電話 - みる会図書館


検索対象: 時空のデーモン めもらるクーク
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1. 時空のデーモン めもらるクーク

そのことを聞いた三十分後、私の財布の中の千円札は姿を消し、代わりに・ : ほら、この ナイフ、値札ついたままなんですよ : ・三千と百五十円。亀山の圏時間営業のホームセンター で買ったんです。 自分のことは、ある程度諦めがついていました。それこそ、殴られようが、腕を折られ ようが、果ては命を奪われようが・ : でも、でもっー : ? えっと、なんの話、でしたつけ ? ああ、そうそう、妻と娘。どうしたんでしよう、直前までの話を忘れるなんて。 とにかく、妻と娘 : ・ええ、そうです、別れたとは言え、大事な家族が、私と同じ辛さを 味わうことだけは、どうしても、許すことはできませんでした。 説 幸い、と言っていいのかどうかわかりませんが、その時間、橋本さんがどこにいたのか、 を 道電話ロの会話から、私にはわかっていました。ええ、彼がよく通っている亀山のスナック です。何度かそこに呼び出されたことがあります。 来 だから私は、彼が、店から出てくるまで外で待ち、その後、後をつけて : : ? えっと、呼び止めようと、思っていたんです。 話 第 あれ ? あれ : : 細い路地に入ったので : あ、そうそう。それで、北本院のあたりて

2. 時空のデーモン めもらるクーク

160 「ひょっろひょっろひょっろ 5 」 自由を奪われながらも、何気なく口で千秋の逆鱗に触れてしまう要領の悪い空子の肩や 太股に、巻きついた触手がじわりとせり上がってくる。 電話のベルが鳴る。 二十一世紀にもなって黒のダイヤル式という、今となってはアンティークショップくら いでしかお目にかかれないのではという電話機から、けたたましいベル音が鳴っている。 ビルの窓から差し込む、物憂げなタ陽に反発するその音を遮るために、俊介は、その黒 光りする重い受話器を取り上げ・ こちら三階・ : 」 『ふえええええええ 5 ん ! 』 「一つあつ」 電話口から届く、けたたましい泣き声に耳をやられた。 『しゅ : ・俊介く—ん ! ちょっとちょっと聞いてよお : ・つ、酷いんだよ千秋さ—ん』 「だからそうやって鬼嫁にいじめられた姑のごとく開口一番泣き言を垂れるな」 『せめて逆にしてよ—に』 それは数日ぶりに聞く懐かしい声。

3. 時空のデーモン めもらるクーク

佃力ししのカ、誰 : こも答えようのないこの状況で、突然鳴り出すのは、先ほどフォーム に人力した番号を持っ携帯電話。 「も、もしもし、こちら河原 : : : ・ : 」 「あ—、すいません、警察ですが : ・実はお宅の息子さんが交通事故を起こしまして : 「ウチの息子は僕一人で、しかもそれは一年前の : ・ああつ」 その妙な電話に受け答えをしている最中に、ディスプレイが異様な音とともにプラック アウトした。

4. 時空のデーモン めもらるクーク

182 きでしょ」 「だって、だってさ : ・あいつは、呆れるくらいに弱気で、そのくせ強情なんだから、待っ てなんかいられないよ」 「私は知ってるの : ・私があいつに呼び出されたとき、本当は、ものすごく緊張して、前の 晩、全然眠れなかったこと」 言うなあー・」 「これが最後のチャンスなの : ・私は逃しちゃったけど、私なら・ : 」 コっ : こっ : こっ一つ一つ一つ、つ : ・」 、素直になってよ ! 」 ーセントでいし 「お願い私 ! 今までよりほんの 1 「あ 5 も一つつー・」 電話のベルが鳴る。 二十一世紀にもなって、黒のダイヤル式という、今となってはアンティークショップく らいでしかお目にかかれないのではという電話機から、けたたましいベル音が、鳴ってい る。 ビルの窓から差し込む、物憂げなタ陽に反発するその音を遮るために、俊介は、受話器

5. 時空のデーモン めもらるクーク

102 慢性的な大渋滞に見舞われている。 つまり、空子の乗ったタクシーも、本来なら十分で到着できる距離のところなのに、実 際にかかる時間など読めたものではなく。 「どこを・ : 使う ? 俊介の目は、踏切の半径一キロ周辺に範囲を広げ、とある条件に合致する場所をくまな く探し回る。 「あ、俊介くん ? あたし、今麻田に入ったところー ボロボロに傷ついたタイヤの跡だらけの格好で、警察関係を名乗り、思い切り急がせた 挙句、数カ所に喧嘩腰で電話をかけまくる、日本語が妙に上手い謎の外国人の少女という 珍客を乗せてしまい、つぐみタクシー運転手佐野義則は泣きそうになりながらハンドルを 握っていた。 「駄目だよ、柳鉄本社も神宮南駅も全然信用してくれないの : ・そりや、実際まだ " そうい う状況″になってないからなんだろうけど・ : 」 しかも電話の内容が『今から十五分後に大惨事』だの『これは決まりかかってる未来』 だの、テロリストか自称宇宙の戦士を彷彿とさせるのがさらなる恐怖を掻き立て、助手 席にまではみ出して置かれている長い角材が、また更に少女の意味不明さを際だたせてい

6. 時空のデーモン めもらるクーク

電話ロで、素っ頓狂な声を上げた後、俊介がしばらく黙り込む。 「・ : ちょっと」 「な、なに ? 」 「何かあったの ? 」 「な、何かって : ・何か ? 」 たったそれだけの何気ない出来事に、クークは言いようのない不安を覚えた。 「さっき、『あ』て言ったでしょ『あ』てー・」 「あ ? あ、あああ 5 」 「なんなのよ ? 気になるよそういう態度 5 何しろ、俊介のロ数が少ないときは、ロクなことを考えていないというのを経験から 知っているから。 「さてと・ : それじゃ、そっち戻るね。やっと日が暮れたし」 「あ ? 」

7. 時空のデーモン めもらるクーク

108 「やったなあ : ・本当に車にも線路にも当てないとは思ってな : ・信じてたぞ空子 ! 」 俊介の、胡散臭い絶賛の声に応えるように、電話口からは何かブップッと呟く声が聞こ える。 それはいつものように、調子のいい彼の誉め殺しに、呆れつつも納得してしまう少女 の、ちょっとした怨嗟の声。 だと、俊介も最初は思っていた。 『ごはん : ・』 「え ? 『ごはん、まだ ? 』 『はれえ・ : あんた、だれえ ? 』 「空子・ : ? 」 受話器の先から、間違いなくクークの声をした、明らかにクークらしくない、呆然とし た声が届くまでは。 『んと : ・えと : ・ : なんだっけ ? 』

8. 時空のデーモン めもらるクーク

190 「わかった・ : 明日の朝ご飯までには帰るよ」 「別に頼んでないけどな ! 」 「ふふ・ : じゃね。おやすみ」 「・ : おやすみ」 俊介は明日の、そして空子は三年後の再会を期して、電話を切る。 見上げた夜空は、相変わらず周りの明るさにあてられて、星はまばらで。 近くの国道から、トラックの騒音が絶え間なく聞こえてきて、とても夜桜を楽しむ風情 ではないこの街で : 「お仕事お疲れさま・ : かんば 5 い ) 」 人より過ぎた力を持った少女は、今日も、人としてのささやかな楽しみを満喫する。 黒ゥーロン茶の残りと、カルシウムのサプリに加え、とっておきのビタミン錠剤で。 第 3 話完

9. 時空のデーモン めもらるクーク

166 「だから、ごめんって・ : 」 と、さつくり軽く謝る空子は、実はとても俊介には見せられないくらいに、とてつもな く切ない表情で唇をかみしめていた。 「で : ・どうすんだよ ? 『わかんない : ・』 「あのなあ : ・」 ほんの誤解で、一瞬にしてトーンダウンをかました電話ロの声に戸惑いつつ、俊介は、 空子の気まぐれの糸口を探し続ける。 「そろそろ終わらせないと、こっちが上手くやっちまうぞ ? 」 『 : ・うまくやれそうなの ? 』 「おお、俺にしては結構いい感じだぞ。やっと彼女とも通じ合えたような気がする」 『よかったじゃん : ・』 「このままだと、お前がなにもしなくても、なんとか契約までこぎ着けることができるか も。三階クリニックの独立採算化も近いかもしれんぞ ? 」 『それでも俊介くんは、彼女の記憶を奪うんだよね ? 』 「・ : 契約済みなんだから当たり前。 こっちだって慈善事業でやってるんじゃないんだ」

10. 時空のデーモン めもらるクーク

189 第 3 話十年のお預かりで・・・ 深夜の、小さな公園の、桜の木の下で。 空子は、携帯電話片手に、″三年後の話し相手″がいるはずの場所を眺める。 その三階の窓には、まだ『三階クリニック』の文字はなく、彼女のいる時間軸が、まだ 元に戻っていないことを示している。 「で、いっ戻ってくるんだ ? 家賃できたぞ・ : 一月分だけ」 「そだね、もうちょっとしたら 「何かやり残したことでもあるのか ? 「花見の最中 : ・早咲きの桜が綺麗だよ」 「もう、こっちだって咲いてるぞ ? 」 「こっちの方が早いよ : ・三年くらい」 「・ : 風邪、ひくなよ」 「ひかないよお : ・人じゃあるまいし」 「明後日までには帰って来いよ」 「明後日って : : あ、そか ! 」 「骨董市と、縁日だ」 「俊介くん : ・」 「それと、餓死しそうなので」