待ち合わせ - みる会図書館


検索対象: ハジマリノオト
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1. ハジマリノオト

暑かった夏も段々と涼しげな秋の気配を強めたある夏の終わりの休日。私はとある駅の 改札前で″ある人〃を待っています。周りには私と同じように人を待つ人々で溢れかえり 時々待ち人を見つけては談笑を始め改札前から立ち去ります。 私は余裕を持ってこの待ち合わせ場所に到着しました。しかし私の待つ人は時間になっ てもなかなか姿を見せません。心配になった私は携帯を取り出して連絡が入っていないか 確認しますーーしかし連絡は昨日した今日の待ち合わせ場所と時間の最終確認の連絡以降 ありません。いつもは時間前に来る人で、遅れるとしても連絡を人れてくれるはずですが 時間になっても来ない。連絡もっかない もしかして何かあったのではないかー - ー・そ うあれこれ悪い方向に考えながら不安になっていると、「おー と私を呼ぶ聞きなれた声 が聞こえます。私は待ちわびた″その人″の声が聞こえた方を向いて、彼女の手を振りな がら私のいる場所へ来る姿を確認すると思わず嬉しくなりました。 「絵里 ! 」 そう私の待っていた″ある人〃とは私の一つ上の先輩である絢瀬絵里です。彼女は この駅で下車して改札へ向かうたくさんの人の波に揉まれながらも少しずつ私の元に近づ きます。「ごめん海未、サークルでちょっと色々あって遅れてしまったわ。連絡しようとし たのだけど携帯の充電が切れてしまって連絡できなかったの」 そして絵里は私の元へたどり着くと、少し息を乱しながら遅れた訳を話してくれました。 私達が音ノ木坂学院スクールアイドルとして活動していた時から時間は流れ、あの秋 葉原で行ったライプから約半年が経ち、私は音ノ木坂での最上級生に、絵里は大学 1 年生

2. ハジマリノオト

になっていました。 「そうでしたか。何かあったのではないかと思って心配しましたよ」 「ごめんね」 「そういえば、サークルといっていましたが、大学の方は順調ですか ? 」 「そういう海未こそ 3 年生で生徒会副会長、それにスクールアイドル、弓道部 : : : 色々と 大変じゃない ? 」 「そうですね : : : 確かに大変ではありますが充実しています。絵里の方はどうですか ? 」 「うーん。私も大変だけどその分楽しいこともあるわね。まあ詳しくは後でゆっくり話す としてーーー」 絵里は話すのを一度やめて辺りを見渡し、目を輝かせてそわそわした素振りで話を再開 します。 「私こういうお祭りに来るの初めてで昨日はなかなか寝付けなかったのよ。さあ早く行き ましよう、海未ー 今日絵里とこの駅で待ち合わせをしたのは、一緒に夏祭りに行くためです。絵里は私の 手を引いてまるで子供の様にはしゃぎながら改札からお祭りが行われている神社の方へ人 夜の波に揉まれながら進み始めました。 の 祭 夏 「でも絵里がこういったお祭りに行くのが初めてだったとは思いませんでした。てつきり

3. ハジマリノオト

「 : : : ありがと : ・ : ・」 そうして今度こそ私と絵里は公園を出て、自宅まで帰るために絵里と待ち合わせをした 駅に向かって歩きだしました。 道路に出ると公園よりも街灯が多くあって絵里も心なしか少し平気になった様です。 「でも、どうして花火が終わった時には平気だったのにいきなり怖くなったのですか ? 」 「だって来た時はまだ少し明るかったし、花火の間は花火の光で明るかったし、終わった 時も平気だったけど、しばらくたってふと公園を見渡してみるととても暗くて、それにと そしたら急に怖くなって : : : 」 ても静かだし : 「ふふふ」 「な、どうして笑うのよ。本当に怖かったんだからね ! 」 「ごめんなさい。でもそれってつまり暗いのが怖いことを忘れてしまうくらい楽しんでも らえたということだと思ったら少し嬉しくなってしまって : : : 」 : もう早く行くわよ」 「 : : : そう、なら仕方ないわね。 絵里は少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに私を引っ張るように歩きだします。 「絵里、もう布くないのですか ? 」 私がそういうと絵里は公園よりは明るくてもまだ辺りは暗いことを思い出して「あっ : : 」と声を出して私の後ろにまわりました。 「早く行きましよう : : : 」 「わかりました。 絵里と最初に合流した駅へ近づくにつれて少しずつ光と人の声が増えていきます。絵里

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・ 4 「どうしてこのような事になってしまったのでしよう : : : 」 そう溜息の混ざった独り言を言いながら私ーー園田海未 , ーーはある晴れた冬の休日の駅 前で″彼女〃ーー西木野真姫ーーを待っています。今日は真姫と″デート〃をする日なの ですが、少し早く着いてしまったようで、待ち合わせの時間までは後分程あります。 ″デート〃といっても、世間一般に言う恋人同士で出掛けるというあの″デート″とは 違います。そもそも何故このような事になったのか、私は真姫を待ちながら事の経緯を思 い出します。 事の発端は一週間程前。放課後の , いの練習の休憩の時に穂乃果の口から発せられまし 「ええ ! ? ラブソングをまた歌いたいですって ! ? 」 予想外の提案に私は思わず大きな声で驚いてしまいました。 「うん。この前みんなで作ったあの曲。あれすつごくいい曲だったからさ、もう一曲別の ラブソングを歌いたいなって思ったんだけど。ダメかな、海未ちゃん ? 」 そんな言葉を聞いた花陽や絵里達も穂乃果の意見に賛同したのか、気づけばみんなはも うすっかり次の新曲はラブソングのムードに : 「 : : : で、ですが、前にも言ったように私には : ・・ : その : : : 恋愛経験 : ・・ : というものがな いので、恋という感情がよく分からないですし : : : それに曲を作る真姫もきっと同じ気持

5. ハジマリノオト

そう真姫に指摘されるまで、朝起きたら入れ替わっていたことですっかり忘れていまし たが今日は平日、ということは学校に行かなければなりません。それに学校を休むとして も私と入れ替わってしまった真姫と電話ではなく実際に会う必要もありそうです。 「そうですね : : : お互いの状況を確認するためにも一度会う必要がありそうですから、 いつも通り〃学校に行きましよう。幸い今日は朝練がありませんから、他のみんなと会う 前にまず二人で会うことにしましようか」 私は自分の考えを真姫に伝えます。もうすぐ大きな大会が近い私達は負荷の多い練習や 練習量を減らして効率のよい練習をするプランを組んでいるため、不幸中の幸いといえば よいのかわかりませんが、今日は朝練がありません。 「そうね、わかったわ。それじゃあいつもの朝練の集合時間に、部室で待ち合わせね」 で「はい、わかりました。それではまた後で」 喉そういって私は電話を切りました。 さて、学校に行くとなれば、時間はあまりありません。急いで支度をしないといけませ あ まずは朝食から。と思って、再びドアノブに手をかけようとして私は再び立ちどまって たしまいました。真姫はパジャマのまま朝食をとるのでしようか、それとも制服に着替えて , な からでしょ一つか : しかし今ははやく学校に行って真姫と会わなければなりません。制 あ 服を汚してしまわないようにひとまずパジャマのままドアを開け、ダイニングへ向かいま 僕した。 ダイニングに入ると、私に気づいた真姫のお母様が私に「真姫ちゃんおはよう」と一一一一口う

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少し短く折られています。試しに履いてみますが、やはり短くて、これくらいのスカート 丈はことりの作るライプ衣装で履くことはありますが、少し恥ずかしいです。しかし折り 直している時間はありません。私は仕方なくそのままスカートを履いて、音ノ木坂学院の 一年生を表す水色を基調にした、青いラインの入ったリボンをつけ、ソックスを履き、プ レザーを着て、姿見できちんと着られているか確認をして、最後に制服とは別に壁にかけ られているグレーのピーコートを着て、手袋をつけます。 そしてスクールバックの中に今日の授業で使う教科書やのノートが入っているか、時間 割と照らして確認し、先ほど使った真姫のスマートフォンや、五線譜のノートなども持っ て、真姫のお母様に家を出る挨拶をするためにダイニングへ行き「いってきます」と言っ てから玄関に向かい革靴を履いて、家のドアノブを開けて家を出ました。 家を出るとピーコートを着ているとはいえ、冬の冷たい風が身体を直撃して寒く感じる 中、私は真姫に一刻も早く会うために学校へと向かう足を速めました。 いつもより速く学校に着くと、私は早速真姫との待ち合わせ場所であるアイドル研究部 の部室へ向かいます。 部室の前に着くと部屋の中からは電気が漏れていません。ということはまだ真姫は学校 に来ていない様です。電気がついていないということはもちろんドアの鍵も開いていませ ん。そこで私は鍵を開けるために鍵が置いてある職員室に向かいました。

7. ハジマリノオト

見るとそろそろ待ち合わせの時間ですが 「真姫、遅いですね : : : 」とそんなことを考えながらいつものように″私″の座席のポ ジションに座って真姫を待ちます。しかしどうしても今の状況に落ち着くことが出来ずに そわそわしてしまいます。 約束の時間を過ぎても、真姫はなかなか来ません。すると廊下の遠くの方で駆け足の足 音が聞こえました。朝練をしている生徒が何か急いだ用でもあるのでしようか。その音は 段々とこちらに近づいてきます。足音は部室の前あたりまで来ると突然止まりました。不 思議に思って私は廊下の方に耳を傾けてみると、足音の代わりに音が消えたあたりで代わ りに乱れた呼吸を整える音を聞こえます。その音も少しずつ小さくなってついに聞こえな くなりました。もしかして真姫なのでしようか。そう思って私は椅子から立ち上がってド アノブに手をかけようとした時「ガチャ」というドアノブを捻る音とともにゆっくりと扉 が開きました。 扉が開くとそこにいたのは、音ノ木坂の制服を着て腰くらいまで伸びたストレートの綺 麗な髪の女性ーー私がいたのでした。 ある程度心の準備をしていたものの目の前に″私″がいるという普通ではありえない状 況に私は思わず取り乱してしまいます。しかしそれは向こうの″私″も同じようで、お互 いに、私は部室の中、″私〃は外で呆然と立ち尽くしてしまいます。しかしこのままでは しけないそう思って私は目の前にしる′私〃に言しかけます。 「あの・ : : ・真姫 : : : ですよね : : : ? 」 そう真姫である私は、 ″私 / に問いかけ・ます . 。

8. ハジマリノオト

「けど : : : 」 しかし真姫は何か授業とは別の不安があるようです。 「けど : : : 今日一日海未として生活できるかの方がよっぽど心配だわ」 そうでした。授業を受ける受けない以前に今日私は今までも真姫として生活してきまし たし、これからは学校という空間で真姫として振る舞わなけれはなりません。もちろん真 姫は今日一日″私″として : 「それは私も不安です : : : 今まで何度も自分を″海未だ〃と言ってしまったりして、怪し お互い気をつけましようね」 まれてしまいましたし : 「ええ、そうね。それよりも早く鍵を返しにいかないと : : : もうホームルーム始まるわよ」 「そうですね」 で そういって私たちは部室を施錠して、一緒に鍵を職員室まで返しに行きます。その途中 僕私は真姫が待ち合わせ時間に遅れて走ってきた理由が、朝目覚ましで起きたら真姫は″私 ″になっていて、わけもわからないまま家で私が朝行っているお稽古や家の手伝いをする よ ことになって結局家を出るのが遅れてしまったため、走ってきたと聞きました。 あ 真姫とお互いの朝起きてからの様子を話しているとあっという間に職員室に着き、私た たちは鍵を先生に返して、お互いの教室へ向かおうとしたその時 「あっ ! 海未ちゃん、真姫ちゃん、おつはよー」 あ そう私達を呼ぶ聞きなれた元気な声がーーそう穂乃果です。スクールバックを持ってい 僕てコートを着ている姿を見ると、もうすぐホームルームだというのに、今学校に来たよう れです。

9. ハジマリノオト

て連絡することは特にないよ」と首を横に振ります。 それを見て真姫は他のメンバーをぐるっと見渡して連絡がないか確認します。確認が終 しいかけたところで わって真姫は「それじゃあーー」と、 「そういえば、今日朝から話し合ってたっていう新曲の方はどうなったの、海未ちゃん、 真姫ちゃん ? 」 真姫の言葉を遮るようにして穂乃果が立ち上がりました。すると穂乃果にことりや凛、 花陽も「そういえば : : : 」と反応して私と真姫に視線を向けてきました。 この展開は正直予想外でした。いくら朝から新曲の打ち合わせと理由をつけて真姫と一 緒に対策を立てていたものの、こういった形で急に新曲の作業を進めるのは確かに珍しい ことではありますが、全くないということでもありません。 のみんなから注目を浴びた私と真姫は、お互いに目を合わせて何と言えばよいか考え ます。 ・少し進んだと : : : 思います : 私はこの場を納めるために上手く言葉を選んでみんなからの質問にやや疑問形で答えま した。実際今、真姫と作っている新曲には少し時間がかかっているので全くの嘘というわ けではありません。 「そうね : : : 」 真姫も私の答えを補強しながらも、やはりやや疑問形で答えました。 「そっか : : : 大変そうだね : : : 穂乃果たちに出来ることがあったら何でも言ってね、協力 するから」

10. ハジマリノオト

1 年生や 2 年生の時に希と一緒に行ったりしていたものだと思っていました」 「そうね、そう思われるのはわかるけど、高校生になって希と仲良くなったばかりの頃は 私も希も人との距離ーーというか付き合い方 ? がよく分かってなかったし、仲良くなった 後は二人で生徒会に入って忙しくなっちゃったからね」 「そうだったのですか、 「だから今日は色々教えてね、海未」 未熟ではありますが、絵里が楽しめるように頑張りますね」 「何言ってるのよ、海未も一緒に楽しむのよ ? 「ふふ。わかっていますよ」 久しぶりに絵里と会った私は色々と最近の近況を話し合って、私達と同じくお祭りへ向 かう人の流れの中で談笑しながら歩きます。気づけばお祭りが行われている神社の鳥居の 前まで来ていました。時計を見るとまだ時過ぎと、このお祭りの名物の舞が行われるに はまだまだ時間があるというのに既に出店がたくさん立ち並び、たくさんの人で賑わって います。 ふと絵里の方を見ると絵里はこういった景色を初めてみるのか目をキラキラと輝かせて います。時々溜息をつくように声を漏らしていました。 「海未、日本のお祭りって凄いわね。こんなにたくさんの人がいて、たくさんのお店があ って : : : 目移りしちゃう。それで海未、名物の舞はどこでやっているの ? 」 「絵里 : : : 初めてのお祭りで興奮しているのは分かりますが、舞が行われる時間はもっと 後ですよ。始まる前に色々見たいと絵里が言うから少し早い時間にこうして待ち合わせて