鈴 - みる会図書館


検索対象: 咲き乱れしは百合の花
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1. 咲き乱れしは百合の花

いとしても、拒絶されるまでは傍にいて、好きでい続け 「えワ・」 ーっと前から色々考えようと決めたの」 「郁美ちゃんは、鈴よりもずー てたんだから」 私だって全然気が付いてなかったわけじゃない。ただ、 「そうなの ? 」 と自分にいい聞かせていたのだ。 そんなはずは無い、 「鈴は知らなかっただろうけど、私は郁美ちゃんから、 は何度、鈴に郁美ちゃんの気持ちを教えようとした 色々相談受けてたんだよね」 「えー かわからないわ。でも、自分の気持ちに鈴が気づくか、 自分が告白するまでは何も知らない顔でいて欲しいって そんなの全然知らなかった。 「鈴がさっきいってたことも、郁美ちゃんから聞いたの頼まれちゃって、結構辛かったんだよ。郁美ちゃんの健 気な姿をみてると、ほんと涙でちゃうわ」 と、ほとんど同じ内容だった」 「そうなんだ・ さやかちゃんは、そっと目頭を手の甲で拭った。 。さやかちゃんは、その時も大笑いし 「あーやだやだ、ほんとに涙出てきちゃったわ」 たの ? 」 さやかちゃんは、さっきの笑い涙とは違う涙を浮かべ 「は ? するわけないじゃん。可愛い後輩の恋の悩みを ていた。 笑ったりしないよ」 聞いてみ「でも、なんかスッキリしたわ。鈴が郁美ちゃんの気持 それじゃ、私の時は何だったんだろう : ちに気が付いてよかったわ。鈴も郁美ちゃんのこと好き こいけど、バカにされそうだからやめておこう。 「郁美ちゃんは、鈴なんかよりもっと真剣だったよ。郁みたいだし。なんか、肩の荷が下りた感じだわ」 私の知らないところで、さやかちゃんも色々悩んでい 美ちゃんの気持ちに全然気づいてない鈴に、告白してい たみたいだ。本当にさやかちゃんは、晴れやかな顔をし いのかすごい迷ってた。鈴を好きなのにその気持ちを伝 えられなくて、でも気づいて欲しくて、鈴の気を引こうていた。 それとは逆に、私はどんどん気が重くなっていく。 と色々やってた。それなのに鈴は全然気づいてなくてさ。 「私、ど , っしょ一つ : 一時期諦めようとしたこともあるみたい。でも、鈴のこ 「どうしようって、まだ迷ってるの ? 」 とを本気で好きだったから、たとえ振り向いてもらえな

2. 咲き乱れしは百合の花

「ううん、そうじゃなくて。私今まで郁美ちゃんに、酷「あのね、鈴・ いことをしていたのかもしれない」 さやかちゃんは、相談したときと同じようにあきれた 私は郁美ちゃんの気持ちを無視し続けてきた。郁美 表情で眉間を押さえた。 ちゃんは傷ついているはずだ。 私、変なことを言っただろうか。 はか。郁美ちゃんは、そんなこと思ってないって。そ「鈴は今、郁美ちゃんを好きだと自覚した。そうで れどころか、鈴に気持ちを気づいてもらえて、ちょーハッしょ ? 」 ピーって感じよ」 「 , つん」 「そうかなワ・」 「そして、郁美ちゃんも当然鈴が好き、ここまではオー 「そうよ」 さやかちゃんが明るく言うので、私も少しだけ心が軽「うん、うん」 くなった。 私は首振り人形のように、ぶんぶんと縦に大きく首を 「さやかちゃん」 振った。 「んワ・」 「それでなんで告白されるの待ってにゃならんのよ。鈴 「私、今なら郁美ちゃんを受け入れられると思う。私も は仮にも上級生でしよ。アンタから決めなさい ! 」 郁美ちゃんが好き。大好き」 さやかちゃんは、ビシッと人差し指を私に突きつけた。 ああ、やっと自分の気持ちに整理がついた。私は自分「ええええ。私からあ」 でも信じられないくらいに、郁美ちゃんが好きだったん それはなんだか、凄く恥ずかしい。 「そうよ。郁美ちゃんの気持ちを無視し続けて悪いと 「そっか。なら晴れて両思いになったわけだ。めでたい 思ってるんなら、鈴から告白して喜ばせてあげなさい」 ことじゃない。私は応援するよ」 コつうう、わ、わかったよお」 さやかちゃんが両手を叩いて、につこりと笑った。 やつばり、それくらいのことはしないとダメだよね。 「ありがとう、でも、郁美ちゃんは告白するのは、まだっ 「よしよし。そうと決まれば、郁美ちゃんから告白され て言ってたし : : : 」 る前に、さっさと行ってきなさい」

3. 咲き乱れしは百合の花

「そ、そうなんだ、ありがとう。でも、私たちはずっと 郁美ちゃんの気持ちは本物だ。 一緒にいられるわけじゃない。来年には、私は一足先に こんな表情にさせることができるのは私だけ、そう 卒業してしまう。そうしたら、嫌でも離れ離れになっちや思っていいんだよね。 うよ。郁美ちゃんは、私のことなんて忘れてしまうかも 「郁美ちゃん、私のことそんなに好き ? 」 しれない。郁美ちゃんは、私のいなくなったこの学園で、 別に好きになる人を見つけるかも : 郁美ちゃんは即答した。 「そんなことはありません ! 」 「私たちの間には大きな問題がいくつもあるけど、それ 郁美ちゃんが、大声で私の声をさえぎった。 でも私を好きでいられる ? そばに居続ける事ができ 「私が好きなのは、鈴先輩ただ一人です。たとえ離ればる ? 」 なれになったとしても、他の人に心を奪われたりするこ 「できます。鈴先輩と一緒なら、どんな問題も乗り越え とはありません。それに、鈴先輩が卒業したって会えなて見せます。私達は女同士で、こんなのいけないって思っ くなるわけじゃなし 」。令先輩が許してくれるなら毎週 たことも、何度かありました。でも、鈴先輩を諦めるこ だって、いえ、毎日だって会いに彳きます」 となんてできなかった。鈴先輩が好きなんです。どうし 「郁美ちゃん : : : 」 よ , つもないくらい。 : 鈴先輩と一生添い 私は郁美ちゃんの迫力に、ただ圧倒されていた。 遂げたい」 郁美ちゃんは普段、これほど大きな声を出すことはな 髪が短くて、スポーツが得意で、男の子のように騒 一瞬にして、顔が真っ赤に染まったのがわかった。頬 いだりするように見えるけど、とても女の子らしいとい を押さえる両手が熱い。 うことを知っている。 今、凄いことを言われてしまった。と 礼儀を重んじて誰にでもやさしく、気遣いを忘れない。 いうか、言わせてしまった。 いつも静かに私のことを見ていてくれる、そんな子だ。 告白なんて目じゃない。あれでは、プロポーズじゃな ゝ、 0 その郁美ちゃんが、普段見せることのない必死な表情 し、カ で私に迫っている。 一生添い遂げたいだなんて、ああ、顔から火が出そう。

4. 咲き乱れしは百合の花

「郁美ちゃんが、鈴のこと好きだっていうのでしょ ? じゃないけれど、今までと同じように接するのは難しく 鈴以外、みんな知っているわよ」 なったと思う。絶対に意識してしまう。 「えー 「郁美ちゃんのことだってわかってるならさ、私達の問 そ、そんなこと全然気が付かなかった。もしかして私題もわかるでしよ」 が鈍いって、このことだったのかな・ 「問題って ? 」 「でも、郁美ちゃんはそんな様子全然見せてなかったと さやかちゃんは、何のこと ? って可愛く首を傾けた 田っけど」 けれど、目が笑っている。これはわかってていってるん 「何言ってるのよ。郁美ちゃん、ずーと鈴にアプローチだ。さやかちゃんは意地悪さんだ。 してたわよ」 「女の子同士だってこと ! 」 あうー なんか、どんどん新事実が発覚していく。 「そうね、それは確かに問題ではあるわね」 「毎日、鈴とお昼するために上級生の教室来るしさ、廊 私がストレートに言うと、さやかちゃんは少し真面目 下で会えば友達ほったらかしてまで鈴と話すしねえ。極 な顔になって頷いた。顔の前で組んだ手に顎を乗せ、真 めつけは、頻繁にくるデートのお誘いね。ニプチンの鈴 剣な眼差しを私に向ける。 相手に、良く頑張るなって思ってたものよ」 「でも、私はそういうのアリだと思うけどな。この学園 「そ、そうだったんだあ」 はさ、エスカレータ式だから小等部から高等部、はては 郁美ちゃんは、ただ純粋に私のことを慕ってくれてい 大学まで女の園じゃない。異性との出会いがほとんどな るものとばかり思ってた。私は部活動に入ってなくて、 いからさ、一人身のままずーと過ごす人も多いわけよ。 下級生と知り合う機会なんてなかったから、郁美ちゃんその中で女の子同士とはいえ、恋人が出来るのはいい と仲良くなれたことは凄く嬉しかった。だから、郁美ちゃとだと思うけどね 。ゝい経験になるでしよ」 んのことを可愛がっていた。そう、あくまで可愛い後輩「いい経験になるって、さやかちゃんは当事者じゃない として。 から、そんなこと言えるんだよお」 でも、郁美ちゃんは私とは違った思いを抱いていたん「ま、そうかもね」 だ。それで郁美ちゃんのことが嫌いになったりするわけ 私の言葉を、さやかちゃんはあっさりと笑って肯定し

5. 咲き乱れしは百合の花

はつ、まさかさやかちゃんが言うように、告白だったて言ったほうがいいのかな。それとも、こ、 りして。だったらどうしよう。言われる前に言わなくちゃ。ちゃったほうがいいのかな。 こ、告白 ? まだ心の準備ができてないよ。 私は視聴覚室の前で大きく深呼吸をして、勢い良く扉 あー、心臓がバクバクしてきた。 を開けた。 「あのつ、鈴先輩」 「あ、鈴先輩つ」 「は、はひっ」 入るとすぐに、郁美ちゃんが笑顔で出迎えてくれた。 突然、郁美ちゃんがアップでせまってきて、心臓がロ その笑顔を見るだけで、私の胸の鼓動は早くなってしま から飛び出そうになってしまった。 う。私はもう、郁美ちゃんの虜になってしまっていた。 「明日のことなんですけど」 「ま、待った ? 」 平静を装うとするけど、どうしても意識してあがって「明日 ? ああ、バスケの試合だよね ? 」 「はい。鈴先輩、見に来ていただけますよね」 しまう。 「うん、もちろん」 「いえ、私もさっき来たところですから」 「それでですね。私、試合頑張りますからっ」 「そ , つ」 「わわわっ」 「それで、お話というのはなんでしよう」 いきなり、郁美ちゃんは私の手を握り締めた。いつに 「ふえワ・」 なく真剣、というよりはテンパった感じで口調が早く 「さやか先輩から、鈴先輩がここで何か話があると聞い なっている。 て来たのですが」 「試合には絶対勝ちます。チームメイトの誰よりも活躍 してみせますから ! 」 さ、さやかちゃんに騙された。 「一つ、 , つん」 きっとそうだ。私がなかなか告白しようとしないから、 「そうしたら、鈴先輩に伝えたいことがあります」 お膳立てのつもりなのだろう。 郁美ちゃんの手に力がこもる。 「え、えーと」 うわっ、これはマズイ。郁美ちゃん告白するつもりだ。 どうしよう。素直に、これはさやかちゃんの陰謀だっ こ、告白し

6. 咲き乱れしは百合の花

「つて ! えー デートってそんな。 「それはそうだけど、いきなりすぎて困るよお」 私は、驚きのあまりその場に立ち上が : : : れなかった。 ああ、私は今どんな顔をしてるんだろう。きっと間抜 郁美ちゃんが私の肩を、しつかりと抑えてくれていた。 けな顔をしているに違いない。頬が熱を帯びていくのが 「鈴先輩、それではさっきの繰り返しになってしまいま自分でもわかる。相手が女の子とはいえ、告白されたの なんて初めての経験だ。 足元には少しではあるけれど、中身の人ったコップが 「鈴先輩、私の気持ちは理解していただけましたよね ? 」 「う、うん。多分 : : : 」 「あ、ありかと一つ」 大好きは愛してると同じ意味で、お出かけはデートで 肩から手を離しても立ち上がらない程度に落ち着いた そこまで言われたら、 いくら私でも理解できる。 のを見計らってか、郁美ちゃんは手を離してくれた。 「鈴先輩、お返事というか、鈴先輩の気持ちを今聞く気 「で、でも、デートってそんな。それに、思い出したけ はないです。突然すぎるでしようし、私も告白するのな ど、私のこと大好きなとかいってなかった ? 」 らもう少しちゃんとしたいですから」 「言いました。この場合の大好きは、愛してると置き換「う、うん」 えていただいても結構です」 返事を今聞かれないのは助かった。頭の中がぐるぐる 真顔でしれっと言ってくれる郁美ちゃんを、私はロをしていて、とてもじゃないけどまともな返事ができそう ばくばくさせながら見つめるしかなかった。 「あ、愛してるだなんて、そ、そんなこと急にいわれて「今日のところは、これで帰りますね」 、も・ 「あ、うん」 状况に頭も口もついていかず、しどろもどろになって 郁美ちゃんは今度こそ荷物を肩に下げて、失礼します しま、つ。 といって部屋を出て行った。 「私も、まだ一一一〔うつもりはなかったんですけど、鈴先輩 私は玄関まで見送ることも忘れ、部屋に座りつばなし がちゃんと言わないと納得してくれそうになかったもののままで、郁美ちゃんの出て行ったドアを呆然と見つめ

7. 咲き乱れしは百合の花

翌日、私は朝一番でさやかちゃんに相談してみた。す「何が ? 」 ると、さやかちゃんはあきれたような表情で眉間のあた 「その、親に紹介しないといけないのかなあとか、卒業 りを押さえた。 した後も付き合ったままでいいのかなあとか、もっと もっと年をとっても、一緒にいられるのかなあとか」 「鈴う、あんたほんとはわかってるんでしょ ? 」 「わかってるって ? 」 「ぶつ」 「自分の気持ちょ、き・も・ち」 さやかちゃんは、私の話を聞くなり吹き出した。こっ ちは真剣だっていうのに、さやかちゃんはとっても失礼 「鈴も、郁美ちゃんのこと好きなんでしよ。郁美ちゃんな人だった。 「あっはははは。あんた、そんな先のことまで考えてた が鈴を好きっていう気持ちと同じ好きね。違う ? 」 「ちが : : : わないかもしれない・ の ? あーはつはつはつはつはっ ! 」 そう、私だってもう自分の気持ちに気がついていた。 さやかちゃんは、とうとうお腹を抱えて笑い出してし でも、気がついてないフリをしていた。だって、好きにまった。 なってはいけないのだから。この気持ちには、気がつい 「他にもいつばいあるんだよお」 てはいけないのだから。 「わかった、わかった。ぶぶつ」 郁美ちゃんと一緒にいるのは楽しくて、週末のお誘い さやかちゃんは目に涙が浮かぶほど笑いながら、私の は嬉しくて、姿を見つけるたび胸は高鳴った。ただそれ肩を強く何回も叩いた だけ。それ以上の感情は封じ込めてきた。持たないよう 「 , も , つつ」 にしてきた。 「大丈夫だって。鈴が本気で考えてるってことは、わかっ それでよかったはずなのに たから」 もう、我慢するのも限界に近い 「ほんとにいワ・」 自分の気持ちに、素直になっていいのかな。 とてもじゃないけど信じられない。 「うん。だけどね、郁美ちゃんを見くびっちゃいけない 「ねえ、さやかちゃん。もし、付き合うことになったと したら、どうしたらいいのかな」

8. 咲き乱れしは百合の花

ロ登場人物紹介ロ ロロロ星の輝きに包まれてロロロ 優 ( ゆう ) ロロロ少女は恋をするロロロ 優になっかれて悪い気分ではなさそう。 面倒見のよい女子大生 皐月 ( さっき ) にあっているところを皐月に助けられた ・お嬢様学校に通う女子高生。電車で痴漢 。女子高生の 吸血鬼退治を依頼されアンジェリカこ出会う。 カンナ・・・魔物退治をしながら世界を旅してまわっている。 ロロロ B 1 0 0 d P r i n c e s s ロロロ 朝自分の隣に立つみゆきが少し気になっている。 ・ちょっこ古風な感じのする女子高生。毎 柚子 ( ゆずこ ) ムうのを日課にしている。 柚子に△ 社会人三年目。毎朝決まった時間にを出て みゆき ロロロバス停の少女ロロロ が特定の部活には人。ていない。鈴の為なら何で宅する。 郁美 ( いくみ ) ・・・鈴のここが大好きな後輩。スポーツ万能だ なぜだか後輩の郁美に慕われる天然ポケ娘 鈴 ( すず ) アンジェリカ 吸血の少女。はじめはカンナに敵視され ていたが、今ではすっかり仲良しに ? 5

9. 咲き乱れしは百合の花

ぶぶつー 「悪かったって。郁美ちゃんもゴメンね」 せつかくのお茶が口から勢い良く噴出していく。霧状 なぜか、郁美ちゃんには手を合わせて謝るさやかちゃ になったお茶は、目の前こ 。いた郁美ちゃんに降り注いだ。んだった。 「ゲホッ、ご、ごめん。ケフケフッ」 「いえ、気にしないで下さい。たいした事ありませんか お茶を拭かないと制服がシミになっちゃう。そう思っ てハンカチを探すが、なかなか見つからない。 「郁美ちゃん。上級生だからって遠慮しないで、思いっ 「鈴先輩、私は大丈夫ですから、鈴先輩がまず落ち着 いきりさやかちゃんを怒っていいんだよ」 てください」 「いえ、ほんとに大丈夫です。これくらいなら、家です 「つ、、つん」 ぐ落とせます。予備の制服もありますし」 私の肩を掴み、につこりと微笑むその姿はまるで天使 郁美ちゃんのセーラーカラーには、お茶で出来てし のよう。今度は自分のコップの中のお茶を飲み干し、よまった点々のシミが薄っすらとできていた。すぐに落と うやくスッキリできた。 せると言うけれど、跡が残ったりしないかちょっと心配 「うーん、郁美ちゃんは大人だねえ」 「さやかちゃんっ ! 」 「郁美ちゃんはそれよりも、鈴に意識してもらえたこと ようやく鞄の中から探し当てたハンカチで、郁美ちゃのほうが嬉しいわよねえ」 んにかかったお茶を拭きながら、さやかちゃんを睨みつ 「そう・ : ・ : ですね」 ける。 さやかちゃんの言葉に郁美ちゃんは少し顔を赤らめ、 こうなった原因を作った張本人は、何事もなかったようつむいてしまった。そんな顔されると、こっちまで恥 うに昼食を再開していた。 ずかしくなってしま、つじゃないか 「ゴメン、ゴメン。そんなに驚くとは思わなかったのよ」 どうやら、郁美ちゃんはポーカーフェイスを装ってい さやかちゃんは、たいして悪びれもせず謝った。 ただけで、意識していないというわけではなかったよう 「もうつ、苦しかったんだからね。それに、郁美ちゃんだ。 にも迷惑かかってるんだから ! 」 「しつかし、間接キスくらいで騒ぐなんて、あんたは小

10. 咲き乱れしは百合の花

ディフェンスも跳び、シュートを防ごうと手を伸ばす。 郁美ちゃんの嬉しそうな笑顔に釣られて、私も顔がほ ディフェンスの手がボールに触れようとしたその時、 ころぶ。 郁美ちゃんは空中で体勢を変え、ディフェンスのわきの 「ふふつ、そんなことないよ」 下から手を伸ばしシュートを放った。ポールが、音を立 「あっ、私練習に戻りますね。あまり抜け出してると、 てずにゴールに吸い込まれた。 怒られちゃいますから」 「キャーツ 「 , つん」 周りで見ていた生徒から、歓声が沸き起こった。 「鈴先輩、試合見に来てくださいね」 私も一人で手を叩きその場で飛び跳ね、郁美ちゃんの コつん。絶対見に行くよ」 プレイに感動していた。 「それでは失礼します」 ああ、郁美ちゃんは格好良すぎる。 郁美ちゃんは、来たときと同様、勢い良く戻っていっ 「鈴先輩つ、やりました ! 」 すぐに郁美ちゃんが駆け寄ってきて、フェンスを握っ 郁美ちゃんが戻ってからも、私はしばらくその場に居 ている私の手を握りしめた。 続けた。さっきまで郁美ちゃんに握られていた手の熱が 「あっ・ 冷めない。それどころか、全身に熱が広まってしまった ようだ。 郁美ちゃんの汗ばんだ手の平から、熱い体温が伝わっ てくる。 胸も、締め付けられたように苦しくなってくる。この 「止められるかと思ったけど、なんとかシュート決めら感覚はなんなのだろう。郁美ちゃんを見ていると、余計 れました」 酷くなってしまう。きっと病気だ。病気に違いない 「う、うん。凄かったよ」 明日また、さやかちゃんに相談してみよう。 郁美ちゃんに握られた手が、火傷しそうなほどに熱を その夜、私はなかなか寝付けなかった。 帯びてくる。 「決められなかったら、鈴先輩に合わす顔がなかったで 「うーん、なんちゅーかねえ」