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検索対象: 時空のデーモン めもらるクーク
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1. 時空のデーモン めもらるクーク

181 第 3 話十年のお預かりで・・ 「だって : ・私はもう、あいつに三年も会えてないんだよ ? だから、あの時のこと、よく 思い出せないの = 「そんなの : : いつつも酷いことしてるに決まってるじゃない 一度だって謝ったこと なんか、あるわけないじゃない」 「会いたい : ・会いたいよ、あいつに」 「わ、私、私は : ・にい」 「ねえ私 : ・私は、まだ、あいつに会えるんだよね ? あいつはまだ、私の世界に、いるん だよね ? 「そ、そりゃあ : : って、ちょっと、まさか ? - 「会おうよ、あいつに・ : そして、謝ろうよ ? 」 「な、何言ってんのよー・だって悪いのは : ・悪いのは・ : つ」 「どっちが悪いとかそういう話はしてない。、、 とっちが : ・好きかって、そういう問題 「あ、あいつだって、あいつだって・ : 私に惚れてるに決まってる ! 」 「でも私・ : 私の方から、言っちゃおうよ」 「え、でも、でも : : え 5 盟〕」 「だって、私とあいつだったらさ、私から言わないと、どうしようもないよ ? 」 「そ、そんなこと言ったって、そんなこと、言ったってさあ : ・そういうの、男から言うべ

2. 時空のデーモン めもらるクーク

125 第 3 話十年のお預かりで・・・ 梅村千秋さん ( % 歳、女性、会社員 ) の御相談 ( 2 回目 ) 。 いえ、もういいです。元々、それほど期待していたわけではありませんし。 そういう意味で言ってるんじゃないんです。お気になさらず。え ? ああ、少しはそう いう気持ちもあるでしようね。正直、こちらの印象は、芳しくないですし。いえ、ですか : わかりました、そこまでおっしやるなら、話『だけ』はしましよう。 そもそも、私の相談内容には、どうしようもない問題があるんです。普通ならこんなこ と、こちらのような・ : いえ、ですから、こういったカウンセリングを受けたからといって 解決する問題ではないという意味で : ・どうしてマスターはここの名前を出したのかしら ? わかりました。そこまでおっしやるのでしたら、話を続けます。 そうですね、最近はちょっと・ : 眠れない日が続いて。食欲も、ええ、以前と比べると。 お酒は・ : はい、増えてます。泥酔すれば、少しは眠れるので。それでも、部屋に戻って、 一人になると、もう駄目ですね。だから毎日毎日、一人でお酒を飲んで、お店で酔いつぶ れて : ・え ? ああ、大丈夫。こんな面倒な女をどうにかしようなんて人、いませんよ。だっ

3. 時空のデーモン めもらるクーク

180 「他にもあるわね。これは、高三の、最後の大会前の思い出かな ? 「そ、その話は・ : も、もういいよ : ・やめてよお ! 」 「あ 5 あ、その時もまったく同じバターンだったんだ・ : 彼がこそこそバイトしてプレゼン トしてくれたバッシュは、ちゃんとサイズ合ってた ? 」 「友達 : ・友達かあ・ : 千秋にとって、すつごく都合のいい人だったんだね、彼は」 「そんなふうに : ・そんなふうに言わないでよ」 「それなのに : ・さくっと忘れてしまえるんだから、その程度の男ってことなのかな ? 」 しい加減なこと言うなー・」 「あいつのこと知りもしないくせに、 「そうよ、私は、あいつのこと、何でも知ってたはずなのに」 「あの、ちょっと苛つくせいで、いつの間にか悩みを忘れさせる喋り方とか ? 」 「肝心なこと言わないせいで、いつつも私に怒られて、それでもめげずに友達続けてくれ るところとか」 「 : ・友達のまま、続いちゃってるけどね」 「ねえ私 : ・ ? 私は、あいつに、少しでも報いたのかな ? 」 「なによ、その自信のない態度は ? 私らしくもないー

4. 時空のデーモン めもらるクーク

121 第 3 話十年のお預かりで・・・ 「そ、そう : ・」 「昨年までは、ペパーダイン大学に渡り、卒業後、日本へと戻ってきて、このクリニック を開業したという訳です」 「なんですか : ・」 「そもそもこのように臨床心理学を極めようと思い立ったのは、やはり、中学時代に半年 間スイスに留学したことがきっかけでして」 「はあ : 「さて、それじゃ、早速お話を伺いましようか ? 遠慮なさらず、心にあるものを全て吐 き出して下さし 、。私は何時間でも黙ってお付き合いしますよ ? 「言いにくいことでも、まずは勇気を持って話してみることです。そうやって、一人でし まい込んで悩むだけでは前に進むことはできません。まずは一歩を踏み出すことです ! 」 「とにかく何でもいいから喋ってみてくださいよ。世間話だってかまいやしません」 「それじゃ、また私の方から、実はこれ、本当にあった話なんですけどね ? 」 「あの : ・」

5. 時空のデーモン めもらるクーク

「う—」 「だいたいそんなことしたら犯人隠匿罪だ」 「そんなのどうだっていいじゃん。だってあたしは : 「よくない。大体、どうして出逢って一時間の人間のためにそんなリスクを冒さなきゃな んない ? 」 「そうですよね : ・もう、逃げたくても、逃げようなんかないんです 「おじさん : ・」 二人の、熱は籠もっていても、身のないやり取りに、男は、絶望の色を更に深め : 「もういっそ、ひと思いに : 」 「「やめなさい」」 人生そのものを諦めようとしたところを、相変わらず熱い二人に全面却下される。 「冗談でもそんなこと考えたら許さないからね ! だいたい、『あきらめる』なんて言葉 ーセントだってありはしないんだからー に肯定的な意味なんか 1 パ 「今あんたがひと思いにピーするとしたらナイフだよな ? そしたらここの床誰が掃除す ると思ってんだよ ? メリットと言えば訳あり物件になって次回更新の時に家賃が値下が りしてるってことだけだろ ! 」 「下げないわよこれ以上ー

6. 時空のデーモン めもらるクーク

そして俊介は、診察室から出て行く吉崎を、少しだけ苦い表情で送り出す。 手元のカルテに挟まれていた、男が一人で写っている観光地の写真を見つめながら : 「あ : ・吉崎さん」 苑宮ビルから出てきた吉崎を、明るく澄んだ声が呼び止める。 見ると、制服姿の見知らぬ少女が、にこにこと微笑みかけている。 「その・ : 大丈夫、でした ? 「あなたは・ : ? 「あ : ・そか、会ってないことになっちゃったんだ」 「はあ ? 」 「あ—、三階クリニックで助手をさせていただいている苑宮空子って言います。吉崎さん のことは先生から色々と伺っていまして : 「は、はあ : ・」 吉崎は、目の前で屈託なく笑う少女に、怪訝そうな表情を向ける。 メンタルクリニックでの相談者の情報を、たとえ助手とはいえ、簡単に漏らしてしまっ ていたカウンセラーにも、少し不信感を抱いたようだった。

7. 時空のデーモン めもらるクーク

218 二人の脳裏に、ほんの少しのタイムラグを経て、同じ光景が浮かぶ。 年齢は三十歳から四十歳くらい、身長 170 センチから 175 センチくらいでやせ型、 灰色のスーツ姿の、泣きそうな表情をした中年男の姿が : 「あんなふうに、人を殺すまで追いつめられちまうことだって、あるんだぞ ? 」 「それでも : ・あたしたちだけは、見てたよね ? 」 灰色のスーツにこびりついていた乾いた血は、今は存在しない過去。 男の家族への郷愁と引き替えに、無理やり起こした奇跡。 「あの時は、ちょっとだけしか、助けてあげることできなかったけど : ・けどいっかは、も う一度、家族とやり直せるくらいまで立ち直る手伝いができたらいいよね ? 」 「空子 : 「ね、俊介くんもそう思うよね ? 悪いのロだけだもんねえ ? 」 「悪いところが『どこをどう切っても善人』なだけのお前に言われたくないわ」 「あはは : 自嘲気味に笑う空子は、けれど少しも自分を悔い改めようとはしな、 「さ、とっとと行くぞ。早くしないと、めぼしいもんなくなってるかもしれんからな」 「そだね。脇差のいいのないかな ? 鉛筆削るのに使うの」 「相変わらず微妙なアイテムを狙う奴だな :

8. 時空のデーモン めもらるクーク

「確かに何やってんだと思うことは多々あるが : ・」 いつもながら彼らの″仕事に対するポリシー〃は、地平の果てまで平行線を辿る。 それでも二人が、これまでなんとか二人で続けられてきたのは : 「なあ、空子 : ・俺、思うんだけどさ」 「ねえ俊介くん、やつばりこの仕事は : 「俺たちが断ったら、彼のお母さんはどうなるんだろうな 「お母さん、今の職場はもう長いから主任まで任されてるらしいんだな 「へえ : ・偉いんだね」 「偉いと言っても所詮パートタイマーだ。給料はほとんど変わらない、 「そうなんだ : ・」 「けれど責任は大きくなった。朝は誰よりも早く職場に行って商品のチェックから掃除ま でこなし、夜は誰よりも遅くまで残り、伝票の整理や明日の仕入れの確認まで : ・」 「うわあ : 「だから朝の五時には家を出る。で、帰りは午前様が当たり前。中小スー ーのパートタ イマーに労働基準法が適用されないのを見咎めるフィルターはまだこの日本にはない」

9. 時空のデーモン めもらるクーク

116 何しろこの一週間、『ちょっと右手が使えないだけ』の空子に対して見せた俊介の負い 目は並大抵ではなかった。 それこそ、まるで空子が神経を切ってしまい右手不随となったかのような気の使いよう で、微笑ましさを通り越し、痛々しくさえあった。 どうやら、少し前に触れたストーリーに妙に感化されたらしい 「にしても、やつばり全然カ戻ってないね。治癒能力が人間とおんなじくらいなんだもん」 「やつば、その : ・元通りの力を取り戻すと ? 「うん、首を切り落とされても高笑いできるくらいにはなるよ ? 」 「それもやだなあ : 苑宮ビルは、その規模に似合わぬ光熱費の低さにも関わらず、生意気にもケープルテレ ビを導人している。邦画チャンネルは空子のお気に入りだ。 「ま、でも、そこまではともかく、ある程度の力は取り戻しておかないとね。ずっとこっ ちにい続ける訳にもいかないし」 「と言いつつ、もう七年になるんだけどね 「ああ : ・」 「来週あたりには、公園の桜も咲いてそうだね」

10. 時空のデーモン めもらるクーク

173 第 3 話十年のお預かりで・・・ 「じゃあ、今日のカウンセリングにはどんな意味があるっていうの ? 「そんなこと、君に言う必要があるの ? 「今までは全部説明してくれてました。インフォームド・コンセントとか言って 「ま、そうなんだけどね : ・」 「先生 : ・ ? 今日の俊介の、昨日までとはあまりに違う不誠実つぶりに、一度は払拭したはずの不信 感が、また増幅し始める。 だから千秋は、焦る。 忘れたはずの嫌な汗が噴き出てきて、鼓動を刻むリズムがスビードを上げていく。 なぜなら、一度積み上げた信頼関係を失うのは容易いから。 それは、七年一緒に過ごしてきた、親友どころか、半身と言っても良かったかもしれな い親友をたった一日で失った過去を見ても明らかなことで : 「ね、ねえ先生、ちょっと待っ : ・」 「なあ・ : もうやめない ? だから千秋が、その雰囲気を避けようと、今度こそ自分から向き合おうとした瞬間 : 「お互いがお互いを深く理解し合ってるなんて思ってたのは、結局あんたの方だけで、