
「そ、そうなんだ、ありがとう。でも、私たちはずっと 郁美ちゃんの気持ちは本物だ。 一緒にいられるわけじゃない。来年には、私は一足先に こんな表情にさせることができるのは私だけ、そう 卒業してしまう。そうしたら、嫌でも離れ離れになっちや思っていいんだよね。 うよ。郁美ちゃんは、私のことなんて忘れてしまうかも 「郁美ちゃん、私のことそんなに好き ? 」 しれない。郁美ちゃんは、私のいなくなったこの学園で、 別に好きになる人を見つけるかも : 郁美ちゃんは即答した。 「そんなことはありません ! 」 「私たちの間には大きな問題がいくつもあるけど、それ 郁美ちゃんが、大声で私の声をさえぎった。 でも私を好きでいられる ? そばに居続ける事ができ 「私が好きなのは、鈴先輩ただ一人です。たとえ離ればる ? 」 なれになったとしても、他の人に心を奪われたりするこ 「できます。鈴先輩と一緒なら、どんな問題も乗り越え とはありません。それに、鈴先輩が卒業したって会えなて見せます。私達は女同士で、こんなのいけないって思っ くなるわけじゃなし 」。令先輩が許してくれるなら毎週 たことも、何度かありました。でも、鈴先輩を諦めるこ だって、いえ、毎日だって会いに彳きます」 となんてできなかった。鈴先輩が好きなんです。どうし 「郁美ちゃん : : : 」 よ , つもないくらい。 : 鈴先輩と一生添い 私は郁美ちゃんの迫力に、ただ圧倒されていた。 遂げたい」 郁美ちゃんは普段、これほど大きな声を出すことはな 髪が短くて、スポーツが得意で、男の子のように騒 一瞬にして、顔が真っ赤に染まったのがわかった。頬 いだりするように見えるけど、とても女の子らしいとい を押さえる両手が熱い。 うことを知っている。 今、凄いことを言われてしまった。と 礼儀を重んじて誰にでもやさしく、気遣いを忘れない。 いうか、言わせてしまった。 いつも静かに私のことを見ていてくれる、そんな子だ。 告白なんて目じゃない。あれでは、プロポーズじゃな ゝ、 0 その郁美ちゃんが、普段見せることのない必死な表情 し、カ で私に迫っている。 一生添い遂げたいだなんて、ああ、顔から火が出そう。
「郁美ちゃんが、鈴のこと好きだっていうのでしょ ? じゃないけれど、今までと同じように接するのは難しく 鈴以外、みんな知っているわよ」 なったと思う。絶対に意識してしまう。 「えー 「郁美ちゃんのことだってわかってるならさ、私達の問 そ、そんなこと全然気が付かなかった。もしかして私題もわかるでしよ」 が鈍いって、このことだったのかな・ 「問題って ? 」 「でも、郁美ちゃんはそんな様子全然見せてなかったと さやかちゃんは、何のこと ? って可愛く首を傾けた 田っけど」 けれど、目が笑っている。これはわかってていってるん 「何言ってるのよ。郁美ちゃん、ずーと鈴にアプローチだ。さやかちゃんは意地悪さんだ。 してたわよ」 「女の子同士だってこと ! 」 あうー なんか、どんどん新事実が発覚していく。 「そうね、それは確かに問題ではあるわね」 「毎日、鈴とお昼するために上級生の教室来るしさ、廊 私がストレートに言うと、さやかちゃんは少し真面目 下で会えば友達ほったらかしてまで鈴と話すしねえ。極 な顔になって頷いた。顔の前で組んだ手に顎を乗せ、真 めつけは、頻繁にくるデートのお誘いね。ニプチンの鈴 剣な眼差しを私に向ける。 相手に、良く頑張るなって思ってたものよ」 「でも、私はそういうのアリだと思うけどな。この学園 「そ、そうだったんだあ」 はさ、エスカレータ式だから小等部から高等部、はては 郁美ちゃんは、ただ純粋に私のことを慕ってくれてい 大学まで女の園じゃない。異性との出会いがほとんどな るものとばかり思ってた。私は部活動に入ってなくて、 いからさ、一人身のままずーと過ごす人も多いわけよ。 下級生と知り合う機会なんてなかったから、郁美ちゃんその中で女の子同士とはいえ、恋人が出来るのはいい と仲良くなれたことは凄く嬉しかった。だから、郁美ちゃとだと思うけどね 。ゝい経験になるでしよ」 んのことを可愛がっていた。そう、あくまで可愛い後輩「いい経験になるって、さやかちゃんは当事者じゃない として。 から、そんなこと言えるんだよお」 でも、郁美ちゃんは私とは違った思いを抱いていたん「ま、そうかもね」 だ。それで郁美ちゃんのことが嫌いになったりするわけ 私の言葉を、さやかちゃんはあっさりと笑って肯定し
はつ、まさかさやかちゃんが言うように、告白だったて言ったほうがいいのかな。それとも、こ、 りして。だったらどうしよう。言われる前に言わなくちゃ。ちゃったほうがいいのかな。 こ、告白 ? まだ心の準備ができてないよ。 私は視聴覚室の前で大きく深呼吸をして、勢い良く扉 あー、心臓がバクバクしてきた。 を開けた。 「あのつ、鈴先輩」 「あ、鈴先輩つ」 「は、はひっ」 入るとすぐに、郁美ちゃんが笑顔で出迎えてくれた。 突然、郁美ちゃんがアップでせまってきて、心臓がロ その笑顔を見るだけで、私の胸の鼓動は早くなってしま から飛び出そうになってしまった。 う。私はもう、郁美ちゃんの虜になってしまっていた。 「明日のことなんですけど」 「ま、待った ? 」 平静を装うとするけど、どうしても意識してあがって「明日 ? ああ、バスケの試合だよね ? 」 「はい。鈴先輩、見に来ていただけますよね」 しまう。 「うん、もちろん」 「いえ、私もさっき来たところですから」 「それでですね。私、試合頑張りますからっ」 「そ , つ」 「わわわっ」 「それで、お話というのはなんでしよう」 いきなり、郁美ちゃんは私の手を握り締めた。いつに 「ふえワ・」 なく真剣、というよりはテンパった感じで口調が早く 「さやか先輩から、鈴先輩がここで何か話があると聞い なっている。 て来たのですが」 「試合には絶対勝ちます。チームメイトの誰よりも活躍 してみせますから ! 」 さ、さやかちゃんに騙された。 「一つ、 , つん」 きっとそうだ。私がなかなか告白しようとしないから、 「そうしたら、鈴先輩に伝えたいことがあります」 お膳立てのつもりなのだろう。 郁美ちゃんの手に力がこもる。 「え、えーと」 うわっ、これはマズイ。郁美ちゃん告白するつもりだ。 どうしよう。素直に、これはさやかちゃんの陰謀だっ こ、告白し
「つて ! えー デートってそんな。 「それはそうだけど、いきなりすぎて困るよお」 私は、驚きのあまりその場に立ち上が : : : れなかった。 ああ、私は今どんな顔をしてるんだろう。きっと間抜 郁美ちゃんが私の肩を、しつかりと抑えてくれていた。 けな顔をしているに違いない。頬が熱を帯びていくのが 「鈴先輩、それではさっきの繰り返しになってしまいま自分でもわかる。相手が女の子とはいえ、告白されたの なんて初めての経験だ。 足元には少しではあるけれど、中身の人ったコップが 「鈴先輩、私の気持ちは理解していただけましたよね ? 」 「う、うん。多分 : : : 」 「あ、ありかと一つ」 大好きは愛してると同じ意味で、お出かけはデートで 肩から手を離しても立ち上がらない程度に落ち着いた そこまで言われたら、 いくら私でも理解できる。 のを見計らってか、郁美ちゃんは手を離してくれた。 「鈴先輩、お返事というか、鈴先輩の気持ちを今聞く気 「で、でも、デートってそんな。それに、思い出したけ はないです。突然すぎるでしようし、私も告白するのな ど、私のこと大好きなとかいってなかった ? 」 らもう少しちゃんとしたいですから」 「言いました。この場合の大好きは、愛してると置き換「う、うん」 えていただいても結構です」 返事を今聞かれないのは助かった。頭の中がぐるぐる 真顔でしれっと言ってくれる郁美ちゃんを、私はロをしていて、とてもじゃないけどまともな返事ができそう ばくばくさせながら見つめるしかなかった。 「あ、愛してるだなんて、そ、そんなこと急にいわれて「今日のところは、これで帰りますね」 、も・ 「あ、うん」 状况に頭も口もついていかず、しどろもどろになって 郁美ちゃんは今度こそ荷物を肩に下げて、失礼します しま、つ。 といって部屋を出て行った。 「私も、まだ一一一〔うつもりはなかったんですけど、鈴先輩 私は玄関まで見送ることも忘れ、部屋に座りつばなし がちゃんと言わないと納得してくれそうになかったもののままで、郁美ちゃんの出て行ったドアを呆然と見つめ
翌日、私は朝一番でさやかちゃんに相談してみた。す「何が ? 」 ると、さやかちゃんはあきれたような表情で眉間のあた 「その、親に紹介しないといけないのかなあとか、卒業 りを押さえた。 した後も付き合ったままでいいのかなあとか、もっと もっと年をとっても、一緒にいられるのかなあとか」 「鈴う、あんたほんとはわかってるんでしょ ? 」 「わかってるって ? 」 「ぶつ」 「自分の気持ちょ、き・も・ち」 さやかちゃんは、私の話を聞くなり吹き出した。こっ ちは真剣だっていうのに、さやかちゃんはとっても失礼 「鈴も、郁美ちゃんのこと好きなんでしよ。郁美ちゃんな人だった。 「あっはははは。あんた、そんな先のことまで考えてた が鈴を好きっていう気持ちと同じ好きね。違う ? 」 「ちが : : : わないかもしれない・ の ? あーはつはつはつはつはっ ! 」 そう、私だってもう自分の気持ちに気がついていた。 さやかちゃんは、とうとうお腹を抱えて笑い出してし でも、気がついてないフリをしていた。だって、好きにまった。 なってはいけないのだから。この気持ちには、気がつい 「他にもいつばいあるんだよお」 てはいけないのだから。 「わかった、わかった。ぶぶつ」 郁美ちゃんと一緒にいるのは楽しくて、週末のお誘い さやかちゃんは目に涙が浮かぶほど笑いながら、私の は嬉しくて、姿を見つけるたび胸は高鳴った。ただそれ肩を強く何回も叩いた だけ。それ以上の感情は封じ込めてきた。持たないよう 「 , も , つつ」 にしてきた。 「大丈夫だって。鈴が本気で考えてるってことは、わかっ それでよかったはずなのに たから」 もう、我慢するのも限界に近い 「ほんとにいワ・」 自分の気持ちに、素直になっていいのかな。 とてもじゃないけど信じられない。 「うん。だけどね、郁美ちゃんを見くびっちゃいけない 「ねえ、さやかちゃん。もし、付き合うことになったと したら、どうしたらいいのかな」
ロ登場人物紹介ロ ロロロ星の輝きに包まれてロロロ 優 ( ゆう ) ロロロ少女は恋をするロロロ 優になっかれて悪い気分ではなさそう。 面倒見のよい女子大生 皐月 ( さっき ) にあっているところを皐月に助けられた ・お嬢様学校に通う女子高生。電車で痴漢 。女子高生の 吸血鬼退治を依頼されアンジェリカこ出会う。 カンナ・・・魔物退治をしながら世界を旅してまわっている。 ロロロ B 1 0 0 d P r i n c e s s ロロロ 朝自分の隣に立つみゆきが少し気になっている。 ・ちょっこ古風な感じのする女子高生。毎 柚子 ( ゆずこ ) ムうのを日課にしている。 柚子に△ 社会人三年目。毎朝決まった時間にを出て みゆき ロロロバス停の少女ロロロ が特定の部活には人。ていない。鈴の為なら何で宅する。 郁美 ( いくみ ) ・・・鈴のここが大好きな後輩。スポーツ万能だ なぜだか後輩の郁美に慕われる天然ポケ娘 鈴 ( すず ) アンジェリカ 吸血の少女。はじめはカンナに敵視され ていたが、今ではすっかり仲良しに ? 5
ぶぶつー 「悪かったって。郁美ちゃんもゴメンね」 せつかくのお茶が口から勢い良く噴出していく。霧状 なぜか、郁美ちゃんには手を合わせて謝るさやかちゃ になったお茶は、目の前こ 。いた郁美ちゃんに降り注いだ。んだった。 「ゲホッ、ご、ごめん。ケフケフッ」 「いえ、気にしないで下さい。たいした事ありませんか お茶を拭かないと制服がシミになっちゃう。そう思っ てハンカチを探すが、なかなか見つからない。 「郁美ちゃん。上級生だからって遠慮しないで、思いっ 「鈴先輩、私は大丈夫ですから、鈴先輩がまず落ち着 いきりさやかちゃんを怒っていいんだよ」 てください」 「いえ、ほんとに大丈夫です。これくらいなら、家です 「つ、、つん」 ぐ落とせます。予備の制服もありますし」 私の肩を掴み、につこりと微笑むその姿はまるで天使 郁美ちゃんのセーラーカラーには、お茶で出来てし のよう。今度は自分のコップの中のお茶を飲み干し、よまった点々のシミが薄っすらとできていた。すぐに落と うやくスッキリできた。 せると言うけれど、跡が残ったりしないかちょっと心配 「うーん、郁美ちゃんは大人だねえ」 「さやかちゃんっ ! 」 「郁美ちゃんはそれよりも、鈴に意識してもらえたこと ようやく鞄の中から探し当てたハンカチで、郁美ちゃのほうが嬉しいわよねえ」 んにかかったお茶を拭きながら、さやかちゃんを睨みつ 「そう・ : ・ : ですね」 ける。 さやかちゃんの言葉に郁美ちゃんは少し顔を赤らめ、 こうなった原因を作った張本人は、何事もなかったようつむいてしまった。そんな顔されると、こっちまで恥 うに昼食を再開していた。 ずかしくなってしま、つじゃないか 「ゴメン、ゴメン。そんなに驚くとは思わなかったのよ」 どうやら、郁美ちゃんはポーカーフェイスを装ってい さやかちゃんは、たいして悪びれもせず謝った。 ただけで、意識していないというわけではなかったよう 「もうつ、苦しかったんだからね。それに、郁美ちゃんだ。 にも迷惑かかってるんだから ! 」 「しつかし、間接キスくらいで騒ぐなんて、あんたは小
ディフェンスも跳び、シュートを防ごうと手を伸ばす。 郁美ちゃんの嬉しそうな笑顔に釣られて、私も顔がほ ディフェンスの手がボールに触れようとしたその時、 ころぶ。 郁美ちゃんは空中で体勢を変え、ディフェンスのわきの 「ふふつ、そんなことないよ」 下から手を伸ばしシュートを放った。ポールが、音を立 「あっ、私練習に戻りますね。あまり抜け出してると、 てずにゴールに吸い込まれた。 怒られちゃいますから」 「キャーツ 「 , つん」 周りで見ていた生徒から、歓声が沸き起こった。 「鈴先輩、試合見に来てくださいね」 私も一人で手を叩きその場で飛び跳ね、郁美ちゃんの コつん。絶対見に行くよ」 プレイに感動していた。 「それでは失礼します」 ああ、郁美ちゃんは格好良すぎる。 郁美ちゃんは、来たときと同様、勢い良く戻っていっ 「鈴先輩つ、やりました ! 」 すぐに郁美ちゃんが駆け寄ってきて、フェンスを握っ 郁美ちゃんが戻ってからも、私はしばらくその場に居 ている私の手を握りしめた。 続けた。さっきまで郁美ちゃんに握られていた手の熱が 「あっ・ 冷めない。それどころか、全身に熱が広まってしまった ようだ。 郁美ちゃんの汗ばんだ手の平から、熱い体温が伝わっ てくる。 胸も、締め付けられたように苦しくなってくる。この 「止められるかと思ったけど、なんとかシュート決めら感覚はなんなのだろう。郁美ちゃんを見ていると、余計 れました」 酷くなってしまう。きっと病気だ。病気に違いない 「う、うん。凄かったよ」 明日また、さやかちゃんに相談してみよう。 郁美ちゃんに握られた手が、火傷しそうなほどに熱を その夜、私はなかなか寝付けなかった。 帯びてくる。 「決められなかったら、鈴先輩に合わす顔がなかったで 「うーん、なんちゅーかねえ」